11回
2024/06 訪問
麻辣川府/プロの仕事とは
御大ジョージ・ミラーの前作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」には、監督の年齢など鑑みなくたって絶対的に度肝を抜かれたものだが、それも早2015年公開ということで9年も前のこととなるとは、どおりでボクも年をとろうというもの。
さて、その為というわけでもなかったが私は本日休暇をとっていて、その前作の主要人物であった女戦士フュリオサの誕生譚となる御大最新作の切符を、これは旧サロンパス劇場と私は思い込んでいるのだが、有楽町のキャニオンの袂、フルスペックの上映システムであるDolbyCinemaでとっていた
懸念している点は、その席料が2,700円ということではない。
まあそれもあるが、二つのギョロリとした目が顔面にちょっと離れてついている、アニャ・テイラー=オブジョイトイという昨今トレンドの女優のことで、最初見たときには瞬間的に強い印象を残すものの、見慣れてくるとヘン顔な気がしなくもなく(笑)、前作で同役を演じた、坊主頭だろうが片腕がロボットアームであろうがそんなことまったく意に介することなき圧倒的美人であったシャーリーズ・セロンの後釜を、果たして彼女が満足に担えるのか ? ということ
<2024.6.6>
「麻辣川府」
そんなこんな、先ずはご飯ということだが、せっかくの平日ということを利用した策もにわかには思いつかず、且つ楽な道楽な道を行こうとする自分に抗えずに、今まで幾度もボクを救ってくれた、首都高速高架下ショッピングモール内のChinese Restaurantに縋り付いてしまった。
とりあえず自動ドアの前に待ち客は無し。押し入ってお会計に手を取られているスタッフの視角の中に入るようにして物欲しげな顔して立ちずさんでみたら、その演技が功を奏したかスムースに席へと案内してもらうことが出来た。
注文は最初から決めていたが手元に注文の端末がなく、ランチ時、パーティションで細かく仕切過ぎた席に端末の数が足りないのかなと察知して、リモート注文にはこだわらず、代わりに手元に設置されていた電子呼び鈴を躊躇なく鳴らした
“石鍋麻婆豆腐(ライス)” @900也。
「辛さは中辛で良いですか ?」
「…… 中辛で良いです」
ほんとはこちらの麻婆豆腐は、辛さ控えめにしてもらって私にはちょうど良いものとなるのだが、気が動転して中辛で良いと言ってしまった !
その膳が舞い降りるやいなや ! ラスト訪問はそれほど昔では無かったと思うがその香りにたちまち懐かしさを覚え、同時に蓋を開けてその色合いに懐かしさを覚える。その昔「愛の貧乏脱出大作戦」の中で、修行を何度も途中離脱してとうとう卒業出来ずに散ったみなみちゃんが、「たとえ不味くても、常に同じ味の料理を提供し続けることが出来るのがプロだ」と発言していたが、その料理の安定提供という部分で、まさにこちらのお店の料理はプロの手に依るものだと思う。
私がいつも絶賛させていただいている上野広小路仲通りのものでさえも、週に1度、2度の頻度で通っていればたまに味が変わることだってあるというのに、でもこのお店にてそのような変化を、たまたまかは分からないけど、今まで感じたことがないのだ
繰り返しとなるが、こちらの麻婆豆腐はその辺の大陸中華のものとは比べ物にならないほどにその質(たち)は良いと思っていて、とは言いつついつも漂うスパイスが何だかも分からない自分の勉強不足だけを、今日も恥じるボクである。
且つ ! 場所柄鑑みたときは余計に、べらぼうな安価をキープし続けており、これはそろそろ、アナウンスもなかったことだしご飯や炒飯その他諸々のお代わりし放題システムは終了したのかな ? と思いきや、汗を拭き拭きレジスタカウンタに立って振り返れば、そこにご飯Bar(笑/ご飯Bar)がちゃんと継続されていることには恐れ入った !
もうこうなったら、位置的にこちらを基点とすれば、こっちの「過門香」さん、そして向こうの地下の「過門香」さん、揃って、こと麻婆豆腐に関してその存在理由が見つけられないほどに ……
―― あっ ! 地下の「過門香」さんがもしもチャイナドレス姿を、しかも反則技の大和撫子で未だ正々堂々やっていたとしたなら、そこだけは存在理由に成り得たわ ♪
その後、空いているDolbyCinemaのど真ん中で鑑賞したジョージ・ミラーだが、これは前作に抱いた印象通りに、引き続き暴力を芸術まで昇華させてしまったと言おうか、やはり期待通りの、迫力の暴力映画として完成された作品となっていた。
これは私の尊敬する永井豪さんにも通ずるものだと思うが、何と言おうか、人間年寄りになっても案外上半身の力は衰えないというか、暴力衝動については案外衰えないものではなかろうか ? という疑問、以上に確信めいたものを予感されられて仕方がない。
襲い来る大型バイクの群れを、まるで防波堤からイワシを釣り上げるようにキャニオンから次々と釣り上げるシーンは、ややもすればギャグにもなろうが、でもそれをスペクタクルに魅せるところが、ジョージ・ミラーの類まれなる“センス”なのであろう
そして年寄りになっても上半身の力は案外衰えないと言ったが、しかし足腰は確実に衰えていくように、年寄りになっても暴力衝動は衰えないが理性が確実に衰えるので、だから長寿社会になればなるほどに、暴力老人がそこかしこzombieのように徘徊する世の中になる。
何しろ未来がないということが、彼らのpowerをより無制限なものにするのだ !
(よく言った、おれ !)
―― と、それだけが言いたかっただけなもので、宴もたけなわですが、今回もこのあたりで失礼いたします
2024/06/10 更新
2023/08 訪問
麻辣川府/ところてん突きのように
夏休みの「独り映画祭」にもいよいよ行き詰まり、インターネットの映画サイトを宛てもなく彷徨っていたら、1993年にカンヌ最高賞を獲ったという、3時間近くの超大作中国映画が4Kレストアされてかかっているということを知る。
しかしながら、私は中国について四川という地域に伝わる豆腐料理には多少の心得があるものの、映画のテーマとなろう“京劇”についてはとんと無知だし、何より3時間は長過ぎるのではなかろうか ……
と、かなり迷ったわけだが結局観念して(笑)有楽町ビックカメラさんの天井桟敷で切符をとったところ、会員サービスデーで1,200円で鑑賞出来てしまい、3時間で1,200円ということは、それならば1時間400円ぢゃないか ! と、まったく意味不明なお得感に酔いしれつつ、先ずはご飯。
しかも中国映画を観る為には中国料理でなければならなかろうと、毎度、いつもの高架下入口の階段を上ってみた次第
<R5.8.15>
「麻辣川府 銀座インズ店」
こちらのお店は、数年前まではいつ訪れても比較的テーブルに余裕があったのだが、私の食べグロ投稿に依って一躍人気を博し ! 最近は素直に着席を許してくれないことも目立つようになってきた。そんな銀座はおろか、京橋まで含めたって(狭いよそれ ! 狭い範囲だよ !)最高の対費用効果を得られると私が満腹の信頼を置いている中華屋さん。
しかしながら今日は終戦記念日ということがあり、皆靖国神社に公式参拝&遊就館での展示ゼロ戦に依る「永遠の0」ごっこし放題イベントに勤しんでいるものと思われ、スムースに着席することが出来てlucky !
