くうのむわらうさんのマイ★ベストレストラン 2012

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くうのむわらうの痛飲記

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マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

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食べて飲んで笑うことが出来るお店と出会うと嬉しくなります。来年は新規店含めて今年以上にたくさんの素敵な店に出会いたいと思います。

マイ★ベストレストラン

1位

おおはま (阿佐ケ谷 / 日本料理、日本酒バー、焼酎バー)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.6
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.6 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥5,000~¥5,999 -

2013/09訪問 2014/07/02

4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて

2013.08

長嶋茂雄は引退の時に「我が巨人軍は永久に不滅です」と言ったらしい。でも、もしかしたら世の中に永久に不滅なものなどないのかもしれない。自分が当たり前と思っていた日常に馴染んだ幸せが消えてしまうのは寂しい。

おおはまさんから閉店する事を聞いた時のショックを今でも忘れない。自分にとって日本酒を愉しむという意味で一番の店が閉店してしまうことのショック。日常が日常で無くなること。それはある意味恐怖に近いものがある。

でもまたどこかでパワーアップしたおおはまさんに会えるような気がする。いや、そのときまでに自分自身も成長していなければいけない。日本酒の素晴らしさを教えてくれた店。出会いに本当に感謝。満点。

2012.04

「おススメの店はどこですか?」と聞かれることがある。最近は酒が飲める人には阿佐ヶ谷のおおはまと答える事が多い。反応はふたつに分かれる。興味を持つ人と、阿佐ヶ谷は遠いなあという人と。

基本的には界隈に住む人達の店だとは思う。気合を入れて訪問するというよりも、仕事を終えてリラックスした状態で訪問するのが合っている。定期的に訪問できる環境の人が本当に羨ましい。

料理が素晴らしい。和酒メインの小料理屋として考えると、これ以上を望む必要なんてないと思う。支払う対価に対する満足度はかなり高い。基本がしっかりしている料理人は、何を作っても大きく外すことが少ない。

日本酒はたくさんの品揃えをしているわけではない。でも、店主のセレクトで意思のある提案がある。それが何より一番大切な気がする。レアなものも含めてたくさん置いている店だけがいい店だとは思わない。

料理と酒と接客と空間。全てが心地よく馴染んでいる。満席で料理の注文が重なっても、テンぱる事もない安心感もある。だからとにかく居心地がいい。自然体というのは、他の人は知らない強い努力から産まれるものだ。

「阿佐ヶ谷三大女将」という、ある意味下世話なキーワードが訪問するきっかけだった。何回か訪問して気が付いた。私はおそらく同じ業態の店でおおはまを超える店に出会うことはないだろうと。出会った奇蹟。満点。

2011.11

阿佐ヶ谷駅から歩いて10分弱。食べログのようなツールがなければ、近隣住民しか存在を知り得ない類の店。日本酒にこだわりを持った女将さんがひとりで切り盛りするカウンター8席のみの和食店。

阿佐ヶ谷は縁もゆかりもない場所。でも、原秀則の『部屋においでよ』という漫画が好きで、その舞台になった阿佐ヶ谷にも勝手に親近感を持っていた。西東京での仕事の帰りに途中下車しての訪問。

おまかせちょっと盛りは酒の肴にぴったりな8種の盛り合せでこれはおおはまに訪問したら必ず頼むべきメニュー。その日によって内容はいろいろ変わるが、これで1,200円というのは本当に素晴らしい。

普段はおまかせちょっと盛りに刺身は入らないようで、「刺身入ってもいいですか?」と聞かれた。偶然食べた刺身の質もよかった。刺身ははっきりと食材の仕入れの質が分かるので、そういう意味で好印象。

店主が日本酒が好きっていうのが分かる料理というか。それでいてちゃんと野菜も食べられる感じで。店にとっては食材のロスを最小限に出来るメリットがあるし、客にとっても何が出てくるかの楽しみがある。

日本酒は定期的に品揃えを変えるとのことで、半合でも一合でも頼めるのが魅力。半合で400円くらいからあったかな。写真に載っているのは全て半合で、この日に飲んだのは、生ビール+3合という計算になる。

ちなみに生ビールの入れ方も完璧だった。その瞬間におおはまが素晴らしい店だって分かったんだけど。日本酒以外に焼酎もいろいろと取り揃えてはいるけれど、店主はやっぱり日本酒が好きとのこと。

店主の接客や立ち振る舞いは「凛」という単語がまさに当てはまる印象で魅力的。自然体で客に媚びずに一見でも常連でも真摯に接するから心地よい。一見でもひとりでも大丈夫。こういう店にはいい常連が集まる。

わりと遅めの時間の訪問で、私の後にひとりの客が何人か来たのが面白かった。おそらく近くに住んでいる方なんだろうな。都心のどこかで飲んできて、飲み足りないから、家の近くの店で軽く飲む。そんな感じ。

阿佐ヶ谷はあまり派手な街ではない。でも、派手ではないからこそ、おおはまのような奇蹟の良店が存在する。例えば、この店が新宿や池袋の駅近だったら、いろいろな意味でこの空気感は無理なんじゃないかと思う。

新宿から電車で11分。案外近い。都心に近い割りに地価もそれほど高くない、という理由で何となく単身赴任の家に選んだお父さんがおおはまと出会って常連になる。そんな姿が想像できてしまうのだ。

2010年9月に居抜きでオープンした。店に入って思い出したのだけど、実は居抜き前の同じ場所の飲食店に私は来たことがあるのだ。もう何年も前。店内の特殊な形状で気がついた。すごい偶然というか何というか。

私が最近大好きな初台のマチルダも2010年9月1日のオープン。何か偶然という名の縁って面白いね。たまたまこのタイミングで西東京での仕事が入らなければ、一生訪問していなかったかもしれないわけだし。

もっと阿佐ヶ谷が好きになる。そんな感じの店。凛とした真心に触れるのが楽しくて、今日も誰かがおおはまを訪れるのだろう。日本酒を飲みたいなあと思ったときに、真っ先に思いつく店。大好き。

  • おまかせちょっと盛り
  • 四万十川鰻の出汁巻き玉子(期間限定)
  • 風の森

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2位

酒盃 (泉外旭川 / 居酒屋)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 4.7
    • | サービス 4.7
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.7
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥6,000~¥7,999 -

2012/07訪問 2012/08/06

裸電球の温もりの中で

生まれて初めて秋田県に足を踏み入れた。これで47都道府県のうち訪問したことがないのは山口県と島根県だけになった。仕事で秋田に行くことが決まったとき、その仕事の成功よりも何とか空き時間を作って酒盃に行く事ができるかどうかで頭の中でいっぱいだった。そんな熱い思いが通じたのかどうか、何とか夜に自由時間が作れることになった。訪問日の一週間くらい前に店に予約電話をした。「その日は既に予約でいっぱいで・・・」との予想外の返答に目の前が真っ暗に。落胆して「その日だったら遅い時間でも大丈夫なんですが・・・」と粘ると、早い時間の客が帰ったら席を作ってくれるという。「状況をお伝えしますので、20時頃に電話ください」と。

秋田訪問の日。思いのほか仕事が早く終わったので、酒盃に行くまでの時間が手持無沙汰に。秋田有数の繁華街である川反に繰り出す。まだこの時間はほとんどの店が開いていなくて、たまたま開店しているのを見つけたムーンシャインというバーを訪問。ウイスキーに対しての愛があるとても素晴らしいバー。バーテンダー氏からの「次どこに行くんですか?」と問いに「酒盃」と答えると、「酒盃は大好きで先週の金曜日も行きました。日本酒を楽しむという意味では最高の店です」との言。とても嬉しくなった。最高の食前酒だった。20時頃に電話をすると、「お席出来てますのでいつでも大丈夫です」と。はやる気持ちを抑えてタクシーに乗った。

