Mamosan2525さんが投稿したレスピラシオン(石川/北鉄金沢)の口コミ詳細

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レスピラシオン北鉄金沢、金沢、七ツ屋/スペイン料理、イノベーティブ、創作料理

1

  • 夜の点数:4.9

    • ¥40,000~¥49,999 / 1人
      • 料理・味 5.0
      • |サービス 4.9
      • |雰囲気 4.9
      • |CP 4.9
      • |酒・ドリンク 5.0
1回目

2025/05 訪問

  • 夜の点数:4.9

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス4.9
    • | 雰囲気4.9
    • | CP4.9
    • | 酒・ドリンク5.0
    ¥40,000~¥49,999
    / 1人

五感で味わう金沢の呼吸──The Tabelog Award 2025 Silver受賞・respiracionの余白と余韻

金沢・近江町市場から徒歩わずか1分。古き良き町並みに溶け込むようにひっそりと佇む、「respiracion(レスピラシオン)」は、以前宿泊した「ザ ホテル山楽 金沢」の目の前にあり、その時から気になっていたお店。The Tabelog Award 2025 Silverを受賞し、さらに食べログのスペイン料理 百名店2024にも選出された名店です。家族との記念日ということもあり、2ヶ月前にテーブルチェックで予約し、満を持してこの日を迎えました。

17時45分、まだ明るさの残る金沢の夕暮れ。そっと扉を開けると、改装された古民家の内装に吸い込まれるような静けさが漂っています。通されたのは、天井からスポットのように光が落ちる丸テーブル。キャンドルがゆらりと揺れ、一輪挿しの緑と共に、目の前の空間だけが浮かび上がっているような演出。外界と切り離された静謐な空間で、これから供される料理たちを迎える準備が整います。

この日は「Corse respiracion」と、5種のペアリングドリンク(食前酒含む)を注文。最初の一皿が運ばれてきた瞬間から、物語は静かに、けれど確かに始まります。

メニュー一覧
◆甘海老
◆ホッキ貝
◆ズッキーニ(2種類)
◆牡蠣
◆パン(2種類)
◆シルクスイート
◆まはた
◆トマト
◆鹿
◆竹の子
◆ガス海老
◆クレソン
◆枇杷/ミルク
◆小菓子
◆ハーブティ


◆甘海老
まるで大きなおはじきのような平たい球体の器に盛りつけられたこの一品は、まさにアートピースのような佇まいです。中央には卵の黄身のように美しく丸いフォルムを描いたオレンジ色のドーム。その表面には金箔がひらりと一枚添えられ、まるで高貴な宝石のように静かに輝きを放っています。

このオレンジ色のシートは、甘海老の頭や味噌を香ばしく焼いてから丁寧にスープにし、さらに練り込んで固めたもので、深いコクと香りが内包されています。その下には、2年物の塩麹でじっくりマリネされた甘海老がひそみ、ねっとりとした旨みととろけるような食感が舌の上に広がります。新鮮であるがゆえの瑞々しさと塩麹の熟成感が絶妙なバランスを生み出し、素材の良さを引き立てます。

そして、一番下に敷かれているのは、甘海老の頭と殻を粉末状にして練り込んだタルト。このタルトがまた見事で、サクサクとした軽快な食感とともに、えびの香ばしさとミネラル感を口いっぱいに届けてくれます。一皿の中に甘海老の“すべて”が詰まっているかのような構成で、香り、甘み、食感、余韻までが幾層にも重なって押し寄せてくる。シェフの感性と技術力が凝縮された、まさにスペイン×金沢のイノベーティブな一品です。


◆ホッキ貝
海をイメージした一品として登場したこの料理は、大きなホッキ貝の殻を器に使い、上にはふんわりとしたバイマックル(こぶみかん)の泡と海藻があしらわれています。その見た目からすでに「海」を強く感じさせ、目の前に広がる日本海の断片を皿の上に閉じ込めたような印象を受けます。
泡の下には、薪焼きした後にスモークをかけた北寄貝を中心に、金沢産のスナップエンドウ、岩海苔、メカブ、シーアスパラガスが繊細に配置されています。そして、提供時にはホッキ貝の紐で作った緑色のソース「レチェ・デ・ティグレ」が泡の上から流しかけられ、その瞬間に広がります。

