ミニミニ大作戦さんのマイ★ベストレストラン 2011

レビュアーのカバー画像

ミニミニ大作戦の庶民的食文化に関する調査報告書

メッセージを送る

ミニミニ大作戦 認証済

マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

コメント

ミニミニ大作戦の「ベストレストラン2011」は、「モンブラン大作戦」と銘打った一群のレビューに関してのベスト10です。総合、料理・味、サービス、雰囲気、CPの5項目スコアの平均順とし、同一スコアの場合は、後から食べた一個を上位にしました。食べ重ねるに連れて、舌が肥えてしまうハンデを考慮したからです。なお、「モンブラン大作戦」は現在、八十二回まで回を重ねておりますが、全百回を予定しているため、残りの十八回で、更に美味しいモンブランに出会う可能性もあります事を、お断りさせて下さい。

マイ★ベストレストラン

1位

イデミスギノ (京橋、宝町、銀座一丁目 / ケーキ、カフェ)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2014/01訪問 2014/06/04

モンブラン大作戦 第八回 -比類なき独創性で突っ走る、ケーキ界孤高の存在- 【再々々訪】

前訪では少なからずショックを受けた。初めてだったのである、イデミケーにあるべきものが無い様に感じたのは。ソレは、極上レベルに仕上げられた全てのパーツが、相容れず相反し、せめぎ合う結果生まれる強い個性。イデミならではの、見えぬようでもソコにある、ぶっとい背骨。そんな豪腕的な主張が感じられなかった。それが、ちょっと引っ掛かり続けての、リベンジ再訪。

2014年1月26日

【タルトレットオランジュ】\630
Appearance:
正にイデミ。シンプルにしてセンスの良いアクがある。薄っぺらなコフィン型タルトレットの表面に、デーハーな果実がバラバラと。何やらすっ呆けてて隙だらけの様な構成。そんな危うい塊の表面で乱舞する原色系色彩、そのアクを更にブーストアップしてるとしか思えぬ表面のテカリ具合。いやはや、誠に向こう気が強い。こうでなくちゃイデミは。

Structure:
トップには唐突に木苺、ブルーベリー、オレンジの三点盛り。オレンジはゼリーコートされててグロッシー。艶かしいのが極めてミスマッチで楽しいじゃないか。本体はオレンジクリームを充填して、かるく表層をキャラメリゼしただけの、シンプル極み無きタルトレット。よくもまあ、コレだけで手を引けるな、と関心しちゃう程のシンプルな構成。

Taste:
これこそイデミの独断場。強烈ネットリなオレンジクリームの、相当にコントラストの強い酸味と苦味と甘味。これらを、表層キャラメリゼの繊細なカラメル苦味がそっとラップする。二種類の苦味を感じさせる辺り、もはや言葉も出ぬ。一方、タルト台は、イデミにしてはホロホロとした食感が意外なサブレー的仕上げ。何時ものカンカン堅焼き極薄台とは対照的である。ちょっと下品にしてデカダンス的なトッピングフルーツも、食べてみれば、シャープな酸味で活きがよろしい。

Summary:
安心した。コイツはイデミにしか出来ない芸当。簡単に作ってるようで、その実ガッツリ自己主張してる外観と味わい。相変わらず意表を突くパーツ同士のせめぎ合い。それでこそ生まれ得る骨のある味わい。ソコにはイデミの背骨がズバッと通ってる。これがイデミってもんだ。

2013年11月3日

甘モノツアーin東京 第一回戦・・・ナンダそりゃ!?

ハイ。これでも一応甘モノ好きを自称する私、食べログ三年目の今年どうしてもやっておきたい事があった。甘モノ遠足。甘モノ好きのマイレビュさんと徒党を組んで、マイレビュさんオススメのお菓子屋さんを、一日掛けて食べ歩く。そんな企画を実行する時がやって来た。

旅程はコチラ→食べログレビュアーズ甘モノ遠足「第一回甘モノツアーin東京」
概要はコチラ→食べログレビュアーズ甘モノ遠足はやはり楽しかった。

今回から七回連続して、そんな甘モノツアーin東京で一体我々は何を見聞したか!?その全てをレビューしたい。

銀座に始まり銀座で終わる今回の甘モノ遠足。記念すべき第一回戦は、泣く子も黙るイデミ・スギノ。開店前の10:40、イデミ・スギノに集結した甘モノ食べ歩き隊は総勢六名。この後、合流、離脱をしながら、20:00終了予定の最終戦まで、甘モノ縛りの耐久戦が繰り広げられる。最終ゴールに到達できるのは、真の甘モノ好きのみなのだぁ~(^w^)・・・もうワクワクが止まりませんなぁ。

【アヤ】\650
Appearance:
今回は六名でイートイン。ご存知の通り、ここは店内撮影一切厳禁。お店の決まりだから従わざるを得ないけれど、それでおめおめ引き下がるなんて願い下げ。外に持ち出せた唯一の遺品、イデミ・スギノのネームカードを撮影し、コイツを使ってアヤの再現を試みた。GIMP2なる作画ソフトと悪戦苦闘した結果、一見して分かるCGっぽい怪しげな画像ではあるが、取り敢えず記憶に残るアヤを再現してみた。これ作画するのに一体、何時間費やしただろうか・・・我ながら、その粘着質な執念深さに呆れてしまった。

Structure:
トップには二個の木苺、黒スグリ?、その上にピスタチオのトッピング。本体は多層型モノリスで、上から順に、①苺の生クリムース、②フレッシュミントのスポンジ、③チェリーのバタクリ、④ブラッドオレンジのジュレ、③のバタクリ、②のスポンジ、①のムース、⑤最下層のピスキュイ風ベースとなる。バタクリをキッチリ使いつつ、ミントのスポンジやブラッドオレンジジュレを組み合わせるところが、非凡の証か。

Taste:
う~ん・・・心の準備不足か、甘モノ遠足で浮き足立ってるが故か、はたまたこの一個が不出来なのか、今日の一個は舌経由で脳髄に訴えて来ない。確かにどの層も良くできてはいる。だから、全パーツに徹底的に拘るという、イデミ・イズムはきっと変らないのだ。だけど、ビビーンと来ないこの味。好みの問題、多分そうなんだろうけどなぁ。とにかく、イデミのケーキに必須の、一本筋の通った魂が感じられないのが残念。

Summary:
イデミ・スギノ、ケーキ界の立川談志。だから、好き嫌いはハッキリ分かれる。確かにここは、四方にガッチリ壁を作って、その中に納得して入ってくる客には、珠玉の味わいを提供してくれる。杉野氏が自我自流を貫きたいというその壁に、居心地悪さや威圧感を感じてしまう人は、「なんや偉そーに、ただの高ビーケーキじゃん」となってしまう。どちらも間違いじゃない。各々の捉え方であり、好みの問題。だがしかし、それが許される前提は、イデミのケーキから、食べ手を圧倒させる杉野氏の主張が発せられていなけりゃならん。イデミのケーキは、個々のパーツの追い込み方がハンパじゃない。でもそれだけじゃダメだ。更にその上に、これが主題か!!と食べ手を震えさせる背骨がキッチリなけりゃダメだと思う。今回の一個にそれを感じられなかったのは、私の舌が鈍っているのか、杉野氏の引退が近いのか。ちょっと暗澹とした気持ちになった第一回戦。取りあえず評点は変えずにおく。次回の再訪で感動できなかったら・・・由々しき事態である。南無三。

2012年1月17日

今回はレビュー追記&画像追加ですm(- -)m

モンブラン大作戦も残すところ最終回のみ。最終回はなんだろう?と、少しでも思って下さっていたならば、この期に及んでの再報など、肩すかしの如き裏切り行為か。しかし、「イデミ・スギノ」である。杉野氏は知りうる限りのパティシエ殿の中で、私が最も尊敬する巨匠である。そんな氏の作品を、ココで再度レビューしておかなければ、私、絶対後悔する。結論から先に言うと、モンブラン大作戦第八回で初食したのち、極上モンを食べ歩いてきた今現在でさえも、杉野氏のケーキを食べると、唸らずにはいられない。目が点になる。開いた口が塞がらない。そのインパクトは、初食時と殆ど変らないのだ。

