蕎麦に使う汁は大別すると辛汁(もり蕎麦やせいろに使われる濃いめの汁)と
甘汁(かけ蕎麦用)に分かれます。
辛汁は、だしとかえしの割合が3:1〜4:1くらいで、甘汁は10:1〜11:1くらいで合わせます。
「かえし」とは、蕎麦店独特の仕事で、醤油に味醂、ザラメ等の糖類を合わせ、甕に入れて2週間〜1ヶ月ほど寝かせて作ります。(季節によって変化する)
醤油に熱を加えないで作るものを「生がえし」、味醂、糖類と合わせてから70℃くらいまで加熱してから寝かせる「本がえし」、醤油の半量だけ加熱する「半生がえし」等があります。
本がえしは、よくなじんだ円やかな味わいになり、生がえしはきりりと引き締まった味になります。(我が家では半生がえしを仕込んでいます)
蕎麦のだしは、材料やだしの取り方が独特で一般の日本料理に使われるだしとは全く異なったものです。
材料は基本的には鰹節の厚削りで、場合によっては更に鯖節、宗田節等の雑節を使います。
昆布を使わないのは旨みが出すぎるのを避けるためで、汁はあくまで脇役との考え方があるようです。
つめ時間(加熱する時間)も20分〜50分ほど長時間煮だして、濃いだしを取ります。
「だし」が引けたら、熟成させた「かえし」と合わせ軽く加熱してなじませてから「土たんぽ
」と呼ばれる容器に移します。(我が家では漬物用の甕を使用しています)
そのまま丸一日放置して、翌日1時間ほど湯煎にかけます。
その後、また丸1日寝かせて、3日目に辛汁の完成です。
かえしの熟成期間も含めると、実に1ヶ月近くかかることになります。
一方、かけ蕎麦に使う甘汁は「だし」と「かえし」を合わせたら、その日の内に使い切ります。
我が家では少量(2ℓ)ですが「かえし」は1年中仕込んでいます。
というのも、蕎麦だけでなく、関東風うどん、ソーメンのつゆや煮物等に使えて大変便利だからです。