レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
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2位
1回
2015/10訪問 2015/10/16
せっかく三重にやってきたので美味しいお寿司も食べてみたいと思い、近鉄桑名駅の隣の益生(ますお)という駅近くにあるこちらに予約の上で伺ってみました。
桑名の隣で、何がある、と言うわけでもない駅ではありますが、古くからこちらを知る方たちには人気のようで、私が訪問した週末は一階の席はほぼ予約で埋まっていました。
お店側が用意される材料のこともありますし、特に遠方などから訪問される方は予約されておかれるのが良いでしょう。
四十前後かと思われる柔和で頭の良さそうな印象のご主人は四代目だそうで、奥様とお母様、従業員の女性で切り盛りされておられるご様子。
お店は最近改装されたのかかなり綺麗な印象でしたが、先代辺りから使っておられるのか一枚板の分厚い立派なカウンターはやはりこのお店の歴史を感じさせます。
カウンター6席とテーブル1卓、奥にお座敷席があるようですが、大人数の際には2階席も利用ができるようです。
今回は一万円でお任せをお願いしており、飲みものと追加の焼き松茸は別料金となります。
いただいたお料理は次の通り。
【お任せ 一万円】
つきだし(蛸ときゅうり)
三河湾産赤雲丹
黒藻といくらの酢のもの
さんまのポン酢
蒸しあわび
カワハギと肝のポン酢
ぶりお造り
鱈の白子
金目鯛お造り
北海道産ぼたん海老
鮭児
北海道産本ししゃも
金目鯛煮つけ
ぼたんえび頭炙り
(ここから握り)
真鯛
三河湾産赤貝
本鮪中とろ
サヨリ昆布締め
鯵
本鮪赤身
剣先いか
鱧と松茸の土瓶蒸し
松阪牛炙り
ぼたん海老
墨烏賊
本鮪大とろ
コハダ
のどぐろ
車海老
鰆
玉子焼き
(デザート)
長野パープル
【その他別に注文したもの】
長野産焼き松茸
生ビール
純米大吟醸 作(ざく) 雅乃智 (三重)
純米大吟醸 三連星 (滋賀)
自家製梅酒 ソーダ割
【その他】
焼き蛤(旬でないためサービスしてくれました)
以上で合計20,000円。
キリの良いところで丸めていただいたのだと思いますが、驚くべきはお任せ一万円コースの充実ぶり。
どの料理、寿司ネタも総じて高いレベルにあり、これが終始一貫して全くブレることなく維持されていることに感心しきり。
魚介の産地は三河湾、北海道という言葉を良く伺ったように思いますし、松茸やブドウなどは長野産。
特に北海道産は貴重な鮭児や本シシャモなどなかなかいただけない素材を中心に仕入れておられるようで、地元産の素材とはまた違った彩りを添えてくれます。
三重の仕入事情は詳しく知るところではありませんが、東京や大阪ほど仕入も簡単ではないであろうにもかかわらず地元で長く営業されている人脈などもあるのか、新鮮なネタをいただくことができました。
結局品数も驚くほど出していただき、期待を遥かに超える充実ぶり。
尚、焼き松茸は別注文ですが、握りの中に入っている鱧と松茸の土瓶蒸しはおまかせのうち。
何だか寿司屋の枠に収まりきることなく全国の美味しいものを取り寄せるというのは、私もたまに訪問させていただく東京の某店にも通底するところがあるように思え、何だか楽しくなります。
おまかせ前半のお造りなどはどれも素晴らしいものですが、軽く炙った鱈の白子や金目鯛のお造りは実に美味しく、北海道の鮭児や本ししゃもはいつも口にするような鮭やししゃもとの違いに驚かされます。
金目鯛の煮付けは砂糖控えめなとてもサラッとしたタレで魚の旨みを十二分に引き出しておられます。
握りの間に出てきた鱧と松茸の土瓶蒸しも実に美味しいものでした。
個人的には寿司は詳しくないので、寿司好きの方がどういった評価をされるのかは分かりませんが、酢の味や香りが優しめに思える舎利は小さめ、ネタの存在を比較的強調している印象。
口の中での舎利の解け具合が絶妙で、このバランスの良さはかなり好み。
ネタの味がしっかりと楽しめる上に舎利が決して邪魔することなくネタを支えているように思えます。
江戸前のように業を駆使した寿司というよりはネタの良さを前面に出した寿司といったところ。
軽く炙った柔らかい松阪牛まで出てきたのにはさすが三重だなぁと驚きましたが、全てのネタが高いクオリティです。
場所代によるコスト的なメリットもあってか、一万円のおまかせで想定しうる品数を大きく上回るネタを楽しませてもらいました。
ちなみに追加でお願いした焼き松茸。
値段もそこそこいくものなので、ご主人の腕前を拝見してから、と思っていましたが、最初の2~3品をいただいて、杞憂だったと思い即注文。
握りに入る前のタイミングでご用意いただきました。
土瓶蒸しとかに使った余りとかじゃなく、かなり大きなものを丸々ひとつ使っていただいたようで、かなり壮観。
もう少し手加減していただけるかと思いましたが、注文される方は覚悟してご注文してください。(笑)
せっかくこういう機会を得た時くらい、ケチケチ食べても美味しくないですからね。
もちろん香りも素晴らしいのですが、コリッコリッとした食感もまた見事なもので、土瓶蒸しの松茸とはまた違う魅力を感じます。
