Mamosan2525さんが投稿したラ・メール ザ クラシック(三重/賢島)の口コミ詳細

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  • 昼の点数:4.8

    • ¥15,000~¥19,999 / 1人
      • 料理・味 -
      • |サービス -
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2025/09 訪問

  • 昼の点数:4.8

    • [ 料理・味-
    • | サービス-
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥15,000~¥19,999
    / 1人

英虞湾にとける、海と大地の記憶を味わう午後

志摩の空は、どこかやさしい光をまとっていました。近鉄の観光特急「しまかぜ」に乗り、穏やかに揺れる車窓から見えるのは、どこまでも続く青と緑のグラデーション。目的地は、ずっと憧れていた志摩観光ホテルの「ラ・メール ザ クラシック」。この地を代表する“海の幸フランス料理”の聖地です。賢島駅に降り立ち、シャトルバスで数分。木々の間から姿を現すホテルのクラシカルな佇まいに、胸の奥が少しだけ高鳴りました。長年変わらぬ品格を湛えたその外観には、「美味しさは時を超える」という静かな確信が漂っているようでした。

休日の昼下がり、13時を過ぎた頃に訪れた店内には、昼のピークを終えた安らぎが流れていました。窓際のテーブルは満席。それでも案内された席は、ちょうど大きな窓のすぐそば。陽光が英虞湾を反射して、きらめく光の粒がテーブルクロスに踊ります。天井は高く、壁には伊勢志摩サミットの記念テーブルが静かに置かれ、歴史の重みと誇りを感じさせます。ホールスタッフの所作は凛としていて、ひとつひとつの動きに「伝統をつなぐ」意識が宿っているようでした。窓の外からは、穏やかな波音が遠く微かに届き、まるで料理が始まる前の“前奏”のように響いていました。

最初に運ばれてきたのは、アミューズブーシュ。四角いガラス皿の上に、レタスの上でやわらかく光るイカの南蛮漬け。細く切られた人参のマリネが軽やかな彩りを添えています。ひと口食べると、酢のやさしい酸味とイカの旨味が爽やかに口の中で弾け、旅の緊張をそっと解きほぐしてくれました。小さな前奏曲のような一皿です。

続いて登場したのは、「海の幸 伊勢海老のコンソメジュレと鮑のクリームを添えて」。ガラスの器の中に層をなして並ぶ海の恵み。下にはほっくりと甘いかぼちゃ、上にはイカや白身魚、ブロッコリー、カリフラワーが彩りよく並び、その上から透明なコンソメジュレが光を抱き込んでいます。鮑のクリームがやさしく包みこみ、ひと口ごとに異なる食感と香りが訪れる。潮風をそのまま閉じ込めたような清らかな味わいに、思わず目を閉じてしまいました。

そして待ち焦がれていた名物、「伊勢海老クリームスープ」。金色のスープ皿の縁を飾る蒸気に、海老の香ばしい香りがゆらめきます。スプーンを入れると、濃厚なのに驚くほど繊細な口当たり。殻ごと砕いた伊勢海老を丁寧に炒め、ブランデーで香りを引き出した深い旨味。海老の持つ甘みと香り、そしてほのかな苦みが完璧なバランスで共存しています。まさに「火を通して新鮮」とはこのこと。五代目料理長の言葉が心に響く、伝統と哲学の詰まった一杯です。

次に現れた「伊勢海老アメリカンソース サフランライスを添えて」は、まさにこのレストランの象徴とも言える華。皿の中央で鮮やかな赤を纏う伊勢海老は、しっとりとした光沢を放ち、ソースの香りがゆるやかに立ちのぼります。濃厚でクリーミーなアメリカンソースには、伊勢海老の旨味がすべて溶け込んでおり、香味野菜の深みとバターのまろやかさが見事に調和。身は驚くほどぷりぷりで、殻からきれいに外れ、噛むほどに甘みがあふれます。頭の中のエビ味噌をすくって口に含むと、まるで海の底に潜り込んだような濃厚な香りが広がりました。サフランライスはその余韻を柔らかく受け止め、皿の上で海と大地が出会う瞬間を描き出していました。

肉料理の主役は、「黒毛和牛フィレ肉ステーキ トリュフソース」。運ばれてきた瞬間、ふわりと立ち上る芳醇な香りに心が奪われます。ナイフを入れると、抵抗なくすっと切れるほどの柔らかさ。ひと口噛めば、フィレ肉特有の繊細な肉質と脂の旨味が、トリュフの香りと共に広がり、まるで深い森の中で焚火を囲んでいるような温もりを感じました。トリュフソースの豊かな香気が、肉の持つ静かな甘みを引き立て、口の中に長く余韻を残します。まさに“贅沢”という言葉が料理になったような一皿です。

デザートの「かぼちゃのブリュレ キャラメルアイスを添えて」は、食事の締めくくりにふさわしい優しさをたたえています。かぼちゃのクリームはまろやかな甘さが舌の上でとろけていきます。その上に添えられたキャラメルアイスは、ほんのり苦味を帯びていて、ブリュレの甘さを優しく包み込む。葉脈を模したチュイルが添えられ、まるで秋風がそっと吹き抜けたような余韻を残します。
最後のコーヒーには、小さなフィナンシェや琥珀糖が添えられ、まるで食後の語らいを待っているかのように穏やかでした。

窓の外、英虞湾の光は午後のやわらかい金色に変わっていました。潮の香りとトリュフの余韻が交じり合う中、「またこの味に会いたい」と心から思いました。伝統という言葉は、時に重く響きますが、ここではむしろ“やさしく続く祈り”のように感じられます。海と大地が語りかけてくるような料理たち。志摩の自然と人の技が紡ぎ出した物語を、五感で味わい尽くした午後でした。
またいつか、特別な一日を祝いに。英虞湾を望むこの席で、静かにグラスを傾けたい。そう思えるほど、心に残るひとときでした。

2025/10/14 更新

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