この口コミは、gunmadontistさんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。
最新の情報とは異なる可能性がありますので、お店の方にご確認ください。 詳しくはこちら
利用規約に違反している口コミは、右のリンクから報告することができます。
問題のある口コミを報告する
-
夜の点数:4.4
-
¥20,000~¥29,999 / 1人
-
-
料理・味 4.4
-
|サービス 4.5
-
|雰囲気 4.2
-
|CP 4.4
-
|酒・ドリンク 4.7
-
-
[ 料理・味4.4
-
| サービス4.5
-
| 雰囲気4.2
-
| CP4.4
-
| 酒・ドリンク4.7 ]
失われゆく鮨と孤高の矜持
-
{"count_target":".js-result-ReviewImage-48091355 .js-count","target":".js-like-button-ReviewImage-48091355","content_type":"ReviewImage","content_id":48091355,"voted_flag":false,"count":8,"user_status":"","blocked":false}
-
{"count_target":".js-result-ReviewImage-48091348 .js-count","target":".js-like-button-ReviewImage-48091348","content_type":"ReviewImage","content_id":48091348,"voted_flag":false,"count":7,"user_status":"","blocked":false}
2021/06/02 更新
東長崎から電車を乗り継ぎ、JR目黒駅に降り立ったのは午後3時半。
待望の店ゆえ気が早るのも致し方ないが、流石に夕食には早過ぎる。
時間調整を兼ねて、近場の東京都庭園美術館に赴く。
この日の特別展示は、アール・ヌーヴォーの立役者エミール・ガレ。
文学・哲学・植物学・鉱物学に精通し、その叡智を作品に反映させ、
陶芸・ガラス・木工家具の分野で活躍した19世紀の鬼才。
日本文化への関心から東洋的な作風も多く、日本人の心の琴線に触れる。
作品に描かれた植物や昆虫の細部までの描写は、ガレの自然への愛情を感じさせる。
頃合いを見計らって美術館を後にし、日の傾いた目黒通りを進む。
道沿いのインテリアショップの明かりが、冷えた体にと心に染み込んでいく。
閑静な住宅街をしばし歩くと、待ち焦がれた『いずみ』の看板が目に入る。
一志治夫 著「失われゆく 鮨をもとめて」のモデルとなったお店だ。
店の奥から明かりが漏れているが、店内はまだ暗く人影もない。
店裏にある林試の森公園を小一時間歩き、昼間の鰻を消費すべくささやかな抵抗。
公園の夜桜を楽しみ店に戻ると、ようやくお店は臨戦態勢。
女将さんに案内され、いざ店内へ。
歴史を感じさせる店構えに、所狭しと貼られた著名人のサイン。
この手の嗜好のお店にいい印象がなく、一瞬不安が過る。
親方と思われる男性と、女優らしき女性の写真が一際大きく掲げられている。
間も無く佐藤親方と思しき、派手な出で立ちの男性が登場。
写真と本の印象から初老の人物を想像していたが、思いのほかお若い。
写真の男性は名人として名を馳せた、先代の佐藤勇親方だったのかもしれない。
本で予習した通り、お酒と料理の説明を受けてから箸を握る。
(つまみ)
・能登産 海鼠と海鼠腸
・松葉蟹の玉子焼き
・蕗味噌
・平貝
・沖縄人参、鱈の白子、タンカンのソース、山葵葉と赤シャリ添え
・マカジキと鰊のお造り:熟成醤油、辛味大根、和辛子で
・モクズガニの甲羅焼き:奄美大島産の蘇鉄の実と味噌焼き、バルサミコ酢ソース
・鰹と鮪の酒盗
・鰡塩辛
・珍味:唐墨、唐墨味噌漬け、紅鮭筋子、鼈甲卵
・細魚の酢橘洗い
(にぎり)
・小肌4種:赤酢、米酢、きび酢、白板昆布締め
・海老
・白魚:芝海老のおぼろと
・マカジキ漬け
・ミル貝
・福岡産 筍
・平貝 磯辺巻き
・赤身 漬け
・鰤 漬け
・焼き白子
・金目鯛 漬け
・鰊 酢橘酢締め
・煮泥鰌
・煮蛤
・干瓢巻き
・玉子焼き
(その他失念)
(日本酒)
・上喜元(山形 酒田酒造)
・手取川(石川 吉田酒造)
・羽根屋 純米大吟醸 斗瓶囲い にごり酒(富山 富美菊酒造)純米大吟醸の各斗瓶から、おりの部分を集めた限定酒
・越の魂(新潟 大洋酒造 )
・奥清水(秋田 高橋酒造)
噂には聞いていたが、正に怒涛の品数!
しかし、名人芸でその魅力を最大限に引き出された食材達は、次々に胃の中に消えてゆく。
食べ始めから退店まで実に約4時間。
至福の時は瞬く間に過ぎ去る。
親方・女将さん・お弟子さん・常連客達に到るまで、一見客にも分け隔てなく鮨の魅力を教えてくれる。
親方がうちと似てると言われた「すし匠」と、通ずる所もあるがをこの店は別次元に存在する。
この境地に到るまで、気が遠くなるほど費やした手間暇、対価を求めては決して及ばぬ領域であろう。
確かに「失われゆく鮨」は下目黒の此の地にあった。
エミール・ガレと同じく、食材を通じて自然を愛し、求道者のごとく細部まで追求した鬼才が、
生涯を賭した鮨が此処にある。