2回
2012/01 訪問
洛中に数多の鯖寿司あれど …『千登利亭』。
洛中には数多の寿司屋さんの『鯖寿司』があれど自分が好きな『鯖寿司』となりますと団栗の"千登利亭"さん、
錦の"さか井"さん、寺町の"末廣"さんの『鯖寿司』がマイベスト3、共通していることは家族経営の小体の店
であるということといづれの店も注文を受けてから作り出し作りたてを味わうことが出来る店であるということ。
『鯖寿司』に関しましては必ずしも作り立てがベストとは云えませんが少なくともビックネームの店で供される
いつ、どこで、だれが作ったものかも良く判らぬようなものを高値で供されるてい店のソレと比べたなら雲泥
の差があることは如実です。
高くて美味いは当たり前とも云われますが余りにも高過ぎる『鯖寿司』が幅を効かせている京の町に於いて
使われている『鯖』の品質とその値段を勘案してみますと前述の三軒で供されるものは良心的と云って過言
ではないでしょう。
他にも上鴨の"魚熊"さんや出町柳の"満寿形屋"さん等でもリーズナブルな値段で味わえる佳店がありますし、
料理屋さんのソレでは"食堂おがわ"さんの小ぶりな小袖寿司風の『鯖寿司』を良く好んで戴いています。
そんな中、久しぶりに"千登利亭"さんのレビューを更新させて戴きますが今回ご紹介致しますのは鯖寿司、
巻き寿司、押し寿司、『ちらし寿司』といろいろな味が楽しめる『若狭』と名づけられた欲ばりなセットです。
若狭のセットは千七百八十円で鯖寿司×2切、鱧の箱寿司×2切、巻き寿司×3切に『ちらし寿司』に吸物
付き、鯖ずしの鯖と舎利の結着度は見事であり鯖と舎利が離れ離れになることは先ずありません。
『巻き寿司』はシンプルですが完成度は高く、つけ焼にされた鱧を包丁でのした鱧が乗せられた『鱧寿司』
に
舎利の上にきざみ海苔、更に錦糸玉子が敷き詰められ烏賊、海老、鞘豌豆、穴子、椎茸、桜でんぶが散り
ばめられた目にも美しい『ちらし寿司』と創業以来、百十余年の間、歴代の店主によって受け継がれてきた
真の京の老舗の味わいであり費用対満足度の格段に高い『若狭』のセットはイチオシのお奨めです。
洛中に数多の『鯖寿司』あれど本物の味は此処"千登利亭"さんにあります。
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2008/01のレビュー
上洛の際に必ず決まって一度は顔を出す"千登利亭"さん。それは當店の『ほっこり』とした雰囲気が心地良い
からであり尚且つ『鯖寿司』が美味しいからです。
いつもは一人でカウンター席で店主との会話を楽しみながら酒盃を傾けるのが常なのですが今回は突発的な
誘いにも関わらず快く都内より駆けつけてくれた友人と連れ立っての再訪となりました。
遠方より友来る。ということで酒肴の『穴子』はいつもの『地焼き』ではなく関東風の『煮穴子』として供して戴き、
後はいつも通り『鯖寿司』に、きっと友は初めて目にするであろう『雀寿司』を注文、店主が馴染さんから持ち帰り
用で注文を受けていた『鱧寿司』が目に留まり季節はずはありまですが鱧寿司も少々供して戴くことに。
脂のりの良い肉厚の鯖を使って作られる當店の『鯖寿司』は数ある京都の寿司屋さんの鯖寿司の中でも自分的
には一、二を競う好きな味です。『鱧寿司』は鱧の時期ではない時期ゆえ夏場に供される鱧寿司とは趣の異なる
ものでしたが友人に雰囲気だけでも味わってもらいたかったので目的は達成することができた。舎利と舎利の間
に海苔が挟まれた『鱧寿司』は少々甘めの味、『穴子の寿司』は全国各地で口にすることは出来ても『鱧寿司』
はやはり京都の味ですから…
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2007/04のレビュー。
前回の訪問から余り日を措かず再訪させて戴いたのですが、この日は運良く先代の店主が店に出られており
ダメモトで匠が創られる『細工寿司』を一度食べてみたいとリクエスト、材料が揃っていないから無理と四代目
からやんわか断られるも、折角だから雰囲気だけでもと三代目の先代店主が応えてくださいました。
供された細工寿司は『寒牡丹』と呼ばれる代表的なもので花びらの部分に『よこわ』、関東で云うところの『めじ』
を使ったもので食べるのが勿体無いくらいに美しい、これが正に『黄綬褒章』を授かった匠の技。
その後、自分の席の横に腰を下ろされ天皇陛下から直接戴いたという純銀製のしおりや貴重な品々を御披目
戴き『祇園の細工寿司』の歴史や『京都寿司のれん会』の話を小一時間に亘り色々とご教授戴きました。
昔は『団栗の千登利亭』だけで郵便物も届いたものだ。と二代目が笑いながら話されていたが先代の若かりし
頃の風情は確実に失われつつある昨今ではありますが自分にはとても貴重な思い出となる一日になりました。
その後、四代目より『鯖寿司』を作って戴きましたがこの日の鯖寿司の『鯖』はいつにも増して脂のりが良いもの
が使われており尋ねてみますと今日の鯖は九州のブランド鯖を使っているとのこと。この立派な鯖寿司が一人前
六切で千六百円也とは、とても良心的な値段です。
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2007/01のレビュー
