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2位
1回
2015/09訪問 2015/09/17
【再訪 2015年9月】
大将の引退がいよいよ来年3月に迫りましたが、残念ながら既に予約はほぼ埋まっているそうです。
なので事実上今回が最後のかぶとでの食べおさめ。
今回も天然ものをお願いしていたので静岡(おそらく浜名湖)産のものをいただきました。
蒲焼きだけは何故か養殖と天然の食べ比べのような形で提供してもらえましたが、天然ものを食べているのに今更養殖ものもどうかと思いましたが、ひょっとしたら養殖ものが一切れ余っただけかも。
最後のかぶとということで、酒やそれ以外のおつまみも幾つかいただいた上でそういったこともあったせいか、今回は初の25,000円超え。
天然ものとはいえ、静岡産でこのお値段もどうかなぁとは思いつつ、まぁ最後なのでね。
大将の引退後は弟子の藤森さんとその奥さんが引き継いでいくこととなります。
大変だとは思いますが、頑張っていただきたいものです。
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【再訪 2015年5月】
今回訪問させてもらったら、藤森さんの奥さんという方が手伝いをされていました。
平日の夕方でしたので、週末だけというのではなく多分今後はずっとおられるのでしょう。
楽な仕事ではないと思いますが、頑張っていただきたいものです。
今回も養殖もので串、白焼き、蒲焼きと一通りいただきました。
白焼きについては今迄はこちらが最高と思っていましたが、後日別のお店でいただいた琵琶湖産と宍道湖産の天然ものの皮目をカリッとなるくらいに焼きながらも身の旨さを損ねていない白焼きがかなりツボに入りまして、私の中ではやや評価は変わりつつあります。
もちろん『鰻』を専門とするカテゴリーにおいては他の追随を許していないとは思いますし、鰻好きの私にとってはそういった意味でも非常に貴重なお店であることには変わりはないのですが、白焼きなどの個々のジャンルにおいては必ずしも最上とも言えなくなってきたというのが偽らざる感想です。
もちろん大将にはそんなこと言えませんけど^^;
ちなみに次回は秋に天然ものを予約していますが、天然ものが出回らなくなる時期はしばらく訪問を差し控えようかなぁと思っています。
こちらでは一度天然ものもいただいていますし、敢えて養殖ものをいただくために訪問するのも何なので。
大将の引退前にはどこかのタイミングでまた一度訪問したいと思いますが、何れにしても次の訪問でこちらのお店は一旦一区切り付けさせていただこうと思います。
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【再訪 2015年1月】
前回までの予約を取る際の電話があまりに繋がらず非常に苦労していたので、今回は前回の訪問時に既に予約を入れていました。
どんな人気店でもこれが一番確実です。
1月は天然ものがほとんど出回らないので再び養殖ものでしたが、串と白焼きの質の高さに至っては同じ鰻屋というジャンルでは替わるお店は無いと思っています。
実際白焼きなどはここで口にするまでは正直こういうもんだろうと思っていたんですが、ここで初めて白焼きをいただいた際には他のお店と明らかに違う味わいに驚いたものです。
大将も長年の経験から「これがベスト」と思ったものを提供されているので、自分が認めないものに対しては強い口調で否定しますし、客に対してもその価値観に対して同意を求めてくる姿勢はあります。
味以前にその方針が合わないという方がいらっしゃるのは理解していますし、それならば仕方がないとも思います。
ただもしその雰囲気を怖れて訪問していないだけならば非常にもったい無い限り。
女将さんも弟子の藤森さんも非常に親切な方ですし、大将も言われているほど非常識な人ではありません。
ただ言っていることを否定されれば烈火のごとく怒るぐらいで(笑)。
そのご主人も「ソロモン流」で語っていた通り後2年で引退(放送当時)するので、このうなぎを味わえるのもあと1年半程度。
引退後は弟子の藤森さんがお店を継がれるようですが、せっかくだし名物の大将が焼くうなぎを味わってみても良いかなと。
一番のお薦めは10〜11月の良質な天然ものが出回る時期ですが、常連さんにでも連れて行ってもらえない限りは天然ものを口にできるのは2回目の訪問時から。
それまでに養殖ものを一度食べてみて、合うようであれば天然ものの時期に再度訪問されてみられるのが良いでしょう。
養殖ものならばお酒を2杯程度でおつまみ一品、串一通り、白焼き、蒲焼き、御飯などで一人あたり1万円強程度、天然ものであれば2万円程度となります。
予約は日によっても違いますが、週末は2ヶ月程度先まで埋まっているようですので早めのご予約がお薦めです。
もっとも一度訪問して気に入ったのならば、帰るまでに次の予約を抑えておかれるのがベストではありますが。
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【再訪 2014年10月】
今回の訪問では事前に天然うなぎをお願いしていました。
ちなみに天然ものは初訪問の方には提供されません。
一回目の訪問で養殖ものを食べた上でないと天然ものは出してくれないんです。
長いことかけ続けてようやくつながった電話で、天然ものをお願いしますと伝えてありました。
単に天然とだけ伝えてあったので具体的にどういう構成になるのかは不明で、結局はおまかせという感じ。
【串ひととおり+一部天然うなぎの串】
前回もいただいた串に加えて、静岡産の天然うなぎの串が加わりました。
ちなみに前回出してもらった生のうなぎの心臓はなし。
天然ものはジストマという菌があるので、生で心臓をいただくことが出来ないようです。
欲しそうな顔をしていたのか、大将は「何でもほしがっちゃいけねぇよ」なんて言われちゃいました(笑)。
きも焼きはひょっとすると天然ものかもしれませんが、具体的に天然と言われて提供されたのはえり焼きとひれ焼きの2種類だけでした。
捌く前に見せてもらった静岡産の天然うなぎはかなりの太さで、色も野生らしいもの。
かぶとと言うと、宍道湖産の天然うなぎというイメージでしたが、この日の入荷は思うようにいかなかったのかもしれません。
それでも良質な天然うなぎの串はやっぱり風味からして全く違います。
というより、香りにこそ大きな違いが出るのかもしれません。
野趣あふれるような香りは養殖では絶対に感じられないものです。
えり焼きは、野生であるためか骨が割りとしっかりしている印象です。
人によっては好みわかれるかもしれませんが、私はこういうものをバリバリ食べることに全く抵抗を感じませんし、むしろこれが天然の良さだと思います。
天然もののうなぎはジストマという菌があるそうで、前回養殖ものでは生でもらえた心臓もなく、串などもそのためか強めの火入れのようにも感じました。
本来は尻尾の串は天然ものを注文した人には無いようですが、「しょうがねぇ、あげるよ」なんて言いながらくれました(笑)。
毒舌で知られる大将ですが、最高のものを提供しているという自負もあるのか、負けるわけにいかないという気持ちで必死に気を張っているんだと思ってます。
テレビ東京のソロモン流に出演されたのも見ていましたが、普段は至って常識のある人なんですよ。
【御新香】
前回の訪問では奴をいただいていたので、今回は御新香を。
テレビ東京の番組でもかなりこだわった感じの神楽坂の八百屋さんのものを使っているとあったのですが、野菜に詳しくないながらもそのみずみずしさには魅力を感じました。
串が出てくるまでのつなぎには最高かも。
【静岡産天然うなぎの白焼き】
蒲焼きとあわせて天然ものを一匹使ってくれるということで、白焼きは尻尾側の半身を使用。
前回は養殖ものでもかなり満足できた品ですが、さすがに太った天然ものは圧巻の厚み。
箸を入れても皮が思ったよりしっかりしていて切るのに苦労するほど。
大将の「塩がむしろ邪魔になるかもしれない」という言葉通り、風味がよいので過度に塩を使うと塩の味が目立ってしまいます。
対馬の藻塩と外国産の岩塩が両端に添えられていますが、ほんの少しつけるだけで充分ですね。
やっぱり天然ものは蒲焼よりも白焼きの方が風味が生きて美味しいです。
【静岡産天然うなぎの蒲焼き】
こちらは頭寄りの半身を使用。
以前も食べていましたが、サラッとしたタレでうなぎの風味をちゃんと生かしています。
ご飯とともに食べると相性も最高。
残ったタレを最後のうなぎの欠片でかき集めてご飯の上にかけて食べると、うなぎの脂の旨味の出たタレと相俟ってテンション上がります。
【感想】
美味しいのは当たり前、なんて大将はいうんですけど、それを継続するのも大変なことです。
前出のテレビ東京の番組内では、あと2年で引退、弟子の藤森さんにお店を譲る、なんてことですが、体力的にも大変なんでしょう。
現役中にはあと何度来られるのか分かりませんが、予約の電話もつながりづらいので帰りがけに次の予約をお願いして失礼しました。
次回の訪問予定は真冬の時期なので天然は出せないようですが、こちらは養殖でも楽しむ価値のあるお店です。
今回は体調が良くなかったのか、ビールも前に飲んだときほど美味しく感じなかったんですが、うなぎはやっぱり良かったです。
開店前から準備に手間取っていたようで、ややバタバタしていていましたが、大きな影響もなく食事をすることができました。
次回もよろしくお願いします。
ごちそうさまでした。
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【初訪 2014年4月】
かねてから行って見たいと思っていたお店でした。
一ヶ月以上前から予約を入れての訪問です。
まずは生ビールから。
何の変哲もない生ビールだと思っていたので写真も撮っていなかったんですが、やけに旨いんです。
しばらく酒は控えてはいたんですが、それを差し引いても明らかに旨い。
実際に大将は、うちのビールは旨いよ、だって俺がビール嫌いなんだから!って(笑)。
まぁそれだけ美味しいビールだから置いてるってことなんでしょうけど、この言い回しは独特ですね。
串の一通りが出来るまで奴を注文。
これが驚くことに塩とともに出てきました。