まず建物がスゴイ。秋田駅からそう遠くないこの場所によくこんな風情がある木造建築があるよなあと。で、玄関。ハリボテ感が微塵もない外観と同じベクトルでの空間。下足入れには予約時に伝えた私の名前が。ちなみに帰るときには下足入れから出されて履きやすいように靴が置いてあった。店主はHPに「当たり前のことを30年間続けてきた」と書いている。客に対して妥協なく考えることを「当たり前」と定義する矜持に心揺さぶられる。事実、私はこの日の接客に関して違和感を感じることがなく気持ちのいい時間を過ごすことができた。これだけの人気店でありながら、慢心がない。常に目の前の仕事に全力投球。で、笑顔がある。マニュアルだけではない個人店の魅力がある。

カウンター。臨場感があってとてもいい。訪問人数にもよるのだろうが、選択の余地があるならば店主との会話もできるカウンターをおススメしたい。料理は自由に選ぶことも出来るし、おまかせで頼むことも出来る。今回は4,000円のおまかせ(お通し、お造り、季節の揚げ物、比内地鶏、旬の魚介料理、季節の野菜料理、豆腐料理、店主の手打ち蕎麦)比内地鶏の鶏さし(800円)を注文。酒は最初に生ビールで、それからはおまかせで料理に合わせての日本酒(半合)をお願いした。お通しはカルト、コース問わず最初に出てくる。これがとっても協力。日本酒が飲みたくてしょうがなくなる。ちなみにビールは生の普通のサイズのほかにひとくちビールというのもある。そういう配慮も嬉しい。

酒も料理も地産地消。日本酒を楽しむための店。それでいて料理の質が極めて高い。料理の量はそれほど多くない。量より質。日本酒を主にとらえて、日本酒のアテとして最高の料理の数々。私はウイスキーやカクテル、場合によってはワインも酒単体で飲む事が出来るが、日本酒は絶対に料理と合わせたい。素晴らしい日本酒を飲んだとしても、料理が貧弱であれば魅力は半減してしまう。そういう意味で期待に応えてくれる店は実はそれほど多くはない。ワインの品揃えが優れたワインバーは素晴らしいかもしれないが、日本酒の品揃えが優れた店がイコール素晴らしい店ではない。だから、日本酒が好きな私は「日本酒に合う可能性がかなり高い」鮨屋によく行くのかもしれない。

まずお造りで驚愕。居酒屋で出てくるレベルではない。山葵の刺身は美味しいと思っていたけど、あきらかにそれ以上。昆布〆の〆仕事が素晴らしい。季節の天ぷらは穴子とそら豆。んー、この価格帯の店でこんなに美味しい穴子の天ぷらって食べたことあるかなあ。しかも酒にめちゃくちゃ合うんだよなあ。秋田の酒の特徴を理解したうえで、それに合う食材や調理方法を徹底している感じで。これがまさに「当たり前」の話なんだろうけど、巷で「郷土料理」を謳う店でそれが徹底出来ている店ってあんまりない。どうしても郷土料理が勝っちゃうというか、自己満足になっちゃうというか。酒盃の料理はそういう感じが一切ない。

比内地鶏の鶏さし(800円)は必ず注文するべき。隣に座った常連の方から強くおススメされたので注文したけど、もうこれを食べながら日本酒を楽しんでる時間が幸せでしょうがない。これも極めて質が高い。旬の魚介料理は雲丹の使い方が面白い。季節の野菜料理はトマトやトウモロコシといった素材の質を感じられるもの。豆腐料理の豆腐は自家製。店主の手打ち蕎麦も期待以上。ここで蕎麦が出てくるのは有難いんだよね。そうじゃないと酔った勢いでラーメン屋行っちゃうから。笑 蕎麦は居酒屋で供されるものとしては最高水準ではないかと。まあここは蕎麦屋ではないので、蕎麦屋の頂上店と比較するとどうかという話はあるけど。

大満足。酒も料理も。日本酒はおまかせで半合でいろいろ出してくれるのがいい。半合は一合の半分の値段というのも良心的。純米大吟醸が一合1,000円、純米吟醸が一合800円あたりでの値付け。もちろん秋田の酒。ここでしか飲めない希少な酒もある。秋田の酒っていうのは、どちらかというと米の旨味、甘味が前面に出てくるものが多くて、その強さに負けない料理が出てくる。派手な料理ではない。でも手を抜かずにきちんと仕事しているのが分かる料理。前述の通りで量より質なので、居酒屋に量を求める人にとっては合わないかもしれない。私は量より質を求めるので、そういう意味でも非常に相性がいい。

一見の私にも私の名前を呼んで気軽に話しかけてくれる店主の真摯な姿勢に心揺さぶられながら、美味しい日本酒を飲んで帰りたくないなあと強く思う私がいた。私は秋田県の事をよく知らない。でも、秋田の地産地消を謳う酒盃の素晴らしさを堪能して、秋田の事が大好きになった。酒も料理も空間も接客もCPも何もかもが素晴らしい。私がこれから秋田にどれだけ訪問するかわからないが、むしろ酒盃に訪問する事が目的で交通費を使っても惜しくない、そんな気持ちすら持っている。日本酒の魅力を再認識させてくれた。秋田の宝。世界一の居酒屋。満点。

  • お通し
  • お造り
  • 季節の揚げ物

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3位

日本橋橘町 都寿司 (馬喰横山、東日本橋、馬喰町 / 寿司)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.6
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2013/07訪問 2015/11/11

雨上がりの夜空に

2012.02

その日降っていた雪は雨に変わりつつあった。震災直後の訪問以来だから約一年ぶり。何度か予約を試みるも、日程が合わずにこのタイミングに。人気の高さは相変わらず。ご主人の接客の気持ちよさも相変わらず。

写真が今回食べたものの全てで、出た順番通りに掲載。唯一、弱点というか、他の江戸前鮨屋と比較して落ちるなあと感じていた玉が大きく変わったのが大きな驚きだった。「半年前に大きく見直しました」とのこと。

青空鮨なんばの大好きな玉に似ている印象で私の好み。これでおまかせの流れの中で違和感を感じるタネは無くなった。小肌や金目鯛といったような店の魅力を表すタネは今まで通りに安定感がある。

舎利は「沈む鮨」系のもので、これはほぼ完成系なのかな。私はもうちょっといろいろな意味で固いほうが好みなんだけど、これはこれで好きな人は多いとは思う。試行錯誤のなかで、現在の状態に落ち着いた印象。

「美味しい鮨とは何ですか?」という頓珍漢な質問に対して、丁寧に「舎利の違い」と答えてくれた。タネ質は最上級ではないとは思う。でも今までと変わらないように、舎利やタネの熟成へのこだわりはとても真摯なもの。

初めて杉田さんと出会ったとき、例えば、仰木監督がイチローに対して感じたであろう、成長過程におけるある種の狂気のようなものを感じた。今の状態は、よくも悪くもバランス感がある万人受けする方向に進んでいる。

今の状態で果たして満点の好みかと聞かれると難しい部分も正直ある。でも、江戸前鮨が好きになって、いくつかの店を開拓する気持ちにさせてくれたのは都寿司のおかげでもある。そういう意味で変わらずに大好き。