魚介の香りとバイマックルの柑橘系の爽やかな香りが食欲を刺激します。
ひと口含むと、シャキシャキとしたスモーク北寄貝の弾力と、スナップエンドウの風味と食感が見事に調和。そこに加わるメカブや岩海苔、シーアスパラガスのミネラル感が海のニュアンスをより一層深く演出しています。そして何より、レチェ・デ・ティグレの酸味と旨みが全体を包み込み、貝と海藻の風味を引き立てながら、料理全体に爽やかな余韻を与えてくれるのです。まさに五感で味わう“海”の一皿です。

◆ズッキーニ(2種類)
・ズッキーニを使った1品目
まるで小さなテラリウムのような、透明のグラスに盛られた前菜は、見た目にも愛らしい印象を与えます。中にはズッキーニを用いた淡い緑のムース。その上には潤菜のピクルスと細かく刻まれたズッキーニのピクルスが散りばめられ、小さな食用花がひとつ添えられていました。ムースは昆布茶と出汁がベースとなっており、穏やかで深い旨味を含みつつも、喉越しはすっきりと爽やか。上層のピクルスはやや甘酸っぱく、全体の風味にアクセントを加えています。異なる食感と風味が絶妙に調和した一品で、口に含むたびに清涼感が広がり、初夏の緑を思わせるような美しさと涼やかさが印象に残ります。

・ズッキーニを使った2品目
続いてのズッキーニ料理は、香りと力強い旨みが共演するメインに近い存在感を放つ逸品です。酒粕と青カビチーズを練り合わせた濃厚なペーストをズッキーニの表面にしっかりと塗りこみ、丸ごと包み込んでから3日間熟成。じっくりと粕漬けされたズッキーニは旨みが凝縮され、輪切りにされてお皿の上に並びます。その上には、万願寺唐辛子を焼いて作られたペーストが重なり、さらに阿岸で育った七面鳥のもも肉と砂肝をミンチにして詰めた花ズッキーニが堂々と鎮座。オーブンでじっくりと焼き上げられた料理からは、香ばしく滋味深い香りが立ち上ります。ひと口いただくと、酒粕で引き出された野菜本来の甘み、万願寺唐辛子のほろ苦さ、七面鳥の濃厚な肉汁、そして時折顔を出す砂肝のコリっとした食感が次々に現れ、味わいの変化が実に楽しい。洗練されながらもどこか郷土の温かみを感じさせる、満足度の高い一皿です。

◆牡蠣
乾いた海風の香りを感じさせるような、乾燥した海藻で作られた器。その上に、丸く仕立てられた牡蠣の揚げボールがひとつ、金色の衣をまとい堂々と佇んでいます。上には自家製の白山イノシシの生ハムが繊細に重ねられ、塩気と旨味を添えています。金色の衣の中には、能登湾で水揚げされた牡蠣と、牡蠣のヒモを使ったとろりと濃厚なベシャメルソースがたっぷりと詰まり、ひと口で溢れ出す熱々の旨味はまさに衝撃的。油断すれば手を火傷しそうなほどの湯気と共に、海の恵みが口いっぱいに広がります。別添えの器には、奥能登の大浜大豆のピューレ、その奥にはキャビアが隠れており、牡蠣ボールをディップするたびに、大豆のまろやかさ、キャビアの塩味とコクが次々と顔を出し、複層的な味のハーモニーが楽しめる逸品です。

◆パン(2種類)
一品料理の合間に提供されたパンにも驚きがあります。1つ目は、15種類の雑穀と熟成酵母を使った香ばしく硬めのパン。2つ目は、富山県産ワインの搾りかすから培養した酵母と六条麦で焼いたパン。どちらも噛むごとに奥行きある旨みがにじみ出て、料理の余韻を際立たせる名脇役です。

