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海松貝(2012/2)
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皮剥(2012/2)
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皮剥(2012/2)
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白子(2012/2)
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鮟肝(2012/2)
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牡蠣(2012/2)
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太刀魚(2012/2)
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小肌(2012/2)
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鯛(2012/2)
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甘鯛(2012/2)
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春子(2012/2)
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鮪(2012/2)
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〆鯖(2012/2)
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金目鯛(2012/2)
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車海老(2012/2)
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雲丹(2012/2)
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穴子(2012/2)
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玉(2012/2)
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4月の鮪
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4月の紫雲丹
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4月の穴子ツメ
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4月の玉
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7月の小肌
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7月の金目鯛
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7月の車海老
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7月の穴子塩
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10月の小肌
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10月の鯵
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10月の雲丹
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10月の穴子塩
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2012.02
その日降っていた雪は雨に変わりつつあった。震災直後の訪問以来だから約一年ぶり。何度か予約を試みるも、日程が合わずにこのタイミングに。人気の高さは相変わらず。ご主人の接客の気持ちよさも相変わらず。
写真が今回食べたものの全てで、出た順番通りに掲載。唯一、弱点というか、他の江戸前鮨屋と比較して落ちるなあと感じていた玉が大きく変わったのが大きな驚きだった。「半年前に大きく見直しました」とのこと。
青空や鮨なんばの大好きな玉に似ている印象で私の好み。これでおまかせの流れの中で違和感を感じるタネは無くなった。小肌や金目鯛といったような店の魅力を表すタネは今まで通りに安定感がある。
舎利は「沈む鮨」系のもので、これはほぼ完成系なのかな。私はもうちょっといろいろな意味で固いほうが好みなんだけど、これはこれで好きな人は多いとは思う。試行錯誤のなかで、現在の状態に落ち着いた印象。
「美味しい鮨とは何ですか?」という頓珍漢な質問に対して、丁寧に「舎利の違い」と答えてくれた。タネ質は最上級ではないとは思う。でも今までと変わらないように、舎利やタネの熟成へのこだわりはとても真摯なもの。
初めて杉田さんと出会ったとき、例えば、仰木監督がイチローに対して感じたであろう、成長過程におけるある種の狂気のようなものを感じた。今の状態は、よくも悪くもバランス感がある万人受けする方向に進んでいる。