今年の松茸の締めとするには十分なクオリティでした。
お酒も前日に別のお店でいただいてあまり合わないかなぁと思っていた作(ざく)も、この雅乃智は例外。
保管状態も良いからなのか純米大吟醸であるからなのか、これは美味しい。
三重県内で人気があるのもよく理解できるお酒です。
ご主人は料理を作るのにお忙しいながらも常に柔かさを忘れることなく、人柄の良さを思わせます。
女将や大女将もかなりの気配り上手で終始居心地の良い雰囲気がお店全体にいきわたっていました。
味のみならずこのお店のファンになる方のお気持ちがよく分かります。
終始心地良さを感じながら美味しい食事を愉しませてもらいました。
美味しいことは言うまでもなく、こちらは雰囲気含めてファンになりました。
もう少し寒くなったら、ふぐが始まるそうです。
その時期に行けるかどうかは分かりませんが、こちらは何としてもまた行きたいお店。
また時間を作ってでも再訪してみたいと思います。
3位
1回
2015/05訪問 2015/05/28
【再訪】(2015年5月)
東京在住時によくご一緒させてもらっていたレビュアーさんとともに再訪。
個人的にはこの近辺で一番美味しいんじゃないかと思っていたお店なので、自信を持って推してみました。
電話してもずっと満席続きで半ばあきらめていましたが、ウェイティングも少なくなったこともあり席が空き次第電話連絡してもらうことに。
前回の訪問でもいただいていた「大将おまかせ串」を注文した上で幾つか追加。
ちなみにこちらではメニューにない鳥刺しがあり、まずこれを頼んでみました。
胸肉、ハツなどと並んで、極上白肝や白子も加わっているのが魅力的。
ご一緒させていただいた方によると、白子などは余程自信がないと刺身で出てこないんだそうです。
醤油と塩の入ったごま油の2種類が出されますが、個人的にはごま油の方が鶏肉の味を損なわないように思います。
極上白肝はねっとりとした食感ながらもスッキリとした旨さ。
極上と言うだけのことはある白肝です。
白子も鳥刺しで食べたのは初めてですが、とても美味しい。
これ以上の白子っていうものにはそうそう出会うことはないかもしれません。
今回はご一緒させていただいた方の適切なチョイスもあって、串についても前回訪問していた時よりお店の実力がよりクリアに理解できる内容となりました。
中でも気に入ったのが、ぼんじり、地鶏もも焼き、ガツ、ちょうちんなど。
サクサクした食感のぼんじりは、良質な油の旨みを十二分に感じられる秀逸な串。
もも焼きは串ではありませんが、地鶏らしいギュッと締まった肉質にパリッとした皮の組み合わせがこれまた見事。
噛むほどにじわっと感じられる旨みが素晴らしい一品です。
鶏のガツ(胃)は多分口にするのは初めてですが、こんなに旨いものだとは思っていませんでした。
相変わらず野菜も美味しく、〆に注文した鶏ガラを使ったスープで作るお茶漬けと塩らーめんも実に鶏の旨みを活かした味。
改めてこちらの良さが再認識できました。
ご主人も東京などの有名店に食べに出かけるなど、かなりの勉強熱心な性格のよう。
だからこれだけのクオリティが出せる実力が身についたのでしょうけど。
まだまだ人気が出そうなお店ですね。
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【初訪】(2015年4月)
かねてから訪問してみたかったこちらのお店。
ある雑誌によると、ご主人はたかだ八祥で10年修行された後、名古屋の焼き鳥屋で修行を積み独立に至ったとのこと。
食材についてのきちんとした素養のある方が提供される焼き鳥を味わってみたいと思い、事前に予約の上で訪問してみました。
ちなみに私が訪問した週末は、開店と同時に10人程度が座れるカウンターと2つあるお座敷席は全て予約客で満席。
平日もサラリーマンが多いエリアであることを考えると、予約は必須かと思われます。
鳥串は多くのメニューが300円で野菜串は250円という設定。
3,500円でコースにも出来るようですが、今回はアラカルトで気になる料理もあったので、大将おまかせ串というメニューを選んでみました。
但しこのメニューは止めてもらいたい一本前に申し出ないと、際限なく串が出てきますのでご注意を。
鶏は滋賀のものだかを使っているような記載があったような気もしますが、定かではありません。
また今回は注文しませんでしたけど、横のお客さんはメニューには書いてない鳥刺しの盛り合わせみたいたものを注文されていたので、次回の訪問時には是非いただいてみたいと思います。
案の定どの串も美味しくて火入れの強さもブレることなくベストな状態を見極めて焼き上げられているように思います。
特に美味しかったのはつなぎ、つくね、極上白肝。
つなぎはハツモトとか呼ばれたりする部位かなと思いますが、太い血管かと思われるコリコリした食感も良くて特に美味しいと思いました。
つくねも大きいのに火の通し具合が絶妙で、大葉?や何かの薬味なども混ぜ込んだ風味が魅力的。
極上白肝は値段は張るので注文しようか悩んでいたところ大将おまかせ串のひとつとして出てきました(笑)。
癖もなく蕩けるような味わいに納得。
鶏串はどれも素晴らしいものばかりですが、特に野菜にはご主人の和食の素養が生かされているように思いました。