最初はお勧めに従って何もつけずにそのままいただきますが、大豆の濃厚な味わいを感じるものでとても美味しい。
澄んだ清廉な味でとても美味しいですが、塩を軽くかけながらいただくと味に奥行きが出てとても美味しく食べられました。
多分こういう食べ方が出来るのは本当の旨さを持ったごく少数の豆腐だけなんでしょうけど、まさか鰻屋さんでこういう豆腐がいただけるとは思っていませんでした。
串の一通りは焼きあがったものから都度提供してくれます。
最初に出てきたのはカマの部分を関東風に蒸した串と同じ部位を直に焼いて塩で味付けしたもの。
いわゆるエリ焼きかな。
蒸したものも美味しいんですが、直に焼いたものは香ばしくて蒸したものよりもうなぎの旨味が更に生きているように思いました。
次に出てきた二本セットは名前をよく聞いてなかったんですが、写真をみるとヒレ焼きですね。
これはまた焼き具合が絶妙で実に旨いヒレ焼きです。
しっかり焼いているのに中はとてもジューシー。
素材も良いものなんでしょうけど、大将の焼きの技術も一級品です。
串の中でも特に感動したものの一つです。
そして鰻の身、しっぽ、あばらの肉を集めたバラ焼きと出てきますが、何れも手抜きのない素晴らしいクオリティ。
特にしっぽの串なんて他で見たことが無いんですが、大将いわく鰻はしっぽが美味しいんだそう。
実は私も腹に近い部分よりもしっぽに近い部分の方が旨いと思っていたので大将のご意見には大いに賛同しました。
実際旨味の凝縮したしっぽの串は実に美味しいものでした。
続いてはレバーと肝の串。
甘みのある肝は食べていて楽しくなります。
肝についてもいろいろと教えてくれましたが、肝は元々は苦いものでは無いそうで肝の横についている胆嚢が破れると苦味を感じるんだそうです。
串の合間に出てきた心臓は噛まずに飲み物と一緒に飲んでくれと言われたので味はよく分かりませんが、心臓だけになっても脈打っていました。
心臓だけではなくて頭だけになってものたうちまわっていたり、骨を取り除いたその骨が動き回っていたのは初めて見ました。
もちろん生きた鰻を目の前で捌いて提供するので、何も隠すことなく手の内をさらけ出しているわけで、ある意味客に対してとても誠実な接客だと思います。
生きた鰻を目の前で捌くところから目にしたのは初めてだったのでとても貴重な経験をさせてもらいました。
初めての客にお勧めしているという白焼きと蒲焼きの上が相次いで焼きあがりました。
上よりも上のメニューもあるんですが単に量の違いだそうです。
ちなみにこちらは白焼きも蒲焼きも捌いた鰻を蒸すことなく、蒲焼きについては何度もタレに付けながら焼き上げる独特のスタイルです。
開き方は背開きだったような記憶もあるんですが、定かではありません。
でも写真を見ると明らかに関東式に背開きのようですね。
焼いていくうちに最初は薄かった身がみるみるふっくら厚みを増していきます。
前にもこういう厚みのある身は見たことがありましたが、実際焼くのを見たのは初めてだったので単に太った身を使っているものだとばかり思っていました。
大将が言うには、これは本当に良い鰻でないと焼いて厚みは出ないそうです。
白焼きは驚くことにまたしても塩。
白焼きでは定番の山葵醤油ではないんです。
でも大将いわく、本当に旨い白焼きは塩でこそ食べるべきだそうです。
実は私も白焼きを心底美味しいと思って食べたことはあまり無くて、まぁこういうものなんだろうな、と思って食べていたのが正直なところ。
何かそれを指摘されたような気がしてちょっとドキッとしました。
まずは何もつけずにそのままいただきますが、思ったよりもふっくらしていて鰻の旨さが生きている感じがします。
塩で食べてみると脂の旨味だったり鰻の身の旨味だったりというものが口いっぱいに広がってこれまで食べたことの無いような実に美味しい白焼きです。
大将がマズイ食べ方と比べてみないと分かんないからと言うので(笑)、醤油で食べてみると全く違う。
塩で感じた脂の旨味や鰻そのものの旨味を醤油だと全くと言っていい程感じないんです。
あまりの違いに驚いてしまいました。
そして蒲焼き。
ご飯も一緒に食べてくれと言うことでこれもお願いしました。
タレが見た感じサラサラしています。
これも大将が言うには鰻の旨味を消しちゃうようなタレじゃないそうで鰻本来の味が生かされるタレだそうです。
やや弾力を感じる身を割いていただくと、これが実に美味しい。
確かに鰻の旨さが充分に生きていて、タレもしっかりした味ながら決して鰻の旨さを消してないんです。
今迄旨いと思っていた鰻よりも更に上のレベルにある蒲焼きです。
最初の半身は山椒をかけずにそのまま、大将のお勧めの通りあとの半身は山椒をかけていただきましたが、山椒も実に鮮やかな味わいで鰻の旨味に花を添えていました。
更にはご飯がこれまでにない程の絶品。
どうもブランドの銘柄でははいようですが、硬めに炊きあげられたご飯は粒がひとつひとつ立っていてまさに芸術品のような出来栄え。
もちろん蒲焼きを載せて食べても美味しいんですが、これは一度何も合わせることなくご飯だけを味わってみることをお勧めします。
途中で注文したどぶろくは山形のわたぼうしという銘柄でしたが、やや酸味があり仄かに炭酸のような弾ける舌触りがあるのはなかなかお見事。
どぶろくは個人的に佐久の十二六が好きなんですが、これはこれでとても良い酒でした。
とまぁ最初の生ビールに始まって最後のご飯に至るまで感動させられっぱなしだったんですが、ここはこれまでの鰻屋さんとは明らかに違う段階にあると実感しました。
あくまで個人的な感想ですが、他の鰻屋さんでは絶対に埋め難いであろう明確な差がこの店にはあるように思います。
それは生ビールからご飯に至るまでの料理のこだわりもさることながら、大将の良いものを追求しそれを客に伝えようという思いが半端なく強いものだと感じたからです。
これまで訪問した鰻屋さんでは生きた鰻を客の目の前で捌いて客に説明しながら料理するなんてまずありませんでした。
これだけ手の内をさらけ出して尚且つ毒も吐きながら仕事をするなんていうのは、同業の人が見ればすぐにはったりかどうかが分かっちゃうわけで、そう考えると余程誠実に仕事に向き合っていないと出来ないことです。
実際大将の説明を聞いていると、本当にこの人はよく勉強していていろんなものを集めて試していると気づきます。
確かに大将は噂に違わぬ毒舌ではありますが、それはあくまで真摯に仕事に向き合っているのを大将独特のユーモアで客に説明しているだけ。
それに気づかずして単に毒舌ばかりに目が行ってしまっては大将の本当の凄さを見逃してしまうかもしれません。
そういう意味では私は大将のお考えはとても好きですし、とても勉強になりますね。
大将の気骨ある接客と料理、堪能させていただきました。
是非今後もお世話になりたいお店です。
ごちそうさまでした。
3位
1回
2014/10訪問 2014/10/27
フレンチらしからぬ店名、『北島亭』。
黄色いオーニングの古びれ具合もフレンチらしからぬ雰囲気を醸し出しています。
オーニングをくぐっても直ぐに店の出入り口があるわけでなく、地下に延びる階段脇をすり抜けた奥がこの店の入り口。
普段はあまり訪問の機会がないフレンチ。
ポツポツとフレンチを訪問するに従って、フレンチの魅力に少しずつ目覚めつつあるような気もします。
いつも手配してくれるマイレビュアー様には感謝しないといけません。
ちなみに今回は一人12,000円のコースとスペシャリテを予約いただきました。
年季の入った建物の奥に進むと、そこにはまるで洋食屋かと思うような店内。
飾り気のない椅子やテーブル、部屋の片隅に積まれた食器類が並んでいます。
ホールスタッフは若いながらにこやかに説明してくれます。
当然ドレスコードなどあるはずもなく、金額の制約はあるにせよ万人が分け隔てなくフレンチを楽しめるわけです。
こういう形式に囚われないところにシェフの実(じつ)をとる賢明さを見る気がします。
北島シェフを支えるのはスーシェフの大石さん。
主にお客さんの前に出て来られるのは大石さんですが、若くて快活、気取らず豪快。
壮年にさしかかった北島シェフを支えるにはもってこいの方かもしれません。
【おまかせワイン】
名称はうろ覚えですが、ワインをお店にお任せして選択してくれるシステムのようです。
詳しくないところなのでこういうシステムはありがたい。
スパークリングに始まり、白、赤と料理にあわせて提供してくれました。
【ツブ貝のマリネ】
最初はツブ貝から。
素材を大きくいじった感じはしない料理ですが、逆に質の良さを生かした料理ということでしょう。
シンプルながら貝の風味が生きていて美味しいです。
【マッシュルームのポタージュ】
マッシュルームの風味が素晴らしく映える一品。
マッシュルームはあの形と食感あってこそと思っていましたが、スープになってキノコ特有の癖も抑えられて更に良さが増幅しているように思います。
【生うにのコンソメゼリー カリフラワーソース】(スペシャリテ)
長年こちらのスペシャリテとして多くの人に食されてきたメニューのようです。
縁はカリフラワーのソースを配しているようで、見た目だけでなく風味にも彩が添えられて、テンションが上がります。
生うには素材を大きく変えることなく風味を活かしていて、それをコンソメゼリーが下支えしている印象。
ゼリーもトロトロという表現の方が適切なくらい柔らかいので、過度な主張がなく文字通りウニの引き立て役ですね。
ウニ自体のクオリティは良質な寿司屋などで使われるものほどではないものの、素材を単体で使うことの少ないフレンチにあっては他の素材との相性もあるのでしょう。
カリフラワーソースがあることで風味に華やかさが加わるような気がして、フレンチらしく単調にならない工夫が施されているように思います。
【牡蠣のからすみ添え】
牡蠣がとてもクリーミー。
軽くて爽やかなソースが牡蠣の風味を引き立てます。
旬に入り始めた牡蠣の濃厚な旨味が十二分に活きています。
これに贅沢にも自家製のからすみが加わっていますが、このコントラストは見事。
【セップ茸のボルドー風ソテー】
フレンチに詳しくない私は個人的には初めて聞くキノコでしたが、知識豊富なマイレビュアーさまからポルチーニのことと教えていただきました。
イタリア料理ではたまに見かけるものですが、フランス料理だと全く違う名前になるんですね。
勉強になりました。
食感としてはかなり肉厚な感じ。
言われなければキノコだと気づかないかもしれません。
