2回
2021/11 訪問
泉質 × 美食 究極の湯宿 〜群馬の名店〜
泉質のいい温泉に行きたいが、食事も楽しみたい。
誰しもが願う願望だが、その両方を満たすお宿探しは困難を極める。
専門店並みの食事を楽しめるお宿は、総じて味気ない単純泉のお宿ばかりで温泉ファンは満たされない。
一方泉質に優れた湯宿は、食材はあっても料理に満足できるお宿には巡り会えずにいた。
永遠の課題とも思えた2つの願望を、初めて満たしてくれた湯宿に出会った。
個人的には究極の湯宿と評したい。
草津で大正4年から続く湯宿「泉水館」
歴史ある宿だが今は代替わりして、若きご夫婦が2人で営む 全4室最大8名の小規模旅館。
当宿は宿の規模を最大限に生かした魅力に富んでおり、その魅力は高級旅館を遥かに凌駕する。
泉水館の名に馴染みのない人も多いが、元々温泉ファンの間では秀逸な泉質が有名な湯宿。
温泉番付の東の大関(現在の横綱)であり、温泉ファンの間でも最強温泉との呼び声高い草津温泉。
草津には100軒以上のお宿があるが、その草津で7軒しかない自家源泉を有し、草津12湯の1つである「君子の湯」を持つ、温泉界のキング・オブ・キング。
そんな秀でた源泉を持ちながら、以前は歴史ある湯宿として温泉ファンの間のみで人気を博していた。
しかし今は代替わりしてお宿もリニューアルし、清潔感と木の温もりが溢れる素敵なお宿に生まれ変わった。
温泉目的の訪問であったが、先ず驚いたのは高い食事のクオリティ。
事前に炊いて保温したご飯が当たり前の旅館料理の中で、当宿は炊き立ての羽釜ご飯が食べられる。
先付の柿と春菊の白和、茄子のお浸しなどは素朴ながら手間を掛けた上品な味わい。
旅館料理定番の茶碗蒸しでなく、地元の天然なめこを使った空也蒸しも嬉しい誤算。
素揚げ牛蒡を合わせたホタテのソテーは、黒酢ソース。
一見イタリアンのような盛り付けの一品だが、黒酢の豊かな旨味とマイルドな酸味がホタテの甘味と好相性!
特に印象的だったのは揚げ出しおこわ。
芳ばしいおこわの香りと、上品で洗練された出汁が絡み合う秀逸な一品✨
上品な出汁の旨さと留椀が白味噌だったので、ご主人は京都の和食店出身かと思いきや独学で学ばれたとのこと。
洗練度は到底及ばないものの、温泉旅館のお料理で驚いたのはあさば以来2軒目。
群馬県内で和食専門店として開業しても、人気店になりそうな満ち足りたお料理。
サービスは客の時間と空間を尊重した、出過ぎない接遇。
演出や過干渉がないため、人によっては淡白に感じる人もいるかもしれない。
しかし個人的な印象は、もてなしの心に溢れた素晴らしいサービス。
羽釜ご飯も夕食時は煮えばなで提供し食事中に蒸らし、朝食時は直ぐに食べられる様に蒸し終えてから提供する。
食後のセルフ喫茶コーナーも、限定品やプレミアムシリーズのハーゲンダッツが10種類以上揃えてあり、入手するだけでも手間が掛かる。
温泉は3カ所あり全部貸切制。
全4室だから風呂待ちのストレスは少ないが、客室前の廊下にどの風呂が使用中か分かる看板(風呂の鍵と連動して点灯)が設置されており便利。
温泉は足拭きマットが沢山重ねてあり、客が入浴毎に交換できる様になっている。
様々な所で、小規模旅館の強みを生かした心配りが垣間見られる。
そして最大の魅力はやはり温泉♨️
安全に関わる階段や脱衣所、腐食し易い洗い場などはリニューアルで新しい木材に変わっているが、浴槽や壁・天井などは以前の木材を生かし良い風情が残っている。
泉質は白旗の湯に近く爽やかな酸味と香りがあるが、泉温も肌触りもよりマイルドでゆっくりと湯に浸かれる。
同じ源泉ながら4つの浴槽それぞれが濁りや湯の花の量が異なり、泉質の違いを楽しめるのも嬉しい。
個人的には泉質、風呂の風情共に白旗の湯を上回る草津最高の温泉。