愛知産の蓮根はちゃんと歯応えもありながらもネットリとした糸を引く食感。
こういう蓮根は永らく口にしていなかったような気がします。
金針菜は百合の蕾だそうですが、百合の独特な臭みのようなものは全く感じず、串でそのまま食べても非常に美味しい素材です。
鹿児島産とだけ書いてあったタケノコは、前日に東京の寿司屋で京都の物集女のタケノコをいただいていたこともあって食べ比べのような感じになってしまいましたが、クセもなくサクッと心地よく噛み切れる歯応えが秀逸。
タケノコの良し悪しは私にはよく分かりませんが、この食感には感動しました。
しいたけブラザーズ(同じ岐阜県内の椎茸栽培の会社です)のしいたけも幻のトマトと言われる愛知の加藤農園のフルーツトマトももちろん美味しくて、野菜に関して言えば他の焼き鳥屋の倍かそれ以上に美味しいように思います。
こういった類のお店が鎬を削るようなエリアでは焼き鳥をもっと安く提供するところもありますが、こちらは素材自体はかなり良いものを使っておられるようですのでこの値段も個人的には納得のいくものでした。
それ以上に岐阜というエリアにおいてはこのクラスの良店は非常に貴重であって、このお店が岐阜という地にあることこそ喜ぶべきかなと思いました。
また機会を作って訪問してみたいと思うお店でした。
4位
1回
2015/05訪問 2015/05/06
神戸に面白そうな中華のお店があったんですが、2ヶ月くらい前に予約の電話を入れてみたら運良く席が取れたので、東京在住時によくご一緒させていただいていた現在大阪在住のレビュアーさんをお誘いしていってみました。
岡本から徒歩で20分前後歩き、商店街を抜けた辺りの分かりづらい場所。
ご近所さんならともかく、地縁のない私には食べログがなかったら絶対に出会うことのなかったお店です。
改装が終わったばかりらしく、この日から営業再開されているようで、店内は真新しいモダン中華という印象。
一方メニューを拝見すると、北京とか上海、四川という地名があったり、素材にも仔羊や明石タコ、デザートにはこしひかり米なんて名前も見られたりするので、いわゆる創作中華に近い位置付けかもしれません。
シェフは日本人の方のようですが、中国で修行経験もおありのようなので中華の基本はおさえつつご自身の創意工夫も加えておられるということでしょうか。
ちなみにお店の公式HPには事前予約メニューもあったりしますが、雛鳥の塩釜焼きとか丸鶏の粥仕立てみたいなメニューは、鶏丸々一羽使うので7〜8000円、4名程度に向くらしく、興味があったものの今回は見送りました。
お店のオススメメニューには赤い下線が引いてあるようで、今回は全てこちらからの注文です。
【口水鶏】
よだれが出るくらい美味しい、ということからそう呼ばれるよだれ鶏。
そう頻繁に食べる料理でも無いんですが、これは結構なレベルの味。
仄かに辣油の辛味を感じる複雑玄妙なタレがとても美味しくて、中華の良店の中でも極めて非凡と言っていいように思います。
最初からこういう料理をいただけるとは、次からの料理に否が応でも期待させます。
【香菜のサラダ 北京“老虎菜”】
店名を冠したサラダですが、香菜、いわゆるパクチーを使っているようで、同時にサラダとしては辛味も結構効かせているエッジを感じる味。
パプリカや鶏肉も入っていて、かなり満足できます。
【家鴨のメイクイル酒風味のロースト】
メイクイル酒は王編に久、王編に鬼、露に酒と書かれていました。
入店時には、北京ダック風に皮がパリッと焼かれた状態で一羽丸々店頭に吊るされていたんですが、それを捌いて提供されました。
皮のパリッと感とジューシーな身質のローストは素晴らしい出来栄え。
奥には脂身の多い部分も入れてくれていますが、これまた脂の旨さが見事な一品。
下には大豆を煮たようなものが敷いてありましたが、ピーナッツやカシューナッツとはまた違った印象もあって面白い趣向かと。
【トマト焼売】
本来3個750円のところ、2個で対応していただけました。
トマト焼売とはどういうものが出てくるのかと興味津々でしたが、予想に反してトマトはプチトマト。
しかもこの大きさで1個250円とはやや強気な印象も感じるものの、期待を上回る味であったのも事実。
トマトの爽やかさを活かしつつも、トマトばかりが前面に出ることなく肉の旨みをしっかりと感じます。
トマト餃子とはまた違った印象の料理で良かったです。
【仔羊のキャレ 十三香粉炒め】
いわゆるスペアリブ状の部位のようで、その上にはクミンやフェンネル?、八角などのスパイスとともに炒められた香草類が載っているよう。
見た目にも柔らかそうな仔羊のキャレは食べなくても絶対に美味いと分かります。
当然食べますけどね^ ^
クセもなくジューシー且つスパイスの香りの効いた肉は、難なく噛み切れる柔らかさ。
スパイスの旨味を吸った香草類と一緒にいただくと、肉の味も更に数段階昇華。
素晴らしく美味しくて、この料理はこの日一番でした。
【アオリイカの葱山椒ソース】
絶妙な火加減で炒められたアオリイカ。
一見バジル炒めのようにも見えますが、品名の通り葱と山椒を叩いたもので調味しているんだそう。
山椒が入っているために軽く痺れる感じと柔らかいイカの食感が絶妙。