ぼくの目の前には美しい近所の美容部員の人と、そうでないそれなりのそこら辺の人の姿があり、そのうちの美容部員に視線をロックしつつ、斜め前のおじさんがセルフで煮卵を二つ持ってきたことに、「茹で卵なんか前からあったの ? 聞いてないよ~ !」と心で訝るボク
“石鍋麻婆豆腐” @900也。
例のものが舞い降りて、早速無垢の豆腐をスプウンで解体しながら、こんなとき、最初の「バイオハザード」で黒人の特殊部隊長を殺人通路で賽の目切りにしたあの網々のレーザー光線があれば早いのに、と。
そしてその通路に、今オレの悪魔手帳に記帳している気にくわない連中を、たいして美味くもないラーメン屋に行列する阿呆のように並ばせて、順番に、ところてんを突くようにバラバラにしてやるのだ ! と夢想しつつ竹脇無我夢中でかんましていたら、石焼bowlの中で麻婆豆腐が濃厚ミネストローネになりかけていることに気付き、慌てて手を止める !
そして水泡のように白いご飯も尽きて ……
いつもやめておこうと思うのだが、セルフの炒飯をとりに立つ自分を止めることが出来なかった。見ると確かに煮卵があって、それを軽くよそった炒飯のお茶碗の上にドラッグ&ドロップするか非常に迷ったのだが、あとからやって来る人たちの為に残しておいてあげることに。
milkyタイプの杏仁豆腐で〆、焼けた石鍋の高熱を十分に蓄えた体でふたたび灼熱の地上に飛び出せば、いまどき世間を脅かす熱中症という疾病さえも、熱中時代という崇高な情熱へとポジティヴに昇華して、このジグザグ気どった都会の町並みにとろけて往った
【以下映画の話】
1993年 172分 中華人民共和国 イギリス領香港
「さらば、わが愛/覇王別姫」
その後、時代背景を同じくする「ラストエンペラー」に堂々比肩するような、途轍もない中国映画を鑑賞。突っ込んで語るつもりはないが、とくに印象に残ったことが2点。
ひとつ目は、清朝の終焉~日本軍の台頭~日本敗戦に依る国民党軍?の復権~文化大革命に依る中国分裂、共産化という、中国近代史を私はよく知らないが、その変遷する体制の中で、京劇という歴史ある伝統芸能が翻弄させられるわけなんだけれど、でも果たしてこれって、中国映画なのか香港映画なのか、意外にも政治的平衡のとれた映画であった、という点
―― たしかレスリー・チャンって、「男たちの挽歌」に出てなかった ?
「日本兵のほうが、まだちゃんと座ってみてくれていた !!」
というのは、中国映画で描かれる日本軍は当然“絶対悪”ということとなろうが、それもそうなのだけれど、入れ替わりに威張り始めた国民党軍のモラルは日本軍よりも更に酷く、そして共産体制だって、京劇を保護してくれるようには到底思えない、といったような雰囲気を、はっきりと醸して描かれていたということ。
その演出はとうとう、主人公のレスリー・チャン演じる蝶衣に、日本が勢力を保ったままでいたならば、願わくば日本に渡って京劇を広めたかった、とまで言わしめるのだが、たしかにその心境に至ると思しきシーンがうっすらと挿入されてはいたものの、そこまで蝶衣が日本に傾倒していたのか ? と少々腑に落ちなかったところ、実は本作には、日本兵たちが蝶衣を料亭に招いて歌を歌わせるとき、皆正座をして出迎えるというシーンまでもが存在したのだが、しかしそこはさすがに過去のどこかでカットされたとのこと
※ それは幼いころから一緒に修行し、後に一緒にトップスターへと上り詰めた(血のつながりのない)大王項羽役の兄を救う為であったが、日本軍の前で歌を披露したことに依り、のちに蝶衣は当局から国を売った罪で逮捕されてしまう
そしてふたつ目は、昨今のトレンドであるLGBT推進(笑/まさに推進だよね)に伴ってのホモ/レズ映画の量産化に依るその質の低下は目に余るものがあるが ! 同性愛、とりわけ男と男のそれを描くのならば、それならば本作くらいに、艶やかに、そして格調高くやっていただきたく、やはり往年の作品のその辺りの演出は上質であったと、これは日本の作品でも同様だと思うが、あらためて感心させられた次第
虞美人/レスリー・チャンの原色のメイキャップは、我々わびさびの日本人の目には些かどぎつく映らなくもないがそれでも、中国共産党が強制する人民服の無彩と、その圧倒的なる鮮やかさとの尋常じゃないコントラストに、当時の本作製作陣の中国共産党批判、というよりも、自由だった時代へのノスタルジアというものなのかな ……
そういった郷愁愛の滲みに共感させられざるを得なくなる、そしてまた今後、そういったことに疑問一つ抱きさえしなくなるであろう純血の共産党の子供たちへの完全移行を果たす中国に対し、隣国民として何を憂えば良いのかを考えさせられるような、そんな広大な大陸的スケイルの映画を魅せつけられたなら、ただただ中国五千万年の歴史にひれ伏すボク ……
Fine
2023/09/12 更新
2023/04 訪問
麻辣川府/今銀座でもっとも影響力のある麻婆豆腐
「また死にたくなったら、いつでもおもんのところへ来てくださいまし。約束ですよ ……」
【妙】:不可思議なほどすぐれている。巧みである。きわめて美しい。善美の極。たえ
トヨエツの「藤枝梅安」が思いのほか良い出来栄えで、その“2”を観に久々の有楽町。
銀座の人出は今日も勢いよく、そして今日は冒険よりも安全運転でいこうという気分が、ぼくを高速道路高架下のRestaurant街に一直線に誘った !
<R5.4.9>
「麻辣川府」
階段を上がったところ。こちらの前にはすでにアベック一組の待ちあり。
すべては今、TIME誌が選ぶ「世界で最も影響力のある食べグロガー100人」に図らずも選ばれてしまったこの私が、自らの手でこちらを一躍人気店に押し上げてしまったからだが、だからこそこちらの回転の早さも分かっているので(というか、席は空いているがマンパワー不足で案内できていないだけだと見破ってさえいるぼくなので)、今日はちょっと待ってみようとそのアベックの後ろについて、そのことによって無駄に反応してしまう自動ドアに気を使い、ステージ上で“鳴る”ポイントを探して小刻みに動くマイルス・デイヴィスのように、自動ドアのセンサーから逃れる位置を探し、怪しく小刻みに動き回るぼく ……
“石鍋麻婆豆腐” @900也。
最初に来た時には、たしか800円で食べられたと思うのだけれど、900円になった今も、依然としてこちらのご飯はお値段に対して圧倒的パフォーマンスを放っているとしか言いようがなく ! こないだコレド室町のカウンターでやった単品麻婆豆腐&ライスでの1,300円超というのが、もはや悪い冗談のよう。
お隣の若い女性は、界隈に日曜出勤するoffice-ladyであろうか。横目に垣間見えるそれは、カラーリングから“豚肉の四川風煮込み”ってゆ~やつかな ……
午後もバリバリに仕事してやるぞ ! という意思に満ち溢れるご飯をやっており、日本の未来も明るいばかり !
情けなく今日も小辛keepのぼくであるが、それでもやはり頭から汗が湧いてきて、でもそれがカッパーマンの末裔でもある(ただのてっぺんハゲなだけね)このぼくに元気を与えてくれる !
麻婆豆腐を十分に残して白いご飯がなくなれば、炒飯をよそってきて麻婆炒飯にすることも忘れはしない ! でもそれに加えてみんながお小皿でgetしてくるフリーメニュウの正体はいったい何なのか ?
