12回
2023/07 訪問
三好弥/錦糸町、負け惜しんで
ここしばらく通っている王子のスナックですらりとした中国のひとと出逢い、でもぼくは日本のひとのほう、というか青森のひとのほうが好きだった。
でも或る晩、その中国のひとが福建の出身だと知り、酔っていたこともあって勢い、ぼくは東十条にある福建出身のマスターが一人で切り盛りするお店を知っている、その名もずばり「福建」というのだ ! と宣ってしまったのだ。
となると当然のことながら勢い、今度いっしょに行ってみようということになり、それが実施されたのが昨晩のこと ……
勤勉なマスターのこと、ちゃんと看板に灯かりがともっているのは分かっていたが、もう半年以上は行っていないので、その間(おれはいいけど彼女の為に)お店が荒んではいないかと心配しながらおっかなびっくり暗い階段を下りていけば、幸いぼくが知る状態程度には保たれていて良かった(笑)。
するとその中国のひとは、最初から随分と日本人っぽい人だとは思っていたのだけれど、自分から切り出すのは恥ずかしいから、おれに、マスターに自分が同郷だということを声掛けてくれ、と言い出す始末。
なのでそんな中国人初めてみたわ ! と呆れながら仲をとり持ち、元来女好きのマスターのこと、あとはふたり勝手に北京語で弾ませる会話を、知ったようにうなづきつつウィスキィを舐め続けるぼく
しかしそんな平和も長くは続かず、調子に乗ったマスターが釣ってきた魚をお寿司にして(ちゃんとお金はとられたけど)特別に振舞ってくれると言い出し、出てきたそれをそこでも日本人性を発揮する彼女が、太刀魚は好きだけど、鯖とカツオは苦手なのだ ! と、こともあろうに生魚NGのおれに助けを求めてくるものだから、そこからがカタストロフ !
仕方ないからおれも無理して飲み込んだわよ ……
ひとつ興味深かったことは、ともに齢五十を回っているその人とマスターだが、おれの目からしたら完全にもう中国キャラのマスターなのだけれど、たまに中国へ里帰りすると、自分は日本人に間違えられてしょうがないと言ったこと。
そしてお互い、もう人生日本に居るほうが永いねと笑うふたりを遠巻きに見つめていたら、人間なんてそんなもんなのかなぁって、妙に納得出来てしまうから不思議だわ …… (笑)
<その翌日 R5.7.20>
「三好弥」
お客さんへの集金を終えて、今日は錦糸町駅方面へと歩き出す。
その周辺の開拓は一通り終えているつもりだが、コロナ過をピンチはチャンスとばかりに新規開店しているお店はないかと、チェックの意味を籠めて。しかしそういったお店は浅草ではけっこう顕著なのだが、ここ錦糸町界隈では、ちょっと目立っていないかな ……
しかし足は行き先を分かっているかの如く進み続け、まずいことに、程なくしてぼくの好きな洋食屋さんにたどり着いてしまった。
どうして好きなのにまずいことなのかと言えば、ダイエット中のぼくに対し、こちらのお店の料理がどれもボリウムたっぷりだから、ということだが、男には負けると分かっていても戦わねばならぬときがあるように、たとえダイエット中であっても食べなければならぬときがあるのだ ! と自分を正当化し、正々堂々と足を踏み込んでいく
未だ早い時間で店内に一番乗りし、みんな同じだからと手前の4人掛けテーブル席に陣どるわけだが、あとから来た男性お一人様が奥へと進んでいって、お店にたったひとつの2人掛けに狙ったように着いたときには、一本とられた気持ちになった。
差し出されたコップのお水にチョーキング・ヴィブラートが掛かっていないところを見ると(笑)、持って来てくださったのはお父さんではなく息子さんだろう。
こちらのお店での私のフェイバリットはいうまでもなくスパゲッティにクリームコロッケを搭載した特別料理だが、今日は店頭に内容が掲げられて自分の好みにマッチすると思っていた、本日の日替りというのをやってみることにした
日替り弁当
“オムレツとメンチカツ” @780也。
“弁当”というwordにも、興味がそそられたのかも知れない。
まったくそれに違わぬお重での臨場、且つお母さんがそれを私の前でご飯を手前にverticalに立てて置いてくださったことで、弥が上にも気分があがる !
なので私としてはもうこの“縦”レイアウトを崩さぬまんま、メンチにはソースという名の、そしてオムレツにはしょう油という名のそれぞれ魔法を、決して解けぬように十分にかけていくことしか出来なかった。
先ずメンチのナツメッグが私の口中でその豊潤な香をひらいてくれたときから、このあまりに昭和なる枯れ具合のお店の佇まいとともに、このことを分かっていて、それを求めてやって来たことでもあるが、私が永遠に希求してやまないレトロスペクティヴが、これ以上ない形で完全に満たされて ……
「端的に言って、倖せすぎる ♪」
そしてまた、卵としょう油の相性は誇り高きインディアンのように常に嘘つかなく、奇を衒うことなくあくまでも直球勝負の、しかしだからこそ至高の“弁当”を夢中で貪れば、これはもう“デ”リシャスぢゃなくって、デ“リ~”シャスよ、奥さん !
となれば、魔法にかけたつもりが、おれくらいにステージの高い魔法動物になると逆に自分のほうがこの780円のmagicにかけられていたということを完全に自覚しつつ ! その極上の敗北感に暫し酔いしれて ……
そしてたまにはこんな敗北も心地好いもんだと、沁み沁みと負け惜しんでみちゃったりして
2023/07/23 更新
2022/01 訪問
三好弥/まるで敵味方のように
久々の錦糸町。
今日のご飯は、今年初となろうかと思うあの店で、と決めながら、国鉄の北側に沿って歩いてる。天気は快晴で、日なたを選って歩けばそれほど冷えることもなく。
途中いくつかの誘惑はあったが、それを狂人な、否 ! 強靭な意志力で撥ねのけて見えてきた電光看板には、しかしまだ灯はともっておらず。
となったら、早くあなたに会いたくて時計を逆さに回す、という方法も知っているぼくなのだけれど ……
―― あと5分かそこら、お散歩写真に興じていればいいかな ♪
<R4.1.20>
「三好弥」
お母さんがシャッターを上げるのを確認してから十秒ほど待ち、いや、要は待ちきれずにこの寒空、ぼくはその昭和に、まるで真夏のビーチを駆ける少女のように飛び込んでいった !