【叉焼と白葱の和えそば】
これまた最高。
ピーナッツ油をまとわせたという麺は、手打ちのようなゴツゴツした平らな麺。
その艶やかな麺を口にした瞬間に、「美味しい」と感じます。
味を感じる以前に、ピーナッツ油をまとった麺の食感と風味がそう感じさせるんでしょう。
まさに五感を刺激するような料理です。
当然味も素晴らしく美味しいものの、食感と風味だけで美味しいと感じさせてしまう技術には驚きました。
【こしひかり米とココナッツのムース 陳皮と小豆のソース】
ムースは柔らかくブラマンジェ状に固められていますが、ココナッツの食感はところどころ感じるもののお米感はあまり無くて食べやすい。
小豆のソースも陳皮の印象はあまり無いんですが、多分入ってないと単調で全く違ったものになっていたのかも。
料理は全体的に創作の要素も感じさせるものの、本場中国で修行されたという通り軸足はブレることなくしっかりした中華料理であったように思いました。
その上で一品一品に対してシェフが自分なりの新しい知恵を込めているのかと思われますが、これが中華として私が予測しうる範疇を超えたものばかりで常に楽しい気持ちを感じながら食事をさせてもらいました。
また使う素材などに対しても先入観を持つことなく取り入れているためか、今までの中華ではあまり見かけないものを使っておられたりして、まさにこちらでしか味わうことのできない唯一無二の料理の数々を堪能させてもらったように思います。
ちなみに夜の部のオープンは17時半でしたが、前半と後半の予約客を完全入れ替え制にされているようで、割と早めのラストオーダー。
夜の部の後半は確か20時くらいのスタートだったかと思いますが、他のお客さんもわきまえておられるのか、誰も飲んだくれて長居することなく19時半前にはきれいに誰もいなくなっていました。
こういうところかしてもきっと地元の方にも大事にされているお店なんだろうと思います。
一度の訪問で終わらせてしまうにはあまりにも惜しいお店ですし、また機会あれば是非訪問してみたいと思います。
5位
1回
2015/09訪問 2016/03/09
【2016年2月】再訪
今回の訪問は週末の午後だったので、目的のショコラ・オ・ポワールは既に売り切れ。
こちらの商品の中では、ショコラ・オ・ポワールが一番好みと言っていいのですが、やはり人気もあるようです。
タルト・オ・フレーズ(630円)、アマンディーヌ(580円)、プランタン(320円)を購入しました。
プランタンはシンプルな焼き菓子ですが、甘さをしっかり感じさせる本場フランスの味。
東京でもこの手の味を出すお店は稀有なので、名古屋にあるのはありがたい限りです。
【2015年9月】再訪
名古屋に来る機会があったので、ついでにこちらに寄ってみました。
相変わらず魅力的なタルトが多いですが、今回はシャンティイ・フロマージュという、レアチーズケーキと前回も購入したショコラ・オ・ポワールを購入。
隣の棚にビニールで包んだフィナンシェのような焼き菓子が見られたので、これも2種類購入してみました。
てっきりタルトのお店だとばかり思い込んでいましたが、写真2枚目のフランボワ・オ・ショコラのPOPにはこちらの看板商品であるという記載がありました。
写真では大きさは分かりづらいですが、フランボワ・オ・ショコラ、プランタンともに直径5センチほどの手のひらにすっぽり収まる程度の大きさです。
タルトについては相変わらずのクオリティの高さ。
ずっしりとくる複雑な甘みは、他に類を見ない感動的なおいしさ。
東京在住時にも多少洋菓子のお店は訪問していたつもりでしたが、名古屋はおろか東京でもこの手のお店はあまり多くないかもしれません。
もう値段とかあまり関係なく気に入ってます。
今どきの若者にとってはややクラシックで甘さが強いと感じるかもしれませんが、昨今評価されているような線の細いスイーツ店に若干飽き飽きしていた私にとって、フランスからそのまま持ち込んできたかのようなずっしりくる重厚なフランス菓子の良さは口にするたびに新鮮な感動があります。
私にとっては名古屋に足を運んだ際には立ち寄らずにはいられないお店になりつつありますので、是非今後も訪問させていただきたいと思います。
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【2014年12月】
名古屋駅にも程近い住宅街には、京都の町家にも似た民家を活用した雰囲気の良さ気なお店がポツポツと見られます。
こちらは洋風に佇まいを改装されているのか、周囲の建物とはやや趣が異なります。
感じの良さそうなお店です。
お店のHPによると、こちらのマダムは子育てがひと段落してから製菓を学び始めたらしく、地元の製菓学校で学んだ後に2005年には渡仏してアルノー・ラエールで修行されたということです。
元々製菓が好きだったり素養もあったという事情はあったのでしょうが、その行動力に驚くとともに敬意の念を感じます。
フランス焼き菓子を販売されているようで興味があったのですが、たまたま名古屋に来るのが定休だったりしてなかなか訪問できませんでした。
今回は定休日でない日に名古屋に来たので、用事を済ませて真っ先にこちらに訪問です。
