レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
2位
1回
2016/09訪問 2016/10/04
葛飾区の四ツ木というところにあるうなぎ屋さんなのですが、なかなか縁のない駅だったので長らく訪問できないお店でした。
以前のお店が立ち退きになったために最近駅の近くに新しくお店を移転されたようです。
お店の入り口には天然鰻が入荷していることを知らせる札もかかっていました。
このように仕入れに余裕がある場合は良いのですが、天然鰻をどうしても希望したいならやはり予約しておかれるのがより確実かと思います。
まずは肝の佃煮から。
使っている肝はおそらく養殖ものかと思われ、特段どうということはないものの料理が出されるまでのツナギには良いと思います。
骨せんべいと肝わさ。
これは養殖ブランドである坂東太郎のものと浜名湖産天然鰻のものが出てきました。
坂東太郎はアジとスケソウダラを餌にして天然鰻に近い味を出す目的で忠平という会社が作り上げた高級養殖ブランド。坂東太郎とは関東を流れる利根川の別称でもあります。
もちろん現在では各地の養鰻技術も進歩しているとは思いますが、依然として高い人気を誇る養鰻ブランドです。
坂東太郎の骨せんべいはパリッと軽い歯応えと、捌きたての肝わさは雑味のない旨み。やはり坂東太郎の良さを感じさせます。
しかし浜名湖産天然鰻の骨せんべいと肝わさは更に上を行くレベル。骨せんべいは野性らしく芯の通った硬さがあるので、食べやすさはともかく養殖もののヤワな骨とは明らかに違った力強い歯応えが楽しめました。
一方の肝わさも野趣に満ちた肝の旨みは養殖ものには明らかになかったもの。食べ終わってからもジンワリと舌に残る濃厚な肝の味には感動させられます。
そして鰻の珍味。ヒレ、肝、かぶとの3本がタレで焼かれて提供されます。
よく考えたら、こうして肝以外のヒレ、かぶとをいただいたのは、池袋のかぶと以来でしょうか。
意外と関東でもうなぎの串文化を楽しめるお店は少ないというのが正直な実感。捨ててしまっているなら実にもったいないことです。
中でもヒレは噛むとジュワッと溢れるようなジューシーさで、これ一本あるだけでも充分満足できるくらい高レベルな串。
かぶとは養殖ものを使っているのもあって適度に柔らかく、食べやすさがありました。
そして浜名湖産天然鰻の志ら焼。
お店で煮切ったと思われる醤油も出てきますが、ここでしか見たことがない肝塩でいただくのがオススメ。
金色に輝く塩は、塩のしっかりした旨みとともに肝の風味を感じさせる秀逸さ。この機知に富んだアイデアは実に面白いです。
白焼きは醤油に付けるよりも塩で食べる方が断然美味しいと思うのですが、意外とそうしたお店は多くありません。
料理人としてのプライドが塩だけで食べさせることを潔く思えないのかもしれませんが、実にもったいないことです。
志ら焼は関西風に、蒸さずに焼き上げたタイプ。
人によっての好みもあるでしょうが、個人的には良質な天然鰻ならば関西風に焼いただけの白焼きの方が美味しさを強く感じるように思います。
天然鰻には個体差によっての当たり外れがありますが、今回はかなり良質な天然ものらしく圧巻の美味しさ。
皮めはパリッとさせながら中はふっくらさせる、ベストのタイミングを見極めるご主人の焼きの技術の高さにも目を向けるべきでしょう。
そして坂東太郎のうな重特上。
これは素焼きした後に蒸しを入れ、その後タレを付けながら焼いた関東風。
蒸しを長く入れるほどにトロッとした食感のうなぎとなるようで、こちらは南千住の尾花ほどではありませんが比較的蒸しは長め。
地焼きエリアで育った私としては本来あまり好みとしないタイプのうなぎなのですが、こちらは最後の焼きの入れ方が上手いのかあまり蒸しによる影響は気にならず。やや控えめなタレの効かせ具合も繊細で、天然ものに近づけたといううなぎそのものの味を引き立てているように思えます。
かつてのかぶとの地焼きによる蒲焼きのような味が本来の好みではあるものの、関東風の蒲焼きとしては蒸しの短い友栄に並んで好きなうな重かな。いくら坂東太郎でもそれを生かせる技術がないと良い料理にはならないと思いますが、こちらのご主人はその腕があるから坂東太郎の良さが出せたのでしょう。
今回はいろいろ楽しめる構成だったこともあって天然もの白焼きや坂東太郎のうな重など貴重な経験をすることができました。
こちらではお昼にやってきて、ささっとうな重だけを楽しむのも良いとは思いますが、余裕があれば夜に訪問されて天然の白焼きなど楽しんでみることをオススメしたいと思います。
なかなか訪問できる機会のないエリアのうなぎ屋さんでしたが、今回はマイレビュアーさまの適切な手配のおかげで存分に楽しむことができました。
また機会があれば訪問してみたいお店でした。
3位
1回
2016/07訪問 2016/07/28
鞍馬口で降りて北に歩くと大谷大学の手前にインド料理のお店があります。