それらは、顔を知られているというわけでもなさそうなぼくが毎度行って同じ対応なので、これは皆同様なこととなろうかと思うがアナウンスは一切無いと思われますので、そこだけは、中国5千年のしきたりに従って、皆さんそれぞれ、勝手にレジスタカウンタの向かいとなる“諸々Bar”までいって略奪してきてくださいませ
【以下映画の話】
2023年 119分 日本
「仕掛人・藤枝梅安2」
トヨエツと片岡愛之助さんのバディっぷりも最初から板についていた「藤枝梅安」2作目。
時代劇だからこそ許されるのであろう、極端なハイコントラストのレンブラントライティングにぼぉっと浮かび上がる長身痩躯、坊主頭の豊川悦司さんのおっさんの色気が今回も炸裂し、片岡愛之助さんの、逆に凡人感もさらに磨き掛かった、最近の邦画にしては珍しく“貧乏くささ”アプローチを逃れたエンターテインメント快作である。
本作の魅力を支えるのは熟れ切った豊川悦司さん、片岡愛之助さんのバディが惜しげもなく晒す“おっさんエロス“ということも無論あろうが、実はその半分くらいは、今回ちょこっとしか出番はなかったのだけれど、菅野美穂さんの、ひとつ間違えたら時代劇にはまるでそぐわないということになりかねない、ちょっと舌っ足らずなセリフ回しの妙というものに、まず間違いなかろう
池波正太郎さんの原作、及びそこから起こされたさいとうたかをさんのコミック、ともに未体験である私だが、所謂「仕事人」、「仕掛人」というものに対する理解は、お金で殺人を請け負うアサシン(殺し屋)のことで、そこで仕掛けられる対象はすべからく、極悪非道であるべき。しかしながらアサシンたちも、そこに世間からの称賛など与えられるはずもなく、日陰を渡り歩いた挙句、己もいつかは惨めに骸転がされる運命を背負う、という、言わばバッドエンドの美学を描いたものであろうと。
本シリーズでのそのトヨエツの特異な風貌、円熟に入った肉体、及び演技は十分にsuperman足り得るものであるがしかし、そこは完全に仕掛人というものの様式美に則り、悪人殺しを請け負いつつ、同時に自らも死の影に無様に怯える、という内面がいみじくも表現されている
女を抱くほどに死に近づくというおとこ
死にたくなったらいつでも来てくださいなと誘うおんな
「藤枝梅安」という作品が描くテーマのひとつが、本作を通じても力強く伝わってくる“eros”であるとするならば、日本映画がほんとうの日本映画であろうとしたときに避けては通れぬものを、本作もまたbreakthroughしようとしていないことがつくづく惜しいと思うが、繰り返しとなるが、そこへ長澤まさみさんでも北川景子さんでもなく、菅野美穂さんを持ってきたということだけでも、今はそのことだけでも評価したい気分の私である
図らずも恨みを買ってしまった凄腕の剣豪との最後の勝負。
ペンは剣よりも強しという言葉はあるが、鍼(はり)は果たして剣にも通じるのだろうか ? 病を治療する、ということは人を救う為の道具を、一転人殺しに用いるということ。これは薬も毒も紙一重、ということの教示だとも思うが、ならば極悪人に死を与えるということも、ひとつの治療行為というのか !?
バカは死ななきゃ治らないという中国の古い諺があるが、悪人も死ななきゃ治らないという論理ならば、私にも分かる気がする ……
長時間文句も言わずに屋根裏に潜んでくれている彦さん(片岡愛之助)が心強い。そして二人が同時に“来る”と直感した仇が顕れ、ふたりはそれぞれ同時に“仕事”を開始した。
仕事を終えた二人は、その殺戮の舞台となった梅安の住まいで、何事もなかったかのようにゆったりと酒を酌み交わし、やがて酩酊に誘われて二人揃って雑魚寝する ……
このふたりには、降旗康男監督「鉄道員 (ぽっぽや)」の高倉健と小林稔侍のような、男と男にしか醸し出すことの出来ない奇妙な関係を思い起こさせられた。
この先もしも邦画に可能性があるとしたならば、私はそれを認めたくはないのだけれど、それは時代劇だけかも知れないと思った
Fine
2023/04/16 更新
2022/12 訪問
麻辣川府/hotもっと
いよいよ年の瀬の雰囲気も垣間見えるようになった銀座。
家族、友人、恋人同士。道往く人たちは皆充実した人生を謳歌しているようで、また行き交うクルマも八割方フェラーリ、ランボルギーニ、一割くらいがマクラーレンという状況の中、一人の人生の敗者として、それでも顔を上げ、前を向いて歩いていこうと歯を食いしばる
今日は冒険は避けようと、銀座インズの中の中華屋さんを狙って階段を上るとなんと ! 店頭に待ち客を抱えているではないか。一寸迷ったが、これもこちらのお店の良さに最初に気付き、レストラン口コミサイトで持ち上げて繁盛店にしてしまった自業自得。成長した子供を影から見守るの親のような気持ちで踵を返して外堀通りを渡り、いつものぼくのご飯処、「イタリー亭」さんを目指したところこちらも ! 暗い階段を見下ろして数組のお客さんが待っている状態ではないか !
―― 「イタリー亭」さんは自分が知る前から元々繁盛店であって、でもほぼ毎回スムースに入店が叶っただけにどうも納得がいかない …… (笑)
<R4.12.19>
「麻辣川府 銀座インズ店」
ほんとの話、京橋界隈までぐるっと回って、這う這うの体でまた銀座インズに帰ってきた。
いや、最初っからこちらは構えよりは広いフロアを持っていて、待っていれば順番に、すぐに入店が叶うことは分かっていたのだ。案の定、戻ってきたときも未だ2組ほどが待っていたが何でもなくすぐに入店することが出来、いい加減お腹も空いていたので、早速もう慣れた端末を操作して ……
そしたら今日も料理の出てくるのの早いこと !
“石鍋麻婆豆腐” @900也。
相も変わらず価格を大きく上回るgorgeousな風貌 !
その提供時間は怪しいほどに早いが(笑)、石鍋が伊達じゃなく芯まで焼かれているのでグツグツがなかなかとまらない。
しかし紙エプロンをもらっていることだしさっさと木蓋を外し、無垢の豆腐をスプウンでぐちゃぐちゃにするとき、ぼくの興奮はにわかにピークに達した。
あらかじめ辛さを“小辛”に設定してはあるがまったく油断ならないことは、もう何度か先述させていただいている
hotにしてhot。
すなわち辛く且つ熱いこちらの麻婆豆腐の攻略方法は、そのままスプウンでいくと即死する可能性がある為、ご飯茶碗に麻婆豆腐を移し、それを箸でやることだということも、もう先述させていただいたと思う。
そうすることに依り、料理の空気に触れる表面積を増やして冷却を促すという算段で、言ってみれば、空冷エンヂンのシリンダーに設けられている冷却フィンのような効果を期待するということである。
しかし今日はご飯にたどりつくまで、あまりに行き過ぎた走行距離で膨れ上がった期待が大き過ぎた為か、味の根本要素である豆板醤、甜麺醤のパンチがやや弱いように感じられた。
hot、は十分だが、いつもの“もっと”。即ちsomething elseの“もっと”が !
