4回
2018/04 訪問
媚びることなき技術者が編み出した「重ね鮨」を味わって
この日の出色は、重ね鮨。
調べてみると発祥は別店舗らしいが、目指す方向性は全く別のもの。
大将は1貫の握りの中で、重ねたネタの持つ食感や風味の違いを同時に体験させることで、より握りの旨味や印象を強いものに仕上げている、と感じた。
この手法は、ふじながさんが初めて。
その後数店舗で「重ね鮨」を頂くことがあったが、頂いたタイミングや仕上げ方などを鑑みると、この手法の出現元は「鮨ふじなが」さんだと思っている。
個人的に。
大将は、素材のうまみを引き出す為なら、魚にバターを用いて熱を加えて仕上げることも厭わない。
スクラップ&ビルド
守破離
そんな言葉が、大将の繰り出す品々から聞こえてくるようだ。
世に鮨店数多あれど、これほど印象深く記憶に残る店舗は、数えるほどしか知らない。
大将、お弟子さん、美味しかったです。ご馳走さま。
また伺えること、楽しみにしております。
ご同行の皆様、また行きましょう!
2018/06/07 更新
2017/12 訪問
鮓の技術者と、阿吽の対話を愉しんで
御紹介頂いてから、毎月お伺いさせて頂いている。
それ位惹きつけるものが、こちらにはある。
常連様ならご存知、完成度の高い仕事の数々。
理化学的に鮓にアプローチするそのスタイル、そしてストイックな性格、客に媚びないその姿勢は、客を選ぶだろう。
軟派な客は、寄せ付けない。
当然である。
技術者は技術こそが重要なのであり、社会に媚び諂う必要などないのだ。
そんな事を思い返させてくれるから、通うのかも知れない。
この日は、ご興味を持って頂いた方々との夕べ。
飲兵衛セット(これがまた完成度高い!)から始まり、次の予約を取るきっかけとなった「名刺代わりのマグロ」に舌鼓。
鮭児を使ったスープ(参加者驚愕)で美味しく胃を温め、トロタクとキャビアの軍艦については"2回味わえるキャビア"を改めて体験。
独特ながらも味わう為に適切な形状だからこそ、2回味わえる。
そして口腔内で扇状に広がるアジの握り、この切り方は香りを高める為の技術。
これもまた至高の逸品。
ある物質の香りを拡散させたければ、物質の表面積を増やせばいいのは自明の理。
すりおろしトリュフ然り。
当然と思われるその技術を、採用するには一般的でない魚に、しかもアジに用いるとは。。。
見て驚き、口で驚き、鼻で愉しむ、こんな奥深い握りを堪能した。
それについて大将と会話しようとした瞬間、語らずとも通じていた。
有り難いことである。
シャリもまた独特ながらも、風味、硬度、そしてネタに合わせた圧力は絶妙。
こちらは食感と共に、是非訪問者が大将と直接対話して頂きたい。
セイコ蟹の逸品。これもまた食感含め、うまいことといったら!
鰻、これもまた「うまいものを作る技なら、偏見なく採りいれる」そのスタイルをはっきりと主張。
適切な焼きと絡められたタレとが相まって、プリップリ・カリフワで、美味しい。
力強い色と盛り方のウニが出てきたところで、宴の終焉。
終わりを残念がっていたら、何とアンコールが!
感謝する事しきり。
全体的に良いネタを取り入れつつも高額ネタに甘んじることなく、再現性の高い仕事を開発しては適用しチェックする、正に鮓のPDCAを的確に回すその姿勢は、他のすし職人とは一線を画すもの。
だから僕は、大将を「鮓職人」と言わず「鮓技術者」と称しているのだ。
常々大将は、鮓に対し科学的なアプローチを標榜。
科学に求められる要件として、ご承知の通り再現性と普遍性とがある。
ネタを理想通りに仕上げる技術の再現性、そして二番手さんに引き継げる技術体系をまとめる普遍性、これらが仕事を通して明確に理解できる。
だから、大将の発する言葉にも信憑性が増すというもの。
僕にとって大将の仕事は、唯一無二。
コストに照らせば、うまいのは当然。
おかしいものをおかしいと言い続けられるかどうか。
「何故?」という気持ちを持ち続けられるかどうか。
そんなところが、唯一無二であるかどうかを決めるポイントなのかもしれない。
大将、ご馳走様でした。美味しかった!
また伺いますね。近いうちに。
2017/12/04 更新
過日、楽しみにしていた鮓。
4番バッターを並べるその独創性、旨味や風味の再現性、論理整合性などは、当然健在。
今回は変わらないものの他、変わりゆくものの魅力も味わえた。
固形・ゲル状 それぞれの素材の咀嚼完了タイミングを計算した紅白握り。
香りを最大限に引き出す為の仕事をした、それなのに臭み消しの薬味が一切要らない、本当に味の良いアジ。
具とシャリの分量をゼロから再検討し、口腔環境が最も味を感じ、かつ腹もたれはさせない仕上げとなった太巻き。
丁寧な仕事のキンメに載せたウニ、これも奇をてらうものではなく、それぞれが持つ味を補完し合う組み合わせ。
そしてそれを繋ぐ主役は、香り豊かな海苔。
いやはや、今回も「考え抜かれ、練り上げられた、旨い鮓」を楽しませて頂いた。
大将、今回も流石でした。
「旨いものを作るのは当たり前。素材の変遷も含めた、従来の仕事の先にある次世代の味作りが重要。」
よく伝わりました。
我々の業界も、実は同じ面が多分にあります。
また伺いますね、色々落ち着いたら。
そして年末の例の物も、よろしくお願いします。