十月四日。演芸場通りの入り口。
昼間嫌なことがあって、お金を下ろさなければならなかったはずなのに、コンビニを数歩スルーしてしまい、でも気がついて踵を返す。そこへそれぞれ自転車に跨がった母娘が自転車を止めようとし様、お母さんが女の子に、「月、きれいだねぇ」と。
そういえば朝、お天気お兄さんが今日は中秋の名月、日本列島は全国的に月見日和となろうと言っていたことを想い出した。
イヤホンが鼓膜に叩きつけてくるラウドネスの「SOLDIER OF FORTUNE」をもってしても気が晴れずに、ずっと下を向いてここまで歩いてきたしまったことに、はたと気がついた。
演芸場通りの終わり、踏切をこえる前に左に逸れる。
一寸開けた空き地越しに月が見えることは知っていて、満を持して頭を上げた。
夜空は漆黒寄りのBlue。まだらに純白の綿雲。その綿雲を悠々突き抜けるパワフルな月光。
その神々しさに、ただただひれ伏すだけの俺 ……