気のせいかな ? とも思うのだが、変わらぬ口中調味でやっていったつもりでいつものように一瞬でご飯がなくなってしまうという現象も起きず、おかず(麻婆豆腐)が足りなくなったわけではないものの、結果、麻婆炒飯に至ることが出来ないというプチ悲劇が ……
(最近毎度アナウンスがないことが気になるものの、レジスタカウンタ付近のお釜よりご飯、炒飯、あとなんか(なんかってなんだよ)のお代わりが自由。との認識でいるのですが、ルール変更があったとしたらどなたかご教示ください)
―― まあ量的にはこのくらいで丁度良い、というよりも言い方を変えてこれ以上は食べ過ぎ ! ということで結果オーライなんだけどね ♪
2022/12/19 更新
2022/07 訪問
麻辣川府/そこだけが本格 !
猛暑を引き摺る東京は銀座。
久しぶりに東京ミッドナイトタウン日比谷の集合映画館に切符をとったが、こちらが開業してちょっと落ち着いてきた頃を思わせるくらいの、ここ最近見たことのなかった賑わいの復活 !
お手洗いの思い通りの利用もままならず飲み物を買うこともあきらめて、「万引き家族」の是枝裕和監督の手に依る、韓国の至宝、ソン・ガンホさん主演(デンマークの至宝マッツ・ミケルセンみたく言ってみました/笑)の家族映画を求めてスクリーン入りするぼく
<R4.7.9>
「麻辣川府 銀座インズ店」
麻婆豆腐が好きなぼくだが、大陸中華店の得体の知れぬ挽肉にいい加減嫌気が差して、ここ最近積極的にはやろうとしていなかった為に欠乏状態に陥ったか、矢も楯もたまらずに飛び込んだ(安価ということも評価に加えれば)世界最高峰の麻婆豆腐Restaurant !
賑わってはいるがいつものように滞りなく席に通していただけてlucky !
ならば早速端末を操作し、テレサ・テンの「別れの予感」を入れようとしたが見つからず、仕方なくランチメニュウの中から“例のもの”をショッピングカートに入れ、レジに進んで注文決定 !
(ほんとそんなやり方だった ?)
―― そして、うっ ! ご多分に漏れず、ちょっと改定されちゃってるかな ? お値段 ……
“石焼麻婆豆腐” 900円也。
文字通りに焼けた石鍋で、辛さ最弱にパラメータを振って注文した麻婆豆腐だけど、それでも目が沁みて、ほんとうは四川に麻婆豆腐などという料理は存在しないのだけれどそこだけは四川だなぁ、と妙に納得。
(辛さ最弱でも私には十分だとは、予め分かっていたこと)
塊りの豆腐を自分の手で割るときの、ちょっとした恍惚感に微睡む。
こちらの麻婆豆腐は安価だが、あくまでも灼熱にしてspicy、且つgorgeousで、私の主観ながらそこらへんの「過門香」さんと比較して、料理は(麻婆豆腐限定として)同等からちょい上くらい。だけど値段が図抜けて、もうオーヴァに言えば50%くらいも安価となるので、満足感もひとしお !
―― ひとしおって、意味は分からないけど使ってみるぼく。塩ひとつまみってことかな ? 胡椒少々みたいなね
いつもどおりにドゥ・イット・ユア・セルフで炒飯をよそってきて麻婆炒飯を完成させることを忘れはしない !
そして最後に、高級店の証である枸杞の実がのった杏仁豆腐を堪能させていただく。この色合いは、アクセントの枸杞の実含めて「小洞天」さんのそれに似ているが、有楽町ビックカメラさんの地下のお店が無くなってしまったことをふと思い出して、哀しい。こちらの麻婆豆腐とはある意味対極に位置するとことん日本ナイズされたあのファストフード的麻婆豆腐を、もう永久に食べられなくなってしまったことが ……
―― 「小洞天」さんは、日本橋とかに行けばあるんじゃないの ?
でもあの地下が良かったんだおれは ……
2022/07/12 更新
2021/12 訪問
麻辣川府 銀座インズ店/マリアンヌも絶賛 !
「マッドマックス」のマックス役にも抜擢されたトム・ハーディという役者は、それを演ったからというわけでもないだろうが胸板厚く男くさい役者にしか見えないんだけど、実はめちゃくちゃな美男子だった ! ということを知っている映画ファンがどれだけいるだろう。
斯くいう私だって、「裏切りのサーカス」というイギリスのスパイ群像劇を最初に観たときにはトム・ハーディという名さえ知らなく、数年前に二度目の鑑賞となったときに、現代の主役級役者がごろごろ跋扈する中ようやく“彼を彼として”見つけ、また随分とすらりとしたその美貌に、この小さな胸がキュンッ ! となってしまった次第
その彼が宇宙から来た人食いアメーバと合体して何食わぬ顔で日常生活を送っているという映画の切符がとれていて、床屋にも行かなければならなく、また世界の超高級腕時計の修理が完了したという連絡も受けている中 ……
いつもの床屋の、覇気は無いがこだわりのある彼が、私の前にカット2,500円のお客を丁寧にまるまる一時間かけて終え、今度はカット“のみ”1,500円の私にも40分以上かけるという仕事を、もう何度も何度も眠りに堕ちかけつつ目の当たり、よくこんなんで営っていけるよなぁ、と、寧ろその上質なミステリーには感心さえ覚えてしまう
<R3.12.18>
「麻辣川府 銀座インズ店」
その“丁寧”により時間が押して、とり急ぎいつもの高架下のレストラン街に一直線。地面基準では二階へと上がっていく。
と、最後のライフポッドと期待していた「銀座ライオン」の前にさえ人だかりが出来ているではないか ! これはまずいと自動的に足が早まり、今度は麻辣を名乗る大陸中華に飛び込んでみれば、お姉さんから(バッシングまでの間)ちょっと待ってくだいね ! となってしまったものの、直ぐに席へと通していただいてlucky !
こちらの繁盛にも私はかなり寄与させていただいたと自負しているが、でもそのことに依って入店し辛くなるのも困りものなんだけど、こうして入店が叶っている限り、御徒町の「王さん私家菜」同様、それは育ての親としては嬉しい限りである。
(なんてね)
お隣のアベックの彼氏に先ずそれが届き、おって私にもいつもの料理が舞い降りる。お隣の彼女の料理を追い越してしまったということにいくらかの後ろめたさを覚えつつ、しかし人間生きてた行くためには食べなきゃいけないので、仕方なく(笑)割り箸を抜刀した
“石焼麻婆豆腐” @800也。
隣の彼はこの“石焼”を初体験らしく、しきりに「中辛と迷ったけど小辛にしておいて良かった」と、その熱波を受けてビビっている感じ。
つったってぼくもお店の女の子には、「あんまり辛くしないでください」って頼んじゃったんだけどね。
これまでの経験に依ってそのいつまでもぐつぐつ煮えたぎる“控えめ”をご飯茶碗にうつしてやって箸でやることは、空気への接触面積を増やして冷却効率を最大限に活かす為。
そのことに依ってきれいなお茶碗を汚すことになるが、それが中国人の目にはどう映ってしまうのか ? ということを考えさせられるようなリン・チーリンのような美女なんかいないので、まったく気が楽 !!