ボルドー風というところからして赤ワインなどでソテーされているのかと思われますが、この風味も相俟ってまるで肉でも食べているかのような満足感。
同時にサーブされたフォアグラのポワレも素晴らしい料理ですが、それと見た目も変わらずまるで同等の品と思えるくらいの味わいでした。
【フォアグラのポワレ とうもろこしのガレット トリュフ添え】
フォアグラの下にはとうもろこしのガレットが敷かれています。
この料理はもちろんフォアグラがメインではあるのでしょうけど、年齢的なものなのか個人的にはガレットがツボ。
とうもろこしがたっぷり入ったガレットは柔らかくてとても美味しい。
【マナガツオ】
皮目がパリッと焼かれて出てきました。
こちらのお店に訪問させていただいたのに合わせて、いろいろとネットでお店のことを調べていると、こちらではなんとオーブンはかなり昔に撤去されているそうで、ほぼ全ての品をフライパンやサラマンダーなどで調理されるらしい。
このマナガツオがどう調理されたのかはフレンチに詳しくない私では推測もつきませんが、ところどころにクミンをまとっていて風味も秀逸。
周囲はパリッとしながら身もふっくらした見事な焼き具合であったことは言うまでもありません。
付け合せのアスパラもあれだけ太いのに食感のちゃんと楽しめる柔らかさ。
万願寺とうがらしもフレッシュな風味の残ったもので、つけ合わせも手を抜いていません。
【イチボ肉のステーキ】
見るからにボテッとした肉の感じが魅力的なイチボ肉。
サシも見事で相当柔らかい肉であることは容易に想像がつきます。
ナイフを入れると手に感じる感触だけでもう既に『美味しい!』と感じてしまうような生々しい肉質。
口に頬張ると柔らかい赤身部分とサラッと溶けていく脂部分が感動的な美味しさ。
脂も軽いので見た目ほどに重く感じません。
肉を食べてきた歴史のせいか、つくづく肉の扱いにかけてはフレンチの奥の深さを思い知らされます。
【子羊の岩塩包み焼き】(スペシャリテ)
サーブされる前に、網脂で覆ってクレープ生地から取り出すところを持ってきてくれました。
これもまたレアのように見えますが、中までしっかり温かい。
イチボ肉とは違って脂身も少ないですが、やはりラムとあってとても柔らかい。
絶妙な柔らかさと、じわっと染み出す旨味のおかげで、口に入れるほどに食が進みます。
【ラムの香草焼き】
アバラの部分であるのか、脂の多い骨付きの部位。
香草は何が使ってあるのかよくわかりませんが、量もあるのに適度な風味で決してうるさくありません。
ナイフとフォークでは食べにくいので手づかみで食べます。
全く臭みを感じないラムの脂は、香草のおかげもあってか全く重く感じません。
コースのピークをやや過ぎて満腹になり始めているにも関わらず、骨についた脂までこそげ取りながらあっさり完食。
【飲み物】
恐らくコースの一環かと思いますが、各自飲みものを選択できます。
今回は紅茶を選びました。
【スイーツ各種】
最初にスイカがでてきました。
これはコースの一環かと思いますが、ここであっさりした果物は嬉しい。
6種類あるスイーツメニューから5種類選択してシェアすることになりました。
・クレームキャラメル
オーソドックスだけど、これが一番好み。
・チョコレートのフランボワーズ入りタルト
ほぼホールの1/4で出てきました(笑)。
この心意気が嬉しい。
濃厚なチョコレートとフランボワーズの酸味の組み合わせが実に大胆で豪快。
・フランス産栗のモンブラン
これも見た目豪快な一品。
スイーツに至っては特にそうですが、繊細さはあまり感じませんね(笑)。
それだけに味と量で勝負というところに潔さを感じます。
・紅茶のブラマンジェ
写真を撮り忘れたようです。
ミルクティの味わいが見事なブラマンジェでした。
・クレームブリュレ
これはどのお店でも大差ないものですが、美味しいブリュレでした。
そしてプチフール。
これはホールスタッフも出勤してから手伝って作るものだそうですが、3人分でこの量。
もうさすがにこの時点で全員満腹なので、少しいただいて後はお持ち帰りにしていただきました。
持ち帰っても翌朝はさすがに食べられないだろうな、と思ってましたが、食べ始めたら止まることなく完食。
朝から豪華で量も充分な食事になりました。
そう考えると、今回の食事は2食分ですね(笑)。
そして帰りがけにみかんを一つずつ。
大石シェフ曰く、「北島亭と言えばコレ」なんて言って渡してくれましたが、こういう追い討ちは嬉しいものです。
【全体を通して】
一品一品のポーションがものすごいボリュームなので、後で写真を見直したら意外と品数食べてないな、というのが正直なところ。
料金構成はコース(12,000円)+ワイン(6,000円)+消費税、サービス料で一人当たり21,000円ほどですが、この内容にしてこの値段は個人的には安いと感じました。
と言うより、終始コストを感じさせないような満足のいく内容であったというのが正しいのかもしれません。
全体のポーションも最後のプチフールに至るまでかなりの量ですが、まるで『満足させるまで帰さん!』というくらい気迫を感じるものでした(笑)。
それだけに中途半端な気持ちで行ってしまうとこのお店の良さを十二分に理解できないまま終わってしまうだろうな、と思うお店でもあり、本当にこちらの真髄を堪能されたいと思って訪問される方は是非お腹を空かせて『満足するまで帰らん!』という気迫でもって、シェフと真剣勝負をするつもりでの訪問をお薦めしたいと思います。
味にしても良い素材にこだわり、必要以上に手を加えない。
味付けもしっかりしているのに決してしょっぱいわけではなく、料理を力強く支える塩加減。
格式にこだわるような難解なフレンチが多い中、どれも明快かつ小細工を感じない力強い料理の数々。
こういう実を追求する硬骨なフレンチに出会えたのは嬉しい限りです。
決して繊細ではありませんが、それはお店によっても目指すところが違うだけで、こちらは目指したい方向で一生懸命にそれを極めようとされておられるだけに過ぎませんから、人による好みの違いはあれどそれをとやかく言ってはいけませんね。
今回は期待を遥かに上回る食事となりました。
加えてフレンチとは薄味で難解なもの、という否定的な先入観のあった私に対して、フレンチに対する見方を大きく覆してくれるお店であったと思います。
通えば通うほどにシェフやホールスタッフとも息の合った楽しい食事ができそうですね。
また機会を見つけて訪問してみたいと思います。
ごちそうさまでした。
またご一緒させていただきました皆さん、ありがとうございました。
4位
1回
2014/05訪問 2014/05/13
【再訪】2014年5月
昨年夏にも訪問していたのですが、その際に注文した肉ぶっかけの肉が白い脂にまみれていました。
うどんが箸にも棒にも掛からないならともかく、うどんが素晴らしかっただけにこのアンバランスが何かの間違いだろうと思っていつか再訪を狙っていたお店です。
マイレビュアーの食道者様からも肉が改善されたようだと教えていただいたので今回の高松訪問に際して再訪に至った次第です。
教えて下さった食道者様には感謝です。
店頭のボードには1番のお薦めはとり天ぶっかけとありましたが、前回からの改善の様子も見てみたかったので肉ぶっかけ、そしてとり天を単品で注文しました。
先に出てきた肉ぶっかけ。
こちらは牛肉を玉ねぎとともに甘く煮たものを使っておられるんですが、てっぺんにはかなり揮発性の高いワサビが添えられています。
麺は適度な硬さのあるもっちりとした麺。
ぶっかけ出汁は色が黒く肉などに合わせているのかやや強めの味わい。
ひょっとすると肉の煮汁が合わさってそう感じるのかもしれませんが、やや甘さもあって肉の味も浮くことなく全体がまとまっているように思います。
肉ぶっかけは今回の旅行でもあまり注文した品ではないのでメジャーな手法なのかは分かりませんが、甘い肉にワサビというこの組み合わせが実に絶妙なんです。
甘く煮た肉とその煮汁でやや甘味を帯びたぶっかけ出汁をこのワサビがキリッとまとめているんです。
ワサビが揮発性の高いものであることもポイント高くて、肉と一緒に食べても良いですし、うどんに合わせてもなかなか良い仕事をしてるんです。
ご主人のゴツい風貌からはおよそ検討もつかないような繊細な感覚です。
一方のとり天は忘れられていたのか、やや後から出てきました。
サクッときれいに揚がったとり天は別添えの塩で食べさせるようです。
丁寧に揚がった印象のとり天は旨味もきちんと閉じ込められていてとても美味しいです。
塩で食べさせるのはタレで食べるよりも旨味が分かるので、気が利いているなと思います。
確かにこのとり天がぶっかけに入るなら旨いことでしょう。
という訳でうどんそのものの味、ぶっかけ出汁、肉とも個人的にはとても満足のいくものでした。
一口で讃岐うどんと言っても実にいろんなうどんがあるものだと思いますが、こちらは全てにおいてレベルが高いと感じました。
技術的にも非凡ではありますが、何よりこの味が私の好みに合ったのもそう感じた理由なんでしょう。
再訪した甲斐がありました。
今後も香川に来た際には寄らせていただきます。
ごちそうさまでした。
【初訪】2013年8月
高松市街地から少し離れたところにあるお店。
こちらの店主さんは、五右衛門というお店で長年お勤めだったようですが、五右衛門にはまだ未訪なのである意味先入観無く臨めそうです。
オープン時間になっても仕込みが間に合わなかったようで、表で5~10分程度待ちます。
中から店主さんらしき方が出てきて、暑いでしょうから中でお待ちくださいとのこと。
肉ぶっかけ冷の一玉を注文し、お惣菜類を先に選んで待ちます。
選んだのは、おにぎりを一つ、おでんが牛すじと長天です。
長天というのはマイレビュアー様のレビューで見て知っていたのですが、どうやら魚のすり身のようなものを揚げたさつま揚げ風なもののようです。
おでんの出汁はやっぱり出汁を効かせている印象で、関東のものに慣れてしまうと薄味に思えますが、出汁を効かせるのは素材の味を引き立てているように思います。
すべて食べ終わってもまだうどんが出てこず、かなり仕込みに手間取っておられたようです。
結局うどんが出てきたのはオープンから30分程度経ってからでした。
出てきたうどんはかなりコシがしっかりしたもので、前に訪問していた松下製麺所さんと同等程度。