杉野作品の全てがそうだとは言わないが、氏は調和した味わいなぞ端から相手にしないって風情でケーキを練り上げられる。一つ一つの部品に徹底的に拘る。「俺はこういう部品が作りたいのだ!!」という意思がビンビン伝わる。それをくみ上げたケーキは、調和とは正反対の、個々の個性がせめぎ合って、ギリギリでバランスしている緊張感を漂わす。だから、それを積極的に楽しもうとしない限り、「イデミって評判は良いけれど、これってどうなのよ?大したことないんじゃない!?」って事になりかねない。そもそも調和を是とする舌には相容れないものだろう。その大胆さ、人と同じことは絶対にしたくない。後人が追ってくれば、追い付けないような別の境地に飛び移って行くストイックさ。孤高のパチシエ。理屈抜きにカッコいい。

【シャタン】\630
マロンクリームを使っているという点で、最も世の中のモンブランに近い位置にいるだろう一個。とにもかくにも、トップに鎮座する白い楕円球体を見よ。これは、杉野流ホイップクリームである。驚くべきことに、この物体は、底部の微々たる部分でケーキ本体に載っかったまま、微動だにしない。変形したり崩れたりしないのだ。もはやこれは固体である。だがら、スプーンを入れて初めて、それがホイップクリームであることを指先が認知する。私は、こんな強靭かつ美しいホイップクリームを、この他に知らない。

驚きはこれで済む筈もなく。次の驚愕は、コーヒーソースとココアパウダーが振り掛かったマロンクリームである。それは、あたかもバラの花弁の如き造形であり、ウネウネはおろか、どのモンブランとも異なる盛り。だが、本当に驚くべきは、ひとさじ口に運んだ時である。こんな食感は他では味わいようがない。マロンクリームとしては予想不可能なテクスチャ。極限までソフトに仕上げたエアインチョコの如き食感と、相当なバターが香る、まるでバタークリームのような味わい。この独創性。そこいらのマロンクリームどもを一瞬にして爆殺してしまうか如きインパクト。

ベースは杉野氏が得意とする、極薄、超硬焼きタルトレット。この無慈悲なほどの硬さは、相変わらず付け入る隙を与えない程ストレートに、私の脳幹を直撃する。フィリングは、何と胡桃クリームを混ぜ込んで、さらにラム酒を効かせたフランジパーヌ。ここに胡桃かよ~。唸りにも似た溜息。絶対にタダでは転ばない、いや、食べ手を飽きさせない意外性。この一個を食べて、私は、「参りました」と杉野氏にひれ伏す。

【ラルム】\630
コイツはムースである。だが、そのトップに頂く極上のマロングラッセは、並み居る強豪モンブランをぶっちぎるインパクト。だけども、一筋縄では行かぬ杉野氏は、絶対に「モンブラン」なんて言う、陳腐な「記号」をコイツに冠したりはしないのだ。このマロングラッセ、まるで有名どころの神戸「ゴンチャロフ」のような美しさ。陽にかざすともはや透明感まで感じられる、深い飴色の一個。その抑えた甘さ、ラム酒の香り、水分が綺麗に抜けた最高に粘る食感は、流石と言わざるを得ない。モン大作戦で出会った、最高のマロングラッセの一つである。

本体は、食感の異なる二種類のマロンムースを、ラム酒風味のパウンド生地を挟んで積層したもの。とにかく、その息をのむ表面質感を画像でご覧頂きたい。これは何なのだ!?まるでムササビの表皮を思わせるような、美しいとかを通り越してしまった生物的な異質感。ビロードのような陰影が冬の陽を受けて黄金色に輝く。また、その勾玉のような複雑な形状ながら、シャープに立ったエッジは石細工のような鉄壁さで、有機的な表面質感との隔絶された距離感が堪らない。

コーヒーソースをその上面に蓄えたかのような、上層のマロンムースは滑らかで軽い食感。マロンの風味を感じさせつつ、舌の上で溶け行く印象だ。ラム酒を浸した薄いパウンド生地を挟んだ下層のマロンムースは、一転、クラッシュマロングラッセが混ぜ込まれ、ザラリとした、ちょっとハードな舌触り。上層よりは、グッと栗を感じるレシピである。この一個、杉野作品の中では、テイクアウトを許された稀有なムースの一つ。確かに実食した限りでは、単なるムースのひ弱さはない。ソフトな食感ながら、その異質で個性的なヴィジュアルで視覚も十二分に愉しませてくれる。

【エベレスト】\740
既報分にもある通り、これをモンブランと言うのはいささか抵抗もある。何故なら、栗に纏わる材料を一切使っていないからだ。だが、その画像をご覧頂きたい。見るからに白山、モンブランである。それでも、パチシエ杉野氏は、モンブランを遥かに超える高みとして、この一個を「エベレスト」と名付けるのだ。この意地。向こうっ気の強さ。

トップに載ったフランボワーズとアーモンドスライスが、杉野作品にしては珍しくメルヘンチック。取っつき易い導入だ。トップの峰を形作るのは、例のカッチリした固体とも言うべきホイップクリーム。まるで押し固められた雪のような微妙なニュアンスである。薄い極上スポンジを挟んで、中間部はフランス産の生チーズムース。その中央部分に相当緩めのフランボワーズのコンフィチュールが仕込まれる。食べ進むと、まさに雪の中に血の如き鮮烈な赤味がトロンと溢れ出してくる様は、艶めかしく、エロティック。う~ん、流石だ。最下段には、再度の極上スポンジが敷かれる。

その、酸味と甘みとチーズのコクがなえ混ぜになった味わいは、この三個の中では最も分かりやすい。シッカリとしたコクを感じながらも、鮮烈さを漂わす爽快感は、チーズさえ苦手でなければ、手放しで、旨い!!と感じるに違いない。馴染み易さという面では、杉野作品の中でも最右翼の一個かも知れない。

【まとめ】
シャタンに見られる超絶レシピ。各素材が自己を徹底的に主張して張り合う。断固として馴れ合いを拒み、危ういバランスの上で均衡を保っているその味わいと食感は、調和を是とする世の中のケーキには、逆立ちしても追い付けない独創的領域。この一個を以って、杉野氏が孤高のパチシエである事に疑いはなかろう。氏はケーキ界における、故立川談志師匠なのである。

2011年3月31日

食べ終えて・・・暫くは、開いた口が塞がらなかった。ため息がでるほど、とは、この事だ。

ちょうど24時間前・・・

水曜日の17:00、恐る恐る店に入ると、ショーケースは空っぽ。何にも無い。欲しいケーキが買えないのではない。何でも良いから食べたい、と言ってみたところで、売るものが一個もないのだ。仕方なく退却する。と同時に、「食べたい!!」。闘志がメラメラ湧いてきた。

翌、木曜日の14:00。「絶対買ってやる!!」少し前のめり気味にズカズカ歩いて店へ。あった!まだ沢山あった!!あまりに生々しいアピアランス。生き物みたいだ。全種類買って帰りたい。だが、あいにく出張中の身、買ったケーキを飛行機に乗せて、遥か山口県までは持って帰れない。そんな、鈍感ケーキじゃないことは、田舎者の私でも、一別してわかる。それほど、瑞々しい佇まい。

仕方ないので、帰りの羽田空港ラウンジで頂こう。ケーキ箱のサイズに合わせてあつらえた、まるでアクセサリーショップのもののような、春色の紙袋にきちっと収まったイデミ・スギノちゃん。私は年甲斐もなく、ワクワク、ワクワク、もう一回ぐらいワクワクした。京急のへたくそ運転手が、ブレーキガクガクさせる電車の中、ちょっとの恥ずかしさと戦いながら、紙袋をそっと両手で支えつつ、私は耐えた。16:00羽田空港第二ターミナルANAラウンジへ無事搬入完了。ふ~。