今の状態で果たして満点の好みかと聞かれると難しい部分も正直ある。でも、江戸前鮨が好きになって、いくつかの店を開拓する気持ちにさせてくれたのは都寿司のおかげでもある。そういう意味で変わらずに大好き。
今回も気持ちのよい時間を過ごすことができた。同行者も喜んでくれた。店を出たら雨は上がっていた。否。雨が降っていてもそうでなくても空を見上げる必要なんてなかった。前を向いて歩いていこうと思う。満点。
2011.03
「今回の地震、大丈夫でしたか?」
杉田さんの第一声。まずは客の事を心配するのが杉田さんらしいと思った。当日予約の際に「タネがいつものように集まっていないし、舎利も普段の米と違います。それでもよろしいですか?」との問いがあった。私はそれで構わないと答えた。
計画停電が経済の復興に大きな影を落とす。飲食店の予約キャンセルが相次いでいる。都寿司もご多聞にもれず、地震当日から数日間はキャンセルの嵐だったと聞く。でも、この日は満席だった。いつもの活気があった。
一時的な料理内容なので詳細の言及は避けるが、確かに舎利に大きな違いを感じた。いつもと違う米を最適化するために握り加減も変えていた。正直、私の好みど真ん中ではなかった。でも試行錯誤しているのは伝わってきた。
大変な状況なんだろうと思う。でも、それを表情に出さず目の前にいる客に全力を尽くす。私は杉田さんを励ますつもりで店に来た。でも逆に私が励まされた。ああ、今やるべきことはこういうことなんだなあと。
今手に入るものを使って過去の習慣を捨てて今のために最大限の努力をする。そんな鮨だった。普段のほうがいいのは当たり前である。でも、この前向きな努力が地震を経験した私達が乗り越えるために必要なんだ。
私達の生活は普段とは大きく変わってしまった。電気が使いたいようには使えない。電車も通常ダイヤではない。人によっては住む場所も変らざるを得なかった人もいる。普段通りのパフォーマンスは無理かもしれない。
でも、今目の前にある自分が出来ることをとにかくやり遂げる。もちろん、将来の夢や希望を忘れずに。それが大事なんだと改めて思った。そんな夜だった。
地震を乗り越えた、とはっきり言えるときがいつになるのか正直分からない。でも乗り越えたときに、杉田さんの鮨を食べたいなと強く思った。不完全であるからこその勇気。前に進むしかない。満点。
2010.10
3回目の訪問。4月→7月→10月の流れ。本当は毎月来たい気分なんだけど予定が合わなくてのこのタイミング。2回転目の19時30分に訪問。選べる環境なら1回転目よりも2回転目のほうがゆっくり食べられるからおススメ。最近はさらに予約取りにくくなっている。
詳細内容は1回目、2回目にあるので割愛。つまみも4月の頃と比較してかなりよくなっている印象。+3,000円でつまみも食べられるわけだからにぎりだけというのはこちらの店に関してはもったいないと思う。
NHKで江戸前鮨について語る番組があって、青空や鮨かねさかの大将と一緒に杉田さんも出演していた。そのときに話していた内容が強く納得できる内容だった。
1回目のレビウにあるように、私がこちらの店に衝撃を受けたのは舎利の抜群の相性と小肌なんだけど、杉田さんは「舎利は全体の8割を決める」「小肌が4番打者。4番打者を一番最初に出してこちらの流れに引き込む」と。
決められたコストの中では鮪やら雲丹やらの所謂「分かりやすいけど高額なもの」をメインには出来ない。だからこその江戸前仕事を突き詰めての小肌。私はこちらの店に来るまで小肌というものを誤解していた。
銀座の頂上店に行けば、こちらの店よりも上質な鮨が食べられるのかもしれない。でも支払いはおそらく倍以上になる。この支払いでこの食後感。やっぱり私は他に比較する対象を見つけることが出来ない。
同行者にもとっても喜んで頂いた。江戸前鮨に関わらず全ての飲食店の中で一番好きな店なので喜んでもらえるととても嬉しい。何かいろいろ語ってたら、「これだから鮨オタは駄目なんだ」とか言われたけど。笑
杉田さんに1回目と同じ質問をした。「移転の予定はあるんですか?」と。同じ答えだった。「ありませんと。」それは前回の答えよりもはるかに自信に満ちた答えだった。このスタイルでまだまだ出来ることがいっぱいあると考えているんだと思う。
杉田さんが街場寿司出身であることを私はネガティブには捉えない。店を好きになることを人を好きになることと似ていると考えてみると分かりやすい。私は誰かのことを好きになるときに親がどうかということは考えたりしない。それと同じこと。杉田さんの鮨に対してどう感じるのかという事にしか答えは存在しない。
大好きな作家である太宰治の『晩年』の冒頭からの引用。ちなみに彼がこの作品を書いたのは27歳のとき。
「死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目が織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った」
わたしはこの鮨があれば生きていける。生きる理由のひとつに成り得る至高の江戸前鮨。5年後、10年後にどんな成長しているんだろうか。杉田さんの握る鮨も、何より私自身も。満点。
2010.07
再訪。写真を追加。当日予約で何回か振られていて満を持しての訪問。杉田さんは私が前回4月に訪問したことや何を食べたかを全て覚えていた。で、今回の結論から言うと前回より満足度は高かった。初訪問で満点を付けた自分の判断は間違えていなかった。自信が確信に変わる瞬間。
今回特によかったのはつまみの充実振り。前回は正直にぎりは最高だったけど、つまみは弱いなあと感じていたので、この全体を通してのバランスのよさは嬉しい誤算というか。こんな短期間でさらに一段上に行くものなのか。
鮨さいとうって何がすごいのかというと、おまかせをコースとして捉えたときの全体の流れの素晴らしさが他と比較して抜きん出ているってことなんだけど、それに近い水準を今回のおまかせから感じた。個々のネタでは鮨さいとうに勝ってるものもいくつかあるし。値段は鮨さいとうの半値に近い水準なのにね。
