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昼の点数:5.0
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¥1,000~¥1,999 / 1人
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Episode 96 『浅野屋(奈良・五條)』:海なし県の奇跡。山間の街で出会う、鮪と饂飩と唐揚げの“幸福な三角形”
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2026/02/11 更新
2018年7月。
真夏の太陽が容赦なく照りつける、奈良県五條市。
紀伊半島の中央部を貫くこの街は、大阪と和歌山を結ぶ交通の要衝であり、吉野川がゆったりと流れるのどかな場所だ。
「海なし県」である奈良において、旨い魚、それも「マグロ」を食べさせる店があるという噂は、にわかには信じがたいものがあった。
しかし、その店『浅野屋』の駐車場に滑り込んだ瞬間、私の疑念は確信へと変わった。
平日だというのに、駐車場は満車。
地元ナンバーの車がひしめき合い、店内からは活気のあるざわめきが漏れ聞こえてくる。
ここは単なる和食屋ではない。五條市民の胃袋を鷲掴みにしている「食の聖地」なのだ。
暖簾をくぐり、熱気と出汁の香りが漂う店内へ。
運良く空いた席に座り、迷うことなく評判のランチセットを注文する。
周りを見渡せば、作業着姿の男性から、近所のマダムたちのグループまで、客層は多種多様。
皆、一心不乱に丼をかき込み、麺を啜っている。
程なくして運ばれてきたお盆を見て、私は思わず目を見張った。
「……多い! そして、美しい!」
目の前に現れたのは、主役級の料理が三つ巴となって鎮座する、夢のような光景だった。
まずは、鮮やかなピンク色の鮪(マグロ)と黄金色の卵黄が輝く「マグロ丼」。
そして、大きな油揚げ(きつね)が堂々と横たわる「うどん」。
さらに、揚げたての香ばしい匂いを放つ「マグロの唐揚げ」。
これだけのボリュームで、驚くほど手頃な価格(コスパ)ときている。
奈良の山間で、これほどの海鮮ランチに出会えるとは。
まずは伸びないうちに「うどん」から。
透き通った関西風の出汁を一口飲むと、鰹と昆布の優しい旨味が五臓六腑に染み渡る。
麺は程よいコシがあり、喉越しが良い。
そして特筆すべきは、甘く煮付けられた大きな油揚げだ。
噛むとジュワッと甘い出汁が溢れ出し、うどんの塩気と絶妙なコントラストを生む。
これ単体でも十分な一食になり得るクオリティだ。
続いて、真打ちの「マグロ丼」へ。
たっぷりと乗せられたマグロのたたき(ネギトロ状のもの)の中央に、卵黄が鎮座している。
箸で卵黄を崩し、とろりと流れ出した黄身をマグロに絡め、白飯と共に口へ運ぶ。
「……甘い!」
魚特有の生臭さは微塵もなく、マグロの脂の甘みと旨味だけが口いっぱいに広がる。
そこへ卵黄の濃厚なコクと、海苔の磯の香り、そして薬味のネギと紅生姜がアクセントを加える。
海から遠く離れたこの場所で、なぜこれほど新鮮なマグロが提供できるのか。
店主の目利きと、独自の仕入れルートに脱帽するしかない。
醤油を回しかけ、わしわしと掻き込む快感。これぞ丼飯の醍醐味だ。
そして、忘れてはならないのが「マグロの唐揚げ」だ。
鶏の唐揚げは日常的だが、マグロの唐揚げとなると特別感がある。
揚げたてをハフハフと言いながら齧り付く。
衣はサクサクと軽く、中の身は驚くほど柔らかい。
鶏肉よりも繊維が解けやすく、それでいて魚とは思えないほどの肉肉しい食べ応えがある。
下味がしっかりとついており、ご飯のおかずとしても、ビールのアテとしても最高だろう。
マグロを生(丼)と加熱(唐揚げ)、二つの調理法で味わい尽くす贅沢。
うどんを啜り、丼を頬張り、唐揚げを齧る。
この「炭水化物×タンパク質×炭水化物」という幸福な三角形(トライアングル)の中を、私の箸は止まることなく回り続ける。
食べ進めるごとに満腹中枢が刺激されるが、箸を止めるのが惜しいほど旨い。
ふとレジ横を見ると、「ポイントカード」の案内がある。
ポイントを貯めればコーヒーやわらび餅がサービスされるという、この店らしい温かい心遣い。
「毎日来たいレベル」という常連客の言葉は、決して大袈裟ではない。
安くて、旨くて、腹一杯になる。
そんな飲食店としての原点が、ここには確かに存在していた。
店を出ると、外は相変わらずの猛暑だったが、不思議と暑さが苦にならなかった。
五條の『浅野屋』。
海のない奈良県で出会った、最高級のマグロと地元愛が詰まった、奇跡のようなランチだった。