(お前というやつは ……)
夢中で掻きこんで早くもlostしてしまった白いご飯。
そうなったら残る不安は、深さのある土鍋にまだ熱々のまんまたっぷりと控える麻婆豆腐をどう消化していくのか ? ということ。
いや、こちらは確かご飯やなんかが(なんかって何 !?)おかわりfreeなはずなのだが、最近注文後にホールの女の子たちがそのアナウンスをくれなくなってしまって、何か制度が変わってしまったのかな ? と、ちょっと不安なぼくなのである ……
こんなとき、今まさにこの空間でランチしてる界隈にお勤めの、こちらを“ふだん使い”しているであろう男女お一人様たちが率先してご飯お代わりに立ち上がって下されば、お上りさんの私としてはもう非常に勇気づけられちゃうんだけど、こんなときに限ってそいつらが機能せず !(おいおいおい ! そいつらはやめて ! その御方たちが機能していない、言い方をかえて、その方たちが不能 ! くらいにしとかないとダメ)
なので私が世紀末救世主 ! 最近のトレンド風に言えばファースト・ペンギンとなるべく敢然と立ち上がった !
ら、私の後に続き、夥しい数の人の群れがご飯お代わりを求めて列を成してくるではないか !
(すみません、ちょっと誇張してしまいましたが、ソフトにそんな傾向が見受けられたのは事実です)
「あんまり辛くしないでください」
世の中にはそうして自分の弱さをさらけ出さなければ決して獲得できないものがあり、今まさにそれを黒い炒飯で思う存分堪能し切り、枸杞の実でデコレイトされた杏仁豆腐で〆る !
毎度繰り返しとなってしまうが、こちらの麻婆豆腐800円は、まるで「アルト47万円 ♪」のように、パリも街にもよく似合う(笑)最高にリーズナヴルなお昼ご飯だと思う
2021/12/19 更新
2021/11 訪問
麻辣川府/屈辱の小辛
引き続き晴れ渡った東京は銀座の街。
リーアム・ニーソンのトラック野郎的映画を鑑賞しにやって来たわけだが、そのスクリーンが昔でいうところのみゆき座、スカラ座。東京宝塚の地下ということで、大して好きな劇場でもなかったんだけど(笑)、でも随分と久しぶりだなと ……
※ というのは、こちらのスクリーンは現在TOHOシネマズに組み込まれている為、お客側からこの劇場を選びにいくということが出来ず、この劇場で鑑賞できるかどうかは、完全にTOHOシネマズ日比谷の番組依存となってしまっている為
<R3.11.14>
「麻辣川府 銀座インズ店」
都会の喧騒に気圧されれば、どうしても、自分が何を食べたいかではなく、どこのRestaurantであればこんな野郎独りの居場所を見つけることが出来るのか、という選定となってしまい、最高で「麻辣川府」さん、最悪でも「銀座ライオン」さんということで(こらっ !)、いつもの首都高速高架下へと潜り込む、というよりは2階へ上がる恰好となるのだけれど。
フロアに足を踏み込んで、それなりに賑わってはいるがぎゅうぎゅう詰めという状態でもない。
「ド~ゾ」と促された気もするんだけど、それが厨房の方向のような気がして足を踏み出すことを一寸躊躇する私にお姉さんがふたたび手招きしてくれて、半信半疑で着いていけば、今まで通されたことのなかったVIPルームが眼前に広がった !
但し注文がタブレット端末からではVIPもく〇もないけどね ……
あっ ! 食べものリポートでその言葉使いは良くないな ……
すみません、言い直します
VIPもう〇ちもないけどね
“石鍋麻婆豆腐” @800
しかしそのタブレット端末を経由して、800円とはとても信じられない見事な膳がやってくることが、こちらのお店の真骨頂 !
しかも塊のまんまの豆腐を、いつもはお姉さんにかんまされてしまうのだが、今日はそのまま去っていってくれたので、自分でかんますことが出来てうれしい !
(子供かよ !)
杏仁豆腐はミルキーなタイプで、小洞天のそれのようにちゃんと枸杞の実がのっており、弥が上にも気分が高揚させられるが、今は断腸の思いでそれを横へと除けて、先ずはギンギンに焼かれた石鍋の中の豆腐を、「バイオハザード」のレーザー警備システムでやられた隊長のようにバラバラにしてやった。
こちらの麻婆豆腐の激熱、そして激辛に依り、今まで何度も全身やけどを負わされ生死を彷徨った私なので、今日はビビッて“小辛”をチョイスしたんだけど、それでも石鍋から迸るspicyは留まることを知らず、そこはかとなく目に滲みてくるほど ……
結果今日も最高の出来栄えの麻婆豆腐を堪能 !
先述させていただいているが、価格を加味すれば「過門香」さんを完全に置き去りにしていると思う。
あとはこれから鑑賞する「トラック野郎」が、ミニパトのあき竹城婦警のおっぱいぽろりから始まってくれれば、もう何も言うこと無し !
2021/11/18 更新
2021/08 訪問
麻辣川府/あのときへ
いきつけの居酒屋を数年前に卒業していった女の子のInstagramが久しぶりに更新されたと思ったら、そこにはピンク色の肌をした生まれたての赤ちゃんの写真が ……
大学生一年生のときから4年間、顔を上げればそこにいてくれると思っていた女の子が卒業して私の前から忽然と消えてしまっただけでも気が狂うかと思ったが、私の知らないところに嫁いでいって、まさか出産まで成してしまうとは ……
でもその目をつむったままの無垢な赤ちゃんの顔をみていると、なんだかこちらも、ほのぼのとうれしい。
こんな平安な気持ちで見守れる自分が、寧ろ意外だった。
―― 例え心の5%くらいが、激しく咽び泣いていたとしても ……
<3.8.21>
「麻辣川府 銀座インズ店」
最近得体の知れぬ中華を避けている私なので、その反動か何なのか、ときどきchineseをやりたくなることがあり、今日は気持ちがそのスパイラルに捲かれていた。
ならば安心、安価をとり、高架下の2階へと上がっていく。
そこでランチの麻婆豆腐を注文すれば、その灼熱と辛さに大やけどを負って重体にはなるものの、超満足が得られることは分かっている。だがしかし、今日はもう避けては通れぬと、日本で発展した中国料理としてもはや古典とも言える、古の皿のボタンをプッシュした。
いや、入店後初めての奥の間に通していただき、怖れ多くも4人掛けのテーブルを与えてもらったはいいが、この端末からの受注システムを導入していよいよほったらかしとなった接客に(笑)、しかし要領を知っているこちらとしては寧ろ、ストレスフリーとなって都合が良いのかな、と思いつつ ……
“エビチリ定食” @900也。
その値付けからも最初っから想像がついていたことだか、リン酸塩水加水の小エビの跋扈。願わくば1,200~1,300円くらいの定食でちゃんとした海老のちゃんとしたケチャップ煮が出て来てくれれば最高だろうけど、この価格では、そこは責めどころぢゃなく ……
今は昔 ……
未だ小学校だった私には、零細だったが繊維業界の社長を営む伯父さんがおり、その伯父さんにはよく釣りに連れていってもらった。
主に私と伯父さんの二人きりが多かったと記憶しているが、その日珍しく、それに加えて伯母さんと私の弟の、計四人で横浜のふ頭で釣りをしていたと思う。
ほとんど釣れなかったと記憶している。おばさんが屋台で買ってくれたお好み焼きを、子供の私は未だ食べたかったんだけど、もう食べなくていいと言って、海に捨てさせた。
おそらく伯母さんからしたら、今思えばその屋台の衛生状態が気に入らなかったのだろう
その後すぐに納竿し、伯父さんは私たち兄弟を、横浜中華街の或るお店に連れていってくれたのたが、それがどこかは今となってはとんと分からない ……
そこでふざけて私の弟が「海老のケチャップ煮」と口を滑らせると、間髪を容れず、伯母さんが「あんたそんなの食べられるの ?」と言った。それは大人が食べるものなの、と言ったかも知れない。
その叔母さんの若い頃の水着姿の白黒写真が家にあったが、若い頃は南田洋子さんのように、それはそれは綺麗な人だった。南田洋子さんに似ている、ということではない。南田洋子さんに匹敵するくらいに、ほんとうに綺麗な人だったのだ。
調子にのる弟。美人ながらも冷酷な伯母。その狭間で子供ながらに立つ瀬無き、兄である私 ……
しかし伯父さんが、その奇妙な間を埋めるように言い放った !