今回食べたもの一覧。何か抜けてるかもしれない。
<つき出し>
-なすのおひたし
<つまみ>
眞子鰈
蒸し鮑
鳥貝 ◎
山葵鱈子
鮟鱇肝 ○
帆立磯辺焼き
ねぎま焼き
<にぎり>
小肌
鯛 ○
春子 ◎
鰹 ○
鮪中トロ
鯵 ○
金目鯛 ◎
小柱軍艦
雲丹
穴子塩 ◎
玉
お椀
<酒>
生ビール2杯(ドイツビール)
黒龍3合
で、2万円を余裕で切る価格。やっぱり自腹で江戸前鮨を食べるという基準でこちらの店に敵う店を私は知らない。接待を受けるなら銀座の鮨屋で華やかな空間で食べればいいんだろうけど、こちらの店は支払いに対する納得度が抜群。この食後感でこの値段っていうのが素直に嬉しい。
つまみはどれもよかった。ハイライトは鳥貝。時期ズレだけど、生臭さを排除して甘さを際立たせたものでかなり秀逸。新ばししみづで味わった最高水準の鳥貝にかなり近いもの。これは驚いた。
にぎりは相変わらずの大安定。小柱軍艦は海苔が青空ほど美味しくないこともあって、「まあ、こんあものかなあ」という感じだけど、後は全て納得の水準。前回感動した小肌は時期ズレもあって前回ほどの感動は無かったけど、おぼろを使って必死に抵抗していた仕事振りは相変わらずさすがというか。
にぎりで特によかったのは前回同様に鯵、金目鯛あたりもそうなんだけど、それ以外では穴子。時期がいいというのもあるのかな。4月の写真と比較してもらえば何となく違いが分かるかな。青空のようにやわらかくて舎利を包み込むタイプ。秀逸。
舎利は塩の使い方とかを若干微調整している感じでポジティブな試行錯誤は続いている。
今回、遅い時間に伺ったので杉田さんといろいろお話をする時間があった。向上心があって仕事に対してまっすぐな姿勢は本当に人間的に尊敬出来る。杉田さんの下で働く弟子も大きく育っていくのでは。
同じ時間帯に食べていた感じのよい美男美女のカップルに話しかけられていろいろ話していたんだけど、こちらの店には徒歩で来て、江戸前鮨屋はここしか知りませんと。羨ましいなあ。
このおふたりのように近隣住民の自腹でいいもの食べたいってときの筆頭の候補がこちらの店なんだろうな。銀座の鮨屋とかとは明らかに客層も違って、私はこういう雰囲気も嫌いではない。
近くにマンションを買おうか真剣に考えた夜。私が人生で出会った江戸前鮨屋で一番好きな店。これからの成長も本当に楽しみ。満点。
2010.04
馬喰横山駅から歩くのが一番近い。東日本橋駅からも歩ける。透明のガラスケースからも感じられる街場の寿司屋感。ハレの日に使う店ではないのかもしれない。寿司ネタも銀座の頂上店と比較すると負けるのかもしれない。
でも、出会ってしまった。真摯な江戸前仕事。舎利の抜群の相性。もてなしの心の接客。極めて真っ当なお値段。私が寿司屋に求めるほぼ全ての要素を兼ね備えた奇蹟の寿司屋に。
************************
8,000円のにぎりおまかせと11,000円のつまみからのおまかせの2種。当然のように11,000円を選ぶ。もっと食べたような気もするので何か抜けているのかもしれない。
<つきだし>
-空豆
<つまみ>
眞子鰈
細魚
白魚酒蒸
コノワタの茶碗蒸 ◎
鰆 ○
<つまみ追加>
カラスミ
鮟鱇肝 ◎
<にぎり>
小肌 ◎
鯛 ○
春子昆布〆 ◎
鮪ヅケ ○
鮪中トロ ○
鯵 ○
鰆 ○
平貝
車海老
紫雲丹 ○
穴子ツメ
お椀
<酒>
生ビール1杯(ドイツビール)
黒龍5合
で、2万円を切る支払い。追加もしたし酒も普段よりたくさん飲んでこの支払いなので、これからもこのラインで収まるという安心感。鮨さいとうで3万円、青空で4万円払った人間としてはこのレベルの寿司がこの値段で食べられることが嬉しい誤算。
酒の値付けは高くない。品揃えもまあまあ。日本酒はもうちょっと幅広い価格帯のものがあるといいかなあという印象。
つまみ。
つまみはちょっと弱い部分もある。細魚は青空のほうに味付けで軍配が上がるし、カラスミの酒の肴感でも寿々に勝てない。ただ、コノワタの茶碗蒸は抜群だったなー。コノワタの強い風味と茶碗蒸しの包容力のある優しさが強烈にマリアージュして酒の肴として完璧だった。
にぎり。
最初に食べた小肌で完全にノックアウトされた。人生最高の小肌。ネタが最高なのではない。江戸前仕事を施された小肌として最高。塩の効いた舎利と優しいけれど持続する〆具合のバランスが素晴らしい。
舎利の相性が私の人生で一番。オーダーメイドで作った服のように完璧。大きすぎず小さすぎずのサイズ、舎利自体は固めで握り加減も固すぎず柔らかすぎずで口に入れた瞬間にネタと一体感を持って口の中で広がる。温度も米の銘柄も全部が好み。塩と酢もキチンと主張していて且つ強すぎない。
至高の江戸前仕事。
この立地で最上級のネタを使って最上級の値段で、というのは難しいんだと思う。11,000円のおまかせという制限の中での最上級のネタ。それは妥協、ではない。むしろ至高の江戸前仕事が際立つ形になっている。
素材と真摯に向き合う姿勢。これは美味しいとかの次元ではない。心を揺さぶられる。心意気に対して。
鮪の熟成感のご機嫌さは鮨さいとうに匹敵するもの。春子昆布〆も絶妙な〆具合。衝撃。こんなに素晴らしい寿司職人が馬喰横山にいるんだ。
杉田さんは鮨さいとうの斎藤さんとは一学年下、青空の高橋さんはと同じ年齢の方。接客は極めて誠実で丁寧。いい意味で寿司職人っぽくないというか。給仕や弟子への指示出しも見事。接客面でも不満は一切無し。
私は杉田さんに移転の可能性を聞いた。この場所でこのスタイルで続けて欲しいとの思いからの質問。最初はこだわりがあってこの場所で始めたわけではないけど、今はこの場所が好きと言っていた。
地元から愛される店。でも、地元だけに独占させられない名店。この界隈に住んでいる人が羨ましい。
満点。もちろん完璧の店ではない。でも修行先を超える努力は並大抵のものではない。今の姿勢があれば、この店はさらに成長していくはず。このお店の寿司を食べるために、これからも仕事を頑張ろう。