思いっきり居酒屋の居抜き風な空気を漂わせる店内には、現地のホテルなどに勤めていたというインド人オーナーシェフと接客担当の日本人スタッフがおられます。
こちらを訪問されておられたマイレビュアーさまのレビューをカンニングしてランチミールスよりも圧倒的にディナーメニューのレベルが高いのだと知っていたので、ランチメニューには目もくれずディナーメニューからのチョイス。
いずれの料理もカレーリーフ、カルダモン、シナモン、クローブなどスパイスの輪郭をしっかり感じつつも見事な調和を見せています。
カレーリーフなどは自家栽培したものを枝ごと入れているらしく、ゴビチェティナードなどは鍋からその枝がはみ出ていました。
ラムローガンジョーシュは骨付きのラムがほろほろになっていて実に旨いですし、スパイスの使い方が上手いのか油の多いムスリム系の料理ながら不思議な程に軽く感じます。
ゴビチェティナードはゴビ(カリフラワー)を使った料理なのですが、ブロッコリーもどっさり入っていてスパイスの複雑さが芸術的に素晴らしく、関西では随一とも言えるスパイス使いの妙だと思います。
チェティナードというのは東京のなんどりでもいただいたことがありましたが、元々インドのタミルナードゥ地方の都市名で、昔から商人の街として栄えていたこともあり裕福な商人達がスパイスを贅沢に使った料理を食べていた風潮があったそうです。
そういう意味ではチェティナード地方のご当地料理とも言えそうなスパイスを贅沢に使った料理です。
カストリチキンは手羽元のドラム2本とカスリメティというスパイスを大量に使っています。
油も多くて辛さ控えめな料理ですが、香りも良くて軽く感じられるせいかいくら食べても満腹にならないような不思議な感覚。
チキンもホロホロで美味しい。
その他の豆や野菜をたっぷり使った、現地の味噌汁的な位置付けのサンバルなどはタマリンドだかの仄かな酸味の効かせ方も実に繊細。
日本人にも充分楽しめる味だと思います。
ジーラライスはジーラ(クミン)や炒ったカシューナッツなど入った香りの良いライス。
あまり置いているお店も多くは無いので注文してみましたが、ちゃんとバスマティライスを使っていて本格的です。
ホテルで修行したということもあってか現地風というよりはややレストラン的な穏やかさもあるものの、ハイレベルなインド全域の料理を楽しめるインド料理店は全国的にも決して多くありません。
関西の本格的な南インド料理店はここ何年かで日本人経営の店も含めて増えてきたように思いますが、このクラスの現地風に秀逸なスパイス使いの出来るお店は関西でも稀有。
南インドというカテゴリーでは神戸のショナルパなども美味しいとは思ったものの、スパイスの使い方からしても個人的にはこちらの方が好みと言って良いかもしれません。
京都は和食がハイレベルですが、匹敵するほどのインド料理も楽しめるようになってきたようです。
4位
1回
2016/07訪問 2016/07/22
鹿児島市郊外の山奥にあるうなぎ屋さんにやってきました。
メニューは至ってシンプルで、うな重、うな丼、長焼きにそれぞれ普通と上がある以外はビール等があるだけ。
肝はそのまま肝吸いに充てていたり骨せんべいを付けているため肝焼きなどのメニューも一切なし。
上重(2,700円)を注文してみることにします。
こちら山奥ではありますが天然ものという訳ではなく、どうも決まった仕入先から養殖ものと思われるものを入れておられるようです。
出てきたのはお重ではなくご飯茶碗と大皿。
もはやどの辺が重なのか分かりませんが、どうもこの辺りではご飯とうなぎが別になっているものを一般的に重と呼ぶことが多いように思います。
うなぎは例によって背開きの地焼きですが、うなぎが反り返るくらいに焼きを入れた身は一瞬力強く歯を跳ね返す弾力を感じさせつつ、口の中で柔らかく解けていく絶妙さがあります。
焦げの香りも実に香ばしく、うなぎを食べてすぐにご飯を口に入れてしまうのがもったいなく思えてしまうほど。
蒲焼きだけなら東京・池袋のかぶとの味にも迫るかもしれません。ちなみに大将は既に引退してしまっていますが。
シャバシャバなタレはうなぎと食べる分には甘さも感じるように思いましたが、後で残ったタレをご飯にかけてみたらご飯が食べにくくなるほどに辛い。
シャバシャバなのはどうも砂糖をあまり効かせていないせいもあるのかと思われ、どうやらうなぎの脂の甘みでそう感じていたようです。
元々関東ではうなぎのタレは醤油と味醂だけで作っていたそうですが、かなりそういうタレに近い作りなのかな。
個人的にはかなり好みと言って良いうなぎに出会うことができました。
気軽に足を運べる場所ではありませんが、また鹿児島にやってくることがあれば再訪してみたいお店です。
調布駅近くの分譲マンション1階に入っているうなぎ屋さんに行ってみました。
過去にはいろいろシステムが変更になっているようですが、現在は昼夜とも7,700円のコースのみとなっており、うな重のみいただくことはできなくなっているようです。