今回も気持ちのよい時間を過ごすことができた。同行者も喜んでくれた。店を出たら雨は上がっていた。否。雨が降っていてもそうでなくても空を見上げる必要なんてなかった。前を向いて歩いていこうと思う。満点。

2011.03

「今回の地震、大丈夫でしたか?」

杉田さんの第一声。まずは客の事を心配するのが杉田さんらしいと思った。当日予約の際に「タネがいつものように集まっていないし、舎利も普段の米と違います。それでもよろしいですか?」との問いがあった。私はそれで構わないと答えた。

計画停電が経済の復興に大きな影を落とす。飲食店の予約キャンセルが相次いでいる。都寿司もご多聞にもれず、地震当日から数日間はキャンセルの嵐だったと聞く。でも、この日は満席だった。いつもの活気があった。

一時的な料理内容なので詳細の言及は避けるが、確かに舎利に大きな違いを感じた。いつもと違う米を最適化するために握り加減も変えていた。正直、私の好みど真ん中ではなかった。でも試行錯誤しているのは伝わってきた。

大変な状況なんだろうと思う。でも、それを表情に出さず目の前にいる客に全力を尽くす。私は杉田さんを励ますつもりで店に来た。でも逆に私が励まされた。ああ、今やるべきことはこういうことなんだなあと。

今手に入るものを使って過去の習慣を捨てて今のために最大限の努力をする。そんな鮨だった。普段のほうがいいのは当たり前である。でも、この前向きな努力が地震を経験した私達が乗り越えるために必要なんだ。

私達の生活は普段とは大きく変わってしまった。電気が使いたいようには使えない。電車も通常ダイヤではない。人によっては住む場所も変らざるを得なかった人もいる。普段通りのパフォーマンスは無理かもしれない。

でも、今目の前にある自分が出来ることをとにかくやり遂げる。もちろん、将来の夢や希望を忘れずに。それが大事なんだと改めて思った。そんな夜だった。

地震を乗り越えた、とはっきり言えるときがいつになるのか正直分からない。でも乗り越えたときに、杉田さんの鮨を食べたいなと強く思った。不完全であるからこその勇気。前に進むしかない。満点。

2010.10

3回目の訪問。4月→7月→10月の流れ。本当は毎月来たい気分なんだけど予定が合わなくてのこのタイミング。2回転目の19時30分に訪問。選べる環境なら1回転目よりも2回転目のほうがゆっくり食べられるからおススメ。最近はさらに予約取りにくくなっている。

詳細内容は1回目、2回目にあるので割愛。つまみも4月の頃と比較してかなりよくなっている印象。+3,000円でつまみも食べられるわけだからにぎりだけというのはこちらの店に関してはもったいないと思う。

NHKで江戸前鮨について語る番組があって、青空鮨かねさかの大将と一緒に杉田さんも出演していた。そのときに話していた内容が強く納得できる内容だった。

1回目のレビウにあるように、私がこちらの店に衝撃を受けたのは舎利の抜群の相性と小肌なんだけど、杉田さんは「舎利は全体の8割を決める」「小肌が4番打者。4番打者を一番最初に出してこちらの流れに引き込む」と。

決められたコストの中では鮪やら雲丹やらの所謂「分かりやすいけど高額なもの」をメインには出来ない。だからこその江戸前仕事を突き詰めての小肌。私はこちらの店に来るまで小肌というものを誤解していた。

銀座の頂上店に行けば、こちらの店よりも上質な鮨が食べられるのかもしれない。でも支払いはおそらく倍以上になる。この支払いでこの食後感。やっぱり私は他に比較する対象を見つけることが出来ない。

同行者にもとっても喜んで頂いた。江戸前鮨に関わらず全ての飲食店の中で一番好きな店なので喜んでもらえるととても嬉しい。何かいろいろ語ってたら、「これだから鮨オタは駄目なんだ」とか言われたけど。笑

杉田さんに1回目と同じ質問をした。「移転の予定はあるんですか?」と。同じ答えだった。「ありませんと。」それは前回の答えよりもはるかに自信に満ちた答えだった。このスタイルでまだまだ出来ることがいっぱいあると考えているんだと思う。

杉田さんが街場寿司出身であることを私はネガティブには捉えない。店を好きになることを人を好きになることと似ていると考えてみると分かりやすい。私は誰かのことを好きになるときに親がどうかということは考えたりしない。それと同じこと。杉田さんの鮨に対してどう感じるのかという事にしか答えは存在しない。

大好きな作家である太宰治の『晩年』の冒頭からの引用。ちなみに彼がこの作品を書いたのは27歳のとき。

 「死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目が織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った」

わたしはこの鮨があれば生きていける。生きる理由のひとつに成り得る至高の江戸前鮨。5年後、10年後にどんな成長しているんだろうか。杉田さんの握る鮨も、何より私自身も。満点。

2010.07

再訪。写真を追加。当日予約で何回か振られていて満を持しての訪問。杉田さんは私が前回4月に訪問したことや何を食べたかを全て覚えていた。で、今回の結論から言うと前回より満足度は高かった。初訪問で満点を付けた自分の判断は間違えていなかった。自信が確信に変わる瞬間。

今回特によかったのはつまみの充実振り。前回は正直にぎりは最高だったけど、つまみは弱いなあと感じていたので、この全体を通してのバランスのよさは嬉しい誤算というか。こんな短期間でさらに一段上に行くものなのか。

鮨さいとうって何がすごいのかというと、おまかせをコースとして捉えたときの全体の流れの素晴らしさが他と比較して抜きん出ているってことなんだけど、それに近い水準を今回のおまかせから感じた。個々のネタでは鮨さいとうに勝ってるものもいくつかあるし。値段は鮨さいとうの半値に近い水準なのにね。

今回食べたもの一覧。何か抜けてるかもしれない。

<つき出し>
-なすのおひたし

<つまみ>
眞子鰈
蒸し鮑
鳥貝 ◎
山葵鱈子
鮟鱇肝 ○
帆立磯辺焼き
ねぎま焼き

<にぎり>
小肌
鯛 ○
春子 ◎
鰹 ○
鮪中トロ
鯵 ○
金目鯛 ◎
小柱軍艦
雲丹
穴子塩 ◎


お椀

<酒>
生ビール2杯(ドイツビール)
黒龍3合

で、2万円を余裕で切る価格。やっぱり自腹で江戸前鮨を食べるという基準でこちらの店に敵う店を私は知らない。接待を受けるなら銀座の鮨屋で華やかな空間で食べればいいんだろうけど、こちらの店は支払いに対する納得度が抜群。この食後感でこの値段っていうのが素直に嬉しい。

つまみはどれもよかった。ハイライトは鳥貝。時期ズレだけど、生臭さを排除して甘さを際立たせたものでかなり秀逸。新ばししみづで味わった最高水準の鳥貝にかなり近いもの。これは驚いた。

にぎりは相変わらずの大安定。小柱軍艦は海苔が青空ほど美味しくないこともあって、「まあ、こんあものかなあ」という感じだけど、後は全て納得の水準。前回感動した小肌は時期ズレもあって前回ほどの感動は無かったけど、おぼろを使って必死に抵抗していた仕事振りは相変わらずさすがというか。

にぎりで特によかったのは前回同様に鯵、金目鯛あたりもそうなんだけど、それ以外では穴子。時期がいいというのもあるのかな。4月の写真と比較してもらえば何となく違いが分かるかな。青空のようにやわらかくて舎利を包み込むタイプ。秀逸。