◆シルクスイート
茶色く丸い温もりのある器の中央に、黄金色に焼き上げられた五郎島産のシルクスイートがふっくらと鎮座しています。その上には、シロップ漬けにしてからカリカリに仕上げた紫蘇のチップがそっとあしらわれ、光を受けて繊細にきらめきます。スプーンを入れると、ほくほくとしたさつま芋のやさしい香りが立ちのぼり、その下からは、じっくり煮込まれてホロホロと崩れるツキノワグマのラグーが現れます。濃厚な旨味をまとい、野趣を感じさせるクマ肉と、自然な甘みを持つさつま芋が口の中で出会う瞬間、意外性と調和の妙に心を奪われます。さらに、周囲をふわりと包む泡状のソースが全体をやさしくまとめ上げ、動物的な力強さと植物的な清らかさが交差する、美しい余韻を残す一皿です。

◆まはた
丸く真っ白なお皿の中央に、じっくりと火入れされた「まはた」が静かに存在します。その上には、真珠のように艶やかなピルピルソースと、ふんわりとした柚子の泡がやさしく重なり、見るからに品のある佇まい。テーブルの上には、あらかじめ炭化された柚子が添えられ、提供直前に目の前で削って香りづけしてくれる演出に心が躍ります。立ち上るのは香ばしさと爽やかな柚子の香り。口に運ぶと、ピルピルソースのクリーミーでなめらかな舌触りがまず印象的。その奥から「まはた」の弾力ある身の質感と、噛むほどににじみ出る旨みが広がっていきます。表面はほくっと焼き上がり、中はしっとりとみずみずしい。火入れの技術の高さにうなりながら、柚子の清涼感が余韻として残る、洗練された魚料理です。

◆トマト
口直しの一品には、静岡県産のフルーツトマト「トマトダ」が登場。生姜とシェリービネガーに漬けて冷たく提供されるこの小さな一皿は、まさに食のリセットボタン。甘さと酸味の絶妙なバランスで、次の肉料理へと気持ちを整えてくれます。

◆鹿
温かみのあるグレーのプレートの中央に、美しく火入れされた蝦夷鹿のロースがしっとりと佇んでいます。肉の表面はほんのり艶やかで、ナイフを入れるとスッと刃が通り、中心にはほんのり赤みを残した絶妙な焼き加減。ロースの下には、これまでの料理で使用した食材の端材を丁寧に煮詰めて仕上げた特製ソース。香ばしさと複雑な旨みが調和し、料理全体をひとつにまとめ上げています。右上にはあんぽ柿とりんごのチャツネが艶やかに添えられ、優しい甘みがアクセントに。右中には新玉ねぎのローストが控えめに香り立ち、右下には黄色ビーツのペーストが鮮やかな彩りとほのかな甘みを添えています。
ひと口頬張ると、野性味を感じさせる力強い旨みが広がりながらも、舌の上でやさしくほどける柔らかさ。雄の鹿ならではの濃厚な肉の風味が、口いっぱいに染み渡ります。すべての要素が計算され尽くし、鹿肉の魅力を引き立てた一皿です。

◆竹の子
木製の丸皿にふわりと湯気をまとって現れたのは、春の息吹を閉じ込めたような一皿。石川県・別所町で朝掘りされた新鮮な筍を贅沢に使った、花山椒香るパエリアです。パエリアの上には、炭火で香ばしく焼かれた筍が3切れ。艶やかな焼き目が目を引き、肉厚な切り口からはシャクっとした食感が伝わってきそうです。筍の下のライスはしっとりと炊き上げられ、濃縮された旨みをまとって豊かな香りがふわり。ひと口運ぶと、筍の野性味ある歯ざわりと、穀物の甘み、花山椒のほのかな刺激が調和し、春の山中にいるかのような気持ちになります。お皿の右上にはアイオリソースがそっと添えられ、にんにくのコクとまろやかさが味に奥行きを与えてくれます。おかわりも可能とのことで、思わず手が伸びてしまいました。これは、春を食べるという体験そのものでした。

◆赤ガス海老
真っ白な陶器の茶碗型の器の中から、海の香りがふわりと立ち上ります。目に飛び込んできたのは、金沢港で水揚げされた新鮮な赤ガス海老。調理前の丁寧な下処理と絶妙な火入れにより、海老の身はぷりぷりで弾力があり、ひと口ごとに濃厚な甘みと旨みがあふれ出します。
その下に敷かれたのは、スペインの伝統料理「アロスカルドソ」。スープのように水分を多く含んだお米は、まさにおじやのような優しい口当たり。赤ガス海老から出た旨みをたっぷり吸い込んでいて、粒ごとに滋味深さを感じます。とろりとした米の質感と、海老のぷりっとした食感のコントラストが心地よく、体の芯から温まるような、滋味に満ちた一皿です。