【エベレスト】\630
モンブランでも、フジヤマ(既報)でもなく、エベレストだ。まあ、「白いお山」="mont blanc"に見えるから、モンブランということでご容赦頂きたい。ここのケーキの何が素晴らしいかって、使っている部材一つ一つに、一切の妥協が無いところだ。お飾り目的の物など一切無い。全てが活きている。存在意義がある。まず、トップのフランボワーズ。この顔をしかめたくなるような、鮮烈な酸味と、ベリーの香り。反発力充分の新鮮なテクスチャー。表層のホイップの繊細なクリームの香りと甘み。このホイップと、その表面に貼り付けられた、極薄スライスのアーモンドの新鮮な香りがなえ混ぜになって、「う~ん」とうなってしまう程にビビッドだ。内側は、これまた繊細かつ輪郭の際立った香りが素晴らしいチーズムース。更に中心部からは、鮮烈な酸味と芳香の真紅のベリーソースが流れ出す。この、真紅のマグマを秘めた雪山が、極薄なるも、ニッチリしたテクスチャーの特上スポンジに載る。酸味と甘みとクリームチーズの旨み。この三つが渾然一体となった時、上質のヨーグルトを想起させる、ラクティックな風味が、怒涛のように口中を満たす。異種味の融合の先にある芳醇感。溶け合う味わい。繊細にして濃厚。極上のクリーミーな舌触り。参りましたm(- -)m

【タルト・オ・キャラメル】\630
これは、モンブラン大作戦としては反則だが、だって美味しいんだもの。特別付録とご理解下さい。こちらは、上の「エベレスト」とは、全く異なるアプローチだ。上部の白子みたいのは、シナモンパウダーが僅かにふられたホイップクリーム。その下が、本体のタルトレットだ。まずタルト台は極薄、板でこさえたドラキュラ伯爵の棺桶のように、パカッと口を開ける。タルト台の淵には、ステンシル技法で撒かれたパウダーシュガー。美し過ぎる。手間のかけ過ぎ。ここに、ナッツやドライフルーツが散らされたカラメルクリームが流し込まれる。このカラメルクリーム、全くと言って良いほど甘くない。タルト台も殆ど甘みはなく、ひたすらペキペキとしていて香ばしい。カラメルの苦味、ドライフルーツの酸味、この両者が、お互い相容れないほど突っ張って、自己主張している。ギンギンに尖ぎった、危ういバランス。一歩間違うと、崩れ去りそうな緊張感。優しいホイップクリームの甘さが、シナモンの芳香を後ろ盾にして、この両者をやさしくオブラートするのだ。敢えて調和を拒むこの味わい、全ての素材が、本来あるべき通りに味わえつつ、一個のケーキとして成り立っている奇跡。余程の研究と、自分のケーキがどうあるべきか、葛藤に葛藤を重ねた人じゃなければ、こんなものは創造できない。先の「エベレスト」と対比する時、ここまで違うベクトルで自分のメニューを組上げる、パティシエ杉野氏の自由奔放さに、再び参りましたm(- -)m

【まとめ】
日本を代表するパティシエの一人、杉野英実氏が創造するケーキは、私の舌には、「異次元の存在」のように感じた。このケーキを、下世話なモンブラン大作戦の場でレビューするなど、おこがましいのは重々承知だが、この、美味しい、とかいうのを通り越して、衝撃すら伴う深い感動を、少しでもお伝えしたかった。巷では、値付けが高い、という声も耳にするが、私に言わせれば、とんでもない。至極妥当な値付けだ。イデミ・スギノ作品と、そこいらのモンブランを比較するのは、まるで、憧れのフェラーリと我がオンボロミニとを並べて、どっちが良い車なの?と訊くようなもの。その事自体に意味がないな・・・と、帰りの機中、街の灯りを見下ろしながら思うのだった。

  • タルトレットオランジュ
  • こう言う大胆レイアウトでやりっ放すセンスに脱帽
  • ちっちゃいクセに思いっきり濃い存在感

もっと見る

2位

アテスウェイ (西荻窪 / ケーキ、スイーツ)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2015/04訪問 2015/04/19

モンブラン大作戦 第六十四回 -パティシエのキャラが乗り移った剛腕モンブラン-【再訪】

久しぶりの再訪。この4年で、名実ともに日本のトップパティスリーの座を不動にしてしまった。どこが一番か?なんて決めること自体は、単なる自己満足であって大した意味はない。だが確かにトップグループだなってのは、今回も良く分かった。一方で、ちょっと残念な事もあったのだが・・・

【2015年4月5日】

雨の日曜日の15時。行列対策と思しき店内レイアウト変更が功を奏してるのか、さほどの待ち時間じゃない。雨にも濡れずに店内で並べるのも幸い。ガラス越しの厨房からは、川村シェフが相変わらずの鋭い目線で客捌きの様子をチェックしている。しかし、もはやイートインができぬようになっていたとは。パティスリーとして大事な要素を見捨ててしまわれたなぁ・・・仕方なく、本当に仕方なくテイクアウトして、帰りの飛行機内で喰う事に。

【タルトシトロン】380円
テイクアウトしてからの時間経過による劣化分を差っ引くならばバカウマ。浅め焼き込みのタルトレットに、レモンクリームのフィリング、強めにブリュレされた生クリと、シンプル過ぎる構成だが、何でこんなに切れ味鋭いか。酸味、甘味の何れもが、ガツン!!とかましてくれる。それでいて爽やかなこと極みなし。流石のア・テ・スェ川村流儀。この出来で、この値段ってのは、もう大バーゲンプライスのブランド品のようなもの。味☆4.5

【プラリネパンプルムース】490円
こっちは恐らくあまり劣化してなさそう。といかく意外性というか、コントラストの渋さが粋だ。グレープフルーツムース、スポンジ、カカオムースの3層が2度リフレインするだけの、あまり凝っちゃあいない構成だが、グレープフルーツの酸苦味にカカオの風味は、相対する味系がクッキリ層をなしつつ混ざり合うコントラストの高さ。味の輪郭が明瞭でメリハリが抜群に効く。味☆4.0

【まとめ】
流石に旨い。相変わらず、外見で惹き付けるタイプじゃないし、ディティールに凝ってる訳でもない。つまり大したイケスイじゃあないのだが、それでも流石だなと思わせるのは味わいの鋭さ故。喰って旨くてなんぼでしょ!?って感じである。とにかく、メリハリの効いたレシピと、切れ味鋭い味わいは、明らかに作り手のキャラが乗り移っている。一方で、イートインが一切できないって事実に、どうしても無条件でベスト評価はできない。箱渡して、代金受け取ってサヨナラ。これじゃ絶対に片手落ちだと思うのだ。

【2011年9月24日】

A tes souhaits・・・和名表記じゃ「アテスウェイ」となってるが、本来のフランス語発音に倣うなら「ア・テ・スェ」だろう。直訳するなら「願いが叶うように~」食べログ上ではかなりの人気店だし、魅惑的なモンブランの画像をみるにつけ、是非とも攻略したかった物件。JR西荻窪駅から結構な距離を歩いて辿り着けば、開店直後の店内には既に大勢のお客さん達。しばし並んで念願のモンブランをやっとゲットできた。ウキウキで店頭のテーブルに陣取って外ケーを始めたのだが・・・何だか雑踏がすんごい。昼時の東京女子大のまん前なので、女子大生が無用に行き来してて、アイツらこっちをキモ見してやがる。う~相当恥ずかしい(- -;)