扉を開けてすぐのところに商品が陳列されていますが、こじんまりとしたお店の奥には全体の1/3くらいをガラス張りのキッチンが占めています。
残りのスペースには2名用のテーブルが1卓だけありますが、既に予約が入っているらしくreservedの札が置かれていました。
マダムお一人で全てを切り盛りされておられるのもあってか商品数は限られていますが、その分個々の商品は魅力的です。
マロン・タルト、ショコラ・オ・ポワール、アマンディーヌの3種類を選択してみました。
ちなみにケーキ3つで2千円を超えたのは初めてです。
【ショコラ・オ・ポワール】
煮込んだ洋梨のスライスとともにアーモンドスライスが添えてあります。
適度な甘さの洋梨としっとりとした生地が実に美味しいのですが、そこにアーモンドのスライス、フチのサクッと感が脇から引き締めているような印象です。
下には小さなチョコチップが散らしてありますが、素材を殺さずにチョコの香りを感じさせる構成は実に絶妙。
一見無骨にも見えるタルトですが、非常に繊細さを感じさせるものでした。
これはかなり気に入りました。
【マロン・タルト】
栗が日本産でないのか、いかにも『栗』という味わいのするタルトではありませんが、中のマロンペーストが実に濃厚で食べ応えのするタルトです。
上にはアーモンドスライスなどの他にもピスタチオかと思われる緑色の粒も見られたりして、ナッツの旨味が凝縮したような味わいです。
これもかなり美味しい。
【アマンディーヌ】
フランスの伝統的なお菓子という、アマンディーヌ。
アマンディーヌとはアーモンドのことだと思いますが、風味が確かにアーモンドの良い香り。
カップ型の外側の生地はサクッとしていながら内側のしっとりとした香りの良い生地のコンビネーションは素晴らしく美味しい。
上には何かのジャムが載っていて個人的にジャムは好みでないんですが、これはジャムが無いと逆にボヤけた感じになっていたかもしれません。
【感想】
焼き菓子でも乾いたクッキーのようなお菓子はあまり好きではないのですが、こういうしっとりとしたバターやミルクの風味が充分感じられる洋菓子は大好きなのでとても気に入りました。
全体的に女性の作られるものにしては骨太で重厚、どっしりとした洋菓子という感想を持ちました。
昨今多く見られるような線の細いスイーツとは明らかに一線を画していて、あくまで現地で食べられているものを再現しているような感じ。
傾向はやや異なるとは思いますが、東京のオーボンビュータンにも似た、良質な伝統的フランス菓子を味わえる数少ないお店のように思います。
値段は確かに高めではありますが、個人的には味に対しての魅力の方が優先してしまい、あまり気にするところではありませんでした。
それよりもこういう稀有なお店が名古屋にあるという環境こそ喜ぶべきだと思います。
全てマダムお一人での作業のようなので作れる種類にも限りがあるようですが、近くに行った際には是非再訪したいと思います。
ごちそうさまでした。
6位
1回
2015/05訪問 2015/05/08
JR芦屋駅から徒歩10分程度。
小さな賃貸マンション一階の一角にパン屋さんがあります。
近所のマダムがひっきりなしに訪れているようで、その中に割り込ませてもらいました。
見たところ種類はあまり多くないようで、シンプルなものばかり。
そんな中から購入したのはクノーテンとロジィーネンブロートヒェン。
ロジィーネンブロートヒェンは平たく言えばレーズンパンです。
持って帰ってから食べても良かったのですが、都合のいいことに隣に公園があったのでそこで腰掛けていただきました。
クノーテンは、割ってみると柔らかくモッチリしていて、これを見るだけで食欲をそそられてしまうようなパン。
全粒粉を使っておられるようで、小さな茶色いものがたくさん見えます。
実際香りがものすごく良くて、シンプルに見えながらもパンとしてかなり高いレベルにあることは私のような素人でも容易に分かります。
一口かじってみると、ふっくらモッチリした食感と全粒粉のフワッとくる香りが素晴らしくて、その後は夢中で食べ切ってしまいました。
冷静に食べてみるならもう一個買っておいたほうが良かったかも。
もう一回追加で買いに走ろうかと真剣に考えたほどです。
食べ過ぎてもいけないのでやめておきましたが。
ロジィーネンブロートヒェンは、クノーテンに比べるとやや固め。
でもレーズンの甘さが控えめで、クノーテンのようでありながらもクノーテンとはまた違った味。
レーズンなどが入ったパンは好きなので、これまた美味しく食べられました。
総菜や砂糖、クリームの味に頼ることのないパンの中では、今まで食べたパンではここが最高に美味しいと感じたパンかもしれません。
何よりたいして高くもないようなシンプルなパンを2個購入しただけで、こんなに高い満足感を得られたということが驚きでした。
パンそのものがどれだけ美味しいのかということです。
その一方で、なまじ通えるようなところでは無いパン屋さんなら、知らないままでいたほうが良かったのかもしれないなぁなんて思ったりもして。
しばらくはこのパンの禁断症状に苦しみそうな気がします。
7位
1回
2015/10訪問 2015/10/20
JR四日市駅から数分ほどのところにある鰻屋さんにやってきました。