◆クレソン
真っ白な器の中央にそっと佇むのは、福井県池田町産のクレソンを使ったソルベ。清らかな水で知られる土地で育ったクレソンは、みずみずしさとともに力強い野生味を宿しており、その個性がそのまま氷の中に閉じ込められています。グリーンの鮮やかなソルベは、下に敷かれた緑のソースと一体となり、まるで森の中の泉のような景色を描き出しています。その頂にはフレッシュなクレソンの葉がひと房、美しくあしらわれ、風に揺れる若葉のようなアクセントに。口に運ぶと、ひんやりとした口当たりと共にクレソン特有のピリッとした辛味とほのかな苦味が広がり、後味には爽やかさと清涼感が残ります。甘さ控えめで潔く、自然の恵みをダイレクトに感じられる、大地のエッセンスそのもののようなソルベです。

◆枇杷/ミルク
木の温もりが伝わる丸い器の中に、初夏のやさしい風景がそっと閉じ込められています。主役は、金沢産の瑞々しい枇杷を贅沢に使ったアイスクリーム。搾りたてのような新鮮なミルクと、山岸養蜂場のやわらかな甘さのはちみつが溶け合い、口に含むとふわりと優しい余韻が広がります。アイスクリームの周囲には、枇杷の葉を煮出して香りを移したクリームが優しく包み、その上に軽くコンポートされた枇杷の果肉がぽとんと添えられています。スプーンを深く差し込むと、底には枇杷とオレンジで仕立てたジャムが隠れており、柑橘の爽やかさとほのかな苦味が心地よく追いかけてきます。お供には、枇杷の皮と葉、緑茶、自家製の柿ビネガーで淹れた特製のお茶。香ばしさと酸味が調和し、口の中をきれいに整えてくれるようでした。

◆小菓子
まるで小さな宝石箱を開いたかのような、愛らしくも洗練された小菓子たちが、木のプレートや小枝の共に美しく並べられて運ばれてきました。最初に目を引くのは、能登ブルーベリーファームのブルーベリーとシェリー酒を煮詰めて冷やし固めた、深い紫の球体。ひんやりとした口当たりの中に、果実の甘酸っぱさと芳醇な酒の香りがじんわりと広がります。続く日向夏のタルトは、台湾茶を練り込んだ香ばしい土台に、生姜のクリームをふんわりと重ね、上には瑞々しい日向夏。爽やかな柑橘とピリリとした刺激が絶妙なバランスです。桜の丸木の上には、薄くスライスした新じゃがの中にレモンクリームを巻き付けた、春らしさ満載の一品。驚くほど軽やかな食感と、芋の自然な甘みがレモンの酸味と寄り添います。最後に登場するのは、加賀棒茶と黒糖を混ぜて薄く焼き上げた、空洞の円筒状のお菓子。中には黒胡麻とチョコレートのコク深いクリームが忍ばせてあり、口に含めば香ばしさとまろやかな甘さが広がります。ひとつひとつに物語を感じるような、余韻豊かなデセールでした。

◆ハーブティ
最後の余韻を包み込むように供されたのは、朝採れのフレッシュハーブを丁寧にブレンドした、透き通るようなハーブティー。湯気の向こうにふわりと立ちのぼる香りは、まるで初夏の朝、露に濡れたハーブ畑に迷い込んだかのような錯覚を覚えさせます。レモングラスやレモンミントの爽やかさに、スピアミントとアップルミントの清涼感が重なり、鼻腔をすっと通り抜けていきます。ラベンダーリーフやカモミールが穏やかな安らぎを添え、カレンデュラやコーンフラワーの花々が目にも鮮やかに彩りを与えます。日によって異なる新鮮なハーブたちが織りなす香りと味わいは、人工的なものでは決して出せない、自然の恵みそのもの。レモンゼラニウムの華やかな香りを感じながら、食後の時間が静かに、そして豊かに締めくくられていきました。

