「かげおくり」っていう遊びをきーちゃんに教えてくれたのは、かろりーさんでした。
くりすますいぶに、かろりーさんは、きーちゃんや、ちーさん、あくさん、さんかいさんたちをつれて、まち中華のお店にうらメニューのまーぼどんを食べに行きました。
大きなお店の窓から見える青い空を見上げながらかろりーさんはつぶやきました。
「かげおくりのよくできそうな空だなあ。」
「えっ、かげおくり(゚∀゚)??」と、Rちゃんが聞き返しました。
「かげおくりって、なあに??」と、きーちゃんもたずねました。
「十、数える間、かげぼうしをじっとみつめるのさ。十、と言ったら、まーぼどんを食べて空を見上げる。するとかげぼうしがそっくりそらにうつって見えるんだ。」と、いつものようにかろりーさんは得意げに説明します。
「おれとなたりーが子供の頃は、よく遊んだものさ。」
「ね。今、みんなでそれやってみましょ。」とちーさんが横から言いました。
面白そう!ときーちゃんたちはみんなで手をつなぎ、かげぼうしに目を落としました。
「まばたきしちゃ、だめよ。」と、くねたん元会長が注意しました。
「まばたきしないよ。」きーちゃんとRちゃんはやくそくしました。
「ひとうつ、ふたあつ、みいっつ。」と、かろりーさんが数えだしました。
「ようっつ、いつうつ、むうっつ。」と、くねたん元会長の声も重なりました。
「ななあつ、やあっつ、ここのうつ。」きーちゃんとRちゃんも、夢中でどんぶりをかきこみながらいっしょに数えだしました。
「とおっ!!ジークくねくね♪」
みんながくねくね声を合わせると、目の動きといっしょに白いかげぼうしが、すうっと空に上がりました。
「すごうい(#゚∀゚)。・゚゚」と、Rちゃんが言いました。
「すごうい。」と、きーちゃんも言いました。
「今日の記ねん写しんだなあ。」と、かろりーさんが言いました。
「大きな記ねん写しんだわw」と、くねたん元会長が言いました。
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それから時は流れ…
きーちゃんが仲良くしていたおともだちはみんなまーぼくんに捕まってすっかりいなくなってしまいました。
そんなきーちゃんを見かねて親切なはるさんは言いました。
「このままでは、きーちゃんもいつかはまーぼくんに捕まってしまうよ。悪いことは言わないからぼくのようにせいきぐんに入ってやりなおしたほうがいいよ」
その時、きーちゃんの頭の中によく行く中華屋さんを一人でがんばってやっているやさしいおばさんの顔が浮かびました。
おひる時の一番いそがしい時間帯に、心無いお客さんにまーぼどんをぶんりするように言われ困っているその姿を思い出すと、きーちゃんの小さい胸はきゅーっと痛むのでした。
それにどんぶりが大好きだったたいせつなおともだちたちのことを思うと、やっぱり「うん」とは言えません。
そして…1月1日
きーちゃんがいつものようにこっそりまーぼどんを食べていると…
「かげおくりのよくできそうな空だなあ。」
というかろりーさんの声が、青い空からふってきました。
「ね。今、みんなでそれやってみたらどうでしょ」
というちーさんの声も、青い空からふってきました。
きーちゃんは、ふらふらする足をふみしめて立ち上がると、たった一つのかげぼうしを見つめながら、丼をかきこみ、数えだしました。
「ひとうつ、ふたあつ、みいっつ。」
いつの間にか、かろりーさんの声が、重なって聞こえだしました。
「ようっつ、いつうつ、むうっつ。」
くねたん元会長の声も、それに重なって聞こえだしました。
「ななあつ、やあっつ、ここのうつ。」
Rちゃんのわらいそうな声も、重なってきました。
「とおーっ!ジークくねくね!!」
きーまちゃんが空を見上げると、青い空に、くっきりと懐かしいなかまのかげがうつりました。
「かろりーさん!」きーちゃんはくねくねしながらよびました。
「くねたんかいちょ~!しんじてましたよ~!R地蔵様も!みんな帰ってきたんだ!!」
…と、そのとき、体がすうっとすきとおって、空の中に吸い込まれていくのが分かりました。
ギャガ━━Σ(゚д゚lll)━━ン!!!
気がつくと突然目の前がまっ赤に染まり。きーちゃんは、煮えたぎるまーぼ鍋の中にほうりこまれているのでした。見回しても、見回しても、唐辛子とラー油の海です…。
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元旦の朝、こうして、きーちゃんのちいさな命が空に消えました。
でもね、きーちゃんはけっして悲しくはありませんでした。
なぜって?それはみんなでどんを食べて遊ぶのがほんとに、ほんとに楽しかったからなのです。
今もきーちゃんはお空のうえでほほえんでいるにちがいありません。