「ほんとうに食べるなら(食べたいなら)、注文してみればいいよ」
いつもの玉子スープはちゃんととんもろこしのうま味が出ており、日本人基準でいうとちょっと惜しい仕上がりの白いご飯と搾菜の細切れとの相乗も、私にはうれしい。
これは皮肉ではなく、エビチリだけが、この価格で纏めようとするとこちらの力量を持ってしても、カラオケボックスで注文するそれに毛が生えたくらいのものとなってしまうということが分かったということを以て、本日の収穫としたい。
それでも欲張ってセルフサーヴィスの炒飯を“気持ち”程度ながらよそってきてしまい、自ら“海老炒飯”を完成させて悦に入れば、いつもどおりに至福のお昼ご飯に微睡んでもう上機嫌の私なのだけれど。
窓際の飲み友達、或いは過去の同級生といった距離感のアベックの彼には私の知る麻婆豆腐。彼女は小さいどんぶりと、バスケットに入ったなにやら大袈裟なものをやっているようで、彼は案の定、その本格に大やけどを負いつつ汗だくになって尚手が止まらず、その中でお互いのご飯をちょっとずつシェアし合い、彼女のほうが「美味しい !」「このお店は当たりだ !」を交互に繰り返していたが、そのことには私も完全に同感である
還って今は昔の横浜中華街。
その“海老のケチャップ煮”は、子供向けに辛さを鈍(なま)らせてくれと伯父さんがお店にお願いしてくれたのだろうか ? そんな記憶はないのだけれど、人生初めて食べた海老のケチャップ煮の、当然ディティールなどは覚えていないが、その美味しさだけを未だ身体が覚えているのは何故だろう ?
もうとうに鬼籍に入った伯父さんのことを、まさかエビチリを食べる度に思い出すわけでもない。でもその伯父さんの気持ちに報いる為にも、自分にとっては専門分野でないその想い出の“エビのケチャップ煮”を、それでも俺は、いつか見つけ出してみたいんだよなぁ ……
―― でも中華街にいってそれを大きく阻むことは、まともなお店ってそ~ゆ~の、大皿料理だと思う。だからいつも一人のおれには、それがそうとうに高いハードルになって立ちはだかってくるのよね ……
2021/08/22 更新
2021/07 訪問
麻辣川府/補助パワー起動 !
「ぼくはねぇ、必ず助け出しますよ。ぼくの妻を。ぼくの息子も、あなたのお嬢さんも、みんなきっとね !」
日本国民全員反対の中、自ら手を挙げて選ばれたのだから、ホスト国として全力でその責任を果たすのが当然だろうと唯一人東京オリンピック開催に向けて尽力してきた私だが、ここまでくればあとは現場の実務者たちに任せ、自分は影から開会式を見守ろうと居酒屋のテレビを見上げてみれば ……
―― ああ、こうやられるとどうしても、「007/ロシアより愛をこめて」や「燃えよドラゴン」の中に出てくる格闘家養成所で踊ってる相撲レスラーや空手ダンスを見せつけられてるみたいで、ほんとうの日本の、触れたら切れるような凄みを世界に向けて発信して欲しかったのに、もうぜんぶ台無しだよ !(笑) 関係者たちのもう20年前の不適切な言動持ち出してなんとしても妨害工作し続ける連中の前に、これじゃあそもそも自滅じゃん ……
テーマ曲も、俺があれだけ推薦した「砂の器」の“宿命”使ってくれてないし。先ず加藤嘉がお遍路さん姿で流浪の旅に出るところから始めて、全世界の人々のハートを一気に鷲掴みする予定だったのに ……
<R3.7.24>
「麻辣川府」
昨日に引き続き麻婆豆腐をやるのは、勉強でいうと復習効果を得る為、また同じ料理を連続させることにより、よりディティールを際立たせる為、ということもあるが、最近中華屋を避けていたことに依り、単純に麻婆豆腐欠乏症に陥っていたということに外ならず。
その為の舞台を首都高速高架下に決め、一直線にやってきた。
席はいつもの回廊テーブル席。陽のあたらない私にとって、何も文句はなし。注文が端末入力式になっていたことだけが不安で、恐る恐る“注文”というボタンにタッチしてみる。
「ブレードランナー 2049」の世界観であったなら、そこでAIの美女がブ~ン ! と立ち上がるのであろうが、未だシステムはそこまでには至っていなく ……
“麻婆豆腐” @800也。
鍋蓋をopen-sesameさせて、塊りの豆腐が姿を顕すという演出は変わらず。
素直に紙エプロンを付け、これから始まる死闘に備える。というと恰好は良いが、その辛さは、ビビッて下から二番目の“中辛”にしてある。
しかしそれでも私にとっては容赦なき辛さ、及び熱に、口の中がみるみるうちに焼け落ちて、ターミネーターみたくマシンの歯茎が剥き出しになり、噴き出る汗をぬぐったら顔面の皮膚も無残に削げ落ち光学レンズの目も剥き出しになってしまい、まさに麻婆豆腐を食うだけなのに何が悲しくて(笑)ほんとうに死闘の様相を呈してきた !
液体金属、もとい、その液体料理の攻撃力は凄まじく、パワー(熱)も弱まる気配をまるでみせない。このままいくと白いご飯がなくなり、そうすればさらに状況が酷くなると思いつつ、意識が遠のいていく ……
「補助パワー起動 !」
私はふたたびマスクを付けて立ち上がった。
私の目に備わった日本光学工業製Nikkor 105mm f値2の超高性能レンズが、東洋の古い象形文字がふられた電気釜を見つけ出す。その象形文字を私のAIが全力で分析しにかかっていた。
その象形文字は、“炒飯”というディザインだった ……
その液体料理もダメイジはひどいらしく、これまで私の出会った無数の嫌な奴らに姿形を変えながら喘いでいる !
(逆に良い人間にほとんど出会っていなかったことがショック !/笑)
私は炒飯をよそったお茶碗を抱え、そのぐらぐらと金属をも煮えたぎらせる石鍋の中に、電動チェーンブロックにこの身を委ねての降下を試みたのだが、私の中に備わった自殺防止回路に依って「そうすることもIcan nat !!」 そしてボタンを押してくれるはずのジョン・コナー少年の姿も無し !
―― 初めて使ったな、「そうすることも I can nat !」 これ使えるわ !