【モンブラン】
そのアピアランス。栗の鬼皮すら連想させる、少し荒々しくさえもある彫りの深い面立ち。その表面は、シットリ優しげと言うよりは、男性的なドライで硬質な趣だ。その躯体は濃いモカ色で、その存在をキッチリ主張するメレンゲ土台にガッチリと接合しつつ、更に天空に向けて、機微に富んだ絶妙のカーブを描きながら、一気に突き抜ける。その、パンパンに張った面構成、土台と本体の色彩構成は正に栗。イガに収まりきらずに弾け落ちた、パンパンに膨らんだ和栗の趣だ。

マロンクリームは洋栗風味がベースなるも、モカのような風味と微かに洋酒が香る複雑な味わい。その舌触りは滑らかでネットリとした素晴らしいものだ。内側には甘みを抑えながらも、相当濃厚な多量のホイップクリーム。そして下段には、マロングラッセならぬ甘栗が埋まる。噛んだ食感、味わいは全くの甘栗。こんな栗を使ったモンブランも初めてだ。その下には、正に止めを刺すように和栗のペースト。その風味は和栗全開の最上級。

コイツは最後まで手を抜かない。その土台は厚みのある円盤形状のアーモンドメレンゲ。この土台も、艶消しの鈍いアーモンド色を放っており、もうただ者ではない雰囲気。相当にシッカリしたこの土台に、先の本体がガッチリと噛み合う。正にてっぺんからつま先まで、恐ろしいほど隙のない構成。この凄みすら漂わせる佇まいがこの一個の最大の魅力だろう。

実はこの後、もう一度列に並んだ。モンブランおかわり。今度はテイクアウトして西荻窪駅へ至る途中の公園で2個目の外ケー。もちろん、もう1個喰いたいってのもあるのだが、何より陽の光を受けて堂々と輝くこのモンブランをどうしても撮影したくなったから。念願のモンブランととことん付き合う事ができて、実にハッピーな秋の一日。

【まとめ】
このモンブラン、パティシエ川村氏の個性が全開だ。例えば「高級」という尺度だと、高級な味わいで、これより唸るモンブランは確かにある。しかし、この一個の、その男性的な荒々しさをも感じさせるアピアランス、一方で端正に仕上げられたディティールは、魅せるモンブランとして圧倒的な存在感。そして、その意表を付く味わいは、食べ手を驚かす個性に溢れている。「個性」という尺度でオンリーワンでありたい事を主張する、その押し出しの強さには、ちょっと比類できる相手が見つからない。

  • タルトシトロン(2015年4月5日)
  • ブリュレも濃くて渋い(2015年4月5日)
  • プラリネパンプルムース(2015年4月5日)

もっと見る

3位

パティスリー ジャック 大名店 (赤坂、天神、西鉄福岡(天神) / ケーキ、喫茶店)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2011/10訪問 2017/02/10

モンブラン大作戦 第七十一回 -福岡一のケーキ屋さん!?とんでもない!!全国区でも屈指の一店かも-

そりゃあ、福岡で食べロケーキ屋さんトップの座を争う一店だから、ハイレベルなんだろうことは予想していた。んが!!しかし!!これは福岡どうこうと言うレベルではなかった。単なる衝動ではなくて、実に冷静かつ客観的に振り返って、それでも私はココのモンブランに☆5.0を付けたのだ。以下はそのありのままの記述である。

Jacques・・・山口に戻ってHPをチェックすれば、オーナーパティシエの大塚良成氏は、何とフランスケーキ&チョコ協会である、ルレ・デセールの会員。確か日本で五人しかいない、選ばれしパティシエの一人である。当然、後の四人もそうそうたるメンツだ。

・杉野英実氏(店名:イデミ・スギノ)
・寺井則彦氏(店名:エーグルドゥース)
・川口行彦氏(店名:オリジンーヌ・カカオ)
・青木定治氏(店名:サダハル・アオキ)

もう、この陣容を見ただけで、私は予習不足を、いわんや自分の知識の不足を恥じた。フフフ~ンとアタックをかける物知らずのミニミニ。まぁ先入観なしで味わえるのは、それはそれで意味のある事なのではあるが。とにかく、そんな肩書きを知らぬ私は、以下に記すように、「ゲッ!!ナニこれ!!凄いじゃんか~(@。@)」と泡喰ったのであった。

【フラン・ド・マロン】
コレ、夏のモンブランとのこと。夏物ならぬ、夏モンだ。イエ、決してクリアランスセールじゃあありません。びた一文まけてはくれませんからね!!トップには薄層チョコをくるりと巻いた、ストローチョコ棒に、ちょっと貧乏臭い程のマロングラッセのかけら。その下は結構甘めのホイップクリームとカスタードクリームの二枚重ね座布団。ココまでは大して驚かない。座布団二枚ぐらいなら、それなりに真面目に「なぞかけ」すりゃあ、円楽師匠はすぐくれたものだ。ポイントはその下、というかボディー本体。これは何だろう??何と言う生地なのか??薄知識の私には分かりかねるレシピなのだが、マロンクリームババロアのようでもあり、スフレーのようでもあり、はたまたジェノワーズのようでもある。とにかく、非常に個性的な食感と、得も言われぬ洋栗風味。その内側はまたまた濃厚なカスタード。ベースはラム酒をシッカリ吸い込んだ、しっとりビスキュイ。あ~素敵。一個目で既に笑っちゃった私。コイツには☆4.5謹呈したい。

【モンブラン】
衝撃の逸品。秋のモンブランだ。秋モン。正にシーズンインしたばかり。なんとこのモンブラン、カップに絞ったマロンクリームストリングと、本来ベースであるはずのメレンゲが別個に手渡される。お店の人曰く、「メレンゲを手で砕いて、マロンクリームにバラバラかけて食べて下さい」との事。こんなモンブランは初めて!!もう興奮の頂点にいる私。カップにはプチプチ切れたマロンクリームストリングにホイップクリームが添えられる。たったのコレだけ!!究極的シンプルさ!!このストリング、明らかにクリーム比率の少ない、マロンペーストメインの逸品だ。プチプチに切れているのはそのためだ。口に含むと、独特のザラッとした食感と共に、和栗の風味が大炸裂!!最高である。ここで、天邪鬼の私は考えた。メレンゲ割っちゃあ凡庸だ。このクリームを・・・こうして・・・私はカップに添えられた小さじで、いきなりマロンクリームとホイップクリームを一掬いすると、丸いメレンゲにドベッと塗りつけた。それを恐る恐るかじる。シャクッ!!あぁ・・・何と言う旨さ。メレンゲの食感に絡む和栗の芳香と控えめなクリーム感。こりゃあ、つけ麺ならぬ、つけモンだ。ある意味手抜きに見えかねないし、極めて単純な工夫ではあるのだが、それでも、やった者勝ち。パティシエ殿のせせら笑う顔が脳裏を過ぎる。完全に降伏。いや幸福。参りました。感激。☆5.0で異議なし!!