舎利は塩の使い方とかを若干微調整している感じでポジティブな試行錯誤は続いている。

今回、遅い時間に伺ったので杉田さんといろいろお話をする時間があった。向上心があって仕事に対してまっすぐな姿勢は本当に人間的に尊敬出来る。杉田さんの下で働く弟子も大きく育っていくのでは。

同じ時間帯に食べていた感じのよい美男美女のカップルに話しかけられていろいろ話していたんだけど、こちらの店には徒歩で来て、江戸前鮨屋はここしか知りませんと。羨ましいなあ。

このおふたりのように近隣住民の自腹でいいもの食べたいってときの筆頭の候補がこちらの店なんだろうな。銀座の鮨屋とかとは明らかに客層も違って、私はこういう雰囲気も嫌いではない。

近くにマンションを買おうか真剣に考えた夜。私が人生で出会った江戸前鮨屋で一番好きな店。これからの成長も本当に楽しみ。満点。

2010.04

馬喰横山駅から歩くのが一番近い。東日本橋駅からも歩ける。透明のガラスケースからも感じられる街場の寿司屋感。ハレの日に使う店ではないのかもしれない。寿司ネタも銀座の頂上店と比較すると負けるのかもしれない。

でも、出会ってしまった。真摯な江戸前仕事。舎利の抜群の相性。もてなしの心の接客。極めて真っ当なお値段。私が寿司屋に求めるほぼ全ての要素を兼ね備えた奇蹟の寿司屋に。

************************

8,000円のにぎりおまかせと11,000円のつまみからのおまかせの2種。当然のように11,000円を選ぶ。もっと食べたような気もするので何か抜けているのかもしれない。

<つきだし>
-空豆

<つまみ>
眞子鰈
細魚
白魚酒蒸
コノワタの茶碗蒸 ◎
鰆 ○

<つまみ追加>
カラスミ
鮟鱇肝 ◎

<にぎり>
小肌 ◎
鯛 ○
春子昆布〆 ◎
鮪ヅケ ○
鮪中トロ ○
鯵 ○
鰆 ○
平貝
車海老
紫雲丹 ○
穴子ツメ

お椀

<酒>
生ビール1杯(ドイツビール)
黒龍5合

で、2万円を切る支払い。追加もしたし酒も普段よりたくさん飲んでこの支払いなので、これからもこのラインで収まるという安心感。鮨さいとうで3万円、青空で4万円払った人間としてはこのレベルの寿司がこの値段で食べられることが嬉しい誤算。

酒の値付けは高くない。品揃えもまあまあ。日本酒はもうちょっと幅広い価格帯のものがあるといいかなあという印象。

つまみ。

つまみはちょっと弱い部分もある。細魚は青空のほうに味付けで軍配が上がるし、カラスミの酒の肴感でも寿々に勝てない。ただ、コノワタの茶碗蒸は抜群だったなー。コノワタの強い風味と茶碗蒸しの包容力のある優しさが強烈にマリアージュして酒の肴として完璧だった。

にぎり。

最初に食べた小肌で完全にノックアウトされた。人生最高の小肌。ネタが最高なのではない。江戸前仕事を施された小肌として最高。塩の効いた舎利と優しいけれど持続する〆具合のバランスが素晴らしい。

舎利の相性が私の人生で一番。オーダーメイドで作った服のように完璧。大きすぎず小さすぎずのサイズ、舎利自体は固めで握り加減も固すぎず柔らかすぎずで口に入れた瞬間にネタと一体感を持って口の中で広がる。温度も米の銘柄も全部が好み。塩と酢もキチンと主張していて且つ強すぎない。

至高の江戸前仕事。

この立地で最上級のネタを使って最上級の値段で、というのは難しいんだと思う。11,000円のおまかせという制限の中での最上級のネタ。それは妥協、ではない。むしろ至高の江戸前仕事が際立つ形になっている。

素材と真摯に向き合う姿勢。これは美味しいとかの次元ではない。心を揺さぶられる。心意気に対して。

鮪の熟成感のご機嫌さは鮨さいとうに匹敵するもの。春子昆布〆も絶妙な〆具合。衝撃。こんなに素晴らしい寿司職人が馬喰横山にいるんだ。

杉田さんは鮨さいとうの斎藤さんとは一学年下、青空の高橋さんはと同じ年齢の方。接客は極めて誠実で丁寧。いい意味で寿司職人っぽくないというか。給仕や弟子への指示出しも見事。接客面でも不満は一切無し。

私は杉田さんに移転の可能性を聞いた。この場所でこのスタイルで続けて欲しいとの思いからの質問。最初はこだわりがあってこの場所で始めたわけではないけど、今はこの場所が好きと言っていた。

地元から愛される店。でも、地元だけに独占させられない名店。この界隈に住んでいる人が羨ましい。

満点。もちろん完璧の店ではない。でも修行先を超える努力は並大抵のものではない。今の姿勢があれば、この店はさらに成長していくはず。このお店の寿司を食べるために、これからも仕事を頑張ろう。

  • 海松貝(2012/2)
  • 皮剥(2012/2)
  • 皮剥(2012/2)

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4位

赤坂 詠月 (赤坂見附、赤坂、溜池山王 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.6

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 昼の点数: -

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 4.6
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP 4.6
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 ¥1,000~¥1,999

2014/11訪問 2014/12/25

青き炎

2012.03

再訪。写真を追加。

前回の夜の訪問では箸休め的にコロッケが出てきたりして、よくも悪くも試行錯誤している印象があったが、今回は直球勝負に覚悟を決めた印象を受けた。直球でも客を満足させることが出来るとご主人が認識したのでは。私には極めて真っ当な進化に思えた。食材のコスト以外に妥協が無い、それが何より私が赤坂詠月を好きな理由。カウンターでご主人と女将さんと会話しながら食べる時間がとにかく楽しい。出汁を味わうとご主人の和食に対する想いが理解出来る。何もかもが心地いい。料理のボリューム感は客に対する心意気。それを全力で楽しめばいい。

「炎」というと赤色をイメージすると思う。見た目も赤い炎のほうが熱い気がする。でも実は赤い炎よりも青い炎のほうが温度は高い。まさに「青き炎」を持った料理人。和食の初心者でも上級者でも、全ての人におススメする和食店。料理が美味しくて幸せになり、ご主人と女将さんの気持ちが素敵でさらに幸せになる。これからもずっと訪問したい大好きな店。

■■■
※昼は休止中との事。夜のメニューで穴子茶漬けは要相談。

2011.02

夜に再訪。写真を追加。既に昼は予約無しでは入店が難しい人気になっている。昼の予約は11:45~と13:00~の2回で受け付けているとの事。1,200円で食べられる昼食として最高水準の内容だと思う。

夜は8,400円からのおまかせ中心。単品での注文も出来るし食材の希望や酒飲み放題の設定も追加料金で柔軟に対応するとの事なので、酒の希望を含めていろいろと相談してみるといい。

東京和食に慣れた人には弱く感じるかもしれない出汁の味わい。ただ、京料理を知っている人にとっては、この値段帯の和食でこの淡く深い出色の出汁を味わえることに驚きを感じるのではないか。ご主人は京都の複数の店での修行経験がある。原点は京料理。

まだコースの組み立てとして完全に完成しているとは思わなかった。試行錯誤もしている印象だった。それでいても、出汁の魅力とCPの高さは現時点でずば抜けていると感じた。CPにおいては中善までではないにしても、花邑と同等かむしろ上回っている印象。

和牛コロッケが出てきたりと若干遊びを出そうとしていたが、私はむしろ正統派として当たり前のものを当たり前のように出す方向性に進んで欲しいと思った。東京において1万円割烹で真っ当な出汁を味わえるのは貴重な事だから。