一玉一玉を丁寧に作っているのか、うどんに詳しくない私でもさすがにうどんのクオリティの高さを感じました。
うどんだけなら松下製麺所さんを超えるような気もします。
ぶっかけ出汁は前に訪問した川福さんや松下さんに比べるとやや濃い味付けです。
そして載っている肉は玉ねぎとともに煮られたものですが、これが甘露煮の如くかなりの甘さ。
ちょっとひとつまみ口に含めばうどんの1本2本がそれで食べられてしまうくらいです。
でもこの強いうどんに合わせるなら出汁も具もこれくらいでないと釣り合わないという判断があるのかもしれません。
唯一残念だったのが、具の肉の脂が白く固まってしまっていたこと。
冷たいうどんなので、白い部分が食べているうちに増えてきたように思います。
これはどうやら提供前に火入れをすることで解消されるようですが、時間が押していたことを気にされていたのかもしれません。
舌に残るざらざら感が気になりましたが、うどんがやはり素晴らしかったのが収穫でした。
今回は肉が唯一残念でしたので、それ以外のものを注文していればかなり印象は違ったものになったと思います。
次回来たときには違うものを注文してみたいと思いました。
こちらも高松市内では外せないお店のひとつです。
ごちそうさまでした。
5位
1回
2016/06訪問 2016/06/27
【再訪 2016年6月】
以前訪問して美味しいと思っていたお店なのですが、スリランカに行く機会があり、その上でどう感じるのか興味があったので大阪に行った際に再訪してみました。
前回はおられなかった日本人従業員もおられるようですね。
ちなみに主にヌワラカデに携わっておられるお兄さん曰く、弟子をとるのは最初で最後らしいですよ。
お店を持って独立されるのは数年後くらいになるかもしれませんが楽しみにしておきます。
この日もギャミラサという名前のワンプレートを注文しました。
前回訪問の際は通常メニューではない鹿カレーをいただいたのですが、今回は通常メニューからマトンを選択。
スリランカでは人によっての宗教や信条によっても食べられないものもあるためか、高級ホテルに限らず大抵ブッフェ形式で好きなものを好きなだけ取れる形式が多いようで、普通はこのようにお店からワンプレートが出てくることは見かけませんでした。
ただお店の広さにも制限のある日本だとこちらの方が何かと場所も取りませんし、お店も決まった料理だけ作ればいいので効率は良いですよね。
バスマティライスも有料?で選べるようなので、迷わずバスマティライスを選択します。
スリランカ料理のように汁気の多い料理も入ると日本米だと汁気を吸って雑炊みたいな食感になるように思っていて、個人的にはスリランカ料理はバスマティライスかサンバライスで食べるのがベストのように思っています。
少しずついろんなものを混ぜながら食べていくわけですが、マトンは一番辛い設定だという通り確かに辛い。
ただスリランカ料理はココナッツミルクなども多用するせいなのか、あまり即効性のある辛さではなくて後からジワジワくる辛さのような感じです。
それぞれの料理もしっかり味を付けながらも、混ぜてもしっかりと調和して美味しい。
最近ではスリランカ料理に限らずこの混ぜるタイプのカレー店が増えつつあるようですが、しっかりと料理を作りこんでいてもこの混ぜた後の味が意外とマトを得ていないと感じることが多いのです。
スリランカ人の経営する料理店は、日本人シェフの作るスリランカ料理とは違ってあまり日本ならではの新しい素材に挑戦することが少ないようで、見た目にはどこも似たり寄ったりになりがちなのですが、ここだけは何故かその中でも群を抜く美味しさなんです。
ひょっとしたら混ぜた後の味まで見越して黄金比率を掴んでいるのかもなぁなんて思うくらい。
もっともスリランカでは先に書いたように客が好きに取り分けるシステムなので、果たしてそれでスリランカで食べ歩いた料理より美味しいと言えるのかという言い分もあるかとは思いますが、少なくとも日本国内でこれまで食べ歩いたスリランカ料理の中では一番好みの味です。
気軽に足を運べないのは残念ではありますが、次の大阪訪問が楽しみになるようなお店です。
【初訪】
大阪で近年急速に店舗が増えつつあるスリランカ料理店。
幾つか訪問した上で、敢えてここを最後に訪問してみました。
近くの交差点に出ているA型看板にはグリーンカレーやナシゴレンなんて東南アジアでも見られる料理もあったりします。
でも金曜夜のメニューだけはアーッパとかルヌミリスなんかを用意されてるようで、見る人が見れば専門はスリランカ料理というのは容易に想像がつきます。
1970年代くらいの古い喫茶店が潰れた跡そのまま居抜きで使いまわしてるのかと思うような年季の入ったお店で、日本語が流暢ではないものの話好きそうなご主人が働いておられます。
お店に入るなりご主人から『スープあるけと飲む?200円』と言われ、ギャミラサという呼び名のスリランカ式ワンプレートご飯とともに注文しました。
ちなみにギャミラサはメインのカレーが選べるようで、チキン、ポーク、マトンだと1200円。
エビもしくは本日の日替わりである鹿カレーだと1500円とのこと。
週末だとまた値段も上がったりするようですが、内容に変化があるのかは不明です。
初めての店ではオーソドックスなメニューこそ注文したいとは思ってるんですが、この手の珍しいカレーには滅法弱い私としては躊躇なく鹿カレーを選択。
スリランカの宗教事情は詳しくありませんが、国民の7割が仏教徒でヒンズー教の文化も強いスリランカにあっては、イスラム教で禁忌とされる豚肉は比較的多くのお店で使っているように思います。
一方でヒンズー教で禁忌の牛肉はあまり見た記憶がありません。
もちろん店主の信仰する宗教にも拠るのでしょうが、日本人の感覚としては鹿があって牛がないというのが何とも不思議ではあります。
ご主人から、スリランカ料理食べたことある?って聞かれたので正直に答えると、何と無く意味深なニヤッとした笑顔(笑)。
敢えてここは他のお店を回ってから、と考えてたんですけど、ご主人の自信のありようから推測するとむしろ比較してくれるぐらいの方が嬉しいのかも。
【スープ】
トマトと卵、ニンジンやジャガイモ、玉ねぎにキャベツなどが入っていて、それをペッパーなどで味付けしているという感じ。
スリランカ独特の料理ということでもなさそうですが、優しい味で普通に美味しいスープでした。
これで200円ならお得だと思います。
【ギャミラサ】
辛さは大丈夫だよね?って聞かれたんですけど、ちょっと自信無かったので『抑えめ』でお願いしました。
メインの位置に鹿カレーがどっと載せられてギャミラサが出てきました。
結構たくさんの肉が入っている上に鹿の骨を割ってそのまま投入しているようで、脚の関節辺りの部分がカレーの中に紛れていました。
他にもインゲンを使ったカレー、パリップ(豆カレー)、ビーツ、ココナッツサンボルが綺麗に配置されています。
普段は手食しないんですけど、今回はフィンガーボウルも横に出されてしまったので(笑)。
どのカレーも素晴らしい出来栄えですが、メインの鹿カレーはスパイスをふんだんに使っていて、カルダモン、ペッパー、レモングラスなどがところどころに見られます。
ココナッツミルクらしいコクとスパイスの鮮やかさが両立していて、今までのスリランカ料理では感じたことのないような見事さ。
スパイスの香りを損なうことなく作られたカレーは食べるほどにテンションが上がります。
インゲンには恐らくモルディブフィッシュかなぁという風味も感じられて正にスリランカが凝縮したようなプレートです。
大阪中心に人気のあるスパイスカレーというのは何かのスパイスを傑出させている印象で個人的にはあんまり好みじゃないんですけど、こういうスパイスの調和が極めて高いレベルでなされている料理は逆に大好きです。
鹿の味や食感は脂身の少ない牛肉とでもいった感じなので、禁忌の牛肉を避けて日本人にも人気のある牛肉に近いものとして鹿カレーを用意されていたのかもしれません。
お米は短粒米ながらぱらっとしていて食べやすく、適温なので手食をしても気になりませんでした。
【全体の感想】
これまでに感じたことのない素晴らしさを感じたスリランカ料理でした。
ご主人も私が食べている間、「これがほんとのスリランカの料理」的なことをおっしゃってたので、巷で流行っている他のスリランカ料理店に対しては多分思うところもあるのかもしれません。
開店して3年半くらいになるというご主人だからこそ、これまでスリランカ料理というジャンルを牽引してきたという思いがあるとしてもそれは当然。
むしろこのお店があったからこそ、大阪のスリランカ料理の今があったのかもしれません。
良いお店に出会った時には大抵機会があれば再訪したいと思うんですが、ここは近いうちに絶対再訪したいと思わせるお店でした。
ごちそうさまでした。
6位
1回
2014/07訪問 2014/08/07
阪急線の岡本駅とJRの摂津本山駅の程近く。
兵庫県にあっては屈指の高級住宅街で、東京の自由が丘に例えられることも多いこの地域。
営業年数が長めであるのか年季の入った看板が1階に置かれていて、そのビルの2階にこのお店はあります。
店頭にはホールのカルダモン、ターメリックなどいろんなスパイスが飾ってありますが、これは写真NG。
ちなみに食事については写真OKなんだそうです。
店内は高級感のある内装で、一見同じ神戸のショナルパにも似ているように思いますが、スパイス入れの棚があったりスパイス関連の道具などが飾られていたりと、やはり独特。
雑誌などではシルクロード料理というカテゴリー付けされていたものもあったのでお店自体もインド料理などとは一線を画しているという意識があるんでしょう。
オープンして間も無く予約客含めて6つのテーブル席が全て埋まってしまいました。
ホールはご主人と思しき40代半ばくらいの男性ですが、料理についての細かい説明などはなく、淡々と仕事をするという印象です。
でも決して無愛想というわけでもなく聞けば笑顔で答えてくれますし、感じは悪くない方です。
休日のランチは店名を冠したぶはらランチ(2818円)とホリデーランチの2種類。
メニューを見る限りではデザートのアイスクリームの有無だけのようですが、せっかくなのでそれも入ったぶはらランチを注文。
最初はサラダとサモサが一緒に出てきます。
サラダはメニューには日替わりとあって、中東ナスのサラダもしくはシルクロードサラダなど、とあったんですが、提供される際に説明が無かったので今回のサラダがどういうものかは不明です。
