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夜の点数:5.0
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¥4,000~¥4,999 / 1人
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Episode 125 『長堂屋 今帰仁本店』(沖縄県・今帰仁村)やんばるの古民家で、幻の黒豚「今帰仁アグー」の甘き脂にひれ伏す
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2026/02/15 更新
美ら海水族館を後にする頃には、あたりはすっかり夜の帳に包まれていた。
街灯の少ない沖縄北部の道を車で走ること約10分。
亜熱帯の濃密な空気の中に、ぽつりと温かなオレンジ色の灯りが浮かび上がる。
『長堂屋』。
琉球古民家を改装したというその建物は、まるでタイムスリップしたかのような佇まいで私を迎えてくれた。
木の扉を開け、靴を脱いで上がると、そこには懐かしくも活気のある空間が広がっていた。
天井を彩る鮮やかな大漁旗、使い込まれた木の床、そして壁に飾られた秋篠宮殿下のご来店写真。
ただの田舎料理屋ではない。ここは、沖縄の食文化を背負う名店なのだという静かな矜持が伝わってくる。
案内された掘りごたつの席に腰を落ち着け、まずはオリオンビールで喉を潤す。
湿度の高い沖縄の夜には、この軽い喉越しのビールが水のように身体に染み込んでいく。
注文したのは、この店を訪れた誰もが目指す頂、「今帰仁アグーのしゃぶしゃぶコース」だ。
やがて運ばれてきた大皿を見て、私は思わず居住まいを正した。
「美しい……」
皿一面に敷き詰められたアグー豚のバラ肉。
赤身の鮮やかなピンク色と、脂身の透き通るような白。そのコントラストは、まるで満開の牡丹の花のようだ。
一般的な豚肉とは明らかに違う。脂身の比率が高いにもかかわらず、全く重たさを感じさせない清らかなオーラを放っている。
鍋の出汁が沸き立ったところで、いよいよ実食だ。
薄切りの肉を一枚箸でつまみ、出汁の中でしゃぶ、しゃぶ、と泳がせる。
ほんの数秒。ピンク色が桜色に変わった瞬間が食べ頃だ。
まずは何もつけずに、そのまま口へと運ぶ。
衝撃が走った。
甘い。とにかく脂が甘いのだ。
口に入れた瞬間、体温で脂がスッと溶け出し、濃厚な旨味となって舌の上を滑り落ちていく。
豚肉特有の臭みなど微塵もない。あるのは、穀物のような芳醇な香りと、突き抜けるような純粋な甘みだけ。
「これが、アグーか」
グルタミン酸が一般の豚の数倍とも言われるその実力に、私はただ頷くことしかできなかった。
続いて、特製のシークワーサーポン酢に浸していただく。
柑橘の爽やかな酸味が、濃厚な脂の甘みをキリッと引き締め、また違った表情を見せてくれる。
これなら無限に食べられそうだ。
卓上の島唐辛子(コーレーグース)を少し垂らせば、ピリッとした辛味がアクセントとなり、泡盛が進むこと請け合いだ。
脇を固める野菜たちも見逃せない。
地元・やんばるで採れた新鮮な野菜たちは、味が濃く、力強い。
シャキシャキとしたレタスや、香りの強い青菜を肉で巻いて食べると、食感のコントラストと味の掛け算が口の中で爆発する。
箸休めに出てきた海ぶどうのプチプチとした食感、そしてジーマーミ豆腐のもっちりとした濃厚さ。
沖縄の陸と海の恵みが、このテーブルの上に集結している。
宴の締めくくりは、雑炊だ。
アグー豚の上質な脂と、野菜の甘みが溶け出した黄金色のスープ。
そこにご飯を投入し、溶き卵を回し入れる。
湯気とともに立ち上る香だけで、もう一杯ビールが飲めそうだ。
レンゲですくい、熱々を啜る。
……深い。
五臓六腑に染み渡るとは、まさにこのことだ。
豚の脂のコクがあるのに、後味は驚くほど優しい。
旅の疲れも、日頃のストレスも、すべてこのスープが洗い流してくれるようだ。
会計を済ませ、店を出る。
一人4,400円。決して安い金額ではないが、この体験にはそれ以上の価値がある。
幻の豚と向き合い、沖縄の夜を食らい尽くした満足感。
見上げると、都会では見られない満天の星空が広がっていた。
夜風が、火照った頬に心地よい。
「また必ず、ここへ帰ってこよう」
私はそう心に誓い、古民家の灯りを後にした。