だからもう仕方なく、ふつ~に麻婆炒飯に舌鼓を打ち、杏仁豆腐食って店を後にしたわよ ……
でもこれ絶対、食べ放題コーナーに水餃子とかも見えてたし、あと水草みたいのが入った透明の液体とか(なんだよそれ !)、そういうのフル活用したならもう、絶対800円のご飯じゃないってこれ ♪ 絶対お得だよここんちのお昼ご飯 ♪
ということで帰りしな、心でお店に告げる
「I'll be back !」
【以下映画の話】
原作:小松左京
出演:渡瀬恒彦 名取裕子 山下真司 大滝秀治 丹波哲郎 夏八木勲
1987年 120分 日本
「首都消失」
いつもの有楽町「ビックカメラ」の上の映画館に昭和のサイエンス・フィクション超大作が掛かると知り、矢も楯も堪らずにやってきた。
家庭を顧みずに仕事に打ち込む男。黙って家庭を守る妻。それがどの時点で破綻したかは知らないが、妻からの渾身の最後通牒のサインを見抜けなかった日本屈指の電機メーカ技術部長の男は、その妻と息子ごと東京を飲み込んでしまった邪悪な雲に向け、妻から届いた離婚届を懐中に、自身ありったけの科学技術を駆使し、家族を救う為、都心をまる飲みにした半径30km、高さ1.5kmの暗黒に立ち向かう !
主演の渡瀬恒彦、ちょっと嫌な奴を演じる山下真司からは、現代俳優たちが失ってしまった男くささが立ち上り、ヒロインの名取裕子も、離婚して尚、一人娘を親にあずけてニュースキャスターに没頭する現代女性(もはや現代ではないか)を演ずるが、その強さがヒステリー方向に向いてはおらず、女としてのしなやかさを軽く両立させて魅せるのは、その稀有な美貌からか ……
Fade out
2021/07/26 更新
2021/01 訪問
麻辣川府/ボクご飯物語
冴えない男が、子供の頃に父親と芝刈りをした、その匂いが好きだったと想い出を振り返る。
気難しい女が、それは草が、自分を食べる虫を殺してくれる虫を呼び寄せる為に放つ酵素の匂い。あなたが良い匂いだったと懐かしむそれは、その実殺戮の匂いなのだと、男の淡いノスタルジアをソフトに打ち砕いた ……
有名ブランドの香水を数多く手掛けて一世を風靡しながら、嗅覚障害に陥ってメインストリームから脱落してしまった天才女性調香師と、離婚した妻と暮らす娘との隔週の同居を夢見ながらしかし、パートタイム運転手さえクビになりそうな中年男との出逢い、そして協調が描かれていると思しき、フランス映画。
これまでの映画人生の経験から、これは絶対に外れないだろうと間違いなく確信し、国鉄有楽町の駅を下りた
久々に切符をとったパチンコ屋の上の映画館のスタッフは、やはり今年もいまいち、やる気があるんだかないんだか分からぬまんま。
腑に落ちぬ気分で一つ下の階。コストは張るがそれなりの麻婆豆腐を食べられるお店と了解している店の前に仁王立ち、会計する女性を待っていたんだけれど、手の空いて見えるスタッフたち複数名からの、こちらに目をやりつつの見て見ぬふりの態度に、もう堪らずに踵を返してエレヴェータを堕ちるボク
―― なんだかんだいつも“あや”つくなぁ、この建物の中は。映画館のスタッフたちで言えば、これはマルハングループがちゃんとしているのか知らないけど、名画座の池袋「文芸坐」 が一番しっかりしていると思う。あと非営利ながら、京橋「国立映画アーカイブ」 で、お客たちの誘導までをも堂々担う警備員さんたち !
<R3.1.16>
「麻辣川府」
そういえば銀座インズという高架下エリアをまだ開拓し尽くしていないなと思い出し、1、2、3の2に突入 !
最悪同フロア「銀座LION」 (こらっ !)とは、こないだも思ったこと。その前にこないだ、小さな女の子の大はしゃぎにブロックされて入店を逃した“本格四川”のお店に突っ込んでみれば、今日はすんなり入店を果たすことが出来た。
さっきのお店であったなら軽く千五百円オーヴァとなったであろうと思うとついつい気が大きくなってしまい、ラーメンと麻婆豆腐、或いは餃子ご飯的なものとの揃いものはないかとペラのメニュウにあたるんだけど、もう最初っからホールの女の子にぴったりとマークされていて困る(笑)。
一旦向こうへ行ってくださいな ! という手もあろうかと思ったが、こんなんで大丈夫なのだろうかと不安になるくらいに相対的に安価であったいつものものを、結局気圧されて半信半疑で注文した
“石鍋麻婆豆腐 (ライス)” @800也。
だがしかし !! まったく思いもよらないとんでもなく立派な膳が舞い降りた !
杉のフタの下で何らかの生きものがグツグツと蠢いている。フタをちょっと開けてみたのだが、“活き”が良すぎて危険を感じ(笑)、ふたたび閉じた。ならば、こんなのいらないよ ! とバカにしていた紙エプロンをあらためて、新型コレラ対策の意味も籠めて装着し、もう一度フタをOpen-sesame !!!
そしたら !
「あ~、おいしそ~ !」
またしてもボクのご飯なのに、新規入店してきた女の人が“ボクご飯”を横目で見ながらそんな反応を見せつつ往き過ぎていくのは、そ~ゆ~のマナー違反だと思う。超おいしそ~ ! という思いはボクだけで独り占めしたかったのに、そこに土足で踏み込まれたような気がして ……(笑)
仕切りの向こうは明るい窓際の席。
ボクはというと、まるで回廊の途中ご飯のよう。そんな差別的不条理を突き付けられつつ、ぎんぎんに焼けた石鍋の中の豆腐が未だ無垢であることにはたと気付けば ! これは本郷のお店でお姉さんがやってくれることの見様見真似 ! スプウンでその塊を八つ裂きにし、どぎつい赤のサーフェイスに顕れた白身の断片たちが織り成すその組み木細工さながらの造形に ! あれ、もしかしておれ、中華屋のお姉さんたちより豆腐バラすの上手なんじゃない ? なんて独り、悦に入ってみたりして ……
そしてさっそく口に入れた瞬間、あちいいっ !! と全身大やけど !(笑)
辣油の沼に沈み浮かびする、とんがらし5つのマイルドなそれは(その基準が分からん)、それでもしかし存分な凶暴さを魅せつけつつ、そしてうまい !
さすればこれは、メタルのスプウンを使い続けることは命に係わるとの判断で、なるたけその凶悪を大気開放させるよう、ご飯茶碗に麻婆豆腐をうつして箸でやることにする
食べ始めてすぐに、これはご飯が足りなくなるなとメニュウにご飯お代わりfreeとなっているかをあたれば、嬉しいことにご飯、そして炒飯 ? はお代わり自由と見つけた。
となれば、私はふだんはそんな傲慢なことは聞かないのだけれど、ご飯処調査員としての使命感一心で、お姉さんに、「炒飯でお代わりすること出来ますか ?」 と聞いてみる。そしたらお代わりはセルフで、炒飯も選ぶことが出来ますとのこと。そして無事、今度は麻婆炒飯の完成と相成った !
と言っちゃったんだけど、そのお釜の中の作り置きの炒飯はもともとおかずとの口中調味を前提したもので、あっさり味。だから、私が麻婆炒飯にいつも期待してしまう、独立した炒飯と、独立した麻婆豆腐とのスリリングな拮抗 ! というサスペンスは得られず。
それはさておき特筆すべきは、杏仁豆腐もありがちな牛乳寒天のようなやつではなくババロア状の(言い方ヘンかな ?)、ヴァニラの香る、ちゃんと品物になっているものであった。
―― これってとても800円(しかも税込み !)のご飯じゃないよ ! もう「過門香」、少なくとも“點”にはいく必要なくなったわ ! (こらっ !)
