『俺の蕎麦 (いちお、俺の空に掛けてます)』Jackie_mさんの日記

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東十条無頼/ランチ編

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と或るインターを降り国道にぶつかって、正面の、いつも気になっていたお蕎麦屋さんの看板の案内に従って車を走らせているのだが、正直私は考えすぎるタイプなので、こういったことを上手くこなす自信はない。
それでもチルチルミチルのちぎったパンのように、執拗に街道沿いに散り填められた案内看板のおかげで、恐る恐る、また最後は対面通行も心許ない細道となったが、何とか無事たどり着くことができた。

敷地を概ね斜面としており、駐車場に車を停めてから店舗と思しき方向に歩いていったが、果たしてこの順路で合っているのかどうか不安にさせられる。どちらかというとお蕎麦屋さんというより、それほどメイジャーではない鍾乳洞への導入に、これは近かった

「丹沢そば ○○」

戸はプッシュ式の自動ドアだったか。
入店してお店のおばちゃんは、私のことを確実に視界に捕らえたはずだが、それとなく無視。俺もここまで登ってきて今更と思って、履き物を脱いでげた箱に納めたが、それがここん家のハウスルールに則った行為かどうか、ひどい不安に晒される。
やがてリーダー的存在のお母さんが私を認め、そこへ座ってお待ちくださいというので素直に従ったが、その待ち時間の雰囲気は、私のにとっておおよそ蕎麦屋の“待ち”ではなく、何か流行の美容院で順番を待っているような、得体の知れなく、また掴み所の無き果てしないもののように思えた。

BGMはお琴の和旋法。と、それを凌駕する女将さんと思しき女性の、給仕の女性に細かな指示を与える高周波数のヴォイス。
窓の外に目をやれば、テラス席も備えるようである。駐車場にもけっこうな台数が停まっていたので、この時点でけっこうな人数を収容していると思われ、それに対して花番さんの手が足りていないのか。

で、恐る恐る目を這わせはじめたお品書き。
ふつうのせいろうは辛うじて千円を切っているようだが、価格設定が軒並み高い。蕎麦屋で怖いのは、値段の高さに連れて量が少なくなるという逆転傾向であり、且つ、新規のお店でその場の雰囲気的情報だけでそれを事前に予測するのは非常に難しいということ。
そんな場合、我々にはざっくり二つの選択肢があると思う。ひとつは潔くその場でお腹いっぱいになろうとは思わず、足りなかったらコンビニでおにぎりでも買えばいいやと開き直ること(事実、そのほうがよっぽど安上がり)。もうひとつは、大盛りできる店であればとりあえず食えなかったら残せばいいやと、こちらも開き直ってまずは大盛りにしてみること(現実、それなりの蕎麦屋でメガ盛りなど永久に出てこないという冷酷な事実にも泣けちゃうけど)

“三色せいろ” @1,500
“ふつうのそば大盛り” @420
& 外税にて、結果2,070円也

「一枚目のゆず切りは、何も薬味はつけずにお召し上がりください」

「はい」と流しておばちゃんが向こうにいくのを待ち、そして好き勝手にやらさせていただいた。何をやったって大切な松茸ご飯にふりかけをふりかけてしまったちびまる子ちゃんよりマシであろうし、何より、たかが蕎麦に二千円払ってギャーギャー言われたくないんで

【 以下、俺の思うこんな蕎麦屋はダメだ 】

● そば湯がポットで卓に備え付け
 → そば湯こそ、すべからく常に燃えたぎっているべき
● 箸が割り箸ではなく洗い箸
 → ずどんとしたチープな割り箸は、しかし蕎麦をやるとき、常に他を寄せ付けぬ最高性能を発揮する
● せいろうの簾が縦目
 → 理由は省くが、意外と昨日今日の店じゃないとこでもやりがちなところが空恐ろしい
● 蕎麦屋なのにおすすめがふぐ会席
 → 蕎麦屋が蕎麦の粗利の優位を放棄したらもう終わり
● 大もりを頼んだらあっさりとふつう盛り単価の二倍が請求される
 → まともな蕎麦屋は大もりなんかやらねえよ、というのは分かるが、それならそれで注文時に一言あって然るべき
● 大もりにしてつゆの追加をお願いしたら、それに課金。同様に薬味にも課金
 → こちらも散々先述させていただいているので理由は省くが、付け加えて、これは精神の構えとして拝金主義をバカにするのが蕎麦食い、及び蕎麦打ちであり、つゆの追加料金の計算なんて面倒くせえよ、という世界に生きるのが東京のほんとうの蕎麦の作り手、及び食い手のはず

そして栄えある第一位は !
● つゆが大根の絞り汁
 → まあこれは、入店前にある程度分かることだけどね

あと漠然とした独り言なんだけど、これは蕎麦屋だけの問題じゃなくて多くの飲食店でまま見受けられる光景だが、お客の眼前でのおおっぴらな新人のOJTというものは、まともに情緒の成熟した大人(客)の目には間々“イジメ”として不快に映りこむものであって、でもリーダーは一所懸命お客さんの為にはとかお客さんにとってとか、まだデカい声で延々やってるということが心底片腹痛い
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