【マロンロワイヤル】
コイツは一転してクリーム満載。クリーミーさで味あわすタイプの一個。トップには、ホイップクリームを寝床にした、申し訳程度の栗のかけら、味わい自体は悪くない。ポイントは三種類のマロンクリームで構成される、そのクリーミーレシピだろう。外層は、ストリングではないものの、「ユウジ・アジキ」を彷彿とさせる、極めて柔らかく、軽く、口溶けの良い洋栗風味のマロンクリーム。内層は、一転してラム酒の効いた、少し硬めのマロンクリームで外層に対比してグッと濃い目になる、そして三番目のクリーム。核は硬めでねっちりのマロンペースト。洋栗が強烈に香る逸品だ。ベースはラム酒がシットリ馴染んだアーモンドスポンジ。所謂、マロンクリームオンリーで味あわす、「ユウジ・アジキ」、「ロートンヌ秋津」、あるいは「オーボンヴュータン」らのモンブランと同種のもの。但し、ホイップクリームを廃し、味わいと食感の違う、三種類のマロンクリームで組み立てた点は、これらにはない独自性と言える。☆4.0としたい。

まとめ:
もしも、「モンブラン」だけの一点攻撃を受けていたら、ココのお店、イデミ・スギノに次ぐ総合&味☆5.0になっていたかも知れない。アブナイ、アブナイ。幸か不幸か、やっぱり不幸!?にも、三兄弟としたことで、訴求力が分散してしまった!?にしても、この三兄弟を、全く違うアプローチで、完全に個性の異なる味わいに仕立て上げた大塚良成氏は天才か!?かほどのハイレベルモンブランを、福岡の人々だけで独占してイイの??コイツらは、東京でも間違いなくトップクラスのモンブランとして認知されるハズ。いや~幸せな一時でした(ToT)

  • フラン・ド・マロン(夏物)
  • マロングラッセのかけらはお飾りと思うべし
  • 極めて上質なマロンババロア風ボディー

もっと見る

4位

パティスリー プレジール (西太子堂、若林、三軒茶屋 / ケーキ、カフェ)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2011/09訪問 2017/02/10

モンブラン大作戦 第六十三回 -絞りたてモンブランはもはや和の香り・・・コイツは蕎麦モンだ!!-

さて、前報の秋津を後にして、西武池袋線→山手線→東急田園都市線と乗り継いで降り立ったのは、夕暮れ前の三軒茶屋。携帯の乗換案内は、「東急世田谷線に乗れ」と指示している。が、ない。ない。ない~。三茶のエキナカをウロウロ。ヘロヘロ。外に出て、フラフラ。やっと見つけた、まるで市電のような東急世田谷線。おまけに切符なしの現金払い。お前バスか~!!

単行の車両に乗り込み、ふぇ~と座ったと思ったら、もう西太子堂着。ちょいマチ!!たった数百メートルなら、わざわざ乗せるな!!乗換案内!!俺はモンブラン喰い過ぎなんだから、少しは気を使って歩かせろ~。また無理難題を。ミニミニとうとうクレーマーか!?やっぱり、一日ご飯もの食べてないと、人間の脳は攻撃性を増すようだ。「人はモンブランのみにて生くるに非ず」という現実が身に染みる。

さて、結局は西太子堂からブラブラ15分は歩いただろうか、ココ世田谷「プレジール」にようやく辿り着いた。ややっこしいのは、この屋号。かの一大洋菓子コングロマリットであり、傘下にキースマンハッタンやジョトォ等を抱える「プレジィール」とは「ィ」があるかないか。だがフランス語表記は"Plaisir"で同じ。「よろこび」の意。とにかく全くもって紛らわしい屋号だ。ココ「プレジール」は2007年創業だから、恐らくはココの屋号が後で登録されているのか。まぁ、どうでも良いことなんだが・・・

【モンブラン】
この一個の最大のポイントは、何と言ってもオーダーを受けてからマロンクリームを絞るところだろう。抜かりなく、事前に携帯で一個取り置きをお願いしていた、私用のモンブラン中間体。メレンゲの上にのったホイップが生々しい。コイツに、たまたま偶然だろうが、シェフパティシエの捧(ささげ)殿御自らマロンクリームを華麗に絞って下さった。最後に両掌でフッと触れて、ストリングを馴染ませる。キィ~、心憎い手業!!もう恋しちゃう程カッコいい~。

ところが残念ながら、イートインスペースは満席。だが、コイツはそうそう持ち歩けない。この一個を味わうなら今しかない!!と言う訳で、お店から5分ほど歩いた、住宅街の小さな公園ベンチで、日暮寸前のソトモンだ。

絞りたてのマロンクリームストリングは、もはや蕎麦の趣。口に含めば、もうビッシバシの和栗風味。マロンペーストの比率が明らかに高いのだろう、脂っ気の非常に少ない、「和」すら感じさせるアッサリした味わいだ。だがその食感は滑らかながらネットリ重め。しかも、その瑞々しさと言ったら!!何せ絞って僅か10分足らずなのだ。絞りたての和栗リッチなマロンクリームがかくも旨いとは!!恐らくコイツは絞りたてを食べることが前提のレシピなのだ。もし長時間放置して水分がとんだら・・・このストリングは間違いなくバサバサ、ポロポロのダメダメストリングになっちゃうだろう。

内側は和三本を使ったホイップクリームとのこと。キッチリとホイップされて、切れ味の良い軽めの仕上げも、繊細なマロンクリームにバッチリハーモネートしている。ベースは厚めのメレンゲ。乳白色のきめ細かい極上物だ。アホなコーティングなど一切無し!!そのサクサクとした食感は、やはり一流の証なのだ。構成はこんだけ。そう、これがこのモンブランの全て。マロングラッセさえ無視したウルトラシンプルなレシピ!!その断面画像をとくとご覧頂きたい。新鮮極まりないマロンクリーム、ホイップクリーム、メレンゲ。この僅か三者が織りなすモンブランの味わいは、やはり切れ者だからこそなし得る技だ。コイツを食べながら、思った。こりゃあ握り寿司だ。鮮度が命。本来、生ケーキとはそう言うモノのはずではなかろうか・・・と。

まとめ:
ひとえにフレッシュマロンクリームストリングを味わうことだけに集中した一個。これは私の言うところの、「引き算レシピの美学」を地で行くモンブラン。これ以上そぎ落とす事が出来ないギリギリのレベルまで、要らぬモノををかなぐり捨てて残った姿は・・・これこそモンブラン創生期の姿なのであった。これぞ、原始モンブランのレシピに一番近い一個かも知れない。その潔さに脱帽。

  • 絞って10分のできたてモンブラン
  • そこはかと儚さ漂う地味なルックス
  • この生々しさ、まるでソバモンブラン
  • シンプル極まる断面

もっと見る

5位

スイーツガーデン ユウジアジキ (北山田 / ケーキ、マカロン)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2011/08訪問 2017/02/10

モンブラン大作戦 第四十七回 -溜息のクリーム。品質を極めたモンブランは、これぞ日本人手業の真骨頂-

マイレビュアー殿のパオパオさんがオススメのお店。食べログ評価でも相当な高得点。ただ場所が悪いよ。横浜市都筑区北山田。山口から日本橋に出張してきた田舎者の私には、遥か彼方に思えてしまう。だが、本当に行くのなら、午後の予定が軽い今日は、またとないチャンスなのだ。取り敢えず、お店に電話する私。電話口の女性店員は、丁寧に私に告知した。「モンブランあと四個なので、残念ですが、夕方来られたら売り切れてると思います。ごめんなさい」

だ~が、ここで引き下がらないのが私。ダメ元とは思いつつ、想いを伝えた。山口から出張で来てること、マイレビュアー殿に食べると約束したこと(してないか!?)、仕事中で日本橋にいること、どんなに急いでも16:00過ぎになること・・・結果、ひつこいオヤジの想いは伝わった。「そう言う事なら一個だけ取り置きしておきます」と女性店員。物事の「縁」とはこういうふうに繋がって行くものだ。とうとう、今日、ココのモンブランが食べられるのだ。ありがとう、優しい店員さん。

午後の仕事を速攻で片づけて、出張先の日本橋本社から駆け出す。銀座線→日比谷線→東急東横線→横浜市営地下鉄。一時間足らずで降り立った北山田。念願の「ユウジ・アジキ」の前に、今、私は立っているのだ。汗だく。店内に入るなり、一人の女性店員と目が合った。その目は微笑んでいる。マチガイない。この人だ。そりゃあ、解るよな。予告時間の16:00過ぎに、汗だくサラリーマンが、涼しげなケーキ屋さんに入ってくるなり、ハァハァしてりゃあ・・・

厨房から一個だけ持ってきてくれたモンブランの、レシピを丁寧に説明してくれる親切な店員さん。ありがとう、このお店に来れて、大満足、嬉しいのよ。でもね、オジサン急いでるのよ。マジで急がなきゃ飛行機に遅れるのよ~。「わざわざ山口からありがとうございました」と見送られながら、さっき来たばかりなのだが、早々に店を駆け出す。横浜市営地下鉄→東急東横線→横須賀線→京急。今度は一時間ちょっとかかって、羽田空港第二ビルANAラウンジにブツを無事搬入完了。いよいよ実食だ。