昼も夜も素晴らしい。今は昼が注目されているが、むしろオススメはご主人と女将さんの魅力をいっそう味わえる夜のカウンター。この界隈に地縁がある人は今のうちに常連になっておくべき。

非常に使い勝手のいい店なので知っておくと何かと使える。接待でもデートでも仲間との気軽な会食でも。それほど遠くない時期に夜も簡単には予約出来なくなる気がする。

隣のクラブから音が漏れるのは抜群のCPの高さでカバー出来る。この立地であえて店を開いたのは、自分の料理に対する自信があるから。それが自信過剰にならずにとにかく誠実にこちらに向き合ってくる。

やはり夜も素晴らしかった。これからの成長が楽しみ。

2010.12

真っ当な和食店がある雰囲気の場所ではなかった。会員制クラブが目立つ界隈でフロアの奥のほうにひっそりと佇んでいた。一応1階にはランチの内容が掲示してあるが、知らない人がフラっと入る店ではない。

私は所謂1万円割烹が昼に夜とは違う1,000円程度の軽いランチを出すのはあまり好きではない。それにはある種の割りきりが見えてしまうからだ。要はその店の本気を味わえないというか。その考えを根底から覆されてしまう料理に出会ってしまった。

魂がこもった料理。香の物からご飯にいたるまで全てに全力投球でコストの制限の中で最良のものを出そうと努力しているのがはっきりと伝わってくる。一期一会の真剣勝負。ご主人の本気がとにかく心地いい。

私はご主人がどういう経歴の持ち主なのか全然知らない。でも、料理人は経歴よりも何よりも作った料理を見れば分かる。そういう意味で素晴らしい料理人だと思う。女将さんの接客の真面目な雰囲気も佳い。

昼は穴子茶漬けと本日の定食の2択。どちらも1,200円。

穴子茶漬けを選択。穴子利久造り。定期的に変わる炊いたんと小鉢。香の物。薬味。おかわり自由のご飯と出汁茶。ご飯は最初に穴子を刺身として一緒に食べて、ご飯をおかわりして残りの穴子とともに茶漬けにする流れ。

千利休が胡麻を好んだことから胡麻を使う料理を利久と呼ぶことがある。穴子利久造りはその名の通りで穴子を味噌と胡麻で合えたもの。あまり生の穴子は食べる機会がないけど面白い食感で若干甘めの味噌ともよく調和していた。

「出来たばかりなので若干やわらかいかもしれません」と言われて供されたご飯は過不足ない絶妙な炊き上がりだった。しみじみと日本料理っていいなあ、出汁の力ってすごいなあと感じることが出来る料理。それが1,200円を支払うことによって味わえる。

この類の店が1,000円程度のランチを出すのはくろぎとかもそうなんだけど、有料試食というか、店のエッセンスを少しでも客に伝えて夜の集客につなげたいという思惑があると思う。

そう考えると最高のプレゼンテーションなのでは。ランチとして抜群の完成度を誇ってランチで完結しながら、夜も面白いだろうなあと感じさせる料理。夜は8,400円からのおまかせとのことだが、どんな料理が出てくるのか。

こじんまりした店内でこの値段でこのスタイルで続けられるのか分からない。むしろ客が来すぎてくろぎのように完全予約制になったり、構成そのものを変えてしまう可能性だってあると思う。

だけど、私が1,200円の至福を味わったという事実に何の間違いも無い。そしてその至福は何よりこれからの未来を期待させるものだったというのは食べ終わった後に幸せな余韻に包まれていたことで分かる。

夜の再訪が楽しみな店。

  • 2012/03夜のおまかせ
  • 2012/03夜のおまかせ
  • 2012/03夜のおまかせ

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5位

フロリレージュ (外苑前、表参道、乃木坂 / フレンチ)

1回

  • 夜の点数: -

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 4.6

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 4.6
    • | 雰囲気 4.6
    • | CP 4.6
    • | 酒・ドリンク 4.6 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 ¥8,000~¥9,999

2012/03訪問 2015/03/27

命短し 恋せよ乙女

2012.03

まさかの短期間での再訪。行きたいと思っていても予約困難な店で自力での予約を半ば諦めている店のお誘いは本当に有り難い。他力本願ばかりで申し訳ないなあと思いつつも、今後もどうぞよろしくお願いします。笑

前回の訪問よりも満足度は高かった。4,200円でこの料理の内容と接客で不満が出ようも無い。写真は前回訪問と被るもの(グリーンオリーブとかパンとか)は割愛。初訪問であれば、まずはフォアグラの料理を推奨。

グラスワインも魅力的。ビストロ的なヤスウマワインではなく、フレンチとしての矜持を持ったワインの提案で極めて妥当な価格設定。銘柄によっては安いなと感じるものも。料理のトーンに合う赤ワインのセレクトが面白い。

料理のトーンが一緒というか、味が強めなので、もう少し幅があるといいなあとは思うんだけど、フォアグラの余韻を引っ張りながら、選ぶ楽しみも感じつつ、心地よく遊び心もある接客を感じながらのこの空間はやはり極上。

満点に限りなく近い★4.5。夜よりも昼のほうが好き。

2012.02

2009年の夏。たべろぐに駄文を書き連ねるようになる以前にフロリレージュ と出会った。店がオープンして間もない頃だった。知人が予約したので、当時の予約難易度は分からない。あっという間に超有名店になった。

実は、そのときに知人から重大な話を切り出されて、料理の事は憶えていない。また行きたいなあと思いつつ、先の予約をするのは苦手で時間が流れていた。そんな時にピンポイントで空いている日のお誘い。

行かないわけがない。うきうきしてまるで遠距離恋愛で好きな人に久しぶりに会う乙女のような気持ちで訪問した。こじんまり清潔空間。席は個室だった。6人まで対応可能との事だけど、4人がちょうどいいと思う。

シェフやギャルソンとのいい距離感を感じる。立地的には必ずしもいいとはいえない小さな箱だけど、超有名店でありながら親しみを感じるやわらかい接客と調和したこの空間が私は大好き。この立地だからこその空間。

ランチは4,200円+サービス料10%で前菜・メイン・デザートを選ぶプリフィクスコース。選んだ料理で追加料金が発生することは基本的には無い。ディナーは10,500円+サービス料10%でのおまかせコース。

フォアグラは高級食材の代名詞のように言われるけれど、料理としての当たり外れが多いのも特徴。フロリレージュの素晴らしさは、そのフォアグラのプレゼンテーションに極めて長けている事が挙げられる。

フォアグラに始まり、フォアグラに終わる。それが私のフロリレージュに対する感想。メインにしてもデザートにしても同価格帯のフレンチで同等以上の店を思い出すことが出来る。でも、フォアグラに関してはそうではない。

フォアグラの印象を最後まで持続できるなら、それは素晴らしい時間で終わる。メインは波がある。今回の子羊のローストに関しては、強い印象を持つことが出来なかった。同じ食材で違う提案というのは面白いけど。

皿を全て肯定することは出来ない。でも、流れの中でのトータルでの満足度は高い。わかりやすくリーズナブルな価格が素晴らしいと思う。フレンチはいろいろ選択によって追加料金がどんどんかかることがあるので。

接客が出色。今回ご一緒した方が常連だという理由も一因だけど、接客自体を楽しんでいる、客に喜んでもらおうとする気持ちが伝わるプロの対応。料理云々の前にこの空間で過ごす時間がとても心地いい。