成分分析書では泉温42.3℃、pH2.2の酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物泉(硫化水素型)
キング・オブ・キングの極上湯⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
※泉質評価の表現は「秘境温泉 神秘の湯」さんの表現を拝借させて頂いています。m(_ _)m
リピート度も勿論⭐️⭐️⭐️です❗️
[リピート度]
⭐️⭐️⭐️:常宿にしたいお宿
⭐️⭐️ :また再訪したいお宿
⭐️ :再訪は微妙だけど光るものあり
⭐️なし :再訪なし
既に唯一無二の魅力を備えた湯宿だが、個人的には3点の改善があれば更に嬉しい。
一つは喫茶コーナーのビールの充実。
ソフトドリンクやアイスの充実と比べ、ビールは質・種類共に平均的。
ソフトドリンクを減らしてでも、群馬県内や近場軽井沢のクラフトビールが充実していると嬉しい。
2つ目は談話室(コーナー)
今回のような一人旅なら不要だが、家族利用だと家族の就寝後に室内に居場所がなくなる。
独立した談話室は困難でも、ロビーに読書や湯上がりビールを楽しめる一画(テーブル&チェア)が欲しい。
3つ目は蛇足かもしれないがフリーWi-Fi。
私見かもしれないが、旅先でテレビは見なくとも映画鑑賞やSNSはしたくなるもの。
(この日のメニュー)
・柿と春菊の白和え
・小松菜とささみの辛子醤油
・長茄子のお浸し
・空也蒸し
・平目、本鮪、炙り太刀魚のお造り
・大和芋、小海老、平茸、緑大根のフリット
・帆立のソテー黒酢ソース
・揚げ出しおこわ
・カマスの柚庵焼
・新潟和牛のステーキ
・里芋の白味噌汁
・羽釜ご飯と香の物
・巨峰のグラニテ
2021/12/10 更新
料理旅館と名乗るべき⁉︎
半年前に衝撃を受けた、究極の湯宿 草津温泉 泉水館。
所詮温泉宿の旅館料理でしょう?などと言う偏見を吹き飛ばす、美食と美湯のお宿。
吾妻の山の恵みを生かしたお料理は、和洋折衷ながら個性に富み、どれもが完成度の高いお料理。
定番の羽釜ご飯も美味しいが、今回のコシアブラと油揚げの炊き込みご飯も絶品✨
蕪蒸しも、京都の割烹料理店と遜色ない秀逸な味わい。
素朴ながら上品な味わいの、天然山独活とこごみの胡麻和え。
奴には山椒味噌を乗せて、とろろ蕨をかけるセンスの良さ。
とても独学とは思えない、ご主人の非凡な料理センスに唸るばかり。
和食だけでなく洋食もまた秀逸!
仙台牛ネックの煮込みは口の中でホロリと溶ける柔らかさで、赤ワインの酸味と香りが心地良い。
アスパラガスと平目のソテー ジェノベーゼソースは、バジルではなく女将さんが山で摘んだクレソンのジェノベーゼ。
日本酒や自家製梅酒のラインナップも素晴らしいうえに、赤・白グラスワインまで抜かりなく美味。
温泉は前回紹介済みの為、簡単に。
泉質は草津随一と言っても過言ではない、自家源泉 君子の湯♨️
硫黄臭が心地良いpH2.2の強酸性の薄濁りの温泉だが、湯上がり後は化粧水をつけた様な肌のしっとり感があり、時間が経つとスベスベした肌触りになる。
(他の草津の湯同様、そのまま放置するとツッパリ感が出るので要保湿)
無加水・無加温の100%源泉掛け流し。
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物泉(硫化水素型)
愛して止まない極上湯⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
前回談話室が欲しいと書きましたが、離れに足湯付きの素敵な談話室がありました。
広々とした空間にお洒落なガスストーブとマッサージチェア、ドリンクの入った冷蔵庫、本やコミックがある快適な談話室です。
談話室前の中庭に足湯♨️と、君子の湯の源泉があります。