十数年前に蕎麦打ちを始め、一時は毎日のように打っていました。
最初は通信教育で勉強し、その後は各地の名店と呼ばれる蕎麦屋さんを巡って勉強させていただきました。
当時の蕎麦屋さんは手打ちの現場を外から見えるようにしているお店が結構多くて、そういう意味では結構助かりました。
最初の内は上野やぶそば店主「鵜飼良平」氏のビデオを見ながら勉強していましたが、途中で足利一茶庵「片倉康雄」氏の著作「手打そばの技術」を読んで軽いショックを受けました。
蕎麦打ち技術を詳細に説明する内容なのですが、科学的で合理的な内容に感銘を受け、それ以降は一茶庵系の技術を会得しようと必死に励みました。
そんな課程で、当時山梨県長坂に在った「翁」さんに度々通って、片倉氏の弟子である「高橋邦弘」氏の蕎麦打ちを生で見られたことは非常に勉強になりました。
今思い返してみると、蕎麦を食べるのもそこそこに、じっと蕎麦打ちを見続ける私を不審に思われたかもしれません。
東京都内から山梨県の長坂へ店を移された高橋氏は蕎麦の原材料と水に着目し、畑で取れた玄蕎麦を、粒揃え、磨き、殻外し、製粉という一連の工程を全て自分の店で行うという、当時では珍しく手間のかかる仕事をしていました。
それも究極的に言えば蕎麦は原材料の善し悪しで、ほとんど味が決まってしまうという理念からきていると思います。
玄蕎麦の保管を製粉会社等に任せていると、どうしても時期はずれの春〜夏に香りの弱い、風味も落ちた蕎麦になりやすい。
そんな中で、静岡県島田市の「やぶそば宮本」さんや長野県黒姫高原(当時)の「ふじおか」さんは独自の保存技術を確立し、通年に亘り香り高い蕎麦を提供していました。
そのような事が実感できたわけですが、家庭で蕎麦を打つ場合はそこまで追求できませんし、そのノウハウもありません。
従って、現在では新蕎麦の出る10月下旬〜年末の年越し蕎麦の時期に数回打って楽しんでいます。