2回
2023/10 訪問
唯一無二の山菜・ジビエ料理
食材はあれども勿体ない・・
地方の料理店でそう感じる事が時々ある。
しかし極上の地元食材と秀でた料理人さんが織りなすお料理は、決して都内では味わえない唯一無二の感動を与えてくれる。
月山山麓にある山菜料理の老舗 出羽屋さんは、正にそんな感動を与えてくれるお店。
先ず驚いたのは、この日偶然手に入ったという立派な朝取れ松茸。
軸は子供の腕くらいの太さがあり、包丁を入れた瞬間に部屋中に香りが充満する鮮烈な香り。
最初に頂いたのは生松茸の刺身。
以前都内の割烹店で食べた時には、香りは良いがボソボソと食感が悪いうえに旨味も無く、生で食べるものではないとの印象を受けた。
しかし今回頂いた松茸は、舌触りも滑らかでしっとりと瑞々しく、鮮烈な香りの後に甘みが口に広がる未体験の味。
松茸も90%以上が水分とのことなので、やはり松茸も旅をさせてはいけない食材だと目から鱗でした。
生は生で美味しかったけど、やはり真骨頂は焼き松茸。
太い軸を縦に真っ二つにして七輪でじっくりと焼いた焼き松茸は、モキュっとした強い食感と未体験の甘さ、溢れ出す松露に驚愕でした✨
熊しゃぶも全く獣臭の無い、上品でキレイな脂。
脂身の中に僅かな点状の血合いが入るのが、東北の熊の特徴とのこと。
細切りうどんの麦切りは、山形産牛乳と香茸を合わせたシンプルな一品。
素朴ながらも、華やかなな香茸の香りが鼻腔に抜ける非凡な逸品に昇華。
以前から食べ友さん達の間で評判のお店でしたが、想像以上に素晴らしいお料理でした
2023/11/15 更新
「水は凄く意識しています」
そんな佐藤さんの言葉に、出羽屋の魅力の真髄を感じた。
一昨年の秋に深い感銘を覚えた、出羽屋さんのお料理。
今回は看板の山菜料理を味わうべく、初春の山形へ。
「水」とは料理に用いる水の水質に限らず、食材の水も含まれる。
雪下から掘り出した朝摘みの蕗の薹は、外葉を剥いただけで露が溢れ出る瑞々しさ。
芳醇な香りと柔らかい苦味、苦味の奥の甘みが印象的。
流通が発展した今日でも、この瑞々しさは豊洲まで送れない。
重量の90%は水分と言う松茸同様、山菜も旅をさせてはいけない食材だと気付かされる。
独活や雪下人参の甘さ、梨の様な風味の蓮根、一見どこにでもありそうな食材が驚きに満ちた魅力を備えている。
定番の甘味の大福も「水」が特徴。
もち粉を通常の1.5倍位の水で溶き、加熱しながらひたすらに混ぜる。
途中で更に加水して練り上げたもち粉は水と空気を存分に含んで、ふわふわの食感の大福に仕上がる。
ありきたりを全て非凡に昇華させる、山形の大地の恵みと佐藤さんの「水」の哲学。
何度でも足を運びたくなる、唯一無二の摘草料理の名店。