とり憑いた一番入り口近くのテーブル。
この足元がちょっとベタベタする感じを、ほんとうは大切な人と一緒に分かち合いたいのだがお生憎様 ! そんな人など金輪際いないこのぼくを自分自身で励まし(ハゲ増し)ながら、おもての看板に、最初から心で決めていたメニュウを変更させられるほどに魅力的に映えていたものを、コップの水を持ってきてくれた息子さんに間髪を容れず注文させていただく。
開店直後の店内に客は私一人。
なので向こうの厨房の中、息子さんとお母さんが揃って会話しながら作業するほのぼのとした様が姿の見えぬままにはっきりと感じとれたなら、ぼくのお母さんが大谷直子さん、または関根恵子さんではなかった、という不条理的不幸に心底打ちのめされる ……
日替わり弁当
“メンチカツとオムレツ” @780也。
嘘でも高級とは言えぬ、間仕切りのついてしかし蓋をロストしてしまったような哀しげなプラスティクのお弁当箱は、それでも私を興奮させるに十分なものだった。
オムレットは、もしかしたらうちのお母さんのようにひき肉と玉ねぎを炒めたものが包み込まれているのかなと思いきや、黄色の濃いプレーンオムレット。
そしてこれはハンバーグと共有しているのか、特徴的なメンチのナツメッグの香りが、まるでドルチェ&ガッバーナの香水のように、べつに求めてもいないのに私の記憶中枢を激しく揺さぶりにかかって来て ! 私の心はとうとうあの時の伊勢丹屋上へと時空を跳躍した !
めくるめく官能のときに微睡む。
頭上のブラウン管テレビの中の岸田首相が、責められているのか、また責めているのかさえ分らぬほどに。
ふと気が付けば、卵のニクジュ~としょう油にまぶされたキャベツと、メンチのニクジュ~とソースにまぶされたキャベツが、同じキャベツであるにも拘わらず、まるで敵味方のように境界上で鬩ぎ合っていたので、これはいけないと思い、私の胃袋で速やかに調停してやった ……
2022/01/22 更新
2020/07 訪問
三好弥/まだ電動工具には頼らない !
いつもよりもちょっと映画を早く観終えて、ということはそれを実現する為に豊洲という辺鄙なところの劇場をわざわざ選定してまで急いで下りて来たその地下。
もう二度とこないという自分への誓いは早くも昨日破っているので(笑)、今夜は罪の意識も無い。そのあなたとぼくの回廊で20㍍も先からもう、あなたはぼくのことを見つけてくれて、プリマドンナの誘惑のように全身でぼくのことを、しかも遠隔操作で惹きつけてくれたね。
それに抗うことが、ぼくにはこれっぽっちも無理だということを完全に理解しているかのように ……
ぼくはあなたに、今日の昼間に撮った猫の写真を送った。
あなたがほんの1.5㍍先で、ぼくそっちのけでスマホに夢中になっていたから。そしたらあなたは、ぼくのその写真を自分のスマホのディスプレイいっぱいに拡大して、「コレハイロイロナトコロヲトレバイイシャシンニナルヨォ ~!」と、ぼくの写真にケチをつけたね。
ぼくが入念に構図を決めてシャッターを切ったその写真を、これは大胆にトリミングすれば良い写真になるかも知れないよ、と
―― ぼくはそのとき、ちょっと傷ついてしまったよ。でも何故だか心地良い痛みの傷で救われたけど
<その翌日/R2.7.20 錦糸町>
「三好弥」
早くしなければ席が埋まってしまうと思い、三ツ目通りと京葉道路の交差点近辺から一気に最高巡航速度で歩いてきて、時刻は正午を5分ほど回ってしまった。しかし先客は未だ運良く3組都合4名で、まんまと入口近くのテーブル席へと陣取ることに成功。
すると水のコップを持ってきてくれたのは、今日はお母さん。
涙のチョーキングヴィブラート使いのお父さんの姿が見えなくってちょっと心配になりつつ、お母さんに、最初っから決めていた、この為だけにはるばる汗だくになって歩いてきた愛しの料理を注文。
ガラス戸の外には陽光降り注ぐ、平和そのものの路地。
頭上から降りそそぐテレヴィジョンからの音声を聞き流しつつ、おもてからショウケースの中の草臥れた食品サンプルを長々と覗き込むおじさんの姿にさえ幾ばくかの愛しさを覚えてしまうのは、久々に朝からの、この青空のおかげであろうか。
そして息子さんの手に拠り、伝説の料理が舞い下りた。
世界中で唯一人、私だけが伝え説いている伝説のイタリア料理が !
“スパゲティー カニコロッケ付き” @930也。
いつもどおりにウッドの柄を持つフォウクから紙ナプキンの拘束衣を解いてやった刹那 ! 束の間の自由を得たフォウクが私の手を引っ張るように一直線にコロッケへと突き進んでゆくので、寧ろそのたずなを引き締めつつ、しかしその意思を最大限尊重して向かう切っ先の軌道修正は行わずに、それがコロッケの外殻を破って肉を断つ様をどこか他人事のように見つめていた。
生々しき断面から覗く、その内臓にまだ必死にへばりつこうとするコーンの断末魔が聞こえてくるようで、ならばそれをBGMとして勢い ! 今度は自分の意思でたっぷりと赤きウェイブにその歯を向ける。
と、今度はフォウクが勝手にスピンしはじめるではないか ! これは何事かと思ってそのウッドの柄に今一度目をやればそこには小さくBOSCHというロゴが入っており、なるほどなと腑に落ちた(嘘)。
繰り返しとなろうが、ナポリタンとしてははっきりとナロウ、ながらオーヴァボイルのくたくた感に溢れる麺は、この料理としてはこれで寧ろ整合性がとれている気もする。
何よりこのたっぷりとしたケチャップ感がそのまま満足感へとすり替わってしまう極上のミステリーに、そのトリックを曝くことはさて置き、今はただ微睡むことに決めた。
厨房から聞こえるお父さんの声は私の幻聴か、はたまた未だ成仏出来ぬお父さんの怨霊の咽び泣きか ……
【還ってあなたとぼくの地下】
「お土産は ?」
「アッ ! ワスレタヨォ~ !」
あなたはほんとうにわざとらしく、インスタグラムであなたとO嬢の直近の箱根旅行を知っていたぼくのお土産は ? との問いかけに、偽りのレスポンスをしてみせたね。
その湖が芦ノ湖だとも知らずに巡った一泊二日の箱根旅の中で、ぼくのことなんかただの一度も思い起こしてくれるはずもなかったろうに ……
「ホントニ~、カッテキテアル。キョウコナイトオモッテタカラァ~ !」
「でもそれって俺の為に買ってきたものじゃないでしょ ?」
