『サクラサク』ナマデタベルトウモロコシさんの日記

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ナマデタベルトウモロコシ (50代後半・男性・東京都) 認証済

日記詳細

世の中において、間抜けで怪しいモノのうちの一つに、手ぶらのサラリィ・マンが挙げられることは言うまでもない。
日曜の夜遅く、終電が無くなってから淀屋橋のオフィスを出て、まっすぐ北に向いて歩き始める。タクシーに乗ってもいいが、このまま行けるところまで歩くのも悪くないと考えた。

川を2つ越えると西天満界隈、あたりを見回してもこんな時間に開いている店はない。寄るつもりは無くても、店が開いていないというのはいたくモノ寂しいことである。そう、お店だって都合があるのだ。日曜の夜にはお店のヒトも休息をとらなければならない。まして、入店する気が全く無い手ぶらのサラリィ・マンの寂しさを埋めるために営業してくれ、なんて言われてもどうしようも無い。告白される気配がてンで有りもしないのに、「いやー、あの娘に付き合ってくれって言われても、ちょっと無理だよなぁ、」などと、誰かに勝手にのたまわれることと同じくらいどうしようも無い。

せっかく歩くのだから何か音楽をとiPhoneを取り出したのはいいが、イヤ・フォンを忘れてきてしまった。
手ぶらのサラリィ・マンは音楽を聴くこともままならない。仕方がないのでスピーカーをOnにして、直接耳に当てて、通話しているフリをしたりしながら、くるりの「ハイウェイ(※1)」を聴き始める。この曲を聴くと歩幅が大きくなって早く目的地に着くことができるのだ。目的地は自宅でそんなに近くもないし、完歩するつもりはないが、進めるだけ進もうと考えた。

国道1号線に出る100m程手前に来ると、大通りの向かい側で何度も何度も転んでいる老紳士がいる。
助けてあげたいが、彼は遥か100m先で転んでいるので、助けられない。そんなことを思いながら歩いていると、前をすごく小さな人が横切って行ったような気がした。マルホランド・ドライブに出てくるMr.ローク(※2)みたいな感じがしたが、気のせいであろう。今のなんだったんだろう、と思いながらまた前を見ると、老紳士はもう転んでいなかった。転んでいなかったどころではなく、もう姿が見えなかった。意外に俊敏な老紳士である。

今日の昼間はオテンキだったから、本当は外でハム・カツとビールで花見して、そしてその後、昼寝がしたかった。まあ、そのうちきっとできるだろう。

結局梅田ロフト前まで歩き、ほんの1メーターだがタクシーに乗った。
運転手さんによると、「今日はアタタカかったのに、夜の人出がいつもより少なかった」そうである。

※1 http://www.youtube.com/watch?v=H0jXfEx0hq4
※2 http://www.ne.jp/asahi/hoth/press/other_films/2002/mulholland/mulholland.htm
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