「respiracion」という名の通り、料理の一皿一皿が自然と人との呼吸を重ね、空間と時間を越えて記憶に残る体験を作ってくれる場所でした。次に訪れるとき、またどんな「呼吸」が待っているのか——想像するだけで心が躍ります。

  • 金沢・近江町市場から徒歩わずか1分。古き良き町並みに溶け込むようにひっそりと佇む、「respiracion(レスピラシオン)」は、以前宿泊した「ザ ホテル山楽 金沢」の目の前にあり、その時から気になっていたお店。The Tabelog Award 2025 Silverを受賞し、さらに食べログのスペイン料理 百名店2024にも選出された名店です。

  • 家族との記念日ということもあり、2ヶ月前にテーブルチェックで予約し、満を持してこの日を迎えました。

  • 17時45分、まだ明るさの残る金沢の夕暮れ。そっと扉を開けると、改装された古民家の内装に吸い込まれるような静けさが漂っています。

  • 通されたのは、天井からスポットのように光が落ちる丸テーブル。キャンドルがゆらりと揺れ、一輪挿しの緑と共に、目の前の空間だけが浮かび上がっているような演出。外界と切り離された静謐な空間で、これから供される料理たちを迎える準備が整います。

  • この日は「Corse respiracion」と、5種のペアリングドリンク(食前酒含む)を注文。最初の一皿が運ばれてきた瞬間から、物語は静かに、けれど確かに始まります。

  • ◆甘海老 まるで大きなおはじきのような平たい球体の器に盛りつけられたこの一品は、まさにアートピースのような佇まいです。中央には卵の黄身のように美しく丸いフォルムを描いたオレンジ色のドーム。その表面には金箔がひらりと一枚添えられ、まるで高貴な宝石のように静かに輝きを放っています。

  • このオレンジ色のシートは、甘海老の頭や味噌を香ばしく焼いてから丁寧にスープにし、さらに練り込んで固めたもので、深いコクと香りが内包されています。その下には、2年物の塩麹でじっくりマリネされた甘海老がひそみ、ねっとりとした旨みととろけるような食感が舌の上に広がります。新鮮であるがゆえの瑞々しさと塩麹の熟成感が絶妙なバランスを生み出し、素材の良さを引き立てます。

  • 一番下に敷かれているのは、甘海老の頭と殻を粉末状にして練り込んだタルト。このタルトがまた見事で、サクサクとした軽快な食感とともに、えびの香ばしさとミネラル感を口いっぱいに届けてくれます。一皿の中に甘海老の“すべて”が詰まっているかのような構成で、香り、甘み、食感、余韻までが幾層にも重なって押し寄せてくる。シェフの感性と技術力が凝縮された、まさにスペイン×金沢のイノベーティブな一品です。

  • ◆ホッキ貝 海をイメージした一品として登場したこの料理は、大きなホッキ貝の殻を器に使い、上にはふんわりとしたバイマックル(こぶみかん)の泡と海藻があしらわれています。その見た目からすでに「海」を強く感じさせ、目の前に広がる日本海の断片を皿の上に閉じ込めたような印象を受けます。

  • 泡の下には、薪焼きした後にスモークをかけた北寄貝を中心に、金沢産のスナップエンドウ、岩海苔、メカブ、シーアスパラガスが繊細に配置されています。

  • 提供時にはホッキ貝の紐で作った緑色のソース「レチェ・デ・ティグレ」が泡の上から流しかけられ、その瞬間に広がります。

  • 魚介の香りとバイマックルの柑橘系の爽やかな香りが食欲を刺激します。

  • ひと口含むと、シャキシャキとしたスモーク北寄貝の弾力と、スナップエンドウの風味と食感が見事に調和。そこに加わるメカブや岩海苔、シーアスパラガスのミネラル感が海のニュアンスをより一層深く演出しています。そして何より、レチェ・デ・ティグレの酸味と旨みが全体を包み込み、貝と海藻の風味を引き立てながら、料理全体に爽やかな余韻を与えてくれるのです。まさに五感で味わう“海”の一皿です。