お店の前のスペースも何台か止められるようにはなっていますが、周辺にも小さな敷地を駐車場とされているようで数ヶ所こちらのお店の名前の入った看板を見かけました。
予定より早く四日市駅に着いてしまったので、こちらに着いたのは開店少し前。
それでもご主人は快く中に招き入れてくださり、「時間かかるので、待っとってーね。」と座って待たせてくれました。
こちらは事前に電話で確認した限りでは予約を受けておられないようだったので多少早めを目指していたのは事実ですが、それでも開店時には他のお客さんはおられず。
ポツポツとやってくるものの、たまたまこうなのか週末のお昼前でも3〜4組といったところ。
お昼になればもう少し様子は違うのでしょうが、鰻で名の通ったお店は少なからず開店時から混雑するものと思っていた私としては、やや肩透かし。
こちらは個人住宅の1階を店舗とされているようで、店員さんもどうやらほぼ皆さんご親族のよう。
70前後のご主人と奥さん、オープンくらいの時間に「ただいま」と言いながらやって来てそのままエプロンを身につけて厨房に入る娘さんらしき方など。
店内の雰囲気もどことなく家庭的で、ホッと落ち着けるお店のようです。
メニューは限られているようで、お店の入り口近くの壁にかかったもののみ。
今回はそこから上丼(2,500円)、きも焼き(320円)、きゅうり漬物(220円)を選んでみました。
上丼は一尾使った丼で、カリッと直焼きされた鰻が丼から豪快にはみ出しております。
見た目には以前訪問したことのある、愛知・尾張瀬戸の田代を思い出すようなビジュアル。
やや甘みの勝るように思えるタレは必要最小限にとどめ、あくまで鰻本来の旨さを感じさせるような仕上がり。
皮はカリッとさせながら、身はじわっと感じられる旨味が絶妙です。
ご飯はやや冷ました硬めのものに、これまたタレを少なめ、必要最小限の量をかけておられるようです。
一見豪快にも思えるうな丼ではありますが、その実丁寧な仕事による極めてバランスのとれている完成度の高いうな丼のように思いました。
加えて個人的な嗜好としても、この丼は相当好み。
お店を出てからもしばらくは、良い鰻が食べられたという充足感に浸ることができました。
自分にとっての最上、とは言わないまでも、近所にあれば普段使いできるお店としてこの味、このお値段、この雰囲気でついつい毎週のように通ってしまいそうな魅力的な鰻屋さんだと思います。
きも焼きはやや焦げの苦味も感じる、強めに火入れした印象。
鮮度が悪いとは言わないまでもうな丼程には良さを感じませんが、うな丼以外に何かつまみたい方には良いのではないでしょうか。
うな丼に時間がかかるかと思い注文したきゅうりの漬物ではありましたが、結局注文したものが一斉に出てきたのであまり意味をなさなくなりました。
一本くらいのきゅうりを浅めに軽い酸味と塩味、微かな辛味を効かせてたものに漬け込んでいるようです。
皆さん親切丁寧に応対して下さり、満足感とともにお店をあとにしました。
店員の皆さんも和気藹々としておられるように見受けられ、ご家族経営ならではの良さの感じられるお店であったと思います。
前述した通りこちらは味のみならずお値段も良心的、家庭的な雰囲気で迎えてくださり、決して敷居の高さを感じさせることはありません。
こういうお店が近所にあれば良いのになぁと羨ましくなるようなお店でした。
四日市に来る機会があれば、是非改めて訪問したいと思います。
滋賀県は余呉にやってきました。
琵琶湖の北に隣接して周囲7キロ程の余呉湖という湖があるんですが、その湖を臨む高台にこのお店はあります。
琵琶湖との間には合戦で有名な賤ヶ岳もあったりして、田舎町にも関わらず観光目的のハイキング姿の人達をよく見かけます。
平日は分かりませんが、週末の昼について言えば2ヶ月くらい前に予約の電話を入れて最も早い空きのある日がこの訪問日。
こちらも予約は早いに越したことはないようです。
本来は余呉駅までご主人が車でお迎えにきてもらえるらしいのですが、予約から既に数ヶ月が経ってとうにそんな事は忘れてしまっている私は、余呉駅を降りてノンビリと田んぼ道を2〜30分歩いてしまいました。
先に送迎で到着していたお客さんとともに既に予約分のセッティングがされている席に着席です。
どうも接客対応は奥さまがほぼ全て行い、厨房はご主人を筆頭に息子さんとお弟子さんの計4人という構成。
あまり細やかな接客を求めるべきではないかもしれません。
お昼は8千円と1万円の二種類があるようですが、どうも量の違いではなく質の違いだとのこと。
そんなことを言われるとせっかくだから1万円としか言いようもなく、今回は1万円のコースをお願いしていました。
それに地酒の冷酒、紫霞の湖(しがのうみ)をつけてもらいました。
【鯖の熟鮓】
鯖を寝かせているようで、ここにトマトのソースと細かくフワフワに削ったチーズが添えられていました。
この組み合わせにも驚きましたが、鯖が予想していたよりもずっと食べやすいことにも軽い驚き。
しかもしめ鯖よりむしろ食べやすいというか、味にも深みが感じられて美味しいです。
トマトのソースとチーズも思っていたほど濃い味でもなく、トマトのソースなどは言われなければ分からないほど。
