昼間、へんな麻婆豆腐ラーメンを食った。
小さいチャーハンが付いていたが、それもラーメンの上にのった麻婆豆腐をおかずにしないと食べられないくらいのものだった。その麻婆麺は、麻婆豆腐とラーメンの間に、無駄なもやしの層が幅を利かせていた。
ちょっと考えたが、俺はそれを残した ……
<H31.1.7>
【挿入画/平成31年 正月三が日のアメリカン横丁】
いつもの居酒屋にとり憑いた。
今夜はいつもの男性社員が休みなのだろうか、数年前の本部直営店時代に店長を張っていた、口数の減らないやつがその場をとり仕切っていた。最近、俺はお喋りなオトコをとりわけ嫌いになってきている。そいつのお喋りは、その頃からまったく衰えることを知らない。それでよく今まで生きてこれたなと、ふたたび思った。もう私の中で何度もリピートされている映像ながら、そいつは今夜もまた、客商売なのに客そっちのけ、バイトの子たちとのお喋りに無我夢中になっている。
―― 一瞬こいつは竹脇無我か ? と思えるくらいに ……
気付いたら演芸場通りを一人漕いでいた ……
どこかの女子大生に昨日の夜中に送ったLINEがまだ未読になっていたので、未読だけはやめろと言ったら、既読になった。それでも返事は返ってこない。ただ未読スルーから既読スルーになっただけだ。
「俺のこと好き ?」って問うただけの、シンプルなLINEだった。その相手を自分が好きかどうかなんて、そんなに考え込む問題じゃないだろう ……
―― ただ直感的に、ああこの人のこと、私好きかな、と思ったら、「好きです」って返してくれればいいだけのことなのに、なぜ人間って素直になれないのだろう ……
坂の途中のラーメン屋に入る。
さっき飲んでいた居酒屋で隣りに座っていた、帽子を被ったおじさんが入ってきて、奥に陣取った。俺はそこでもそのおじさんと目を合わせることはないし、そのおじさんも、そこでも、もう眠くなったからとわずか数百円で帰ってゆく。皆が自分の居場所を探していて、でもみつけられない。
おもむろに、俺は今日二度目の麻婆ラーメンを頼んだ。
べつに何かを期待してのことじゃないし、何かを補償しようとしてのことでもない。
麻婆ラーメンのつゆが、ふだんこんなの着けない淡い色のネクタイに跳ねて、そしてゆっくりと染みになっていった