  • ◆ズッキーニ(2種類) ・ズッキーニを使った1品目 まるで小さなテラリウムのような、透明のグラスに盛られた前菜は、見た目にも愛らしい印象を与えます。

  • 中にはズッキーニを用いた淡い緑のムース。その上には潤菜のピクルスと細かく刻まれたズッキーニのピクルスが散りばめられ、小さな食用花がひとつ添えられていました。ムースは昆布茶と出汁がベースとなっており、穏やかで深い旨味を含みつつも、喉越しはすっきりと爽やか。

  • 上層のピクルスはやや甘酸っぱく、全体の風味にアクセントを加えています。異なる食感と風味が絶妙に調和した一品で、口に含むたびに清涼感が広がり、初夏の緑を思わせるような美しさと涼やかさが印象に残ります。

  • ・ズッキーニを使った2品目 続いてのズッキーニ料理は、香りと力強い旨みが共演するメインに近い存在感を放つ逸品です。

  • 酒粕と青カビチーズを練り合わせた濃厚なペーストをズッキーニの表面にしっかりと塗りこみ、丸ごと包み込んでから3日間熟成。

  • じっくりと粕漬けされたズッキーニは旨みが凝縮され、輪切りにされてお皿の上に並びます。その上には、万願寺唐辛子を焼いて作られたペーストが重なり、さらに阿岸で育った七面鳥のもも肉と砂肝をミンチにして詰めた花ズッキーニが堂々と鎮座。

  • オーブンでじっくりと焼き上げられた料理からは、香ばしく滋味深い香りが立ち上ります。

  • ひと口いただくと、酒粕で引き出された野菜本来の甘み、万願寺唐辛子のほろ苦さ、七面鳥の濃厚な肉汁、そして時折顔を出す砂肝のコリっとした食感が次々に現れ、味わいの変化が実に楽しい。洗練されながらもどこか郷土の温かみを感じさせる、満足度の高い一皿です。

  • ◆牡蠣 乾いた海風の香りを感じさせるような、乾燥した海藻で作られた器。

  • その上に、丸く仕立てられた牡蠣の揚げボールがひとつ、金色の衣をまとい堂々と佇んでいます。

  • 上には自家製の白山イノシシの生ハムが繊細に重ねられ、塩気と旨味を添えています。

  • 金色の衣の中には、能登湾で水揚げされた牡蠣と、牡蠣のヒモを使ったとろりと濃厚なベシャメルソースがたっぷりと詰まり、ひと口で溢れ出す熱々の旨味はまさに衝撃的

  • 油断すれば手を火傷しそうなほどの湯気と共に、海の恵みが口いっぱいに広がります。

  • 別添えの器には、奥能登の大浜大豆のピューレ、その奥にはキャビアが隠れており、牡蠣ボールをディップするたびに、大豆のまろやかさ、キャビアの塩味とコクが次々と顔を出し、複層的な味のハーモニーが楽しめる逸品です。

  • ◆パン(2種類) 一品料理の合間に提供されたパンにも驚きがあります。1つ目は、15種類の雑穀と熟成酵母を使った香ばしく硬めのパン。2つ目は、富山県産ワインの搾りかすから培養した酵母と六条麦で焼いたパン。どちらも噛むごとに奥行きある旨みがにじみ出て、料理の余韻を際立たせる名脇役です。

  • ◆シルクスイート 茶色く丸い温もりのある器の中央に、黄金色に焼き上げられた五郎島産のシルクスイートがふっくらと鎮座しています。

  • その上には、シロップ漬けにしてからカリカリに仕上げた紫蘇のチップがそっとあしらわれ、光を受けて繊細にきらめきます。

  • スプーンを入れると、ほくほくとしたさつま芋のやさしい香りが立ちのぼり、その下からは、じっくり煮込まれてホロホロと崩れるツキノワグマのラグーが現れます。

  • 濃厚な旨味をまとい、野趣を感じさせるクマ肉と、自然な甘みを持つさつま芋が口の中で出会う瞬間、意外性と調和の妙に心を奪われます。さらに、周囲をふわりと包む泡状のソースが全体をやさしくまとめ上げ、動物的な力強さと植物的な清らかさが交差する、美しい余韻を残す一皿です。