食事を終わり、店を出るときに川手シェフが挨拶に出てきた。そのときに同行者の女性達が乙女の顔になったのを見逃さなかった。こんなに美味しい料理を作って、こんなにイケメンだったらそりゃ乙女になるよなぁ。笑

長い階段を降りて私達が見えなくなるまで見送りは続いた。「店から長い階段を降りなきゃいけないからメンドクサイ」という負の感情を「長い階段を降りる間ずっと見送ってくれた」という正の気持ちに変えるための接客。

デートに最適。はじめてのデートでも、それなりに深い関係のデートでも。人生は私達が思っている以上に短い。恋に始まりがあるようにもしかしたら終わりがあるかもしれない。でも、恋に落ちるのはとても幸せな事だと思う。

  • フォアグラのキャベツ畑(2012/3)
  • 鳩(2012/3)
  • 鳩のグラタン(2012/3)

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6位

うなぎ亭 友栄 (風祭、入生田 / うなぎ、日本料理、すっぽん)

1回

  • 夜の点数: 4.6

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 4.6
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 昼の点数: 4.6

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 4.6
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥4,000~¥4,999 ¥4,000~¥4,999

2014/06訪問 2014/12/25

桃源郷

2011.02

鰻重を食べるという目的だけではなく日本酒を愉しむという目的もあれば、友栄がさらに輝く。青うなぎの割きたてのきもは数量限定なので、店の予約をしたときに一緒に予約するのがいい。

肝の癖のある濃厚さを甘めのタレと包容力のある朱雀卵の黄身が受け止める。日本酒や焼酎と一緒であればこの絶妙なバランスに気がつくはず。酒を飲むための至高のメニュー。これは必食。

鰻の塩辛も面白い。とにかく辛くショッパイ味わいが日本酒を愉しんでいくうちに不思議と交わってくる。決して素面のときに頼むメニューではないと思うが、大人数の時にみんなで軽くつまむ感じで面白いのでは。

白焼きは山葵との相性がいい。鰻重は若干タレの甘みが強いかなと感じるも最高水準レベル。鰻を食べる店としても、日本酒を愛でる店としても素晴らしい。接客も高く評価できる神奈川が誇る名店。

2010.10

箱根に遊びに行くときには「必ず」寄る鰻屋。

最初は車で東京方面から箱根に向かうときにちょうど便利な場所にあるから訪問した。西湘バイパスの箱根口ICを降りてすぐの場所にある。すぐに大きな看板が見えるからそれほど迷わないと思う。

現在の食べログのレーティングは立地の妙での過大評価と思う向きもあるかもしれない。でも私が感激してやまない友栄が友栄たる所以は主に供する料理と接客において一貫してブレないことである。

個に向き合う接客。

私は今まで流行るが故に接客が雑になり総合的な評価を落としてむしろ没落していった飲食店をいくつも見てきた。驕りや慢心。友栄が素晴らしいのは接客においても雑な要素が無く子供を含めた鰻に興味を持って訪問した全ての客に真っ当に向き合うこと。

完璧な接客というわけではない。でも、給仕をまとめ上げる人物がかなり優秀なことでチームとして機能している。全員で力をあわせて客をもてなそう、そういう気持ちが伝わってくる。

鰻の焼き加減など細かい注文も事前の予約時に受けてくれる。これだけの繁盛店でありながらもひとりひとりの要望に最大限応えようという姿勢。普通はありえないと思う。それは媚びではない。自信があるからこそ。

老若男女のための鰻重。

最初に鰻重を食べたときに他ではあまり味わえないやわらかさ故に「蒸しすぎかな?」と思った。でも次の訪問で全く同じ食感だったときに気がついた。友栄で使っている青うなぎの魅力を最大限引き出すこと、箱根に近い立地から老若男女に愛される全体最適を考えること。このふたつを考慮した鰻であることに。

ブレが無い。何回食べても同じ。料理は機械ではないから当然ズレが生じる可能性はある。でもこれだけの人気がありながらひとつひとつの料理を大事にする姿勢があるからこその一貫性。まずはこの食感を味わった上で自分の好みがあれば伝えればいい。

タレも甘さと濃さが違和感を持たないギリギリの範囲で寸止めしている。鰻を普段食べない子供が食べても鰻を食べつくした食通の親父が食べても満足出来るタレ。これは簡単に出来るものではない。

魅惑的な酒の肴。

酒の肴になる珍味類も豊富。売り切れる可能性があるので予約の際に欲しいものを伝えておくのがいい。割きたてのきもがますはオススメ。山椒をかけて食べると日本酒との相性が最高。鰻の塩辛なんてメニューもある。

桃源郷。

行くときはいつも車で自分が運転しているので友栄で酒を飲んだことはないんだけど、平日の昼間とかに電車で来てゆるゆると酒飲んだら本当に最高だろうな。まさに桃源郷というか。これは近いうちに必ず実行したい。

予約がびっしり詰まっている店だけど、予約の回しをタイトにはしていないので酒をゆるゆると飲む余裕がある。友栄に来たら鰻重だけではなく是非一品料理も味わってほしいと思う。

私はこれからの人生で何回箱根に行くことが出来るだろうか。味だけで判断するならば友栄を上回る店はあると思う。私にとって総合的な要素において友栄を超える鰻屋に出会うことが出来るだろうか。

  • 青うなぎの割きたてのきも
  • 鰻の塩辛
  • 鰻重(1種類のみ)

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7位

鮨 しゅん輔 阿佐ヶ谷 (阿佐ケ谷、南阿佐ケ谷 / 寿司)

1回

  • 夜の点数: 4.6

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス 4.2
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 4.6
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2012/10訪問 2012/12/04

阿佐ヶ谷住人が羨ましくなる江戸前鮨屋

阿佐ヶ谷に移転してから初めての訪問。今まで1回しか訪問していないのも関わらず、予約電話の際に私の事を覚えていた。今までの経験則で言うと、記憶力のいい料理人は概して優れた料理人であることが多い。

以前の庶民的な雰囲気の空間も嫌いではなかった。でも、この劇的な空間の変化は肯定的に受け止めた。高級感を持ちながら過度な内装は無くシンプルに統一感を持って纏め上げられている。

空間が変わっただけではない。難波氏の握る鮨もいろいろと変化していた。正直、全てが自分好みの進化ではなかった。例えば、舎利の握り加減は最近の若手で流行っているフワフワ系。

ちょっとフワフワ過ぎた。必ずしも、江戸前鮨は沈む鮨じゃなくてもいいと私は考える。でも、それはある頂点へ進む過程を切り取ったもの、と考えれば前向きに受け取れたし、若干の調整もしてくれた。

特に穴子と玉は青空とまではいかないにしても、かなりレベルアップした感覚。これはなんばの目玉ともいうべきものか。試行錯誤の成長が垣間見える逸品。特に玉は超絶。

〆は全般的に弱めなのは今までと同様。確認してないけど、仕入先を変えたタネもあるんだろうな。全般的には大きな進化とは言わないまでも、個々のレベル感は上がっている印象を受けた。海苔も替えたのかな。

値段とかスタイルとかで考えると、浦和のよし佳あたりが比較対象になるんだろうけど、似て非なるものというか、比べるまでも無くなんばのほうが満足度は高い。

よし佳がコストの中での妥協を感じるのに対し、なんばはコストの中で最良のものを出すという、江戸前鮨の原点を感じることが出来る。もちろん、タネそのものは頂上店と同じレベルではない。

