ドイツの展示会では、ゆえあって調理のデモンストレーションなども行う。
つくるものは様々。だが、専門の日本料理などをやると、やれ食材が違う、調味料が集まらない、そもそもドイツ人は魚を生食にないと煩く、且つ、小社商品じたいの宣伝にもなりにくい。
そこで無難にオムレツを焼いたり、野菜を炒めてみたり、チキンをソテーしてみたりする訳であるが、これでは逆に、他の競合相手の売りものと差別がつきにくい。
そこでやはり、チョッとだけ凝ったものをつくる。
今回持参、展示したものは、ことさらに中華料理との親和性が高かった。
しかし、である。
和食以上に欧州において「外では喰うけど、家で作ることなど思いもつかない」のがこのチューカという奴。
上漿(したあじ)に浸け、滑油(油通し)を施し、対汁(合わせ調味料)と共に炒める、などという真似をしたが最後、
「あー、面倒くさい。ンなもん、いらねーよ」
となるだけ。
加えて、豆板醤や甜麺醤などの発酵調味料、八角、陳皮を代表とする東洋由来の香辛料など使おうものなら
、「いったいどこで手に入れるのよ、フザケんじゃないよ! 」
とお叱りを受けるし、まして麺筋(麩のなかま)、百絲(湯葉ないし浸み豆腐の仲間)、豆腐、はるさめなどの副菜だって、町中のスーパー、デパートに売っているハズがない。
と、いう訳で、当方、ないアタマを絞って「街中で手に入る材料や香辛料」ででっち上げていった。
作り方は極めてシムプル。
11.お菜の油通しは野菜類の湯通しで代用
22.豆板醤はニンニクと鷹の爪を用いたいわゆるアーリー・オーリオ・ペペロンチーノの手法を用いたところにパッサータ・ルスティカをぶち込んで煮詰め、発酵の風味は壜詰のアンチョビーで代用。
33.甜麺醤の甘味が欲しい時はここにメープルシロップを添加
44.八角や五香粉の風味は、欧州の方々にとってはある種「癖が強すぎ」るので粉砕したクローブで対応。
55.調理酒には香りの線が細い、どこにでもあるような€5しない安ワインを活用
66.醤油の味と風味だけはカンニングで本邦「亀印」が比較的入手可能だから使用
77.千絲、豆腐、春雨などについては当該地に溢れている「ジャガイモ」を縦横厚薄無尽に切り刻み、それっぽく演出。
88.長ネギはリーキ(ポロネギ)の白い部分だけをみじん切りにして、しいたけはマッシュルームの薄切りを代用
...ここに刻み生姜と塩、胡椒、たまに味精代わりに精製糖なんぞを入れて、コーンスターチでとろみをつけてしまえばなんとなくそれっぽくなるもので、作りあげたお菜の数々の一部が上記。
欧州人どころか、二三世の代替わりで、多少舌の記憶の妖しくなっている欧州華僑、華人にも思いのほか好評で、大いに面目を施した。
...のは、いーんであるが、ウチの商品ではなく、お菜のレシピについての質問ばかりが来たのは、はたして良かったのか、悪かったのか。
ヤレヤレ。