【以下映画の話】
2019年 101分 フランス
「パリの調香師 しあわせの香りを探して」
洋画にあまり無意味な副題はつけないほうがいいと思う。下手にそれをやると、作品そのものの価値を下げるから。しかしそのことは別として思った通りに、本作は一応の佳作であった。
パリ郊外の洞窟に着けば、既に関係者たちが装備を纏って彼女の到着を待っていた。
彼女は仕事の邪魔になるから彼らを追い払ってと要求してくるが、それはただの運転手である自分の仕事ではないのではないか ! しかも、やり方は自分で考えろという。
一難去って洞窟の中、彼女と二人きり。現代社会と遮断された荘厳な空間。いつの時代のものだろう、そこには古代の壁画が描かれていた。その中で彼女は奇妙なことに、岩盤や土を愛でるように嗅ぎ続けている。そしてここにはオークや、様々な香りが散りばめられているというのだ。
自分も匂いを嗅いでみた。そう言われてみればなんとなく、そんな気がする ……
実はある場所にこの洞窟のレプリカが作られ、彼女はその匂いの再現を依頼されているのだという。そんなことが可能なのですか ? と問うたら、彼女から事も無げに、「私ならね !」 と返ってきた
続く
2021/01/20 更新
有楽町(銀座)映画を避けていたわけではないが、ここのところ池袋でもなく、新宿で映画をやることが多くなって、しかし夏休みに入ってから何故か有楽町に足を運ぶパーセンテージが高まっているということが、自分でもうまく説明出来ず。
池袋の頻度が減ったことは、通勤の都バス定期券を失ったことと、池袋東急ハンズが無くなったことのWパンチだとは、なんとなく了解しているのだが ……
8月14日というと世間ではお盆休み真っ只中ではなかろうか ?
銀座通りが歩行者天国になっていないことに寧ろ違和感を覚えるほどだが、そんな中、男女かかわらずオフィスの装いでこの昼休みの時間帯、べつにYシャツdayでも無いだろうに(何故ならばその下にズボンorスカートをちゃんと穿いているから)、銀座の街を挙って練り歩いていることは、これもコロナ過以降に定着した自由勤務の一環であろうか。
そんな中、私が首都高高架下のお気に入りの四川に的を絞っているということは、ここのところの挽き肉異常現象により、信頼していた店からも足を遠退けざるを得ぬ状況下において、久々に思う存分、安心して麻婆豆腐をやりたいという渇望からに他ならなかった
<2024.8.14>
「麻辣川府 銀座インズ店」
午前11時半過ぎ。
入店時間が絶妙だったようで、私はいつもどおりお一人様ながら、贅沢にも回廊沿いの4人掛けのボックス席を与えられてlucky ! 直ちに覚えたての端末注文にとり掛かると、たしかこないだは選択肢がなかったと思うが“小辛”を選べるようで、ならばもう恥も外聞もなくそれをチョイス !
これで不安要素は何もなくなった、と暫し落ち着くことも許されず !
「オマタセイタシマシタァ !」
―― ウソでしょ ? まだ20秒しか経ってないんですけど (笑)
(あくまでも個人の体感速度です)
“石鍋麻婆豆腐” @900也。
実は季節メニュウの“冷やし担々麺”と迷わなかったと言えばウソになるが、このクソ暑さの中で何が悲しくて初志貫徹の麻婆豆腐。
その私のちょっとした葛藤をお店のお方たちが敏感に察知してくれたのだろうか、マッハの速度でそれは舞い降り、だから私は、そのお店の気遣いに報いるべく、瞬間的にはマッハ3を叩き出すものの、ものの3分間で空中分解してしまうというミグ25と同じ運命をたどらせるべく、直ちに無垢の豆腐をバラバラに空中分解させておいてしかし !
何食わぬ顔で、搾菜をお新香にみたてて白いご飯からやり始めるのだった
しかしこちらの麻婆豆腐ランチは、私がこちらを知ってからもうどのくらい経っただろうか。少なくとも数年の間、わずか100円の値上げに留まっていると思うが、依然として圧倒的な内容/価格レシオを誇る。
これは料理の熱とも相関することだが、小辛にしたことにまかせて、口の中の熱傷をⅡ度までに抑えられるギリギリの最高巡航速度で食べ進めれば、本来空冷(air‐cooled)である私の身体が一気に水冷(liquid-cooled)へと進化し、でも顔面だけは油冷でベトベトのまま !
(笑/それが言いたかっただけ)
―― でも20秒でこんなに豆腐あったまるもんなの ? というかいつも秒速提供しながらのこの熱々には心底頭が下がる。鍋で余熱してるのかなぁ
そしてどれだけリッチ側に振ってご飯をやっていっても余裕で有り余る麻婆豆腐に、はて、こちらのノーアナウンスご飯・炒飯freeは健在かと、あらためて手元のペーパーメニュウを見返しても、やはりそのことには触れられておらず。
但し私だって減量中の身なもので、ここは我慢して残った麻婆豆腐を舐め続け、「小洞天」さん直伝の(適当なことばかり言うな !)杏仁豆腐でfinish !
超満足の中で帳場へ向かえば、やっぱりご飯Barは健在で(ご飯Bar/笑)、界隈のオフィスお勤め装束の男性陣が列を作ってご飯をよそう様に、何の根拠もなく日本社会に対する安心感を覚えつつ(笑)、にやけながらその場を離脱するボク
その後、またまたフランス映画を鑑賞。
恥ずかしながら私はその名を知らなかったのだが、フランスのモーリス・ラヴェルという作曲家を、アラン・ドロンの再来と言われたラファエル・ペルソナが演じ、世界中の誰の耳にも滲みついている「ボレロ」という傑作楽曲の生みの苦しみを中心に描かれた作品。
先ず冒頭の様々な人種、民族に拠るモザイクの「ボレロ」と、ラストのフルオーケストラとコンテンポラリーダンスの融合は、先日のパリ五輪開会式の演出に通ずるが、これは批判となるが、フランス人は、農業国家でもあるのだから、時勢のトレンドなんかに左右されず、もっと地に足付けて堂々やって欲しいと思う
但し映画そのものには、興味深い点を見つけてしまった。
というのは、単調なメロディを一定のリズムで“繰り返す”ことしかしていないにも拘わらず、何故かやけに盛り上がる「ボレロ」の主題は、意外にも工場にずらりと並んだ機械のメカノイズから着想して生み出されたものかも知れない、と仄めかされていたこと。
だとするとこれは ! 2020年に公開されたフィンランド映画「ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル !」において、そちらの音楽形態はデスメタルなのだが、トナカイ屠殺業を営む家の息子であったメンバーのギタリストが、悩み抜いた挙句にトナカイ解体マシンが奏でるリズムから着想を得て、ついにオリジナルのメインリフを完成させたことと同じではないか ! (笑)
主演のラファエル・ペルソナという俳優が、アラン・ドロンの再来ではないということはもう先述させていただいているが、繰り返すと、アラン・ドロンはその二枚目の裏側に、野性の狂気を隠しきれていないということがあった。
例えば東映のヤクザ映画だったら、脇役の金子信雄さんでさえもほんとうの人殺しの目をしていた、ということだが、現代社会が役者や芸術家たちにも無駄に常識を求める以上、ラファエル・ペルソナ、というよりは現代俳優陣たちにそれ(狂気)を求めるというのも、些か酷な話であろう。
しかしながらまあ、役作りで頬がこけた面持ちではあったけど、二枚目が主演のフランス映画って、その画だけでも雰囲気があって、やっぱりヨーロッパ映画って、たまに観てなきゃダメだなっていうのがボクの結論