相変わらず酒の値付けが高くないのも嬉しい。酒も込みでひとり15,000円を切る価格。感覚的には荻窪時代から1,000~2,000円を上乗せする感じか。値上げ分を上回る満足感があった。

酒をしっかり飲んでアンダー15,000円の江戸前鮨屋としては東京では知る限りではベスト。これからの成長が楽しみ。それがもし私の望む方向と違う成長だったとしても、ご主人の志の高さを応援したい店。

※写真撮影不可
※カード不可


++++以下は荻窪時代のレビュー。


荻窪駅北口徒歩5分の江戸前鮨屋。CPが高いと評判の店だったので以前から行きたかった。当日予約で遅い時間の訪問。大将の難波氏は36歳なので鮨さいとうの斎藤さんや青空の高橋さんと比較して1歳下ということになるのかな。

いつものように抜けているものがあるかもしれない。

<つきだし>
水茄子とげそ

<つまみ>
煮蛸
眞子鰈
締鯖
蒸鮑
鮑の肝

穴子

<にぎり>
眞子鰈
縁側

鮪赤身ヅケ ○
鮪中トロ
鮪炙り
石鰈
海松貝
紫雲丹 ○
喉黒
穴子塩 ○
穴子ツメ ○
鮑肝と雲丹のオコゲ
玉 ◎

かんぴょう巻き

瓶ビール1本と日本酒5杯(5合ではない)

で、13,000円。大将曰く「うちはめったに15,000円を超えませんよ」と。ネタはいいネタとそうでないネタに結構差がある感じも、この支払いを考えると荻窪という立地を考えても安いなあと感じる。

つまみはまあまあ。よかったと思うのは締鯖、蒸鮑、穴子あたり。ただ味付けが全般的に濃い感じかなあ。これは好みが分かれると思う。酒を飲む、という視点からしたら悪くないかもしれないけど。

1回転目の客が相当食べたらしく、「今日はあまりネタがありません」と。車海老とか鉄火巻とか食べたかったものが食べられなかったのは残念だけど、これは遅い時間に訪問するリスクだからしょうがない。

にぎりは凡庸なものと魅力的なものがはっきり分かれる感じ。印象に残らずに平均的なネタが続くよりはこれはこれでいいと思う。よかったのは鰹、鮪ヅケ、紫雲丹、穴子、玉あたりかな。

鮪のヅケはちょっと濃いかなあと思うけど、旨みが感じられて好ましい。紫雲丹と穴子は時期がいいということもあるんだろうけど、少なくてもおまかせ1万円未満の店で出てくるレベル感ではない。

紫雲丹は旨みをしっかり感じられて切れ味がいいし、穴子は私の好きなふっくら包み込むタイプ。玉はキッチリ仕事をしているカステラタイプでこれも私の好きなもの。このあたりがこちらの店の売りになるネタなのかな。

舎利は固めの炊き上がりで握り加減も若干固め。塩や酢はあまり主張してこないけど、甘さも感じないのでこれはこれでいい。舎利は癖の無い万人受けするタイプだと思う。私は嫌いではない。

客層が時間帯によって全然違うのが面白い。1回転目は軽い接待や若い層を含むデート需要で、2回転目は近くに住んでいるであろうおひとり様の常連の男性が中心だった。

大将の記憶力がいいんだなあ。常連の客が以前いつに来たかとか何が嫌いかとか普通に覚えてる。料理人は記憶力がかなり大事な要素だと思っているので、そういう意味でも魅力的な大将。

所謂「江戸前鮨屋の大将」というイメージではないけど、私は独特の雰囲気を持ちながらもてなしの心も感じられる大将の所作が結構好きだな。一見にも優しいし、常連も居心地がいい。

個人的には、日本橋橘町都寿司がおまかせ9,000円を11,000円に上げてかなりネタのレベルが上がって評判が高まったように、若干値段を上げてさらに上を目指してほしい感じはする。

ただ、今の価格とのバランスが受けている側面もあるから、そこらへんの判断は難しいのかも。

自分の生活圏から近い場所にあるわけではないので、そんなに頻繁に通うことが出来る店ではないけど、もし自分が荻窪住民だったら月1回くらい通っちゃうだろうな。遠方からでも通う価値のあるCP優れた江戸前鮨の名店。

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8位

マチルダ (初台、参宮橋、幡ケ谷 / ビストロ、ワインバー)

1回

  • 夜の点数: 4.6

    • [ 料理・味 3.8
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.6
    • | CP 3.8
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥4,000~¥4,999 -

2014/09訪問 2014/12/25

愛の才能

2011.11

再訪多数。いま一番訪問頻度が高い店かも。写真を追加。料理メニューは食材の入手状況によって日によって変わる。期間限定のメニューも多いので、食べログに載っている写真はあくまで参考程度に。

予約は1930時までの入店であれば可能。それ以降は不可。それ以降の時間で当日行きたい場合は、新宿とかの近くから「もうすぐ行きたいんだけど、席空いてますか?」と電話で確認するのがいいのでは。

比較的空いている早めの時間の訪問がおススメ。マチルダの魅力をより一層堪能できるのではないかと。ひとりで切り盛りしている店なので、混んでいる時は時間がかかる料理とか頼みにくいしね。

あくまでワインバーなので、ワインを飲みたい人が行くべき店。ワインを輝かせるための素敵な料理の数々。店主のマチルダさんが作り出す空気感が何より魅力な、私にとっては唯一無二の大好きなワインバー。満点。

2011.09

6席のワインバー。店主のマチルダさんは、以前参宮橋駅の近くで洋菓子マチルダという洋菓子店を営んでいた。界隈の人は記憶にあるかもしれない。場所を変えて新たにワインバーを始めたのが去年の9月1日。

こういった女性ひとりでやっているバーには、女性店主の事が好きな男性常連客がいて店内に微妙な空気が漂っている店が多かったりするんだけど、マチルダは店主を中心にしたチーム、そんな空気感がある。

等身大。簡単なようで難しい。必ずしもワインの経験が豊富ではない店主がこの店をワインバーとして魅力的なものにしているのは、自分の戦える範囲で戦うという潔さが心地よく伝わって来るからではないだろうか。

人気の店。先月たまたま行こうとしたら満席で入れなかった。ひとりで全てをこなさないといけないから大変だと思う。でも、客が見える範囲はとても丁寧に掃除をしている。グラスもキチンと磨いたものばかり。で、客に供するときにもう一度キチンとグラスを目視する。ワインの知識以前の、客をもてなすという気持ち。

店主曰く「好みが偏りすぎ」との事だったが、飲んだグラスワインはどれもワインの個性がとても分かりやすいもので、ヤスウマビオワインの方向性としては悪くないなと思った。自由に選んでいる感じがいいのかな。

で、背伸び。等身大での真摯な姿勢の中にある成長しようとする気持ち。空を飛ぶわけではない。地に足が着いた背伸び。ひとりでこれだけの料理を対応するのは大変だと思うけど、徐々にメニューを増やしていると。

ポテサラでいきなり度肝を抜かれた。大量のマヨネーズで誤魔化した巷の凡庸なそれとは違う。マヨネーズを極力押さえてポテトを明確に主役にした上でベーコンでちゃんとアクセントをつける。これはとてもよかった。そもそも、メニュー名がポテトサラダ、ではなくて、ポテサラというのが可愛らしくていい。笑

店主おススメのレバームースも是非頼んで欲しいメニュー。料理はどれもワインバーとしてかなり高水準なもの。軽くつまむ程度の店としても、一軒目としてお腹が膨れるまで食べる店としても使える自由度の高さ。