【モンブラン】
そのアピアランスは、小さいながらも、ちょっとどこかしら幽玄だ。真っ白のパウダーシュガーが降り積もったマロンクリームストリングは、ANAラウンジの薄明かりに照らし出されて、何だか墨絵の風情。見るからに口溶けの良さそうな、軽い食感が想像できる。その味わいは・・・口に含んで唸ってしまった。何と言う滑らかさ。それでいて、単に柔らかいとか水っぽいなどとは無縁の、キッチリしたクリーミーさ。口の中であっという間に溶け去ってしまうような軽い食感。そのマロンの芳香は思ったほど強くなく控えめだ。その下のホイップクリーム。殆ど全く甘くない。また、相当に丁寧にホイップされていて、ホイップクリームとは本来こんな食感なのか!?と思わされるほど、クリームが立ちまくっている。そのホイップクリームの中、核の部分に、鮮烈なマロン芳香を湛えるマロンペーストが鎮座する。そのネットリした食感と洋栗の得も言われぬ風味が、先のホイップクリームを挟んで、外皮の控えめなマロン風味と対峙する。ベースは、恐らく吸湿を嫌ったのだろう、表面が軽くキャラメリゼされた様な薄目のメレンゲだ。

この一個。実はあんまり好きではないフワフワ系なのだが、もはやそんな事はどっかにすっ飛んでしまう程、もの凄い完成度だ。スポンジなどの硬い芯は一切ない、メレンゲベースの上は、全てクリーム。なのに全くブワブワしていない。しっかり、すっくと立っているのだ。この一個に対して、もはや「フワフワモンブランはNG」とは私は言えない。綿の様に、宙を舞う軽やかさ、クリーミーでコクのある味わい。食べながら笑みが止まらないとはこの事だ。参りました。

このお店、決して派手なアピールはない。ホントに街のケーキ屋さんに徹している。箱だって、人気の割にはそっけないほどの、ただのピンクの無地箱で、味気ない消費期限シールでペタンと封止してあるだけ。どう見ても質素あるいは簡素。これが「外装などに凝るより、味わいで勝負だ」という、安食氏の意志の表れだとするなら、私は大いに賛成したい。

まとめ:
マロンクリームとホイップのみと言う、究極にシンプルなレシピは引き算の美学。個々のパーツの徹底した仕上がりがもたらす完成度は、これまで食べたどのモンブランにも勝っていると言って良い。一つの基準を手本にして、これを究極まで仕上げるのが得意な、日本人手業の凄さを垣間見た思いだ。この完成度には脱帽する。素直にとびきり美味しい。一つ申し上げるとすれば、その味わいは予想の枠からは出得ないもの。つまり、巷にあふれる定番モンブランの頂点であろうことに疑いはないが、未だ経験しなかった味わいに身悶える、あるいは熱情を感じる、と言う様な類の一個ではない。

  • モンブラン1
  • モンブラン2
  • モンブラン(拡大)

もっと見る

6位

カオリ ヒロネ (目白、椎名町、下落合 / ケーキ、チョコレート)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 3.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2011/10訪問 2017/02/10

モンブラン大作戦 第七十四回 -ちょっと番外編!?素敵なパティシエ親子の虜になったミニミニ-

このお店、たまたま見つけた。そして拉致られた。もとい、魅せられた。後で食べログチェックしたら、何とBEST5000レストラン。おみそれ致しましたm(- -)m

長いプロローグ:
とある九月の夕方、某目白の大御所ケーキ屋さんを探し歩いていたその時、視野の片隅に何か映った。小さなショーケース。いや、正確にはそんな気がしただけなのだ。

確認しようと、数歩後退りしてドアを覗き込もうとする私。ヤバッ!!と思った瞬間、中のお姉さんと目があった。すかさずドアが開いて、「いらっしゃいませ、どうぞ~」。私「いえ…あの…え~」。「見るだけでもどうぞ~」。この瞬間、天性の右脳型直感オヤジのミニミニは何かを感じた。そして誘われるままに、吸い込まれるように店に入った。これが、ヒロネ親子との出会いであった。

店に入ると、そこは間口数メートル程の小さなお店。だが、ショーケースと言い、インテリアと言い、独特の雰囲気で、ちょっと魅せられてしまう。さて、どうしたもんかな・・・突っ立っていると、奥から出てこられた年配の女性。先ほどのお姉さんが、シェフパティシエのカオリ殿、この女性はお母様。その他には少数のお手伝いさんで切り盛りしている、中々にアットホームなお店だ。目白のこんな一等地で!!

ミニミニ「私、モンブランの食べ歩きしてるんです。なので悪いんですがモンブランしか食べれません・・・」
(あ~コイツ、バカ正直に何を言うか!!)

母親殿「あら~、残念~。ようやく今年の栗が入ってきたので、これから渋皮煮作るところなんですよ~」
(あ~この一言がスタートの号砲。「ド~ン!!」)

ここから、延々一時間余、ヒロネ親子と私は、ただただケーキ談義に花を咲かせた。モンブランが無い以上、他のケーキに目もくれない頑ななミニミニ。結局、試作中のマロングラッセを味見させて頂いた挙句に、再訪を約束して手ぶらで店を出たのだった。我ながらあきれ返る頑固さ。だけどもモンブラニストの意思は固い・・・

ここからようやく本章:
あれから、一ヶ月。東京出張の折に電話した。カオリ殿「はい~、出来てますよ!!」。ヤタッ!!とうとうあの親子が創り出すケーキが食べられるのだ。早速、取り置きをお願いし、いそいそと目白に向かった。

まず、最初にお断りをせねばなるまい。ココのお店、パティシエ殿ご自身からして、脂っこいクリームづくしは苦手らしい(@。@)・・・何と言うケーキ屋さん!!従って、ここのケーキはクリームが軽め&少なめである。看板商品の一つであるショートケーキ、実はココではちょっと書けない、有名人と言うか、日本人なら誰でも知っている、苗字のないあの方もお召し上がりになるという一品らしい。

旬の果実や木の実を、軽いクリームと上質なスポンジからなる小さな円筒形ショートケーキにトッピング、これがフォーマットだ。従って、これをモンブランと呼んで良いのかどうか、大いに疑問は残るのだが、旬の和栗を、手間隙掛けて仕上げられた根性を買って、モンブラン大作戦としてレビューさせて頂くので、読者の皆様にもご理解下さい。

【ご褒美マロンショートケーキ】\880
恐らく、コレまで食べてきたケーキの中でも、最も重量単価が高い一品。この姿と値段を見たら。「何じゃコレ~」と思うか、「こりゃあ相当な自信作かも・・・」、と思うかのどちらかだろう。トップに載るのは、もうトッピングとはとても言えない程の巨体。石川県能登産和栗の渋皮煮だ。表面の乾燥を嫌って、薄くチョコレートがけされたその堂々たる躯体は怪しげに黒光りしている。金沢の金箔が僅かに振りかけられるその姿は、ちょっと神々しい程だ。チョコレートによる、この甘めの渋皮煮は、栗の風味もさることながら、その迫力ある食感が印象的である。多分、コストの大半は、このチョコがけ渋皮煮に費やされているだろう。本体と言うか、ベースと言うべきか、渋皮煮に対して、ちょっと驚くほどの小振りなショートケーキは、前述した軽めのホイップクリームと、これまたアッサリした上質なスポンジで構成され、内部には先の渋皮煮がクラッシュされて混ぜ込まれたホイップクリームが鎮座する。この一個、迫力のチョコ渋皮煮そのものを味わう清楚なショートケーキ。もはや、巷にあふれるモンブランとは並べ難し、の個性的な一個。☆4.0