サラダはナスとトマト、玉ねぎが見受けられますが、ナスは煮浸しのように柔らかくトマトはフレッシュなんですが適度に熟していて甘いトマトです。
下には玉ねぎのスライスが敷かれ横にはスイートバジルが添えられております。
味付けなんですが、オイルに淡い味付けがされていて美味しく食べられます。
あまり強いスパイスの存在は感じないようなものでむしろ素材の良さを前面に持ってきたような美味しいものでした。
一方のサモサにはオープンパセリが添えられ2種類のソースが別に付いてきますが、ひとつはケチャップ、もうひとつはコリアンダーリーフを刻んだものにすりおろしたジンジャーみたいなものを加えた感じのもの。
カラッと揚がった皮の中身はそれぞれ異なるようで、ひとつは鶏挽肉と玉ねぎなどをスパイスで炒めたもの。
これは鶏肉と玉ねぎの旨味がよく生きていてとても美味しい。
もうひとつはジャガイモ、グリーンピースなどをスパイスで味付けしたものですが、こちらは八角らしき味を感じました。
サモサで八角は個人的に初めてだったんでその意外性に呆気に取られながら食べたんですが、サモサにマッチしていてかなり美味しいですよ。
そしてピタパン。
ご存知中東辺りの薄皮のパンのような食べ物ですが、紙風船のようにプクッと膨らんだピタパンは皮がかなり薄くてカレーなどに付けて食べてもいいですけど、サモサのソースなどに付けて食べても美味しいです。
ここまで食べただけでも今までのどのカテゴリーとも傾向が違っていて、◯◯料理を食べに来た、◯◯料理を食べるんだ、という硬い頭では臨まない方が良さそう。
シルクロード料理なんて言っておられるようにこれまでのカテゴリーには収まらないお店です。
柔軟な頭で臨んでこそ楽しめるような気がします。
カレーに先立ってピクルスの登場。
人参の酢漬けのようなものにカルダモンが載っていますが、人参のポリポリとした食感を残して程よい甘酢のような味。
唐辛子が添えられたのは胡瓜。
特別辛くはしてありませんが、浅漬けのような味が良かったです。
そしてもう一つが外見ではよく分からなかったんですけど、食べてみるとなんと搾菜。
醤油みたいなものに漬け込まれたような感じですが、やや甘い味付けになってます。
この味付けが搾菜に合っていて美味しい。
これはペッパーの実のようなものが添えられていました。
そしていよいよカレーの登場。
先に出てきたのはサフランライス。
やや硬めに炊かれた日本米が見事なサフランの香りをまとっています。
黄色いライスと言えば久しくターメリックライスしか食べていなかった私としては、ちょっと感激。
冷めにくいよう下から火をつけて提供されるカレーは、スパイスの香りが豊かでトロッとしています。
上からスパイスミックスを振って香りをだしているようです。
一口食べてみると高級なスパイスをふんだんに使って作ったというのがよく分かります。
スパイスの芸術的な複合体。
ラムも程よく煮込まれていてスプーンでほろっと崩れます。
かなりコクがあってリッチなテイストに仕上がってはいるものの、こちらは個々のスパイスの輪郭がはっきり感じられます。
スパイスのひとつひとつがそこに理由あって存在しているという感じ。
インドというよりムガール料理に近い要素も感じなくは無いですが、そもそもムガール料理もあんまり多くのお店を訪問したわけじゃなく、本質的にどういうものかはあまり詳しく知らないのが本音。
シターラ青山、ショナルパ、ナーガルジュナ辺りがカテゴリー的に近いのかなぁとも思いましたが、スパイスの個性がより活きているという意味ではナーガルジュナに近いという程度で、やっぱり個性的かな。
でもシルクロード料理と言うだけあって、かつて北インド一帯を支配していたムガール帝国の宮廷料理にも通じるものがあるように思うのもまた事実です。
ま、深くは考えずに、かつてのムガールの王侯貴族もひょっとしたらこういうカレーを食べていたのかもしれないなぁなんて妄想しながら食べるのが良いのかもしれませんね。
いや、これはかなり好きなカレーですよ。
ぶはらランチにはあってホリデーランチには無いアイスクリーム。
大きなミントが添えられています。
チョコレートアイスはあまり特別なものを感じなかったんですが、白い方はマンゴーソースもかけられていて、尚且つ国内の生乳で作ったアイスとは何だか違います。
インドのアイスであるクルフィはあまり食べないのでこれもクルフィなのかもしれませんけど、濃厚でしっとりしていて、かつアイスクリームだけではない何か繊維的な食感も感じたりして実に美味しいアイスクリームでした。
添えられたミントも葉を一枚一枚ちぎりながらアイスと一緒に食べました。
これが入っているかどうかでホリデーランチとは500円前後の差が出るようてすけどこれはオススメ。
そして食後のチャイ。
一人3杯程度入っているようなポットで提供されます。
普通の砂糖以外に氷砂糖もあって、好きな方を使えと言うことかも。
氷砂糖は粉のものより表面積が少ないので少しずつ溶けるんです。
メニューにはシナモンロイヤルミルクティとある通りシンプルながら良いものを使っていると容易に想像がつくようなミルクティです。
シナモンの良さを十二分に生かした味わい深いミルクティです。
かなり満足のいく内容で、関西でこれまで訪問させてもらった中では個人的に一番好きな内容でした。
スパイスやハーブも贅沢な使い方をしているようでいて、実はそれぞれの個性をよく理解しておられてとても大切に使っているという印象なんです。
スパイスを決して雑に扱っていなくて、本当にスパイスの価値を知っている人が作っておられる料理という感じ。
スパイスもかなり高価なものが多いので、この内容でこの値段なら私は全く高いとは思いませんし、むしろこの料理から得られる満足感こそ優先したいですね。
こちらのお店も再訪必至。
神戸はこういうお店が多くて困ります(笑)。
ごちそうさまでした。
7位
1回
2014/01訪問 2014/02/11
高山から岐阜に戻るところ、下呂で降りて電話した上で訪問です。
平日のオープン時間で私を含めて4組の待ち。
メニューはストイックなそば屋という感じのラインナップ。
その中で飛騨ねぎ天ざる、そして限定10食という蕎麦掻を注文しました。
まず出てきたのは蕎麦掻。
成人男性が両手で作るくらいの大きさの器におにぎり程度の大きさの蕎麦掻。
温かい状態で提供されますが、それだけにむわっ、とくる蕎麦の香りが物凄い。
最初は何もつけずに召し上がってください、という店員さんの指示に従って木の匙で一口。
思わず相好が崩れてしまいました(笑)。
こんなことは余り無いんですが、それだけ美味かったということでしょう。
もっちりとした蕎麦掻は蕎麦の香りが濃厚で、口に入れると一層蕎麦の風味が膨らみます。
食感も絶妙で、食べていることに喜びを覚えるようなもっちり感。
2口くらいそうしてから、次は生醤油でいただきます。
キリッとした感じの生醤油につけると、蕎麦掻の風味が引き締まって感じられます。
こりゃまた感動的に美味い。
一口一口少なくなっていく蕎麦掻を惜しみながらいただきました。
そして飛騨ねぎ天ざるは先にねぎが塩を添えられた状態で提供されます。
太い白ねぎをぶつ切りにした天ぷらですが、軽くカラッと揚がっています。
噛むと軽いサクッという食感とともにねぎの甘みをしっかりと感じます。
辛みも全く無い甘くて風味豊かなねぎです。
温かいうちが美味しいんだろうとは思いながら、蕎麦が来てもチビチビ摘まんでいました。
そして真打のざる。
思ったよりもゴツゴツした見た目です。
蕎麦つゆは器に4分の1程度入ったものと辛味大根だけ。
つゆもそれ以上出されることも無く、要はこの量で食べてくれ、ということなんでしょう。
つゆもキリッとした濃いめな印象のもので、辛味大根は雑味の感じない澄んだもの。
まずは2〜3本そのまま食べて見ますが、風味は素晴らしいと思います。
そこで薬味も入れずに蕎麦をつゆに半分くらいつけて食べてみると、かなり美味い。
見た目のゴツゴツ感に反して何だか喉越しが爽やかな感じがします。
薬味の辛味大根を3分の1くらい投入すると、驚くほど薬味が蕎麦に絡みます。
薬味がこれだけ絡む蕎麦もあまり食べたことが無いんですが、食べてみると辛味大根の旨味と蕎麦の風味があいまって絶妙の美味さに。
少しずつ風味を噛み締めながらいただきました。
食べ終わっても何だか余韻が忘れられずに、たまらずもう一枚ざる(追加は950円)を追加。
せっかく出していただいた蕎麦湯も下げて下さり、改めて出し直してくれました。
私みたいな蕎麦食いじゃない人間でも感動的に美味いと感じました。
ご主人のお蕎麦が素晴らしいというのもあるでしょうし、ちょうど蕎麦が熟成して最も美味しくなると言われる厳冬の時期だったのも良かったのかもしれません。
ご飯党の私でもこの蕎麦なら三食蕎麦でも良いと思えるくらい。
蕎麦屋に行ってもツマミが美味しいと感じることはあっても、蕎麦自体が美味しいと感じるのは私の場合珍しいんです。
蕎麦というジャンルはあまり縁がないものと思っていましたが、こういうお店もあるのなら是非いろいろと回ってみたいものです。
新しい世界を見せていただいたことに感謝です。
ごちそうさまでした。
8位
1回
2015/05訪問 2015/05/10
【2015年5月】再訪
今回の神戸滞在中に複数回訪問しました。
やっぱりここのチョコレートの扱い方は見事だと思います。
今回はテリーヌショコラも購入してみましたが、チョコレートでできたカステラのような生地が、口に含んだ途端濃厚なチョコレートに変貌します。
この系統のお菓子ではここが一番好きかな。
ただ冷蔵庫で冷やすとボロボロ崩れて食べづらいんですが、常温だとそうでもなかったので本来そうして食べるものなのかもしれません。
チョコレート好きな私には神戸に来たら絶対外せないお店です。
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【2014年7月】
寄ってみたいとかねてから思っていたお店です。
昼間の訪問だったんですが、基本イートインスペースはありません。
お一人の方がカウンターで食べておられるのを見ましたけど、本来カウンターはそういう使い方をメインとしているわけでもなさそうな感じ。
多分例外的に許可されているんじゃないかな、と思います。