「チガウヨォ~ コノミセノダレニモアゲテナイカラ~」
―― それなんか日本人の言い訳聞いてるみたいよ、Y~ちゃん。もっと本場四川の言い訳考えないと ! 麻と辣が効いてないわよそれじゃ~
2020/07/23 更新
2019/09 訪問
三好弥/サンタナのように
厚い雲に覆われた東京は錦糸町。
PARCOと化した楽天地のほうのTOHOシネマズで映画の切符をとり、バンブルビーの絵柄でつくってもらった磁気カードを挿入すると、嬉しいことに通算2度目の6回分が溜まっているようで、タッチパネルに“タダ観”のボタンが現れ、腕時計のカレンダーに今日は月の1日ではないなと分かり切ったことをあらためてあたり、意気揚々とそれを人差し指でプッシュ。
というのは、前回その特典を使ったときにあまり考えずにそれを進めてしまい、後から、ああ、今日は映画の日で元々安価に鑑賞できたのに、同じタダなら正規料金のときにその札を切るべきだった ! と、ひどく落ち込んだことに依る。
すると今回は、当該番組は既に基底人数を超えているので、そのサーヴィスは利用出来ません、との表示が ……
―― いろいろ複雑だなぁ、世の中って ……
<R1.9.21>
「三好弥」
午後2時の15分ほど手前。
葛藤したが、自分に正直であろうと注文の品を心に決めて、一直線に来店。べつに焦ってはいなかった。昼の部午後2時までを公称するこちらだが、中で食事していると、それをけっこうに越えたところでもお客さんが入ってくればそれを気持ちよく受け入れているところをもう何度も見ており、そんな東十条の飲み屋のようなやり方をしてらっしゃると分かっている為。
(東十条の飲み屋のダメなところは、客がいる限り営り続けるのはいいとして、逆に客がいないとき、営業時間を勝手に早めに切り上げてしまうってとこ。そんなの仕事じゃないでしょ ? って俺はいつも訝ってしまうのよ)
フロアに足を踏み込めば、若者三人組が食事を終えて尚お喋りを続けているところ。
どこでも空いていたが、私は一番手前のテーブルに陣取らさせていただき、早速心に誓った注文をしようと。しかし一旦各々のテーブル上に貼り付いている品書きに目をやると、なんと私がやろうとしていた“ハムサラダ”の姿が消えているではないか ! そこで他のお客さんもいないので律儀に私のそばで注文を待ってくれている息子さんに、ハムサラダはもうないのですか ? と聞いてみたところ、息子さんは何かピンとこない感じで(笑)、今はそれだけになっちゃいましたと、自分ちのメニュウをよく把握されているのか何なのか、妙に焦るような辿々しい感じで(笑)
“スパゲティーカニコロッケ付き” @930
“コンビネーションサラダ” @500
引っ込みが付かなくなって(笑)コンビネーションサラダを注文した。
ドレッシングはかかっていたが、早速トマトとキュウリに卓備え付けのお塩をふる。最近フレッシュな野菜を食べていなかったので、とりわけざっくりと切られたキュウリが美味しかった。まあ、塩が美味しいということが大きいが(笑)。
そしてまたまた鉄板で舞い降りる蠱惑の塊二つがマウントされたナロウなRossoは、しかし、今日はなんか知らないけど些か細切れ気味で、これはお店が新しい試みとしてソバめしのような食感を狙ってみたのかなぁ、とも思ったんだけど、思い付きで、しかもお客さんに出す品で実験するのはやめて欲しいんですよね(んなわけない/笑)。
フェデリーニとはいえ、やはり麺は長く繋がっていた方が、ナポリタンとはいえフォウクで巻いての“もちもち”を得たい私としては、断然理想的なのに …… と。
そしてフロントマンがお父さんにチェンジし、私の少なくなったコップのお水をチャージしてくれるのだが、今日もちょっと、手先のチョーキングヴィブラートのかかりは本調子ではなさそう(笑)。
―― もっとロングトーンの泣きが欲しいんだよなぁ。サンタナみたいなね ……(笑)
2019/09/28 更新
2019/08 訪問
三好弥/まずは蘇生の儀式から
朝方ゴリラ雷雨に見舞われ、雨宿りしつつ進むもズボンの膝から下をびしょ濡れにしたが、昼下がりの現在、厚い雲に覆われてはいるものの、雨粒はおちてきてはいないよう。
錦糸町界隈、例によって国鉄高架の北側を彷徨う。
南北に奔る路地を跨ぐたびに顔を見せるスカイツリー。最初のうちは都度心を動かされていたのだが、今となってはとりわけ印象的な風景だとも思わなくなってきているのは、これも“慣れ”の一種なのだろうけど ……
<R1.8.20>
「三好弥」
午後1時半。BGMは高校野球。どこ対どこかは知らない。
先客は男性お一人様、都合二名。ホール係のシフトは、今日は息子さんのようである。するとこちらのパーマネント調理人は、やはりお母さんと考えてよいのであろうか ……
早速卓上のメニュウとにらめっこ。壁に貼り付けてあるジャンボメニュウというのを、ちょっと自分には手に負えないものだともうあきらめてるのは、その下にこれみよがしに貼られている、私には無理だということを保証してくれているかのようなホンジャマカの石ちゃんの満面の笑顔に気圧されてのことに依る。
なので定食系を丹念に精査し続けた。
そしてやはり、自分に嘘はつけなかった。なので、次の段階としてそのRossoをデコレイトさせるアイテムの選定に入るのだが、それは私にとって二者択一となる話 ……
“ナポリタン/カニコロッケ付き” @930也。
因みにナポリタン単体で@700。
付け合わせという言葉が適当かは分からないが、それはコロッケ、ハンバーグ、とんかつの三種の中からなので、とんかつNGであり、またハンバーグをやり過ぎている(笑)私であったので、かなり前にそれを定食でやったときにそれほどの感動は得られなかったコロッケを、半信半疑でチョイスした。
このオーヴァルの鉄板料理は、ハンバーグ添えを含めればもう何度も注文させていただいているはずなのだが、あらためて、スパゲッティのこの細さには、年季の入ったお店の佇まいに対し如何なものかと違和感を抱かされてしまう。一方コロッケの仕上り具合は、今日は見た目的に完璧で、ブラウンのソースも非常に美味しそう。
矢も楯もたまらずにナプキンで厳重にミイラ化されたウッドハンドルのフォウクを蘇生させ、先ずはコロッケを除け、そのナロウなRossoに突き立ててみれば !!