お店のHPには事前にメールにて予約してもらうための連絡先があったのでメールで予約。確認の返信があった段階で予約確定。
電話でも構わないようですが、時間によっては出られない時もあるらしくメールの方が良いと思います。
ちなみにこちらは写真不可である旨の記載が店頭にあり、近年では他のレビュアーさま方も写真をアップされていないようなので敢えて確認もせず一切写真は撮りませんでした。
客が入ってからうなぎを捌き始めるようで、最初に時間がかかる旨の説明が店主さんからありました。
ちなみに鰻は色合いなどからして明らかに養殖もの。産地などはどこにも謳っていないようですし敢えてこちらからも聞いていません。
最初は茶碗蒸しから。
椎茸と三つ葉が散らしてありますが、中にはうに入り。ムラサキウニと思われ香りも豊かです。
続いてはうなぎの白焼き串。
蒸さずに焼いた串のようで塩が軽く振られております。
すだちを絞っていただくと、フンワリと漂ううなぎの香りも良く、皮下の脂がジュワッとほとばしるように溢れ出て美味しい。うなぎの食感を残しつつ柔らかくほどけるように無くなっていく身は絶品。
養殖のうなぎだと思われるので天然もののような力強さこそ無いものの、完成度の高さは一流店クラス。まるで質の高い白焼きを食べたような満足感を得られます。
この白焼きが上手く焼ける方というのはうなぎ料理については外さないと勝手に思っているので、この時点で期待がグッと高まりました。
ちなみに白焼き串には、口直しの味付き大根おろしが付きます。
そして銀杏串。
歯応えのしっかりした銀杏を楽しめました。
次はうなぎのタタキ。
作り方が独特で、大根の桂剥きを海苔に見立てて、海苔巻きの要領で蒸してから焼いた後のうなぎの身とトビコ、大葉、刻みネギを巻き、それを一口大の大きさに切り揃えてポン酢に浸して提供されます。
これだけ見ると想像のつかないような組み合わせではありますが、見事なほどの一体感ある味わい。大根のシャキシャキした食感も意外性を感じさせながら違和感なく美味しく、うなぎそのものの良さも決して消さない絶妙な塩梅を保っているように思います。
タタキという簡単な料理名では物足りなく思えてしまうくらい創造性溢れる料理でした。
うなぎが絡まないものはさておき、うなぎが絡む料理について言えば満足度の高いレベルが楽しめるように思います。
続いては真鯛の昆布締め。
ネットリとした口当たりの鯛が2切れ出されますが、それぞれに醤油が一滴ずつかけられていました。
鯛を語れるほどには鯛に詳しくもありませんが、一般的なうなぎ屋さんで出てくる料理の類と比べれば充分美味しいレベルだと思います。
メインのうな丼。
一般的な丼よりも大きめな丼に硬めに炊いたご飯を浅く盛り、その上に約一尾弱のうなぎの蒲焼きが載ります。これまでの流れもあってかご飯の量は少なめなので、蒲焼きにご飯が完全に隠れてしまっていて、うなぎとご飯の比率で言えば五分五分という感じ。大阪のにしはらもややご飯を少なめに設定していたように思いましたが、こちらはコースの中ということもあってかかなり冒険的とも言える比率設定。
ちなみに一尾弱というのは、途中で出てきたうなぎ串などの分の身を差し引いているため。
時間を正確に測っていなかったのですが、白焼きにした後の蒸し時間は30分くらいと長めの蒸しが入り、その後タレを付けながら念入りに焦げ目をつけておられました。入店してから捌き始め、うな丼が出てくるまでおよそ一時間前後。
焦げ目が臭くなる寸前まで炙り、中身はトロトロなのに表面にはうなぎの食感を浮き立たせているような焼き加減は、普段関東風でも長めの蒸しを入れたうなぎをあまり好まない私でもシビれるほどに感激。
ご飯の量が少なかったことによりうなぎの旨味が引き立ったことも影響しているのかもしれませんが、蒸しを入れた関東風のうなぎ(但し養殖もの限定)では、小田原の友栄や葛飾の魚政、駒込のつぐみ庵を超えるほどに好きなうな丼でした。
本来は地焼き、もしくは蒸しの短いうなぎを好むはずの私なのでこの手のうなぎに強く惹かれることは珍しいと自分でも思うのですが、美味いものは美味いとしか言いようが無いのです。
ちなみに肝吸いの肝はこれまで見たことのないくらい焦げを付けて焼いてあります。
ここまで焦がしているのを目にしたのは初めてでその意図は正確に読み取れませんでしたが、むしろ焦げによる臭みより力強い食感と香ばしさを強く印象付けられた感があり、今まで口にした肝吸いとは一味違う肝吸いが楽しめました。
全体を通してみるとうなぎを使った料理とそうでないものの格差はあるものの、うなぎ料理だけを見れば充分満足のいくレベルですし、何よりメインのうな丼が私にとっては革命的な美味しさ。このうな丼を食べるために訪問する価値のあるお店であり、他のうなぎ屋では代え難い魅力を持つうなぎ屋でした。
調布はなかなか訪問する機会のない場所ではありますが、このうな丼をたべるためにまた訪問してみたくなりました。