ブルーチーズのグラタンは私の隣に座っていて楽しく会話させて頂いた女性とシェアして食べたもの。はじめてお会いした方と楽しく会話して、ひとりだと多いというのでふたりで分けて食べる。そんなマチルダの空気感が好き。

この日はある程度長い時間いたので、店主とふたりだけの時間もあったし、客がほぼ満席の時間もあった。変わらずに楽しい時間を過ごした。ひとりでも、ふたりでも、一見でも、常連でも、楽しめる店だと思う。

バーでスマートフォンを黙々といじっていても何も生まれない。勇気を出して、店主や隣のお客さんに話しかけると何かが生まれる。その何かが明日を生きる糧になるのかもしれない。料理、空間、接客、値段が絶妙。

こじんまりした空間でありながら排他性が無い。非常に稀有。これはマチルダさんの才能。愛の才能。その才能がありながら、努力を怠らない。完璧な店ではない。でも、私は最高に好きになっちゃんだよね。

  • チョコブラウニー(ミルクシャーベット付き)
  • ペンネアラビアータ(期間限定)
  • 厚切りベーコンソテー(期間限定)

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9位

ウナ カサ デ グビグビ エルヌビチノ (日ノ出町、桜木町、関内 / ビアバー、立ち飲み)

1回

  • 夜の点数: 4.6

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク 4.6 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥1,000~¥1,999 -

2012/11訪問 2012/02/16

理系の牛魔王

野毛の都橋商店街には素敵な店も多いけれど、独特の雰囲気で一見が入りにくい空気があるのも事実。そんな場所にホッピー仙人と並んで万人におススメできる店がある。もともとホッピー仙人の常連だった方が開いた店。

立ち飲みビアバー。15時から開いていて、そのぶん閉店の時間が早いので注意。スペイン語の意味不明な店名は店主に聞くと意味を教えてくれるらしいけど、聞くのを忘れた。たぶん次も忘れる。通称は「ぬびちの」

漫画『ドラゴンボール』の牛魔王にそっくりな店主は、自身を「ひげアロハと呼んで」と言っていた。店主の人柄の魅力も相まって、店内は排他的な空気が皆無で、一見にも常連にも等しく穏やかで優しい時間が流れる。

酒を文系・理系の括りで強引に分類すると、ビールが文系でワインや日本酒が理系のような気がする。こだわりの方向性で。ビールは最初の一杯で感覚的に楽しむ。ワインは作り手の方向性まで研究する。というような。

巷にあるビアバーの多くも、そういう文系的な思想の延長線上でビールを楽しむのが大前提だったりする。で、実際にビールが好きな人も、ワインや日本酒のマニアほどに強い嗜好性を持っているわけではない場合が多い。

ぬびちのの魅力を一言で表すならば、それは「温度管理の妙」だと思う。それは極めて理系的な。お燗したクラフトビールを飲んだ。同行した友人曰く、缶ビールならぬ燗ビール。寒い日に燗ビールは深く体に染み渡った。

燗ビールの後にきっちりと温度管理されたクラフトビールを飲む至福。日本酒の熱燗と冷やの関係のように、味や香りの広がりの違いが面白い。ビールの種類はそれほど多くは無いが、店主のセレクトで定期的に変わる。

ホッピー仙人ではじめて生ホッピーを飲んだとき、店主のホッピーへの愛が生み出すホッピーの魅力を強く感じた。同じようにuna casa de gb gb El Nubichinomは店主のビールへの思いが感じられるのが嬉しい。

8人程度の客で満席になるであろう店内は狭い。長居するような店ではない。野毛でハシゴするときに必ず候補に入れたい店。否。この店を訪問するために、野毛に行きたい。それくらいの唯一無二の存在感がある。

野毛らしい店でありながら、一見にも優しい。子供の頃、都橋商店街を見て衝撃を受けた。あのときの自分に「20年後はこの界隈で楽しく飲んでるんだよ」って教えてあげたい。笑 また野毛で大好きな店と出会ってしまった。

  • お燗をしたビール

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10位

まにわ (阿佐ケ谷、南阿佐ケ谷 / 日本料理、居酒屋、日本酒バー)

1回

  • 夜の点数: 4.6

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス 4.6
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 4.6
    • | 酒・ドリンク 3.8 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥6,000~¥7,999 -

2012/08訪問 2012/09/05

家庭料理でも割烹料理でもなく間庭料理

私が某店でご機嫌に飲食しているときに、たまたまお客さんとしてまにわの店主である間庭さんが来た。仕事終わりにリラックスしてる風ではなくて真剣に真面目に某店の店主と会話している姿がとても印象的だった。勉強熱心なんだなあと。そのときの出会いが訪問のきっかけ。で、予約しようと思ってビックリ。予約が取れない。特に週末が先まで予約が埋まっていた。カウンター7席という小さな空間ではあるけれど、フレンチやイタリアンとは違う日本酒メインの小料理屋でこの状況は驚くほかない。

おそらく日にちを選ばなければ、近い日でも予約が取れる日があったのだろう。私はちょっと仕事の関係で空いている日が限られたので、予約電話をして実際に訪問するまでに1か月半の間があった。こういう状況では自ずと期待値が高まっていくが、その期待を外すことなく、これだけの人気がある理由も感じ取ることが出来た今回の訪問だった。たまたま早い時間の訪問で、他にお客さんがあまりいない状態で、いろいろと会話出来たのもよかった。最初の時の「真面目で一生懸命」という印象は間違いではなかった。

料理は税込3,150円の「酒肴コース」というのがメイン。ご飯ものは付いていないので、欲しい客は別途注文。何が出てくるかわからないおまかせではなく、黒板に今日のメニューを掲示してある。ちなみにこの日はお盆時期で「築地が休みなのでいつもとちょっと構成が違います」と言っていた。割高になるので実際に頼む人はあまり多くないと思うけれど、単品メニューもある。この箱でひとりで切り盛りしている状況だから、完全におまかせだけにしたくなるところを選択肢として単品を用意するというのは大事な姿勢。

間庭さんはもともとOLをしていたとのことで、ずっとこの業界にいたわけではない。まにわをオープンして6年目とのことだが、ずっと業界にいる人を超えるためにいろいろな努力をされたのだと思う。それを表に出さない雰囲気なのがいい。「3,150円の制約の中で日本酒を楽しむ料理を出す事にこだわる」姿勢がとても心地よい。だから10,000円の割烹料理と比較するのはそもそもナンセンス。家庭料理というのともちょっと違う。間庭料理とでもいうべき酒の肴としての酒肴コースを私は楽しんだ。

基本的にはコストがかかっている素材はあまりない。でも刺身の質は悪くないものだった。手をかけるところの付加価値でコースとしてのトータルの満足度を高めた料理。酒の肴でありつつも、一品一品料理として極めて丁寧に考えられている。研究したり勉強したりという姿勢が自然と感じられる。日本酒と合わせるって前提で、3,000円でこのレベル感のものが食べられる店ってかなり稀有だと思う。日本酒の品揃えは純米メインで純米吟醸もあって小料理屋としては過不足ないもの。

阿佐ヶ谷は杉並区で一番の商店街があるエリアで素晴らしい店が本当に多い。阿佐ヶ谷に住んでいる人はそういう意味で本当に幸せだと思う。カウンター全員が友達って状況でまにわを楽しんだらきっと最高に幸せだろうなあ。いつかやりたいなあ。人生の大きな目標が一つ出来た。笑

  • 【先付】生海苔と枝豆の冷製茶碗蒸し
  • 【先付】若さぎの南蛮漬
  • 先付

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