【手作りマロンショートケーキ】\680
コイツも言ってしまえばショートケーキ。だが、トップに盛られる、オリエンタルな形状の一物は、能登栗のペーストである。このペースト、ヘラで粗潰しした栗そのもの、全くの無添加。その最高の香りと、ブツブツ・ザラリとした食感は、これまで食したマロンペーストとしては、間違いなく最高の逸品。何せ和栗そのものなのだ。「そんなの能が無い」と言う無かれ。これこそコロンブスの玉子。やったモン勝ちだ。この栗ペーストの周りには、ポツポツとチョコ玉が置かれる。ここら辺りの手作りチックな雰囲気が微笑ましさを誘う。本体は、先の一個と同様で、甘さ控えめホイップクリーが、スポンジに薄めに塗られる。スポンジの間には、これまた能登栗ペースト。だがセンター部分にのみ洋栗ペーストが僅かに仕込まれる。ココのところでの風味の切り返しはお見事。和栗の中に、確かに一瞬、洋栗が香る。この洋栗は、言わば和栗の引き立て役で、一層和栗らしさが強調されることになった。シンプル、清楚、繊細でありながら、キッチリと見せ場を仕込んだこの一個、まごう事なき、栗を満喫できる極上ショートケーキであった。☆4.5

まとめ:
この目白の一等地にあって、しかも近所には行列のできる某超有名店。なのにヒロネ親子は一切お構いなし。本当に自分達がやりたいことを、飄々と微笑みながらやっている。このプロ臭さの殆ど漂わない、ある意味、限りなく手作りケーキに近い逸品達は、やはり東京目白で出会うには、あまりにも特異な存在。この清々しい感覚は、ちょっと他ではお目にかかれないんだよなぁ。

短いエピローグ:
結局、二回目の訪問はケーキ二個と紅茶一杯で二時間半。殆どはヒロネ親子とのケーキ談義だった訳で、いや~幸せな時間だった。お邪魔しちゃったお詫びと、お礼を申し上げた後、ほっこり満足感に包まれて歩み出た目白通りは、もうドップリ日が暮れていた。私、この親子のファンになりました・・・

  • ご褒美マロンショートケーキ
  • 本当にデカイ能登栗の渋皮煮
  • シンプルで軽めのショートケーキ

もっと見る

7位

パティシエ イナムラ ショウゾウ (鶯谷、日暮里、根津 / ケーキ)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2011/10訪問 2017/02/10

モンブラン大作戦 第六十七回 -みっちり詰まった饅頭モンブランは凄くオイチイ-

読者の皆様へ

日頃より、私のダラダラレビューにお目を掛けて下さり誠にありがとうございます。皆様が下さるコメントを通じて、コミュニケーションできるのは大きな喜びです。さて、一通過点である、レビュー通算200件目にあたり、初心に戻り、本来の味わいについてシンプルにレビューしてみます。どうか、これからも宜しくお願い申し上げます。

ミニミニ大作戦


PATISSIER INAMURA SHOZO・・・日本人名を屋号にする場合、姓名を欧米風に入れ替えるのが常なのだが、稲村省三氏は敢えてそうしなかった。あくまで日本人である事を主張するように。このスピリットは、この独特なモンブランの個性に体現されていると思いたい。ちなみに、氏はこの店のオーナーシェフ。私が一目を置く、独立系パティシエ。しかも日本を代表する一人であることに疑いは無い。

【上野の山のモンブラン】
この名前、凄くイイ。カッコつけず素朴で、かつ立地に因んでて。まるで極太きしめんの如きデザインのマロンクリーム。少し風味に乏しいかな、という気がしない訳でもないが、優しく落ち着きある洋栗風味だ。一方、その食感はネットリと硬めで、あたかも皮のような存在感。このマロンクリームリボンが、まるでアイスクリームのようにカチッとした、僅かに黄色を帯びたドーム型のホイップクリームにベッタリと巻きついている。この辺の仕上げはちょっと個性的。流石に一流の技だと感心する。そのホイップドームの内側には、ババロア並のコシをもつカスタードクリーム。このコシが全体のカッチリ感に効いているのだ。コアはごく普通のスポンジ、ベースもこれまたスポンジ。ちょっと驚きのこのレシピ、マロングラッセは使わず、スポンジとクリームだけで構成されている。普通なら、ブワブワのだらしない一個になるはずなのだが、これが全然違う。カッチリとしながらも、ミルキーで優しい味わいは白眉だ。敢えて難を言えば、少し脂っぽさを感じるところか。

まとめ:
コイツは内容がとても濃い。まるで、京菓匠「鶴屋吉信」の薯蕷饅頭を起想させる、みっちり詰まった濃密感は他では味わえない個性。加えて、その人間臭さ、優しさ、素朴さ、それと一流のクールさが同居した、全く嫌味の無いキャラ。こう言う機微に富んだ一個には、そうそうお目にかかれない。円やかモンブランとしては最右翼。ミニミニお勧めのハイエンドモンブランの一つだ。

  • 上野の山のモンブラン
  • 独特のマロンクリームリボン
  • まるでアイスのような球体ホイップ
  • 上野の山モン断面

もっと見る

8位

アンジェリーナ 日本橋三越店 (三越前、日本橋、新日本橋 / ケーキ)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2011/09訪問 2017/02/10

モンブラン大作戦 第六十一回 -モンブランのアイコン的存在。その想像を絶する甘さと量に悶絶せよ!!-

ANGELINA Paris・・・勿論のこと、アンジェリーナの総本山。その起源は実に1870年、現在の本店サロンは、1903年にパリ・リヴォリ通りに開業した。言わば、フランスの老舗中の老舗カフェ。この生きた化石カフェの名物が「アンジェリーナモンブラン」なのだ。そう考えると、オーストリアはホテルザッハーの「ザッハートルテ」に比類し得る、歴史に裏打ちされたモンブランということになる。「モンブラン大作戦」の終局目標、モンブランというケーキの起源を辿る上で、必ずマイルストーンになるはずの一個である。私はこう言うのにめっぽう弱い。なので、独断的☆4.5の総合評点については大目に見て頂きたいm(- -)m

話は少しばかり逸れる。崇拝対象としての偶像=イコンが転じて、シンボライズされた物や事柄=アイコン。アイコン化されたものに、ほぼ無条件で敬意を払う私は、従って、バイクならハーレーだし、死ぬまでLevi's501を履くだろう。ある意味、考えることを放棄して、アイコンなモノを受け入れる単純脳細胞の私。そんな身の上なので、この「アンジェリーナモンブラン」が気にならない訳がない。

さて、話を戻して、いよいよ実食へ・・・

【モンブランオリジナル】
デカい。ホンマにデカくて重い。これがパリサイズ。パリ本店で提供されるのと、同一レシピ&サイズである。後述するように、ボリュームと甘さが余りに強烈なので、日本仕様として「モンブランデミ」も併売される。この日本仕様には、色んな味がラインナップされており、如何にも細やかに見える??工夫が上塗りされた日本専用レシピらしい。だが、今回は無視。あくまでアイコン男のミニミニは本国仕様で勝負したいのだ。

そのアピアランスは、既に逝っちゃってる。マロンクリームストリングは、ニュルニュルと盛られた後、明らかに表面にプレスがかかって、押し固められている。その多量のパウダーシュガーが、麺の打ち粉のように機能し、柔らかいはずのストリングは、切れたり、乱れたりすることなく、ギュッとつぶれ気味だ。何だか、モンブランの干物を見ているような気分になってきた。一夜干しモンブラン。

マロンクリームストリングは甘党の私が、「相当に」、と評するくらい甘い。虫歯があったらズキンチョ確定だ。その食感は粘る粘る、相当にコッテリ。但しひつこいわけではない。ある意味ネットリ甘いだけ。従って栗の風味も影が薄い。またその量も凄い。何たってこのサイズに惜しげもなくマロンクリームをタップリ盛っているので、食べるに際し容赦は無用。何だか噛り付きたくなる錯覚に襲われる。これじゃあ今川焼かジャンボおはぎみたいだ。内側はこれまた甘目のホイップクリーム。ふかふかとひたすら軽め。ベースは真っ白メレンゲ。しかも、これまたデカいし甘い。一個食べたら大満足の生きた化石モンブラン。

