『俺の夜/紙食いの夜』Jackie_mさんの日記

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東十条無頼/ランチ編

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いつものBarで、一口サイズに丁寧に梱包されたカステラを貰ったので、早速その場で箱を破って食べはじめた。正しくキュービックスタイルのそれは真ん中でカットされており、二口の食べ切りとなっていた。

店の女の子 「さっき私、紙食べちゃうとこでしたよそれ」
俺 「紙なんか付いてたの ?」
店の女の子 「あ゛~ !!、むっちゃん(その店での俺のコードネーム)、紙食べちゃったでしょ~ !」
俺 「紙なんかついてなかったよ、最初っから ! 絶対に、金輪際 !!」

<平成27年11月>

国鉄高田馬場駅を下りた。
傘がいるかいらないかくらいの雨が舞っていた。こんな天気の中まさか歩け歩け大会か、ポンチョや携帯傘をさしたお年寄りの群れを、ただ独り敢然と遡行して、事前にマイコンで調べてきたカレー屋さんのドアを、おっかなびっくり押し入った。

もういい時間、普段は人気店なのであろうか、窓際のテーブルを七割方先客が埋めていたが、がら空きであったカウンターに唯独り通される形となった。例の脚の届かない高い椅子で、カウンターとの距離の調節も(一旦席を立たなければ)ままならなく、激しい不自由さに苛まれる

“茄子と挽き肉のカレー” @950
“ランチサラダ” @100

でも仕方ないので我慢して、やがてそれほど彩度の高くない、要はあまり美味そうにみえない(あちゃ~ !)カレーもきて、実際そんなに美味くなかったけど(あちゃ~ !)気持ちよくやっていたところ、今度は糞爺が入ってきて私の隣に。
糞爺は一杯飲み屋の阿呆がよくやるように、カウンターに正対出来ずに最初っから体全体で俺の方を向いてきて、かまってちゃんオーラ全開。
早速給仕係りの男性スタッフに絡み始めた。

「これは、肉は何なの ?」
「鶏肉でございます」
「辛さは ?」
「ふつう、中辛までは無料サーヴィスですが、大辛は五十円増しとなりますね」
「じゃあ中辛でいいや」

―― 五十円でどうこうなるなら ……

フロア担当の若いか、もしくは若作りの男性スタッフはやる気があることは疑いの余地がないんだけど、都度こっちのレスポンスを求めるような、あのファミレスのような接客で正直うざいとともに、且つ、まったくエコノミーな動きでない。

「お食事中失礼いたします ! 伝票だけ置かさせていただきます ! それではごゆっくりどうぞ !!」

―― 黙って置いてきゃいいのに。そういうことが客のくつろぎを奪う行為そのものなのよ ……

一杯飲み屋の@280の酒の銘柄を問いつめたり、@80の串揚げに文句をつけたりする輩を見るたび(そういう奴らが驚くほどに多い)、私は出所間もない老強盗(ジャン・ギャバン)が、若いちんぴら(アラン・ドロン)を使って再び高級ホテルに併設されたカジノの売上金を狙う「地下室のメロディー」という大昔のフランス映画で、ブルジョワの行動を知らないアラン・ドロンに対し、ジャン・ギャバンが、「ホテルにチェックインしたらシャワールームの換気が悪いとか、兎も角何でもいいから文句をつけろ。それが上客というものだ」 と指南するシーンを思い出す。

「この肉は何なの ?」
「この(300円の)お酒は辛口 ? 甘口 ?」

―― やれやれ ……

酔っぱらったからほんとのこと言ってやる。
福砂屋のカステラの底についてる紙食ったかどうかさえ分かんないのが、それが人間なの。人間なんて、所詮そんなもんなの。そんな人間という出来損ないの生物が、何か食ってあれは美味い、これが不味いなんて分かるわけないの。
何しろ、紙食ったかどうかさえ分かんないんだから ……

―― それはお前(俺)だけだろ !! どんだけ酔ってんだっつ~の
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