  • ◆まはた 丸く真っ白なお皿の中央に、じっくりと火入れされた「まはた」が静かに存在します。

  • その上には、真珠のように艶やかなピルピルソースと、ふんわりとした柚子の泡がやさしく重なり、見るからに品のある佇まい

  • テーブルの上には、あらかじめ炭化された柚子が添えられ、提供直前に目の前で削って香りづけしてくれる演出に心が躍ります。

  • 立ち上るのは香ばしさと爽やかな柚子の香り。

  • 口に運ぶと、ピルピルソースのクリーミーでなめらかな舌触りがまず印象的。その奥から「まはた」の弾力ある身の質感と、噛むほどににじみ出る旨みが広がっていきます。

  • 表面はほくっと焼き上がり、中はしっとりとみずみずしい。火入れの技術の高さにうなりながら、柚子の清涼感が余韻として残る、洗練された魚料理です。

  • ◆トマト 口直しの一品には、静岡県産のフルーツトマト「トマトダ」が登場。生姜とシェリービネガーに漬けて冷たく提供されるこの小さな一皿は、まさに食のリセットボタン。甘さと酸味の絶妙なバランスで、次の肉料理へと気持ちを整えてくれます。

  • ◆鹿 温かみのあるグレーのプレートの中央に、美しく火入れされた蝦夷鹿のロースがしっとりと佇んでいます。

  • 肉の表面はほんのり艶やかで、ナイフを入れるとスッと刃が通り、中心にはほんのり赤みを残した絶妙な焼き加減。

  • ロースの下には、これまでの料理で使用した食材の端材を丁寧に煮詰めて仕上げた特製ソース。香ばしさと複雑な旨みが調和し、料理全体をひとつにまとめ上げています。

  • 右上にはあんぽ柿とりんごのチャツネが艶やかに添えられ、優しい甘みがアクセントに。右中には新玉ねぎのローストが控えめに香り立ち、右下には黄色ビーツのペーストが鮮やかな彩りとほのかな甘みを添えています。

  • ひと口頬張ると、野性味を感じさせる力強い旨みが広がりながらも、舌の上でやさしくほどける柔らかさ。雄の鹿ならではの濃厚な肉の風味が、口いっぱいに染み渡ります。すべての要素が計算され尽くし、鹿肉の魅力を引き立てた一皿です。

  • ◆竹の子 木製の丸皿にふわりと湯気をまとって現れたのは、春の息吹を閉じ込めたような一皿。石川県・別所町で朝掘りされた新鮮な筍を贅沢に使った、花山椒香るパエリアです。

  • パエリアの上には、炭火で香ばしく焼かれた筍が3切れ。艶やかな焼き目が目を引き、肉厚な切り口からはシャクっとした食感が伝わってきそうです。

  • 筍の下のライスはしっとりと炊き上げられ、濃縮された旨みをまとって豊かな香りがふわり。ひと口運ぶと、筍の野性味ある歯ざわりと、穀物の甘み、花山椒のほのかな刺激が調和し、春の山中にいるかのような気持ちになります。

  • お皿の右上にはアイオリソースがそっと添えられ、にんにくのコクとまろやかさが味に奥行きを与えてくれます。

  • おかわりも可能とのことで、思わず手が伸びてしまいました。これは、春を食べるという体験そのものでした。

  • ◆赤ガス海老 真っ白な陶器の茶碗型の器の中から、海の香りがふわりと立ち上ります。

  • 目に飛び込んできたのは、金沢港で水揚げされた新鮮な赤ガス海老。調理前の丁寧な下処理と絶妙な火入れにより、海老の身はぷりぷりで弾力があり、ひと口ごとに濃厚な甘みと旨みがあふれ出します。

  • その下に敷かれたのは、スペインの伝統料理「アロスカルドソ」。スープのように水分を多く含んだお米は、まさにおじやのような優しい口当たり。赤ガス海老から出た旨みをたっぷり吸い込んでいて、粒ごとに滋味深さを感じます。

  • とろりとした米の質感と、海老のぷりっとした食感のコントラストが心地よく、体の芯から温まるような、滋味に満ちた一皿です。

  • ◆クレソン 真っ白な器の中央にそっと佇むのは、福井県池田町産のクレソンを使ったソルベ。清らかな水で知られる土地で育ったクレソンは、みずみずしさとともに力強い野生味を宿しており、その個性がそのまま氷の中に閉じ込められています。