この大胆ながら繊細な組み合わせ、最初から実力の一端を見せていただきました。
【鮒のお造り 子まぶし】
私が子供の頃は、泥臭い鮒は甘露煮のような濃い味にしか向かないという考えで、実際そういう調理しか見ることのない素材でした。
ただこの鮒は全く臭みも何もなく、言われなければ鮒なんて到底分かりません。
逆に特徴らしい特徴は無くなってしまっているようにも思えなくはないものの、卵がまぶされた鮒をわさび醤油でいただくと昔の鮒の印象が払拭されていくようです。
醤油も煮切りをされているようで、これが実に美味しいお醤油です。
【琵琶湖産ホンモロコ 飯(いい)のソース】
希少な琵琶湖産ホンモロコ。
3尾のうち1尾は子持ちでした。
ホンモロコが旨いのは言わずもがなですが、この飯のソースというのがすごい。
どうも飯というからにはご飯を発酵させたものなのか、微かに感じる酸味と豊かな香りが絶妙な味。
正直このソースだけ舐めてみても塩分もほとんど無いと思われ、ほぼ味らしい味は感じないのですが、これをホンモロコに付けると付けないとでは全く違う。
正に素材を引き立てるためのソースといったところ。
横に添えられたもみじがさという山菜も肉厚な印象で美味です。
【すっぽんの蒸し】
いわゆる茶碗蒸しのようです。
蓋を開けるとフワッとくる生姜の香り。
出汁の風味の効いた茶碗蒸しは上に載ったすっぽんの身以外は葱などの薬味だけ。
香りはあるのに生姜の辛味は感じず、またすっぽんも強い味付けが施されているわけでもなく、まさに茶碗蒸しの風味で食べさせるような料理。
しみじみ美味しいです。
【天ぷら】
塩でいただくようですが、結晶が細かく崩れているようにも見え、焼いたりしているのかも。
この塩も旨みのあるもので、かなり良いものであることは言うまでもなさそう。
まずは稚鮎。
女将さんがおっしゃるには、稚鮎から小鮎に変わるくらいの大きさなんだそうです。
これは食べた瞬間に強い衝撃。
何度も稚鮎なんて食べたことはありませんが、この美しいほどの美味しさにはこれからの生涯で何度も出会うことはないだろうことは容易に想像がつくような味。
もちろん産地のすぐ脇という「地の利」と「旬」という、この上ない条件が揃っているからこそ、ではありますが、この天ぷらというジャンルでご主人の調理技術の高さを改めて実感。
ふっくらして噛むと微かな苦味を残して崩れるようになくなる稚鮎。
薄くカラッと揚がった衣は、まさにこの稚鮎を一番美味しく感じさせるためのもの。
素材を活かす調理技術をお持ちだと思いました。
念のために補足を加えますが、一般の鮎は川で孵化して海に下り3センチほどになるまで汽水域に生息した後、川を遡上して苔などを食べ成魚に育ちます。
それに対して琵琶湖産の稚鮎というのは少々特殊で、孵化した後に巨大な淡水湖である琵琶湖に下るのですが、何故かそのままそこに住み着いてしまうらしく、食べる餌も一般の鮎のように石についた苔ではないわけです。
そのためか大きくなっても7~8センチくらいのままで、『香魚』と呼ばれる一般の鮎のような香りがあるわけでもありません。
ちなみに琵琶湖の稚鮎を他の川に放流するときちんと成魚に育つとも言われているので、単に食べるものの問題かと思われますが、そういう意味では琵琶湖の稚鮎と一般の鮎とは違うものと認識しておかれた方が良いと思います。
そして山菜の天ぷら。
5種類あるようで一応名前も教えてくれましたが、コシアブラ、タラの芽、ヤマブドウ以外は忘れてしまいました。
写真を見返すと、残り2つのうち一つはもみじがさのようですね。
山菜にはこれまでの人生で興味を持ったこともなく、然程期待もしていなかったんですが、こちらの天ぷらは実に美味しい。
山菜という名前に対して勝手にイメージしていた、食べにくさというものとは全くの無縁。
若干のほろ苦さを感じるものはあれど、実に心地よいほろ苦さであって、嫌な苦さではありません。
稚鮎と同じく軽くカラッと揚がった衣は、素材の味を数倍美味しく感じさせてくれるようにも思えます。
【稚鮎の煮あげ 荏胡麻のせ】
今度のはかなり小さなホントの稚鮎。
これを酢を使って煮あげておられるようで、やや酸味のある仕上がり。
とても柔らかくて、よく形を崩すことなく煮あげたなぁと感心してしまうほど。
これも塩気はほぼ無くて、横に添えられた花山椒の香りや荏胡麻の風味で実に美味しくいただきました。
【自家製発酵からすみとその天ぷら】
ねっとりとしたからすみは極上の味わい。
これでお酒が何杯でもいけそうな濃厚さは他にあまり類を見ないような完成度。
一方それを天ぷらにしたという一品は、加熱して生まれる魚卵の粒の食感と、一層増した風味が極めて秀逸。
このタイミングを見誤ると逆に臭くなるんじゃないかという、ギリギリのところ。
からすみは正直なところそんなに好きなものとも感じていなかったんですが、これは別格。
実に美味しいです。
【猪肉 黒胡椒の実添え】
猪肉に黒胡椒の実を添えた一品。
猪肉は寝かせてあるのか、新鮮なものとはまた違った風味。
特別な味付けはされていないように思います。
脂も思っていたよりキメが細かくて、肉全体が甘く感じられます。
それ以上に黒胡椒の実が何かに漬け込んであったのか、ピリッとする中にちゃんと味を感じて実に鮮やかな風味です。