入店して早々、チョコレートのフローズンドリンクのサービスがありました。
暑い日だったこともありますけど、これは嬉しいですよ。
この時期は保冷剤を入れてもらってもこの時期の持ち歩きは30分ほどだそう。
ホテルのチェックインまで時間があったので店員さんに相談してみたら、購入したものをしばらく預かってもらえるそうです。
購入したものは上記の4つですが、後でホームページを見て知ったことで、モードは平井シェフが世界大会で優勝されたときの記念作品だそうで、セーブルはこの訪問の何日か前に復活したばかりの商品のよう。
でもってムフタールは平井さんオリジナルのチョコレートを使ったロールケーキ。
見た目で選んだだけなんですけど、このラインナップは良いチョイスだったのかもしれません。
ちなみに優勝された世界大会はチョコレートの大会なので、こちらではまずチョコレートを試してみたいと思っていました。
オリジナルのチョコレートを使ったムフタールは何とも絶妙な甘さと風味が素晴らしい一品。
ロール状になっているものが基本ですが、たまにこうして一切れ単位で販売しています。
もしショーケースにロール状のものしか無くても、聞いてみると用意してくれることもあります。
個人的に最も気に入ったのはセーブル。
ガナッシュ状の土台の上にコーヒーの風味豊かなムースが厚く乗っているんですけど、この味と食感はメチャクチャ好み。
もう理屈云々じゃなくてとにかく美味しいんです。
これは絶対また食べに来たい味。
この手のものは食べログを始める前からあちこち食べ歩いてますが、洋菓子やパンなどは一流の作り手の方が作ったものであっても、他のジャンルに比べて値段は圧倒的に安く購入することが魅力だと思ってます。
それだけに良いと言われるスイーツ店は若い頃からかなり訪問してきたつもりですが、こちらはその中でもかなり良かった部類に入ります。
もちろん私の好みに合ったことも大きいとは思いますが。
神戸に来た際はまたお伺いしたいと思います。
ごちそうさまでした。
9位
1回
2014/01訪問 2014/01/24
小田原から箱根登山鉄道で2駅。
箱根にも程近い風祭という駅。
食べログ上のオープンは11時だったので間に合うように行ってみたら何だか様子がおかしい。
行列があると思いきや、店の前に人がいないんです。
でも店の前の駐車場も近くの専用駐車場もいっぱい。
何事かと思って店の中に入ると既に満席で、お会計をされている方までおられます。
ひょっとしたら週末はもっと早くから営業されているのかもしれません。
店員さんに名前と携帯番号、注文する品を伝えて、待つこと30数分。
ようやく席がとれたとのことでお店に伺うことができました。
横長のお座敷席で奥の大学生らしい2人組と相席です。
注文したのは青うなぎ さきたての肝。
これは刺しではなく茹でたものだそうで、味付けはタレとわさび醤油が選択できるようで、タレを選択しました。
そして例によって白焼き、上うな重という構成。
うな重は、通常のものと上が付く2種類のようです。
ビールはサッポロを指定したのですが、ビールのラベルが箱根仕様みたいです。
コップも陶器のようで、決してありきたりでは終わらない気が利いた対応はさすが。
先に来たのは白焼き。
驚くほど鰻の身が厚いです。
沢蟹の唐揚げも飾りに付いているのもいいな、と思いますが、わさび醤油、ゆず胡椒、山椒味噌の3種の薬味で食べられるのも今までの訪問店ではありませんでした。
白焼きは脂も載っている素晴らしい鰻で、皮がプルプルになるように焼き上げられています。
身もふっくらと脂と旨さを逃さないように処理されているのはさすが。
この何日かで数軒の鰻屋さんを回りましたが、それを含めて白焼きの中では一番素晴らしいものでした。
個人的にはやっぱりわさび醤油が一番楽しめましたが、他の薬味も良かったです。
そして青うなぎ さきたての肝。
卵の卵黄も付いてきますが、これを絡めていただきます。
驚くことにこの肝はわずか3匹分の肝のようで、1匹の肝がとても大きい。
濃厚なタレではありますが、適度な甘さとコクがあります。
これが卵黄に絡まると、タレのみでは味わえない複雑なコクを感じます。
フワッとして旨みが閉じ込められた肝は無くなってしまうのが惜しくなる程の旨さでした。
そして上うな重。
白焼き同様、厚みのある鰻は圧巻です。
濃すぎないタレで味付けされた鰻は本来の旨みが充分生かされています。
身も皮も実に適度な柔らかさに仕上がっていて、調理技術も非常に高いです。
このタイミングで無性に関東風の鰻を食べたくなって、この何日かでいくつかの鰻屋さんを回らせてもらいましたが、個人的な感想ではこちらが質では圧倒していました。
まだこの店の上があるのかは分かりませんが、私の嗜好で言えば今までの訪問店ではダントツのクオリティでした。
これだけ美味しく料理されれば鰻も本望だろうと思いました。
また接客も素晴らしく、座敷席から僅かに見えるデシャップは戦場のような忙しさ。
にも関わらず、客の前では常に笑顔を絶やさず、料理の説明も決してうるさく感じさせない親しみを覚えるもの。
私に商品提供してくれた複数の店員さん全員がそういう対応をされるのを見て、接客レベルの高さを感じました。
料理の素晴らしさに見合う接客だったと思います。
気軽に寄れる場所にないのが何とも残念なところですが、ここはわざわざ立ち寄る価値があります。
また神奈川近辺で美味しい鰻が食べたくなったら真っ先に考えたいお店です。
ごちそうさまでした。
10位
1回
2014/09訪問 2014/09/23
京都市から大きく外れた、黄檗(おうばく)という地にあるパン屋さん。
地下鉄東西線の終点、六地蔵で降りて更にJRか京阪で数駅という、京都市内から向かうにはやや不便な場所です。
中学校を目の前にした住宅街に突如現れるパン屋さんは、客のいるスペースは陳列棚含めても6畳無いほどのこじんまりとしたお店で、狭い店内は常にお客さんがぎっしり。
構成としては私の訪問時はハード系よりも菓子パン、惣菜パンを多く揃えている印象でした。
人気店ゆえ、常に幾つかのパンは焼きたてが補充されるわけですが、5つ買ったうちの3つほどが焼きたて。
中でもパンシューのジャガイモ、ベーコン、マヨネーズの混じった香りと言ったら、かつてパンに感じたことの無いような魅力的な香りです。
我を失って帰りの電車内で食べてしまいたくなるような気になるほど。
【パンシュー】
このパンだけはホテルに戻ってからすぐ食べましたが、塩味を強く感じるベーコンが角切り状になっていてかなりの存在感。
ペッパーとハーブを効かせているようですが、ジャガイモとベーコンという比較的ありふれた組み合わせながら、味付けや配合にはかなりの工夫をされているようで、非凡とも言っていいパン。
後で復習のためにネット上で他の方のブログなんかを拝見していると、このパンはどうもお店の代表作と言えるくらいの位置づけのパンのようで、それを好みのタイプのパンで無いにもかかわらず、偶然にチョイスしていた自分の判断に逆に驚きました(笑)。
多分次回訪問させていただいた時にこれがあればまた購入することでしょう。
これは美味しかったです。
【洋風あんぱん】
残りは翌日の朝食などでいただきましたが、洋風あんぱんは表面にひび割れをさせているのが特徴的な見た目ながら、特に硬い生地に仕上がっている訳でも無くて食べやすい。
ただ日本風のあんぱんのようなふっくらした生地とはやや異なり、生地が薄い分ぎっしりしている感じの食感です。
中の餡は心なしか、日本風のあんぱんの餡よりもやや甘くてしっとり感があるように思います。
もしかしたらごく少量、練乳クリームみたいなものを練りこんでいるのかもしれませんが、確信はありません。
何の気なしに食べてしまえば、気づくこと無く見た目だけの洋風さにとらわれてしまいそうですが、この絶妙な洋風感が何か心を捉えました。
【レストランフリュイ】
レストランフリュイは最近ハマっているハード系のパン。
店内はパンの名称や値段を控える余裕も無いほどの混雑ぶりだった上、レシートにはどのパンも、パン○○円としか書いてないので名称や値段がどれも不確かですが、他のパンがどれも200円前後である中、これだけは300円台後半。
ハード系らしくしっかりとした硬さがありながらも程よい噛み切りやすさを感じるパン。
クルミやいちじくも程よい存在感で、木の実の恵みを感じさせるようなパンです。
【和栗のパン】
やや硬さを感じるフランス風のパンに栗を粗くペースト状にしたものを挟み、その下に練乳クリームを敷いているようです。
栗にはあまり濃い味付けを施さず、その分甘みをクリームで足しておられるのかもしれませんが、これまたかなり良いです。
名前を忘れてしまったパンも実はかなり良かったんですが、和栗のパンに方向性がやや似ていたこともあってか、名前だけではなくて味の記憶も曖昧になってしまったので感想は割愛しておきます。
本来の好みはハード系のはずなんですが、惣菜パンや菓子パン中心のラインナップでこれほど満足できるとは思いませんでした。
惣菜パンや菓子パンはある程度味の予想がつくことが多いのであまり感動を覚えるに至ったことがないんですけど、今回ばかりは香り含めてその非凡さに感動してしまいました。
他にも試してみたいパンがありましたし、是非また訪問してみたいものです。
ごちそうさまでした。
【再訪 2016年9月】(初訪 2014年7月)
久しぶりに再訪レビュー。
今回の主役は信州産松茸と鰻3種の食べ比べ。
鰻は天草産の天然海鰻、島根神西湖産の天然鰻、愛知産の養殖もので、神西湖産の鰻はミニ蒲焼き丼にしてくれました。
蒲焼きのタレは当然自作されたものを使いますが、たまり醤油にザラメなど使って作るという、古くから名古屋で用いられるものにも似たタレのよう。
それでも甘めのタレにくぐらせながらも皮をパリパリに保っている蒲焼き丼は、他のうな丼には感じたことのない独特の魅力があります。
松茸は見たことのない大きな海老芋とともに椀になって出されました。
ネットリとした美味しい海老芋と、香り、食感の良い松茸の相性は素晴らしいものでした。
そして印象に残ったのが南紀白浜産の黒鮑を使った蒸し鮑。
変に硬くてコリコリしたものでなく、むっちりとして豊かな旨みを備えた黒鮑です。
これは本当に素晴らしかった。
この日は鱈の白子も良いものが入ったらしく、イクラと合わせ盛りのミニ丼を作ってもらえたりしました。
プルプルの食感と濃厚な旨みは私の拙い言葉では表現し切れるものではなく、とても美味しいものでした。