  • グリーンの鮮やかなソルベは、下に敷かれた緑のソースと一体となり、まるで森の中の泉のような景色を描き出しています。

  • その頂にはフレッシュなクレソンの葉がひと房、美しくあしらわれ、風に揺れる若葉のようなアクセントに。

  • 口に運ぶと、ひんやりとした口当たりと共にクレソン特有のピリッとした辛味とほのかな苦味が広がり、後味には爽やかさと清涼感が残ります。甘さ控えめで潔く、自然の恵みをダイレクトに感じられる、大地のエッセンスそのもののようなソルベです。

  • ◆枇杷/ミルク 木の温もりが伝わる丸い器の中に、初夏のやさしい風景がそっと閉じ込められています。主役は、金沢産の瑞々しい枇杷を贅沢に使ったアイスクリーム。

  • 搾りたてのような新鮮なミルクと、山岸養蜂場のやわらかな甘さのはちみつが溶け合い、口に含むとふわりと優しい余韻が広がります。

  • アイスクリームの周囲には、枇杷の葉を煮出して香りを移したクリームが優しく包み、その上に軽くコンポートされた枇杷の果肉がぽとんと添えられています。

  • スプーンを深く差し込むと、底には枇杷とオレンジで仕立てたジャムが隠れており、柑橘の爽やかさとほのかな苦味が心地よく追いかけてきます。

  • お供には、枇杷の皮と葉、緑茶、自家製の柿ビネガーで淹れた特製のお茶。香ばしさと酸味が調和し、口の中をきれいに整えてくれるようでした。

  • ◆小菓子 まるで小さな宝石箱を開いたかのような、愛らしくも洗練された小菓子たちが、木のプレートや小枝の共に美しく並べられて運ばれてきました。

  • 最初に目を引くのは、能登ブルーベリーファームのブルーベリーとシェリー酒を煮詰めて冷やし固めた、深い紫の球体。ひんやりとした口当たりの中に、果実の甘酸っぱさと芳醇な酒の香りがじんわりと広がります。

  • 続く日向夏のタルトは、台湾茶を練り込んだ香ばしい土台に、生姜のクリームをふんわりと重ね、上には瑞々しい日向夏。爽やかな柑橘とピリリとした刺激が絶妙なバランスです。

  • 桜の丸木の上には、薄くスライスした新じゃがの中にレモンクリームを巻き付けた、春らしさ満載の一品。驚くほど軽やかな食感と、芋の自然な甘みがレモンの酸味と寄り添います。

  • 最後に登場するのは、加賀棒茶と黒糖を混ぜて薄く焼き上げた、空洞の円筒状のお菓子。中には黒胡麻とチョコレートのコク深いクリームが忍ばせてあり、口に含めば香ばしさとまろやかな甘さが広がります。ひとつひとつに物語を感じるような、余韻豊かなデセールでした。

  • ◆ハーブティ 最後の余韻を包み込むように供されたのは、朝採れのフレッシュハーブを丁寧にブレンドした、透き通るようなハーブティー。

  • 湯気の向こうにふわりと立ちのぼる香りは、まるで初夏の朝、露に濡れたハーブ畑に迷い込んだかのような錯覚を覚えさせます。レモングラスやレモンミントの爽やかさに、スピアミントとアップルミントの清涼感が重なり、鼻腔をすっと通り抜けていきます。ラベンダーリーフやカモミールが穏やかな安らぎを添え、カレンデュラやコーンフラワーの花々が目にも鮮やかに彩りを与えます。

  • 日によって異なる新鮮なハーブたちが織りなす香りと味わいは、人工的なものでは決して出せない、自然の恵みそのもの。レモンゼラニウムの華やかな香りを感じながら、食後の時間が静かに、そして豊かに締めくくられていきました。

  • この「respiracion」という名の通り、料理の一皿一皿が自然と人との呼吸を重ね、空間と時間を越えて記憶に残る体験を作ってくれる場所でした。次に訪れるとき、またどんな「呼吸」が待っているのか——想像するだけで心が躍ります。

2025/05/30 更新

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