うまい !!
ハム、玉葱、ピーマン。
違和感を抱いていたその細いナポリタンだが、再会した途端、もう私はそのナロウにねじ伏せられることとなった。なんだろうこの美味さ、そして自然さは。自然に美味い !! ともすればナポリタンはそのトマトケチャップの酸味を刺激に感じてしまうことがある、身体的変化として鼻の頭に汗を掻いてくることがあるが、善し悪しは別として、それをまったく感じさせないのである。
そしてこのクリームコロッケは、今日だけかは知らないけど(おいおいおい !)過去最高に美味い。カニクリームコロッケ定食のところに当店自慢とあることの意味が今日初めて分かった !
この上なき満足感に浸りつつ店を出たら、なんか煙たく、且つ香ばしい匂いがけっこうに凄い。
真っ昼間っからどこで容赦なく焼き鳥焼いてんだよと思ったら、一気に四方八方から消防車のサイレンに取り囲まれるような感覚に陥り、ご近所さんが一方向に心配気に目をやっていることに気づいてその交差点まで出てみたら、なんとクルマが燃えているではないか !
ちょうど引きずり出されたホースから放水が始まる瞬間で、おそらく水量と拡散角度が調節できるのだろうと思ったが、絞ってそれをやっているのだろうけど、クルマ1台ボンネットから炎が立ち上がっているくらいだと、中くらいの消防車がやると消火そのものは瞬く間に出来ちゃうようだが、そのときに瞬間的に立ち上る真っ白い煙の猛りがまた凄い !
―― 近隣の事務所さんも慌ててシャッターを下ろしたりしていたのだが、煙で燻されるのが、たとえ燃え移らなかったとてけっこうな被害となりそうで、これは後々大変だろうなぁと ……
2019/08/31 更新
2019/05 訪問
三好弥/Iron plate上の遷宮
国鉄錦糸町駅のホームの階段を下りて北口に向いたら、まあ北口も南口も同じなんだけど、今日もやたらと人が多い。
更に出口にZARAまで見えちゃうと、錦糸町というよりも新宿さながらなんだけど …… ただ新宿と違うのは、一旦改札から外へ出てしまえば、その人混みも直ぐ様ドロップし、いつまでも神経をすり減らすことはない、ということ。
というのも、皆駅を出てしまえば、ただ何の目的もなく錦糸公園でごろごろすることだけしか、この人たちにやることはないので(しないしない !)。
先ずは例のオリナスというショッピングモールに向かい、映画の切符をとる。
先日楽天地のスクリーンでの上映中に火災報知器が鳴ってしまい、結果誤作動だったのだが映画が中断されてしまってすみませんでしたと、こちらTOHOシネマズ錦糸町の招待券をもらっており、それが本日目当ての映画のかかるオリナス側のスクリーンでも使えたことはLucky !!
今日のお昼ご飯は、半ば決めている。
だから手前の“絶対に入ってはいけない”そば屋に魔が差して吸い込まれなければ、それで良かった(笑)
<R1.5.11>
「RESTAURANT 三好弥」
午後1時20分。
今日のテレビは温水さんとかが出てるお散歩グルメ番組みたいなので、横浜の路地裏、って画面の隅っこに書いてあるのかな。
先客は男性お一人様、都合1名。私のあとにも男性お一人様が1名続き、孤独の野郎ども、都合3名となった。
―― 一本の矢は折れてしまうけど、三本纏まれば折れることはない。なんて、自分が一番協調性のないくせ、そんな無駄な想像を廻(めぐ)らせたりなんかしちゃってね ……
今日は唸るチョーキングヴィブラートのお父さんがいてくれ、息子さんも奥で料理の腕を揮うよう。か、ただ同じく厨房に並び立つお母さんの邪魔をしてるだけか、そのどっちか(やめろ !)
“スパゲティーハンバーグ付き” @930
“ハムSALAD” @430
先ずハムSALADが届けられる。
ヴィブラートの掛かりは、まだ絶好調ではない(笑)。フィンガージェットを吹いてやるべきか ? いや、もうちょっと待ってみようと思った。そのSALADの写真を納めようと一所懸命“映える”向きを探したんだけど、この画像見ると、どうも逆向きにしちゃったのかな ……
続きメインのオーヴァルの鉄板が舞い降りる。
目玉焼きを見つけ、そして卓には醤油があったので、自動的にやることは決まった。先ず紙ナプキンで丁寧にラッピングされたフォウクを釈放。ナイフが付いていなかったが、とくに問題とはならないだろう。
左に目玉焼き、右にハンバーグの二連装。ハンバーグから仕掛けていったことには、無論作戦があってのこと。横長にオーヴァルの鉄板の右からやっつけようという作戦である。
その合間をついて、ハムSALADも並行し消化していかねばならないというこの至極。なんて言うんでしょうかね ? 間違いなく幸福感ですよね ? これって。兎も角幸福感が半端なかった
私は前日に深酒している場合がほとんどなので、ランチくらいのタイミングでは正直まだ胃の調子が完璧ではなく、おっかなびっくりということも多い。
そんなところへトマトソースやケチャップスパゲッティ、無論それにはナポリタンも含むが、それをやるとトマトの酸味にどうもやられてしまって、鼻の頭には脂汗が浮かんでくるし、けっこういっぱいっぱいになってしまうことが多いんだけど、何故か銀座の「あづま」、またこちらのスパゲッティにはそういった嫌な刺激や厭きを感じずに最後まで美味しさを引っ張れるから不思議である。
何気ないこのチープなハムが美味い !
いや、チープだからこそ美味い ! スパゲッティの具はピーマン、玉葱、そしてSALADと同仕様のハムがささやかに。私にとってはそれで十分で、それ以上何もいらない。
―― もうなにも足さない。なにも引かない …… これで十分満足だ ……
サラダのパセリとスパゲッティのパセリを横へ除けて、そうだ !! これをママのところへ(ママがお店でほかのお客さんに出せるように/笑)持っていってあげようと思うんだけど、ポッケを汚しそうで今一歩踏み切れない。
そして私は、いよいよ作戦を決行した。
鉄板の右半分をまず完全に片付けて、左側にマウントされている目玉焼きを右に移したのだ。
これは思想的にはある意味、伊勢神宮の遷宮と同じことである(違う違う違う !!)。ほんとは目玉焼きに醤油を回してもスパゲッティに影響が出ないようにしたのだ。
そして卓備え付けの、常に最もエコノミーながらもチョップスティックとしての最高性能を発揮し続ける“ふつうの”割り箸を割り、純粋に醤油味の目玉焼きを割って頬張った瞬間 !!