やはり秋はいろいろと美味しい素材が豊富で、ご主人の腕前もあって堪能させていただきました。
最近いろんな飲食店に対して感動する機会が少なくなってきたと感じており、それは私個人の味覚に問題があるのかと思ってちょっと不安だったのですが、今回のラインナップにはきちんと美味しいと感じられて安心しました。
あくまで相対的な感度の問題だったと捉えておきます。
【再訪 2016年1月】
新しいシステムに慣れず、再訪レビュー分が下書きできるものと思いこみ、下書きしてみたら既訪分も丸ごと下書きになってしまいました。
大勢のレビュアーさまがレビューされる中、私のようなものが改めてレビューするのも恐縮ですが、再度アップさせていただきます。
ご主人のブログによると、今回より焼き台をガスから炭火に変えたそうです。
逆にこれまでガスであのクオリティのものを出していたということが驚きではあります。
ご主人いわく、炭火は難しい、んだそうで、慣れるまでには少し時間がかかりそうです。
また炭火によって、クオリティが一段階アップするのが楽しみです。
【再訪 2015年9月】
実に面白いお店だと思います。
週末中心に予約を取っておかれないと、入れなかったときに場所柄他のお店を探すのが大変な場所ですので予約を取っておかれることをお薦めします。
少人数でいくより大人数(但し6名程度がMax)、一度目より二度目、三度目の訪問になるほど満足感が増していきます。
訪問を重ねるたびに我々の好みなどを熟知してくれ、それに旬の食材やご主人の豊富な引き出しが加わることで、実に楽しいラインナップの数々。
最近では週末中心に予約もしづらくなっているそうですが、場所柄目立つお店ではなかっただけで、これが本来のあるべき評価だと思います。
【再訪 2015年4月】
今回は一人で再訪。
旬に入ってきたという、鳥貝(大阪湾産)がこの日のメイン。
ご主人が貝の肝の中では一番旨いという通り、鳥貝の肝は貝のものとは思えないような味わい。
貝そのものも当然美味しかったんですが、今回はこの肝の方がむしろ主役でした。
また何でもないような素材の富山のホタルイカが妙に美味しかったのでご主人に聞いてみると、やっぱりこの1~2週間が1年を通して最も美味しくなるんだとか。
旨みが明らかに濃厚で、何もつけなくても美味しく食べられます。
桜と同じでほんの一瞬光る時期があるようです。
京都の物集女(もずめ)の筍が出回り始めたようですが、国内でも指折りの高級品というだけあってさすがに柔らかくて美味しい。
旬を捉えた食材を駆使した料理を堪能できるのが和食の醍醐味だと思いますが、ここはやっぱりそういう意味でも楽しいです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~^
【再訪 2015年2月】
通うほどに新鮮な感動のあるうを徳。
今回は6名で訪問させていただきました。
ご一緒させていただきました皆さま方、ありがとうございました。
今回も我々のために日本全国から美味しい素材を集めてくださったご主人には感謝です。
大間産本マグロや昆布森生牡蠣、宮城産金華サバなど豪華絢爛たる素材を駆使して調理いただく料理は言うに及ばず、わざわざうなぎ好きだという私のために仕入れていただいたという、この時期には希少な天然うなぎ。
ブログによると、アメ横でたまたま見つけたという海外産のようで味は推して知るべしなんですが、何よりこの気持ちが嬉しい。
当然不特定多数の客を相手にする飲食店とは同一に扱うことはできませんが、このラインナップにして10,300円という価格設定からしても如何に良心的なお店であるかが分かっていただけるものと思います。(今回はお酒の持ち込みの負担分を含めてトータル15,000円程度となりましたが)
常連のレビュアー様方を前にして生意気な言い方ではありますが、一度目よりは二度目、二度目よりも三度目と訪問を重ねるごとに通うほどに自らにフィットしてくると言うか馴染んでくるのを感じます。
当然それはご主人が客である我々の好みを通うほどに把握してこられているというのはあるにせよ、むしろ我々の方がご主人の引き出しの多さに魅了され、惹きつけられているからこそ感じる感覚なのかもしれません。
カウンター席のある日本料理屋というと何かと緊張感漂うお店も多い中、初回の訪問時から非常にリラックスして食事ができたのもご主人のお人柄ゆえかもしれません。
とにかく色んな魅力の詰まったお店ですので、一度の訪問で満足されるのではなく、二度、三度と通って見られることをお薦めします。
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【再訪 2014年10月】
前回夏の訪問で感動していたお店に再度予約を入れて訪問です。
ご主人は日本全国の美味しいものを調べておられて、料理人の中でもマニアの領域。
東京にいながらにしてこれだけ全国の美味しいものが食べられるお店は稀有でもあります。
東向島という立地も手伝ってか、内容の割りに予約も取りやすい上にお客さんの入りも適度。
古い内装に抵抗のある方もおられるかもしれませんが、私自身はこだわりがないので居心地も悪くありません。
【琵琶湖産ホンモロコと稚鮎うま煮】
いきなり貴重な素材を使った料理が出てきました。
私が川魚嫌いという噂がありますが、そんなことを言った記憶もなく美味しく食べさせてもらいました(笑)。
ほろっと口の中でほどよく崩れる魚は、味付けもほどよく魚の旨味をともないます。
【赤貝】
素性を聞きそびれましたが、目の前で貝殻から身を剥いて一個分まるまるの提供となりました。
血が赤いので赤い身だとは知っていましたが、目の前で捌いてもらったのは初めて。
噛むほどに旨味を感じる赤貝は実に美味しい。
【ウニ食べ比べ】
根室のバフンと青森のムラサキ。
青森の方はやや形が崩れているのもあってか、食感の比較的しっかりしている分、根室の方が味もしっかりしているように感じました。
好みは根室の方ですが、それぞれ違う味わいなので食べ比べてみて初めて理解できますね。
【栗】
他のレビュアー様のレビューで見た渋皮煮なのかもしれませんが、あまり細かく聞かなかったのでどういうものかわかりません。
やや甘く煮た上で冷ましてあるのか、味の染みた栗はかなりの美味しさ。
これもまた手の掛かったひとつの料理であると思い知らされます。
【ナガスクジラの尾の身】
個人的に刺身でクジラを食べたのは記憶にはありません。
見た目牛肉のような肉質でありながら、食べてみると肉よりも脂っこくなく赤身も柔らかい。
塩と醤油が用意されていましたが、これは塩で食べた方が旨味がよく分かります。
あまり口にできないものをいただけました。
【明石の鯛】
話でしか聞いたことのない鯛(笑)。
初めて口にすることができました。
多少寝かせているのか、身がややねっとりしていて鯛独特の旨味を感じます。
他の鯛と比べてどうなのかという違いはよく分からないので言えませんが、やはり昔から名が通っているだけある魚でした。
【たらの白子】
これも素性を聞きそびれました。
淡い出汁で味付けされているようでそのまま食べられます。
白子の風味を充分感じられる料理です。
【北海道産メジマグロ】
一度藁で焼いたものをニンニク醤油でざっくりと和えたもの。
藁で焼いた風味が残っていて単にコンロで焼いたものとは雲泥の差。
ニンニクはそんなに強くもなく、美味しく食べられます。
【海老芋と松茸のお吸い物】
松茸の量がすごい!
香りもしっかりするけど、これだけ産地にこだわるご主人が外国産を使うはずはないですよね(笑)。
これだけの松茸が入るということにまず感動。
少量のほぐした蟹の身を添えた椀。
海老芋は軽く素揚げでもされているのか、周りがやや香ばしい印象ですが、確信はありません。
こちらでいただく椀の美味しさは特筆ものです。
【イカのわた和え】
この辺りからお隣のお客さんがやたらと話しかけてきたので、料理の名前すらおぼろげ(笑)。
塩辛のようにも見えますが、塩辛と言うよりもわたで和えた料理という感じ。
塩辛くもなく、実に美味しい料理です。
【自家製からすみ】
ここで自家製のからすみ。
数日前にもフレンチで牡蠣に添えられてからすみが出てきましたが、なぜかその記憶があいまい。
なので比較も難しいんですが、こちらのからすみは濃厚な旨さがあって秀逸。
単体でいただいたこともあってか、こちらのものが強く印象に残りました。
【のどぐろ クルミチップス焼き】
金沢の寿司屋ではどのお店でも食べたのどぐろ。
全国で獲れる魚ですので珍しいわけではありませんが、カマ部分をクルミチップスで焼いたのどぐろは変化球といった感じでオツです。
当初何だか変わった風味を感じたので、違うとは思いながら「藁で焼いたんですか?」と聞いたところクルミチップスという答えでした。
クルミチップスの風味をまとっているので、ある意味燻製とも言えるのかもしれませんが、あくまで魚に軽く火を入れた程度の熱の通り具合でした。
【天然うなぎの食べ比べ】
静岡産と宍道湖産の天然ものの食べ比べ。
あれ?前日に訪問した池袋のお店では宍道湖産が無かったのに、こっちにはありますね(笑)。
ご主人の仕入れ力には感服しました。
肝や頭、骨まで出されますが、頭は初めて。
細かいところまでホジクり出しますが、なるほど、頭は頭で独特な味がしますね。
天然ものだからか、よく焼いてありますが、天然ならではの味が感じられたような気がします。
白焼きはどちらも美味しいんですが、値段の上では倍ぐらい違うそうです。
もちろん宍道湖産の方が上。
ご主人の話では宍道湖もあまり天然ものは獲れなくなってきているそう。
最近の流れからしても何時まで天然ものを食べられるんだか心配です。
食べ比べてみると分かりますけど、やっぱり水の違いが出るんでしょうか。
明らかに違ううなぎです。
静岡産ももちろん美味しいんですが、日本海側の宍道湖は水がきれいなのか、純粋なうなぎの良い香りが感じられるように思います。
これもまた塩だけでいただきますが、白焼きの旨味を味わうには塩が一番です。
醤油ではうなぎの本当の風味がなくなってしまうように思います。
【握り】
この辺からお隣さんが一層しゃべり出しました(笑)。
酔ってきたのかは分かりませんが、おかげでネタの名前すら曖昧。
中には間違っているものがあるかもしれませんが、何卒寛容にお願いします。
今回はアラがありました。