京都で『鯖寿司』といえば"い○う"さんや"い○重"さんのものが有名であり、ことツーリストの方々には両店とも
絶大な人気がありますが祇園界隈では當店"千登利亭"さんの『鯖寿司』が最も好きです。
當店の『鯖寿司』は洛中に数多ある『鯖寿司』の中でもマイベスト3に数えられるものであり前述の二軒で供され
るものと比較しても使われている鯖の質や味、価格を勘案しますと全ての面において上であるように思います。
當店は家族四人で切盛りされている店であり店内にはカウンター席×五席とテーブルが二卓置かれた小体の店
ですが祇園の御茶屋さんへの納めも多くあり昔からの御贔屓さんも多く、ご近所さんがお土産を買い求めに頻繁
に訪れる古くから愛し続けられている店です。
お目当ては勿論『鯖寿司』ですが先ずは瓶ビールとともに明石産の活物から作られる『穴子の地焼』を舌鼓。
焼き上がるまでの合間は、つきだしの『鮪の角煮』を肴にゆるゆるとはじめます。
鰻の蒲焼にも相通じることですが関東と関西では割き方、焼き方ともに異なりますが酒肴として戴くならば蒸しの
工程が入らぬ『地焼の穴子』の方が個人的には好みです。噛みしめると皮目の部分から、じわ~っと脂が溢れ
出し香ばしさも相まってビールがすすむこと間違いなし。
『鯖寿司』の鯖は大分産の脂の乗りが良い真鯖を使い米は滋賀県の農家に直接買い付けに出向いたものを使わ
れているそうですが『鯖』、『米』、塩、酢のどれをとっても店主の拘りがあり何処ぞのものとは違って大量に作り
置きにされたものではなく都度、作りたてのものが供されるのも當店の『鯖寿司』が好きな理由です。
使われている『鯖』もとても肉厚のものであり脂ののりや塩や酢のあて加減も上々で六切れで一人前です。
三代目との話の流れで『雀寿司』を追加で戴くことになりましたが一人前をひとりで食べるのはキツイので半分の
量の三切れを供して戴きました。
『雀寿司』の名の由来は小鯛の鱗が雀の腹部の模様に似て見えることからそう名づけられたと云われてますが
確かに納得出来ます。ひと口めには鯛の皮がやや気になりましたが噛むほどに皮目から旨味がじんわり滲み出
て『鯖寿司』とはまた違った美味しさが味わえます。瓶ビール2本に酒肴の『穴子の地焼』、『鯖寿司』に『雀寿司』
を半分戴いて勘定は〆て四千円にも満たずと費用対満足度は高い。
先代は昨年の『黄綬褒章』の受勲者であり京都に長く伝わる『細工寿司』の『匠の職人』で現代の名工です。
京寿し盛込み。
京ちらし寿し。
吸い物。
つきだしの海老芋を炊いたんと箸袋。
若狭のセット。
脂ノリノリの肉厚な鯖。
鯖寿司&雀(小鯛)寿司。
雀(小鯛)寿司&鯖寿司。
鱧寿司。
酒肴の煮穴子。
先代が作る京・祇園の細工寿司。
店の外観。
optio A30で撮影。鯖寿司。
optio A30で撮影。京細工寿司。寒牡丹。
optio A30で撮影。つきだし。
optio A30で撮影。京都寿司のれん会。
optio A30で撮影。受勲の章。
optio A30で撮影。品書き。
鯖寿司
雀寿司
酒肴 穴子の地焼
黄綬褒章受勲の証と店内暖簾
2012/04/24 更新
『商売繁昌で笹持って来い、、、』。當日は十日戎の日。八坂神社さん、ゑびす神社さんへ『福』を授かりに伺った足で向かった先は久しぶりにレビューの更新をする団栗の『千登利亭』さんへ。レビューの更新こそ久しぶりですが店へは定期的に足を運んでおります。いつものようにカウンター席に陣取り先ずは瓶ビールで喉を潤します。つきだしには、ちょうど『穴子』を炊いたところだと店主の白子さんより寿司種の収められた冷蔵ケース越しに手渡されました。結構、肉厚の『穴子』であり炊いたばかりでほんのり温か。こういうつきだしは大歓迎です。今回の注文は『鯖寿司』×2、『巻寿司』×3、『箱寿司』×2、『ちらし寿司』と『吸物』という色々な味を楽しめる『若狭』という欲ばり且つ漏れなく満腹になる充実の物のセットです。『鯖ずし』の『鯖』と舎利との結着度は見事であり綺麗な『 r 』が描かれており『鯖』と舎利が離れ離れになるようなことはありません。『巻寿司』はシンプルですが伝統の味わいであり『箱寿司』はつけ焼にされた『鱧(ハモ)』を包丁でのしたものが載せられた『鱧の箱寿司』、そして『ちらし寿司』は朱塗りの小丼に敷き詰められた舎利の上に刻み海苔が散りばめられ、その上に錦糸玉子、玉子の上に『烏賊』、『海老』、『穴子』と並べられ椎茸煮と目に鮮やかな桜でんぶが脇を固め鞘豌豆の細切りを天盛にされたものであり創業から百二十年余り名実ともに受け継がれてきた老舗の味です。洛中には大箱店で供される『鯖ずし』や名前や看板先行型の『鯖ずし』等、数多の『鯖ずし』で溢れかえっておりますが、何処の何方が作られたものか全く判らぬような『鯖ずし』に高額な金額を払うよりも『千登利亭』さんや寺町の『末廣』さん等、小体の店ながら歴代の店主の手によって継承されてきた匠の技を楽しみながら戴く『鯖ずし』を個人的に好みます。"最近は誰かさんの御蔭で他所(ヨソ)さんも随分と増えましたなぁ"苦笑される店主の白子さん。老舗の味を次世代に継承し、いつまでも続いて欲しい一軒、団栗の『千登利亭』さん。寒い時期の『蒸し寿司』も実はお奨めです。