―― 親父、涅槃で待つ
卵の白身と黄身と、そして醤油が渾然一体となったニルヴァーナに、とうとう私はたどりついたのだ。
どうしたら行けるのだろうと思っていた。教えて欲しいと思っていた。すべての夢が叶うというそこにたどり着く為には、しかしすべての夢を完全に喪失していなければならないという、その国にたどりつく方法を ……
またしてもスーツケースを持ったお一人様が加わる。
同じく男性お一人様かなぁと思ったんだけど、よくみれば女性であった。気になって見ちゃったんだけど、またずいぶんと頑丈な手をしておられ、何故だかわからないんだけど、いつまでたっても子供みたいに華奢な自分の手と比べてしまって、ちょっと恥ずかしくなった。
料理を粗方たいらげてコップの水を注いでもらおうとしたら、先に息子さん(なんて言っちゃってるけど、ほんとうのところのお店の方々の関係は知らないです)に気付かれてしまった為、今日もお父さんの深くて大きな炎のチョーキングヴィブラートが見られなかったことだけが心残りである
2019/05/19 更新
2019/03 訪問
三好弥/チョーキング・ヴィブラートのかかりが ……
希望の映画が錦糸町の、今日は楽天地のほうでやっていると思い込んでやってきた。
いつの間にか建屋がPARCOに改装されているようで、楽天地のくせに生意気な ! と思ったら(ごめんなさい !)、チケット窓口も、位置こそ似たような場所に設置されていたのだが無人化されており、でもそこの電光表示板に目当ての映画が見当たらない。
ということは、オリナスのほうのスクリーンであろうとふたたび歩き出す。錦糸公園は今日もそれなりの人出。天気がすこぶる良いので皆気持ちよさそうに見える。
オリナスのエントランスの前では、「NHKから国民を守る会」なるものが、NHKの集金人撃退グッズを無料配布していると拡声器で声を張り上げている。いや、NHKから国民を守らなければならないのは確かだと思うが、それはお金を払う払わないの話じゃなくって、例えば三十数年前に石油はあと20年で枯渇すると言っていたものを、今の今、石油はあと40年で枯渇するのだと、謝罪も訂正も無しに何食わぬ顔でのうのうと宣っていることであって、そういうところをぜひ是正してもらいたいものである
<H31.3.9>
「三好弥」
食べグロにて良さげな中華屋をみつけ、そこを目指して歩いていたら、土日は営っていないだろうと思っていたこちらの電光掲示板に文字が流れているではないか ! それでも葛藤しながら液晶モニタの地図の差し示すままに中華屋の前まで歩いていったんだけど、遠巻きに中の気配を覗いつつ、やっぱ自分に嘘はつけないと、ふたたび舞い戻った次第。
BGMは佐々木蔵之介さんのドラマ。余計なお世話ながら、佐々木蔵之介さんは最近その立ち位置を長谷川博己さんに食われている気がして、非常に心配である。
今日も若いお兄さんの姿は見えず、ホール担当は手に深くて素早いヴィブラートのかかるお父さん(笑)。壁に掲示されているジャンボメニューというのは、今の私には到底手に負えるものではないだろう。となれば、ふつうのメニュウを大盛りとやろうかどうか迷って、サラダを発見。
一番安価なものでも400円。30円の違いだから、せっかくなので好きなものをやらせていただくことに
“スパゲティーハンバーグ付” @930
“ハムSALAD” @430
サラダが待ちきれないんだけど、結局メインの料理と同時に供された。
そのハムはウィンナーで言えば赤ウィンナーに通ずる、フラットに練られた如何にも昭和の私の好きなタイプなやつで、それが幾重にも重なって野菜をクローズドフェイス。見た瞬間、ドレッシングが表面にかけられているだけだったらとひどく心配させられたが、そこは下町の食堂。ちゃんと中の野菜にもあらかじめドレッシングがかけられており一安心。
ハンバーグは、私でも少々下味の塩辛さがきつく感じるくらいだが、無駄に効かせたナツメッグが、如何にも自分は今まさにハンバーグを食べているのだということを強く実感させてくれる。やはりこのハンバーグスパゲッティが、こちらのメニュウの中で私にとってはフェイバリットとなろうか
私のあとに三組都合5人のお客さんが続き、先ずはビールなどと好き好きにやっている模様。
昼の部の営業時間は午後2時までとあるが、厨房の負荷まで考えると、すべてのお客さんが食事を終えて店を後にするのは、この分では3時を過ぎるだろう。と、午後2時20分、さらに年嵩のご夫婦が来店。それを爽やかに「いらっしゃいませ !」と受け入れるこのお父さんの、この何という気持ちの良さ !!
