『シリーズ「だからワタシは嫌われる」 スキキライは喰ってから言え! 』シヌモノビンボーさんの日記

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こどもじゃあるまいし

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昔、某国皇太子が世界漫遊をし、その時の体験につきインタビューを受けたそうな。

曰く、「イカの刺身は、ゴム管の細切りを噛んでいるようだ」と評し、タコについては「考え
たくもない」と、ハナから箸をつけなかった、とか。

その記事を読んだ毒島少年(当時 は、いくつかの示唆を受けた。

・ひとつは、ひとの好みと言うのは千差万別、なかでも生活習慣により大きく左右される

・ひとつは、こちらの民族が好んで喰うものを、喰ったならまだしも、喰わずに罵倒するの
 はオトナげない態度であるし、人間のハバみたいなものが狭く見え、カッチョワリー

・どうやら凹凸人というのは、舌を味覚の把握に使う事に抵抗があるらしい

・・・ま、みっつめは甚だ偏見であり且つ、冗談である。

が、いずれにせよ、「たかが」喰ったり呑んだりする事に対する態度で、軽蔑を受けるのも
業腹である。

目の前に出されたものは、四の五の言わずに口にし、その上でじぶんじしんの嗜好に合う
、合わないを言おうと、決心した。

爾来、四半世紀余。決心したのはよかったのだが、まさかじぶんが東南アジア、中国本土
、朝鮮半島、西欧諸国・・・と、さまざまな土地を訪れる「旅商人」になるとは思っていなかっ
たのが運のつき。

本邦で通常の食生活を送っていればまず口にしないものが、かの地ではごくアタリマエの
食材であったり、或いは/及び、一種珍奇なご馳走であったり、

「せっかくお客様が来たから」

と振舞われる、特別料理だったりする事が重なる。

正直、ココロのなかではぞっとしない。

出来れば口に入れたくない。

しかし、少年時代の思い込みというのは簡単に違えるモンじゃないし、今思い直しても、それ
ほど非合理な考え方とも思えない。

だから、喰う。

思いつくままに列挙するだけでも、犬、猫、ハクビシン、ヘビ、ワニ、駝鳥、カエル、ゲンゴロ
ー、さそり、禾花雀、海豚、熊、驢馬、駱駝のコブ、水牛のコブ、羊や山羊の脳や歯ぐき、蝶
鮫、兎、カンガルー、ワラビー、エミュ、ナマの川魚の卵、雷魚、タニシ、蝉、カブトガニ、家鴨
の頭蓋骨の内外と舌、各種昆虫の幼虫やさなぎ

・・・その他、本邦で見かけない川魚をさまざまな調理で喰うことは無数。 なかには

「こりゃ、なんの肉だい? 」

と聞いても、ホスト側がニヤニヤしてて不明、なんつーのも、多々あった。

喰ってみると、旨かったり、わざわざ喰わんでもいいな、と、思ったり、

「やっぱり喰わなきゃよかった」

と思わずにいられないようなものまで、さまざま。

中には、旨いけど、翌日「胃腸で冒険の代償を支払う」ような過酷な衛生状況のものも少なく
なく、ま、よくも死なずにすんでるな、と、正直思わないでもない。

いや実際、本当に! 

しかし、好きでも嫌いでも一度、口に入れておけば、現地ホストに恥をかかせることもないし
、二度目からは、これはチョッと、口に合いませんので

・・・と、いう事が出来る。

これが東西数カ国にわたっての商いをしている自分にとっては必要な作法であろうし、さき
様の生活習慣、しゃっちょこばって言えば文化をソンチョーする事なんじゃないか、と思って
いる。

ところで当、「食べログ」のレビューを拝見していると、主に「食わず嫌い」で「無理! 」と評し
、或いは異なる地域での食生活に対する彼我の違い、例えば、半島由来の鍋「補身湯」につ
き、ごじしんの動物愛護の精神(というか偏見)から「許せない! 」と、店そのものの存在自
体を否定するようなご意見を見かけることがある。

ま、それぞれのご意見であるから、その事じたいに立ち入ることは遠慮申し上げる。

が、そのご主張を、飲食店批評サイトで、

「じぶんの食べたくないものを品書きに載せるなんて赦せない、キーっ! 」

とやるのは、正直、如何なものかな? と思わないでも、ない。

せめて

「これは当方の主義、美意識、生活習慣に合致しないので、敢えて言及を避ける」

くらいに言って(書いて)いただければ、読んでいるほうもなんだかモヤモヤした気分になら
ず、救われる。

以前、どこかで書いたかもしれないが、落語の立川談志師匠に、食事に連れて行ってもら
ったヤマダシの弟子が、見たこともない一品を出され思わず、

「コレ、なんですか? 」

と聞いたら、談志師匠すかさず

「喰いモンに決まってるだろ! 黙って喰え! 」

と恫喝したそうな。

考えてみれば、弟子の事をよく知っている師匠が、喰えないものを出す店に連れて行くわけ
がないし、料理屋だって商売なんだから、口にしたら身体に悪くなるようなモン、出すわけが
ない。

まず喰って、味わって、その上で疑問があれば聞けばいいし、口に合わなければ、今後口に
しないか、店自体に行かないか、或いはじぶんの舌自体を「矯正」していくかを決めればいい


そんなモンじゃ、なかろうか?









尚、この文章、各種アレルギーとか、言うところの味覚過敏だとかについての事は除外して考
えて欲しい。
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