魚偏に荒と書くようですが、福岡などでアラと呼ばれるクエでは当然なく、ハタ科の魚。
今回のラインナップもなかなか魅力的で、海老のすり身入りの玉子焼きに至るまで堪能させてもらいました。
【鯛の潮汁】
流れから見てもおそらく明石の鯛のあらを使っているのかと思われます。
たくさん入ったあらには、ぷりぷりなゼラチンのようになっている部分もあったりして実に美味しい椀です。
汁自体にはほとんど味を感じないくらいのものなんですが、鯛の美味しさで食べた感じ。
【唐津のいちじく】
熟しているのもあって、かなり柔らかく、皮ごと食べられます。
子供の頃には実家の裏にいちじくの木があったので、よく食べていました。
それに比べると、食感を感じるような果物としてのピークのタイミングではなく腐る手前まで熟したものという印象。
このタイミングでいちじくを食べたのは初めてでしたが、この熟した甘さはまた独特。
魚なども寝かせたりして新鮮なものとは違った良さを引き出す江戸前寿司職人の感性が感じられました。
【全体を通して】
今回はお隣さんがいたこともあって、ちょっと違った雰囲気になりました。
もちろんそれはそれで楽しいんですが、純粋に料理を楽しみたいお店ではおしゃべりも程ほどにしたいもの。
それでも食材マニアのご主人のお話を聞いているとやっぱり面白い。
今回も勉強になるとともに面白い経験ができました。
次回の予約をお願いして気持ちよく帰途につくことができました。
ごちそうさまでした。
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【初訪 2014年7月】
かねてから訪問してみたかったお店ですが、東向島という立地がその訪問を阻んでいました。
大きな通りから一本引っ込んだところにある、昔ながらの古家といった感じのお寿司屋さんです。
表の看板には『すし処』という字に店主さん自ら書き加えたのか、『おすもじ処』となっていました。
どうやらお食事的な意味らしいのですが、寿司に限定したくないという店主の意思の現れなのかもしれません。
店内に入ると10畳くらいの和室に店主さんと向かい合うように6人座れるカウンター席。
10畳の奥にも6畳くらいの和室が仕切りのない状態であるようです。
店主さんは私の知る限りの寿司屋さんの店主とは違い、物静かで風貌もやや学究的な雰囲気で学者のようにも見えます。
先代からこの地で寿司屋を営んでおられるそうですが、寿司はこの店で修行し、料理などは京都で修行されたそうです。
まさに江戸前寿司と京料理の二刀流を使い分ける理想的な存在。
お酒はお店お薦めの賀茂鶴を冷酒で。
クセも無く飲みやすくて食事を楽しみたい時は良いお酒のように思います。
最初は椀から。
穴子を揚げたものが入っていますが、天かすを多めに投入されているようで比較的こってりとした印象。
それでも軽く柚子の皮も振ってあって脂っこくは感じません。
山葵の存在も手伝って食欲が刺激されます。
揚げた穴子を椀にするという手法は初めて見ましたが、見事です。
続いては牡蠣の燻製と冬瓜の煮物を合わせたもの。
途中で白すぐりというブドウのようなものも加えていただきました。
程よい燻製具合が実に見事で、牡蠣の旨味を損なうこと無く味を凝縮させています。
元の状態からするとかなり縮んでいると思いますが、スモークの香りも然程気になりません。
続いてはなんと穴子の刺身。
静岡に鰻を酢で締めて食べさせる店はありますが、酢で〆ていない穴子の刺身とは驚きました。
蒸したものとはまた違った食感ですが、他の食材では替えることができない味という感じ。
滅多にない経験をさせていただきました。
ちなみに塩と醤油が用意されますが、塩はフランスのゲランド、醤油は店主さんオリジナルの出汁を合わせたブレンドだそう。
山葵は静岡の御殿場産というこだわりようです。
藁で炙ったという鰹も出てきますが、そこらの店で食べるようなたたきとは一線を画す味。
周りを単にコンロなどで炙るものと違い藁で炙ったが故でしょうが、藁の香りがほんのりと香ります。
好んで鰹のたたきは食べる食材ではないんですが、こういう的を得たひと手間、一工夫を加えるのが非凡だと思わせます。
そして軽く酢で〆た縞鯵。
店主さんは酢で〆た方が旨いというお考えのようで、その考えに基づいた料理のようです。
酢の〆具合の強いものは苦手なんですが、仄かに感じる酢の風味が実に心地よいです。
このくらいの酢の味わいであれば私みたいな酸味苦手な者でも美味しく食べられます。
通常の縞鯵と比べてどうかわかりませんけど、この縞鯵は美味しく食べられました。
明石産の蛸を煮たものを山葵とともに提供されます。
切り口に波型を付けながら切られた蛸は意外にもサクッとした歯ごたえ。
もっと弾力を感じるような蛸しか食べたことがなかったのでこの食感は面食らいました。
やや多めかとも思われる山葵と醤油の味の染み込んだ蛸は相性抜群でした。
そして赤むつと日向南瓜。
別名のどぐろと呼ばれる高級魚ですが、皮がトロトロながら身はふっくら。
煮付けのような味でのどぐろの良さを生かした薄味の味付けが絶妙。
お新香のような食感の日向南瓜を時折ポリポリとかじりながらのこののどぐろは酒のアテに最高です。
今までは正直美味しいと思わせるのどぐろ料理に出会ったことがなかったんですが、今回のどぐろが高級魚たる理由がよく分かる料理でした。
そしてこの時期の鮟肝。
あまり食べたことが無い食材なのでよく知りませんでしたが、北海道の余市のものらしくこの時期でも充分美味しいとのこと。
簀で巻いてあったためか比較的しっかりした形状を保っていながらねっとりとしたキメの細かさを感じる上質な鮟肝。
初夏のものとは思えないような美味しい鮟肝です。
この日のラインナップでも鰻と並んでハイクオリティな一品でした。
続いてはじゅんさいの土佐酢ジュレ。
ところどころ柔らかく固められたジュレとじゅんさいのつるっとした食感の合わせ方が見事。
これまでの流れを一旦区切る上でもさっぱりといただけて良い仕切り直しになります。
なんとここでパイナップルが登場。
明らかにここで大きな区切りを付けようとされておられるようです。
後でライナップを見直すと、この前までが京料理でこの後が鰻から始まる江戸前寿司。
大きな区切りはこのためだったのかもしれません。
店主さんも果物がお好きらしくタダオゴールドというパイナップル。
目の前で切り分けてくれましたが、酸味を全くと言っていいほど感じないながらも自然な甘さ。
繊維もしっかりしているのにこれほどの甘さを感じるパイナップルは初めて出会いました。
ちょっと感動。
この日のメインとも言っていい天然うなぎの白焼きの登場。
天然うなぎはあまり獲れるものではないので出てこない日の方が多いと思いますが、この日は幸運にも大阪湾の天然ものと霞ヶ浦の天然ものが入荷したらしく、贅沢にも食べ比べをさせてもらいました。
いずれも蒸すことなく素焼きしただけの白焼きでしたが、店主さん曰く、養殖ものは脂を落とすためにも蒸した方が良いが天然ものなら素焼きだけの方が美味しいとのこと。
全く同感です。
もっぱら白焼きは山葵とともにゲランドでいただきましたが、大阪湾の天然うなぎは旨みをしっかりと感じて普通に旨いうなぎです。
これで食べ比べと言われても違いなんて分かるのかな?とも思いましたが、さにあらず。
霞ヶ浦のうなぎは段違いの旨さ。
全くと言っていい程濁りを感じない白焼きは、うなぎの風味がストレートに感じられます。
天然ものであるだけに香りも良くパリッという食感がたまりません。
天然ものでも良質なものでないと大して美味しくは感じないものですが、これは素晴らしい。
この品と鮟肝は芸術的なレベルだと思います。
そして合わせて出てきたのが骨せんべいと肝。
肝はひとつしか無かったので皆さん気を遣ってくださり私がいただきました。
肝は消化器官や胆嚢などもくっついたもので、かなり強めに炙ったらしくカリカリな食感です。
ふっくらと焼いた方が美味しいようにも思いますけど、この店主さんのことだから何か意図があるんだろうと思います。
ただ胆嚢が入っているが故の仄かな苦味も感じるんですけど・・・天然ものの肝とは言え、あまり特別なものを感じるものではありませんでした。
そして江戸前寿司8貫がスタート。
大分の城下鰈から始まった寿司はどれも満足のいくレベルですが、気になったのは熟成させている途中の三宅島産の間八。
確かに魚でも新鮮さばかりが珍重されるものでは無いのは魚に詳しくない私でも知っていましたが、熟成させて5日目の間八はややねっとりとした食感が出ていて新鮮なものとは違った美味しさ。
江戸前寿司の魅力とはこういった熟成とか昆布締め、ツメなんかを駆使して魚の旨さをもう一段階引き上げるところにあるんだろうと思います。
寿司によっても酢で軽く〆てあったりヅケにしてあったりと実に楽しい構成です。
やはりこの辺りは寿司職人としても高いレベルにある方のように思いました。
玉子焼きは車海老も入っていると言う、甘さを感じるふわふわなもの。
寿司屋さんの玉子焼きに詳しくない私は伊達巻のような甘さに感じましたが、ご一緒させていただいた方はカステラのよう、とおっしゃっておられました。
なるほど、食感まで考えると確かにその表現は適切です。
最後は利尻産の雲丹と徳島産の鱧のお椀。
これが〆というのが、旨さを追求して形式にこだわらないご主人の良さかもしれません。
驚く程大きくて厚みのある鱧は箸で掴むのが大変な程の重さです。
これだと味はどうなんだろうと思うのも杞憂。
美味しい鱧です。
鱧の影に隠れるように入っていた雲丹も思ったよりたくさんあって、これもまた素晴らしく美味しい。
香りも良く旬の良さが充分引き出されているように思います。
いわゆる潮汁という感じの味付けの印象でしたが、とても上品な味で鱧と雲丹の魅力が十二分に引き出されたお椀でした。
逆にこういう終わり方の方が料理の印象がより記憶に残るような気がして良いかもしれません。
もちろんそれだけの質の高い料理でなければ意味はありませんが。
京料理と江戸前寿司の見事な融合、堪能させていただきました。
全国の美味しいものを集め、如何に美味しく仕上げるかを追求するご主人の研究熱心さがよく現れた料理だったように思います。
不便な場所にありますけど、機会があればまた再訪してみたいと思わせてくれるお店でした。
このお店に行くためだけに東向島に足を運ぶ価値のあるお店だと思います。
ごちそうさまでした。