札をOPENにしてるのに、意気揚々と入ってきたお客さんに「すみません、もうオーダーストップです」とやってしまう失礼な店の目立つ中(しかもそういう店のスタッフは、必ず嫌な表情を先行させてくるから非常に腹立たしい)、こういう浪花節にはとりわけ感心させられる。
―― 楽しみにご飯食べに来て暖簾くぐったらいきなり門前払いって、ある意味軽い交通事故クラスのショック受けるもん ……
※ いや、営業時間のどこかでの線引きは、飲食業もヴィジネスである以上絶対に必要なことだと思うが、要はそれをお客さんにインパクトを与えずにうまくやるということが重要なのであって、しかしそれはけっこうに高度なことだから、その技術の無い店は恰好付けずに公称の終了時刻を手前に持ってきておくとか(オーダーストップの時刻を終了時刻にしちゃうとか)、何か対策を講じておくべきかと
隣のテーブルのカップルがお会計に入ったので、私もお父さんの手を煩わせないようにとそれに続く。
小銭入れをみたらぴったりと揃えることが出来たので、それを握りしめ立ち上がった。彼の支払いが終わり、私もお金を差し出すと、お父さんが何やら、レジから小銭を数えて40円おつりですと。(いやいや、)私ぴったり出したからお釣りないですよと自己申告し、今日もまた非常に気持ち良く店をあとにした。これで外税だったら1,500円に迫ろうことになっちゃうので、内税の明朗会計ということも、この“後味の良さ”に大きく寄与する部分であろうと思う。
―― それにしても、今日はお父さんの泣きのチョーキング・ヴィブラート(笑)のかかりがあまり良くなかった気がするのは気のせいだろうか。楽しみだったんだけどなぁ ……。そうだ ! 今度来るときはフィンガージェット[注]吹き付けてあげよう ♪
注) フィンガージェット:
ギターの指板に吹き付けて指の滑りをよくする潤滑スプレーのこと
2019/03/24 更新
2019/01 訪問
三好弥/ポケットに詰め込んで そのまま連れ去りたい
またまた無駄に良い天気。往復30分くらいの距離を最高巡航速度で歩いたら汗ばんできて、フレッシュなエアを導入する為にコートの前をはだけた。
往路に昨日ランチした「谷記」の支店を見付けていたので、一応その前を経由するも、店頭の看板の中に麻婆麺と炒飯のセットが見付けられず、また“24時間営業”との謳い文句にもそこはかとなく警戒心が芽生え(笑)、そこはパーシャルスロットルでスルーし、北口のアルカキット内レストラン街を目指すことにした。
のだけれど、そこも結局スルー ……
<H31,1,21 錦糸町>
「三好弥」
以下私の後にに続き入ってきた、界隈にお勤めと思しき男性二人組のやりとり。
「煙草大丈夫なの ?」
「ここは大丈夫ですよ !」
「煙草が吸える洋食屋さんって最高だね ♪」
「ここくらいですかね、中華屋とか除けば」
だそうです。
午前11時45分。中継か録画か知らないけど、テニスの大坂なおみ選手の試合。隣に着いた煙草飲みの二人組が、それだけでも嫌だったんだけど片方の笑い声がまた阿呆のようにデカい。
―― 真っ昼間っからいいよ、こういう一杯飲み屋みたいなの ……
で、ご丁寧にテーブルに椅子の数分敷き詰められているメニュウを物色し始める。たしか前回はこちらおすすめということで(そうメニュウに書いてあったので)クリームコロッケを注文し、ちょっと納得いかなかったので(笑)、今日は無難にいこうと決めた
“メンチカツ定食” @930也。
ホールにいつものお兄ちゃんの姿がなく、代わりにお父さんが担当してくれているんだけど、お水や料理を差し出してくれる手がまるでドリフのコントのようにめちゃめちゃ震えていて、もうこぼれそう(笑/いつぞやの煮えたぎった石焼き麻婆豆腐みたいなのでやっていただければ、よりいっそうお客さんの恐怖と笑いを誘うだろう)。そんなにわかに生じたスリルとサスペンスを、皆知らんぷり決め込む素振りで、実はけっこうに楽しんでいるのではないだろうか(ないない!)。
先ず御付けがお店のものにしては、ちゃんと味噌感があって嬉しかった。
これはいつの頃からか、塩分が悪魔化されたことに連動した現象かもしれないが、こういったお店屋さんの味噌汁がひどく味気ないという印象が、私の中で固着されてきた感否めない中にあって。
で、先ずパセリを横へ除ける。
ほんとうはいきつけのママがリユースできるようにお店に持っていってあげようかと思ったんだけど、そのままポッケに入れるわけにもいかないんで泣く泣く断念。
(本気に受けとらないでくださいよ)
そしてトマトに塩を振りかけ、キャベツ千切りにはドレッシングがかかっていたのでそのまま食べはじめた。のだが、これは明らかに昨日仕込んであったものの残りか、些かフレッシュさに欠けており、水分が抜けてちょっと苦みが出ている感じ。
いや、とんかつ屋だったらもうこれはNGだと思うが、まあここは洋食屋なんで ……
このメンチはふつうのメンチだと思う。
どちらかと言えば、良い意味で。これは一般論として、メンチは味気なければソースをたっぷりとかけてソース本来の味を活かしてやっていけばいいんだけど(また無茶苦茶言ってんな !)、同じことをクリームコロッケでやろうとすると、こうはいかないのよ。上手く言えないんだけどね。理由の解明にはまだ踏み込まないけど ……
そして断続的に続く客足。
こないだ思ったことをまた思った。やっぱりこのお店は、ナポリタンと何かの合体が良いのかも知れないと。今度来たときは絶対その確認作業を怠ってはならないと。
なんて言いつつ、またなんか逸れたの頼んじゃうんだろうけどね、俺 ……
2019/01/31 更新
2018/08 訪問
三好弥/そんな洋食レストラン いろんな人がやってくる ねぇマスターつくってやってよ、餃子
「先ずメニュウ見てから注文しろよって ! 基本、メニュウにないものはやってないんだから !」
by Sちゃん
またまたタイフーン、今度は 13号が接近中の東京。
朝方は雨粒が舞っていたが、現在は小康状態を保っているようで、傘はいらないくらい。蔵前橋通り沿いの中華のお店の評価が高く、ちょっと気になったのだが、前を通りかかった時に入り口の戸を全開にしていたのが見えて、いっくら東京が今日久しぶりに真夏日を逃れるといっても、それでもエアコン止めた店で麻婆豆腐は食べたくないなと (笑)。
で結局、錦糸町駅へと向かう路地の中でもメインストリームの道に突き当たってしまう。
そして交差点ごとに四方を覗いながら進むんだけど、結果数度訪れたことのある洋食屋さんに再訪ということと相成った
<H30.8.7>
「レストラン 三好弥」
BGM は夏の高校野球 ? よく知らないけど。
午後一時を過ぎて先客の姿は無し。厨房がお父さんでホール担当が息子さんなのであろうか、枯れた店内にそんな感じで佇むお二人。