むしろこっちの方こそこの料理の主役なのかと思えるほど。
女将さんは、これだけでお酒が飲めるくらい、なんておっしゃってましたが、あながち間違ってないですよ。
軽く煮た印象のリンゴが添えてあるのもユニークです。
【熊猪鹿のつみれ鍋 花山椒風味】
これを含めてちゃんとした料理名があるわけではないので、ネーミングは私が勝手につけてます。
毎年11月中旬に猟期に入るそうですが、この時期に出てくるのはその頃に獲ったものでしょうか。
熊と猪、鹿の肉を粗挽きで小さくギュッと固めたつみれを、一連の流れでは初めて濃い味のスープでいただきます。
そして食べる前に投入する花山椒の量が半端ない。
花山椒は山椒の実の香りを優しくして香りは豊かにしたような印象ですが、痺れはあまり感じません。
ただでさえ香りの良い花山椒をこれでもか、というくらい入れるので鍋全体が非常に華やぎます。
具はこのつみれと花山椒以外にはわらびとこごみだけですが、それだけで充分満足できます。
逆にこれ以上具を増やすと素材の味を損なうのかと。
この鍋の主役はむしろ花山椒とぜんまい、こごみであって、つみれは脇役と言ってもいいくらい。
雑炊を作るためにスープを3分の1残してお返しします。
【鮒の熟れ鮓】
雑炊を作ってくれている間にここで真打ちとも言うべき鮒の熟れ鮓が登場。
右のものは蜂蜜をかけて、左は更にそれをパンで挟んであるそう。
こちらのこだわりでもあり、店名に入れている「鮓」の極め付けとも言える料理かと思っていましたが、この食べさせ方が意外ではありました。
蜂蜜のかかった方は熟れ鮓の独特の臭みを比較的堪能できる一品。
それでも蜂蜜の存在が熟れ鮓のクセを幾分か中和してくれているようにも思われて、案外熟れ鮓がダメな人でも辛うじてイケる範囲かも。
パンで挟んだものは更に食べやすくて、軽くトーストしてあるパンの甘みと香ばしさのおかげで、やや酸味のある具、という感じに収まっています。
ここまでいくと逆に熟れ鮓を期待して訪問される方には期待外れとなる可能性もありそうですが、この熟れ鮓という万人向けでない難しい素材をいろんな手法で多くの人が楽しめるように提案するという発想は素晴らしい。
【雑炊】
つみれ汁のスープを使った雑炊にも花山椒を遠慮なくドッと投入。
これだけ入れても風味こそ良くはなれ、味を損なうこともないので非常に便利な素材だと思います。
ご飯がスープの旨みを軽く吸う程度に作られた雑炊は卵でとじたシンプルなものではありますが、あのつみれの旨みを吸ったスープの良さを存分に味わえます。
良いものには過剰に手を加えないのも、やっぱり素材の良さを充分見極めておられてこそだと思います。
そして付け合わせのお漬け物がまた美味いんです。
手前のものは素材は聞きませんでしたが、米粒らしきものがみえたりもしたのでこれまた発酵させた素材を生かしておられるのかも。
【発酵アイスクリーム】
発酵とアイスクリーム?となりますが、俄かには理解しきれない組み合わせ。。。
ちなみにこれについては特許を取っておられるようです。
詳しくは聞きませんでしたが、発酵させたものを冷やしてアイスクリーム状に固めたのかなぁと推測しました。
記憶は定かでありませんが、提供される際に「飯(いい)のソース」という言葉を聞いたようにも思いますので、ひょっとしたらホンモロコにかかっていたソース、あるいはそこに更に手を加えたものを使用されているのかもしれません。
舌の上で溶けると何だか新しい類のチーズのようなふくよかな風味が膨らみますが、これも私の拙い語彙力ではなかなか表現しきれません。
濃厚でありながら繊細な味わいのするアイスクリームでした。
【全体の感想】
ほぼ12時から始まった食事は、終了したのが14時40分。
時間の流れを全く忘れてしまうほど感動的な時間でした。
全てのものが想像を遥かに超える料理ばかり。
発酵させたものだけにこだわらず、その土地の旬のものを美味しいままに提供するという、いわば両極にあるものの良さを理解しておられることからもご主人の視野の広さを窺わせます。
またその素材を活かす表現手法としてのご主人の調理技術がかなり高いことも、料理の完成度の高さに大きく寄与しておられるのではないかと。
素材の良さを生かしつつ、むしろ本来の良さを超える良さを引き出しておられるのではないかと思うほど。
訪問前はこの不便な場所にあることが不思議でもありましたが、訪問してみて納得。
これは客を集めるための「地の利」なのではなく、あくまで良質な素材を入手し美味しいまま提供することができるための「地の利」。
その土地で採れた旬の素材を、美味しいままに調理して提供する。
至ってシンプルでありながらも理に適った考え方です。
実際ホンモロコや稚鮎、山菜などは、都会の名店と言われるようなお店でいくら高額な代金を支払っても絶対に味わえないような逸品ばかりでした。
おそらく私の舌ではこのお店の良さの半分も理解しきれていないとも思うのですが、それでもこの満足度たるや、驚くべきものがありました。
こちらは訪問する度にその旬の食材を使っていただける楽しみがありますし、2年後3年後に訪問した時には自らの感性の成長によってまた新しい発見を感じることができるお店だと思いますので、また今後も継続的に訪問していきたいものです。