まとめ:
これはモンブランのアイコンだ。その味わいは、繊細なジャパニーズモンブランとは隔絶した世界のもの。極めてヨーロッパチック。というか、食べながらパリにプレイススリップしたのでは!?と錯覚ちしゃうぐらい、大味なヨーロッパ臭がプンプンする。とにかくこの甘さは今の日本では一般受けはされぬだろう。読者諸氏には、それじゃあ何故、かほどに評価が高いのか??という疑問の声もおありかと思う。確かに味わいは極上ではないのだが、この一個が主張している、いにしえの風情は、私の好奇心を刺激して止まない。現に、今一番再食したいのは、他ならぬこの一個なのである。

  • モンブラン一夜干しの如き
  • 相当甘いです
  • 干からびストリング

もっと見る

9位

くるみの樹 (光 / ケーキ)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2011/09訪問 2017/04/18

モンブラン大作戦 第五十七回 −出た!!久々の山口の特上モンブラン!!コレ、東京勢とタメ張れます−

いくら東京出張が多いとはいえ、基本、週末は山口で過ごす私。当然、山口でもモンブランを食べたくなる訳で、メジャーどころを喰い尽くしてしまった今では、小まめに街を流しながら、どうしても小さな店を拾い廻る事になっちゃう。そういう中に、「キラリ」と光るモンブランを見つけた時の喜びと言ったら!!ココの一個はそんな大当たりモンブラン、タナモンどころじゃないビッグヒット!!

くるみの樹・・・博多の「くるみの木」なるケーキ屋さんで修行されたオーナーが数年前に開かれた一店。従って、ココのモンブランのレシピは博多師匠のと同じらしい。このお店が面白いのは、二軒隣の「コーヒーボーイ」なる、ここら辺りでは結構有名なコーヒー屋さんとのコラボによる、ケーキセットを楽しめるところだ。天気が良ければ、店先のオープンスペースで頂ける。秋晴れの週末、余裕のカフェタイム~

【モンブラン】
まず、この日本離れした個性満点のアピアランスに私の目は釘付け。もう、味わいへの期待感でワクワク。マロンクリームは和栗と洋栗のマロンクリームがミックスされ、更にミルキーな風味がアドオンされた優しい風味が素晴らしい。加えて、その滑らかながらマッタリとした濃厚な舌触り、惜しげも無く盛られる、そのボリューム、もう無条件に旨い。今のところ、山口では図抜けてハイレベルなマロンクリームである。内部も、そのそっけない程にシンプルな外観に負けず劣らずにシンプル。クラッシュマロンの散ったババロアを核とし、その下に薄めのスポンジ、ベースはきっちり甘いアーモンドタルトレット。アーモンドの控えめな風味と、セミソフトでモッチリした食感は、タルトレットとして味わっても、やはり一級クラス。

この一個、普通のジャパニーズモンブランからは相当にかけ離れており、少なくとも山口で食べたどのモンブランよりも唯我独尊、孤高のポジションに立つ。もう、既報「フォション」や「ヴィタメール」と堂々とタメを張れるくらいコスモポリタンな雰囲気が満点だ。その上、味わいのベースには、私の大好きな「ユーハイムバウムクーヘン」に一種通じる、柔らかな優しさがキッチリと感じられ、全体としてマイルドで嫌味が全く無い。この独特の調和感は、先の欧州勢には期待できないもので、ここら辺りに日本らしさを感じるところもニクイ演出なのだ。

まとめ:
この一個に出会ったのはラッキーだ。山口モンブランも捨てたもんじゃない。既報「K.E.KAJIWARA」の典型的ジャパニーズモンブランと、ココのミラクル変化球モンブランがあれば、取り敢えず山口で食べる分には十分。ちょっと文句のつけようが無い仕上がりにには、素直に脱帽したい。お見事!!

おまけ:
あくまでモンブランのレビューなのだが、コーヒーの事を少し。この日は、コーヒー店の方のお勧めで「グァテマラ」を頂いた。食べるケーキにあわせて選ばれたそうだ。甘めのモンブランだから酸味系のグァテマラとの事。これ程の気遣いと特級モンブランでお代はたったの680円!!ハッキリ言って安すぎる。相当に上質なカフェタイム。も~ハッピーの極み(ToT)

  • 斬新意匠のモンブラン
  • ホントに雪山に見える・・・
  • キッチリ手抜きなしシェイプ

もっと見る

10位

フォション・サロン・ド・テ 日本橋高島屋店 (日本橋、三越前、東京 / カフェ、ケーキ、喫茶店)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 3.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2011/07訪問 2017/02/10

モンブラン大作戦 第四十三回 -並みのモンブランを相手にしない流石のパリレシピ-

FAUCHON・・・1886年創業。パリ・マドレーヌ広場に総本山のブティックを構える、世界有数の、何と言うか、まぁデリカテッセンのようなもの。日本では紅茶が有名だが、その実、パリではワイン、ジャム、スイーツ、果ては仕出し弁当まで手がける、正にフレンチグルメの権化。こんなFAUCHONなのではあるが、、まさかモンブランを作っていようとは、高島屋日本橋店地下1階のブティックを覗いて見るまでは予想だにしなかった。まさに足で稼いだ幸運。どうしても今すぐ食べたい。すかさず7階のサロンに駆け上がる私。

【モンブラン】
お店の人に確認した。間違いなく、レシピはパリ考案、制作は国内。その、モンブランと言うにはあまりにかけ離れた、典型的唯我独尊、フランスチックなアピアランスは、決して美しくもないし食欲をそそるものではない。と言うよりも、未経験のそのアピアランスが、経験値としての、私の脳内ライブラリの、どの味わいとも結びつかないのだ。アールグレイのアイスティーと一緒にオーダー。ちょっとした緊張感を伴う不思議な期待感で待つ事になった。

そのアピアランス。クラッシュマロングラッセがトップに散在して表情に変化をもたらしてはいるものの、ほぼ完全にツルンツルンの禿げ頭。その無表情なアピアランスは、並みのモンブランでいる事を完全に拒否している。この綺麗にコーティングされた表皮、普通のマロンクリームと思いきやさにあらず、実は固めのキャラメルクリームであった。その下には、マロン風味がほとばしる、極めて全うなマロンクリームとブルーベリーのコンポートのコンビネーション。マロンの風味とブルーベリーの酸味の対比が新鮮。というか何処かで味わった記憶が・・・「イデミ・スギノ」の「エベレスト」だ。芯は水分を吸って、程よくしっとり気味になったデカメレンゲ。ベースはこれまた程よくしっとり気味の、シッカリ甘くて香ばしいハードビスケットで、キッチリ完結される。

この感じ・・・ちょっと見る人の首を傾げさせるアピアランス、食べてみると個性的でありつつ、破綻がない味わい。完成度と言う、おざなりな表現でなく、ちょっと一言で言い表せない、独特の押しの強さとアク。何だか、シトローエンの古いセダンのような趣。フランス人ってこう言う表現が好きなんだろうな~。モンブランとクルマ、似て非なるモノに共通項を感じてしまう私は、やはり変人!?

まとめ:
キャラメルとマロンとブルーベリーの酸味が奏でるハーモニーは濃厚、味わった事無い風味、メレンゲとビスケットが全体に筋を通していてフワフワとは無縁のシッカリした食感。流石のパリレシピに思わず脱帽。一緒に味わう紅茶のクオリティーは言うに及ばずの最高クラスだ。

  • モンブラン1
  • モンブラン2
  • モンブラン(拡大)

もっと見る

ページの先頭へ