こちらにはもう数度訪れたことがあるが、何か新しいものにトライしようとするも、そもそも前に何を食べたか覚えていない (笑)。だから数々のメニュウの中で、自分として真っ先には注文しないだろうなと思うもの、しかも“当店一押しの一品”というものを注文させていただいた
“手作りカニクリームコロッケ定食” @930也。
時間はそれほどかからずにそれは供された。
コロッケの揚がり様は一見して“きれい”に過ぎて、私の概念としてコロッケにとって最も必要なもの、“こんがりときつね色”というものが備わっていない。
付け合わせはサラダ。
キャベツ千切りとレタスとトマトと、あとボール盤で Φ8程度のドリルを使って S45Cを切削した時に出る、切粉のような形状のマカロニみたいなの。
カットレモンがとりわけフレッシュに見えて、先ずそれをコロッケに搾る。
そしたらなんだろう、サラダのドレッシングもコロッケの衣に滲みているのだろうか、また自家製かも知れないタルタルソースの酸味も過多なのであろうか、なんか酸っぱさだけが強調されたものになっちゃって (笑)。
結論的に私にとっては、過去の訪問録に目を通してナポリタン+αのほうが、チョイスとして自分にはマッチしているかなと思った次第
「持ち帰りで餃子を作ってもらえますか ?」
私の食事中、おば様方二名が、入店するなりお店のお兄さんに訴えた。
こちらのお店は店頭のショーケースに料理のサンプルを並べているが、そこに餃子の要素を見つけたとしたなら、その想像力には素直に頭が下がる。科学者に必要なものは優れたインスピレイションと豊富なイマジネイションだと言うが、その豊富なイマジネイションに ! (笑)
冒頭の言葉は、或る居酒屋にて、お客があまりにも好き勝手に品書きに書かれていないものをお店の女の子に、これは女の子とのコミュニケイションを図りたいというおっさんのスケベ根性もあるのかも知れないが、“兎も角まずは聞いてみちゃう”ということに対する、と或る女子大生アルバイトの嘆きである
私もただの串一本 80円の一杯飲み屋なのに、いや、そうであるからこそ、ラストオーダー時に「海老のケチャップ煮」とか「シェフの気まぐれぷるぷるサラダ」とか言ってウケを狙うことがあるが、それはいつも面白いこと言わなきゃ言わなきゃっていう強迫観念に駆られてのこと。しかもそれらはこれっぽっちもウケず、常に憐れ女の子たちから一睨みされておわりとなるのがオチ。
だから今日、そのおばさんたちがどこからどうみても紛うことなき洋食屋に突っ込んできて、迷うことなく真顔で持ち帰りで餃子焼け ! っていうの目の当たりにした瞬間、ああ、俺のユーモアレヴェルもまだまだだなって ……
―― 今日ばかりは自信無くしたわ ……
2018/08/16 更新
2017/12 訪問
三好弥/エロスに過ぎて
今日もいい天気。
冷え込みは、昼間はそれほどでもなく、京葉道路を最高巡航速度で進めば、うっすらと汗ばんできた。いや、午前十一時半に達していたので、ランチラッシュタイムを避ける為、スピードが要求されていたのだ。
なんかこっち側にめぼしいお店がなさそうなので、ガードを潜って北側にまわる。生きる死ぬの話でもないのに、何故か無駄に急く心。炒めない玉葱を織り込むことで有名なハンバーグ屋を越えると、以前二、三度訪れたことのある年季の入った洋食屋さんが迫る。
硝子越しに覗けば、未だ時間が早いので、がらがらの黄昏れた店内。それが今の私には誂え向きのような気がして、もう矢も楯もたまらずに突っ込んでいった
<H29.12.20>
「三好弥」
フロアは小じんまりとしていたが、先客の姿も一人のみであったので、私もテレビの見える四人掛けの卓を独占させていただいた。というか、あとは四人掛けのテーブルしかなかったので相席覚悟で。
フロア担当は髪をブリーチした、こちらのお店の息子さんであろうか。卓の天板に磔にされた品書きに、暫し見入る。食べ物の注文に迷うことはみっともないことと擦り込まれた私にして、これは良い意味で迷ってしまう。こんなひとときをしっかりと楽しみたいという方々の気持ちはよく理解出来るが、私は、しかし私のダンディズムに従って、お兄さんに勢い、注文した。
おっかけ入店してくる、常連と思しき界隈のサラリーマン方数名パーティ。
お兄さん 「ビール ?」
お客 「嬉しいねえ ♪」
お兄さん 「水いるんだっけ ?」
お客 「いちおちょうだい」
お兄さん 「はい ! チェイサーで (笑)」
黄昏の小じんまりとした空間が、今日という一日を呼吸しはじめた瞬間。私もその呼吸に、ゆっくりと自らの呼吸をシンクロさせてゆく ……
“スパゲティー カニコロッケ付き”
スパゲッティはナポリタンらしからぬ細麺で、マッシュルームの姿もみつからない気がするが、でも、そこらへんの、例の“昔ながらの”を冠するナポリタンよりも遥かに、“昔ながらのナポリタン”している。
そのヴィジュアルにやや興奮を覚えつつ、ナプキンでぐるぐる巻き、ミイラ仕立てのウッド柄のフォウクを釈放し、まずはクロケットに突き立てる。ドミソースで化粧され、ナポリタンの Rosso のベッドに埋もれて眠るクロケットの分解。スリリング且つスペクタクルな画だが、しかし何かが足りない ……
最初、品書きに目を通して四百円~五百円のサラダが非常に気になって、もう注文一歩手前で踏みとどまったのは、スパゲッティのボリウムを気にしてのことだったが、やはり激盛りとまでは言えないながらも、そこそこのボリウムで、これは頼まなくって正解だったなと思う
おっ !!! 今、足りなかったものを見つけた。
おかしなもので、なくしたハートのエースが忘れた頃に見つかるように。なんでこんなに背の高くって目立つものをロストしていたのだろう。それはブルドックのとんかつソース。カニクリームコロッケ本来の味とブルドックとんかつソース本来の味を拮抗させる為、そして自分の正義を貫く為、さらには地球の平和を守る為、私はそれをクロケットにまわした。
結果生じたとんかつソースとケチャップとのえも言われぬ拮抗は、もはやコロッケというにはエロスに過ぎて ……
2017/12/30 更新
2013/03 訪問
RESTAURANT 三好弥/エロスの境界
突風の中、永遠に垢抜けぬ街を往った。
そこかしこ、看板がひっくり返って腹を見せている。頭上は辛うじて太陽の日差しがあったが、何かを暗示するように、西の空はぶ厚いグレイに覆われていた
<H25.3.18 錦糸町>
この界隈の洋食屋の利用は、「斉藤」に引き続き二件目である。経年変化に依り草臥れきった店頭の食品サンプル、様子の掴めぬままに漂う、仄暗めの店内の黄昏感、そんなことで一旦は黙って通り過ぎたのだが、その先の蕎麦屋は更に草臥れ果てており、これ以上強風の中を漕ぎたくなかったし、こんなところがこの界隈の標準値なのかと、覚悟を決めて踵を返した
「三好弥」
開店直後の店内に一番乗りしてしまった。
