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夜の点数:4.8
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¥20,000~¥29,999 / 1人
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料理・味 4.8
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|サービス 3.6
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|雰囲気 3.8
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|CP 3.5
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|酒・ドリンク 3.9
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[ 料理・味4.8
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| サービス3.6
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| 雰囲気3.8
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| CP3.5
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| 酒・ドリンク3.9 ]
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2020/07/09 更新
日本人は騙されている。
フカヒレ料理と聞くと、たいてい誰もが姿煮が最も高級と思うが、香港では誰も姿煮は頼まない。
日本では排翅と呼ばれる姿煮が高級とされるが、香港では違う。一本一本ほぐしたフカヒレ料理が、最も尊ばれる。
姿煮では、余分なゼラチン質があり、それが膠質の匂いを発するので、料理としては下等であり、優美な味わいではないからである。
その真髄が味わえるのが、「桃の木」である。
目の前に運ばれて思う。
美しい。
誰もが、姿に見惚れてしまうだろう。
箸で持ち上げ、口に運ぶ。
フカヒレは、唇に優しく触れると、スープと抱き合いながら舌に流れ、微かに身悶えてから溶けて、喉へ落ちていく。
後に残るは、儚い食感と気品あるスープの余韻である。
フカヒレ料理は、こうでなくてはいけない。
「桃の木」のフカヒレ料理は、料理としての甘美な格があり、食べた瞬間に、陶酔を呼ぶの。
しかしここに至るまでには、長い長い手間暇をかけた仕事がある。
一週間から12日間戻し、掃除し、煮込みを行い、ようやく当日に用意されるのである。
しかも大抵の日本のフカヒレ料理は、片栗粉でとろみがつけられているが、「桃の木」では、一切入っていない。
とろみは、4時間煮込まれた鳥のモミジ白湯の、自然なゼラチン質である。
バターでモンテしたフランス料理のソースのように、白湯を葱油で乳化させたソースは、とろんと舌にしなだれる。濃厚ながら、品のある旨味と微かな甘みの中を、一本一本のフカヒレが泳いでいく。
とろん。
ペタペタになった唇はくっついて、うまみを永遠に閉じ込める。
これこそこの料理にお金を払う意味があるのではなかろうか。
フカヒレ料理の崇高なるエレガントは、ここにある。