2回
2025/01 訪問
冬の北陸、美食と温泉を堪能「旅亭懐石 のとや」訪問記
冬の北陸といえば、新鮮な海の幸と温泉。特に、この時期のカニは絶品です。そこで今回訪れたのは、石川県小松市粟津町にある「旅亭懐石 のとや」。創業700年を誇る老舗料理旅館で、伝統的な日本料理と郷土料理を楽しむことができます。北陸新幹線・加賀温泉駅から車で20分ほどの場所にあり、静かな温泉地の一角に佇むこの宿は、落ち着いた雰囲気で訪れる人を迎えてくれます。
今回は、冬のカニ懐石を楽しむため、1ヶ月前に公式WEBサイトから予約をしました。スムーズに手続きを進めることができ、安心して当日を迎えることができました。
宿泊したのは、客室露天風呂付きの和室。しっとりと落ち着いた雰囲気の部屋で、到着してすぐにほっと一息つくことができました。そして、食事は専用の食事処へ。掘りごたつ式のテーブル席が用意されており、仕切りがあるため他のお客さんと目線が合わないよう配慮されています。4~5組ほどが入ることができる広さで、個室ではないものの、プライベート感がしっかり保たれているのが嬉しいポイントです。
まず、チェックイン後に、調理前の上活加能蟹を部屋まで持ってきてくれるという粋な演出がありました。これは鮮度の良さに自信がある証拠。期待が高まります。
蟹刺し、蟹甲羅付きは、皿の上に美しく盛り付けられた蟹の刺身は、透き通るような白身にほんのりと紅色が差し、まるで宝石のように輝いています。一口食べると、ねっとりとした舌触りとともに、上品な甘みがじんわりと広がり、噛むたびに繊細な旨味が口いっぱいに広がります。炭火で焼いた甲羅の中には、とろりと溶けた蟹味噌がたっぷりと詰まっており、身と絡めて食べることで、濃厚なコクが一層引き立ちます。冬の寒さを忘れるほどの温かさと贅沢な味わいが、心と体を満たしてくれる一品です。
焼き蟹は、炭火の上でじっくりと焼かれた蟹からは、香ばしい香りが立ちのぼり、食欲をそそります。ふっくらと焼き上がった身は、箸を入れるとほろりとほぐれ、口に運ぶと凝縮された甘みと旨味がじんわりと広がります。炭火ならではの香ばしさが加わり、さらに深い味わいを生み出します。
蟹せいろ蒸し、蟹甲羅付きは、せいろの蓋を開けた瞬間、ふわりと立ち上る湯気とともに、蟹の甘く豊かな香りが広がります。蒸し上げられた蟹の身はしっとりと柔らかく、噛むたびにじゅわっと旨味が染み出し、口の中で優しく広がります。蒸すことで蟹本来の甘みが一層引き立ち、余計な味付けをせずとも、そのままで十分に堪能できます。添えられた蟹甲羅には、蒸し上がった濃厚な蟹味噌が詰まっており、身と絡めて食べることで、より深いコクを楽しめます。
前菜の胡麻豆腐は、ねっとりとした食感と胡麻の香ばしさが印象的。紅白なますはさっぱりとした酸味があり、カニ料理の合間の箸休めにぴったりです。
お造りは、鮪や甘海老、勘八など、どれも新鮮そのもの。特に甘海老のとろけるような甘さは絶品で、日本海の海の幸を存分に感じられる一皿です。
天麩羅は、衣がサクサクで軽やか。加賀蓮根のはさみ揚げは、シャキシャキとした歯応えと、すり身のふんわりとした食感が絶妙で、抹茶塩との相性も抜群でした。海老の天ぷらは、外はカリッと香ばしく、中はぷりぷりとした弾力があり、噛むごとに甘みが広がります。河豚の天ぷらは、身がふわっと柔らかく、上品な旨味が口いっぱいに広がる逸品でした。抹茶塩がそれぞれの素材の味を引き立て、揚げ物でありながらも後味がさっぱりと感じられました。
焼物の鰤袖廣焼きは、じっくりと焼かれたことで香ばしさが引き立ち、脂の乗った身が口の中でほろりと崩れるほど柔らかく、旨味がぎゅっと詰まっていました。
蒸し物の茶碗蒸しは、なめらかで優しい味わい。鶏や銀杏、百合根などが入っており、それぞれの食材の持ち味が調和しています。
御飯は、地元産のこしひかりを使用。炊きたての米は一粒一粒がふっくらとしていて、甘みが感じられます。
最後の水菓子は、自家製ティラミス、林檎ムース、栗甘露煮と、どれも丁寧に作られた逸品。甘さ控えめで、上品な締めくくりとなりました。
どの料理も、一品一品に丁寧な仕事が施されており、味わいだけでなく見た目にも美しく、五感で楽しめる懐石料理でした。
「旅亭懐石 のとや」は、歴史ある佇まいと上質なもてなし、そして北陸ならではの食材を生かした料理が魅力の宿でした。特に、冬の味覚・カニを存分に楽しめる懐石料理は、一口ごとに感動を覚える美味しさ。新鮮な海の幸と、料理人の丁寧な技が融合した逸品揃いで、最後の一品まで大満足の内容でした。
さらに、温泉と共に楽しむことで、体も心も癒されるひとときを過ごすことができました。宿の雰囲気や接客も心地よく、特別な時間を過ごすにはぴったりの場所です。冬の北陸を訪れるなら、ぜひ「旅亭懐石 のとや」で、美味と温泉を満喫してみてはいかがでしょうか。
2025/02/01 更新
冬の北陸、温泉と美食に癒された夜を過ごし、迎えた朝。心地よい目覚めのあと、期待に胸を膨らませながら食事処へ向かいました。
落ち着いた雰囲気の食事処には、4〜5組ほどの席が用意されており、仕切りがあるため周囲の視線を気にせず、ゆったりと食事を楽しめる空間になっています。掘りごたつのテーブル席に腰を下ろすと、優しい木の温もりが心地よく、静かに流れる時間がより一層、贅沢な朝のひとときを演出していました。
朝食の膳が運ばれ、湯気の立つ炊き立てのご飯とともに、彩り豊かな小鉢が並びます。まず目を引いたのは、目の前の小さな鉄板の上で焼かれる魚の干物。じっくりと火が通るにつれて、ふんわりとした香ばしい香りが広がり、食欲をそそります。箸を入れるとほろりと身がほぐれ、噛むたびに旨味が口いっぱいに広がりました。
お味噌汁には、カニがたっぷりと使われており、一口飲むと優しい出汁の風味がじんわりと広がります。カニの旨味がしっかりと溶け込み、朝の冷えた体をじんわりと温めてくれるようです。
そして、炊き立てのご飯はまさに主役級の存在感。ふっくらとした粒立ちが美しく、噛むたびにほのかな甘みが広がります。おかずと合わせるのはもちろん、ご飯だけでも十分に美味しさを感じられる一杯です。
ゆっくりと味わいながら、北陸の朝を堪能し、食後には心も体も満たされた感覚に包まれました。温泉で癒され、美味しい朝食で活力をもらう。まさに、旅先ならではの贅沢な朝時間を過ごすことができました。