実際に戸を引いて足を踏み込んでみれば、意外に採光状態が良好で明るい、四人掛けの席六卓ほどのフロア。一家揃っての“いらっしゃいませ”を一身に浴びて、些か照れつつ、一番戸に近い卓に腰を据えた。
一席一席の目の前に備えられたメニュウの中身は、私にとって興味をそそられるものばかりであったが、右下の隅にナポリタンの文字を見つけた。本当はもう少し迷っていたかったが、私の体内に迸る足立区民の血潮が、それを許してはくれなかった
“スパゲティーハンバーグ付き” @850也。
焼けた鉄板に、ソースが弾けるサウンドが眼前に舞い降りてきた。想像以上に鮮烈なロッソを残すナポリタンに、否が応にも気分が高揚する。ふつうにやればこうなりそうなものだが、私がこれまでに経験したハンバーグスパゲッティは概ね、これはハイブリッドのネガなのか、彩度を粗方失ったものが多かったので、食べる前から、これはちょっと嬉しい。スパゲッティの赤と、ハンバーグのドミソースブラウンとがせめぎあう境界線は、もはやエロスさえ纏っていた。
こうなれば直ちにナプキンで窮屈そうに拘束されたフォークを解放してやり、早速それにとり掛かった。
先ず、肉厚の、如何にも手作り感に溢れたハンバーグにフォークを入れた。そうしなければスパゲッティに辿りつくことは出来ない。ナツメッグに包まれた肉感が、口中でばらければ幸福。ナポリタンはそのカラーリング通りケチャップに支配され、そしてまた玉葱、ピーマン、ハムの織り込まれた、正しく様式美を貫くものであった。目玉焼きに醤油をまわしたい衝動に強くかられたが、全般的に濃いめの味付けに、さすがの私も諦めざるを得なかった。
サラダやスープがセットされるわけでもなかったが、その味付けの濃さに正比例するような高い満足感を得て、再び春の嵐の街に飛び出した私である
余談ながら、未だ正午前、私の食事中に二組の後客が入店してきた。一組は華奢な母親と壮年男性の親子であった。息子さんがナポリタンと、如何にもボリウムのありそうなカレーとフライもののセットを注文したので、てっきりお母さんがナポリタンを注文したのだろうと推測したが、私の想像とは逆の位置に、それらは配置された。
世の中とは本当に、よくわからないものである
2013/03/24 更新
月曜の朝の雨というものは、何故に斯くも人の心を憂鬱にさせるのだろうか。こんなにやる気満々なのに ……
と考え込みつつ出社してみれば、何の為のフェイントだったかおもてはやおら晴れてきて、ボクの楽しい集金日を、天候さえも祝福してくれているよう ♪
―― というのはウソで、今どき回収条件が集金だなんて、月売り10万以下のしょっぱい商売に終始しただけというのがほんとうのところ …… (涙)
<2025.1.20>
「三好弥」
だがそれでも、久々に「三好弥」さんへやって来れたことは収穫。
時刻は12時の40分ほど。おもてから店内を覗いたところ野郎独りくらいはどこかへ着けるくらいにお店は落ち着いていて、しかし唯一の二人掛けテーブルに着いて周りを見回したところ料理が出ているチームは無く、ちょうどお店が一回転したところにうまく嵌ったなと、自分の日頃の行いの良さを自画自賛 !
BGMはNHKの連続テレビ小説。
すぐ向こうに聳える最新鋭最高峰の電波塔が飛ばす強力な電波のおかげで、この辺りだけ未だブラウン管テレビがきれいに映り続けていることは奇跡だが、そのタイトルは、斉藤こず恵が見当たらないところをみると、「鳩子の海」ではなさそう
ホールは息子さんであろうか。
前はもっとチャラいイメージだと思ったが、今日はちよっと大人しめの雰囲気になっているのは気のせいか。そしてお母さんを初めて見たような気がすることも、おれの思い違いかな ……
こちらのお店はお父さんがコップの水に、深くて(周期の)速いビブラートをかけながら持ってきてくださるのが一つの醍醐味であったが、あの“泣き”の情景をみることはもうないのだろうか。
私自身は尊敬する「DEAD END」の足立祐二氏のように、深く、そしてゆったりとしたビブラートを好み、それをいつの日か身に着けたいと思ってやまなく、しかしその為にウィスキィを毎晩どれだけ飲んでも未だその掛かりには至っていない。
その意味で目指すものは違えど、お父さんの完成されたチョーキングビブラートには、内心憧れていたのだ
“スパゲティー カニコロッケ付” @1,030也。
デリシャスぢゃなくてデリーシャス。
同様に、本来スパゲティ―ではなくスパゲッティでなければならないはずだが、こちらだけはそのスパゲティー表記を赦せてしまうのは、完全に下町洋食屋magicだと思う。
そしてこれを蠱惑と言わずして何が蠱惑であろうか !
もう黒魔術に引き寄せられるように、フォウクの皮を剥いた。
―― 私はもしかしたら、皮を剥くという言葉が好きかも知れない
鈍く黒い鉄板がトマトケチャップに十分なメイラードを与え、その美味さを極限まで引き出していることが一目瞭然であるが、一方のこのスパゲッティの細さに、こんなだったかな ? と記憶を手繰り寄せても正直ピンとこず。
そんな記憶の曖昧さを独り恥じつつ搭載されたクロケットから割っていくことは、それが様式美ということもあるが、この変形ovalの鉄板から逆に指令されてのことでもあった
向かいの一姫二太郎チームは、そのメンバーでの食べ歩きに長けているのか、壁にも宣伝として貼ってあるが、こちらの媒体露出に関する言及を織り交ぜながら楽しそうに料理を待ってる。
細乾麺の折っての使用。また野菜を出しゃばらせ過ぎず、あくまでも炭水化物として真っ当であろうとする構えに加え、ケチャップ本来の味の強調。その混然一体へのメイラードの付加は寧ろ、これはパエリアの感覚に近いと思った。
と同時に、こちらのハンバーグスパゲッティ、及びコロッケスパゲッティは、町洋食の料理としてかなり高いステージにいるものだと信じて疑わなかったが、そこへ何か、“キャベツ太郎”的、言わばスナック的美味しささえ加わりつつあることを予感させる(笑)、そんな、cheapとgorgeousを拮抗させる“焼き”であった
「すみません外の販売機、お金が出てこないんですけど」
いきなり女性が飛び込んで来て、おもての販売機の不適合を訴えた。
洋食屋稼業の傍ら自動販売機の設置など、こんな人情味溢れる下町の洋食屋さんであっても、人間というものは、どこまでがめつい生き物なんだな(こらっ !)と訝りながら支払いを済ませておもてに出ると、路地の切れ間から、雲一つない蒼空を突き刺すように、腰上丸出しで電波塔が聳えている。
そのまんま、ヘソを曲げたというその自動販売機に視線を移したところなんと、まさかの100円均一 !
―― おれもう、これからはジュース買う為だけに錦糸町来るわ !
というのはウソでそんな主婦感覚(10円安い野菜を求めて隣町まで、往復小一時間かけて自転車漕いでくその無駄な感覚)、おれは金輪際持ってないわよ ♪