4回
2020/03 訪問
天ぷらの神様の春はタラの芽に白魚。
季節の変わり目に定期的に伺っている門前仲町の「みかわ是山居」。言わずと知れた天ぷらの神様、早乙女さんのお店です。春の天ぷらはまだ食べてなかったので、年末に予約した時から楽しみにしていました。
この日は揚げ場のすぐ目の前。なかなかいい席に案内してくれました。まずはお疲れビールに「瓶ビール」を頂きつつ、この日もおまかせコースを。春のコースは次の通り。
先付3品、車海老、きす、煽りいか、海老新杖椀、うに大葉巻、タラの芽、白魚、めごち、穴子、野菜2種(アスパラガスと椎茸)、天茶、デザート(ゴールデンオレンジ)です。春の食材はタラの芽と白魚ですね。
毎度毎度驚かされるのは車海老。中がほぼ生かのような絶妙な揚げ具合。そして煽りいかの柔らかさ。ここでいかの天ぷらを食べるともう他の店では食べられない程の感動がいつも味わえます。
そして春の食材。まずはタラの芽。程よい苦味が春の訪れを感じさせてくれます。山菜の天ぷらの中でも一番好きかもしれません。この苦味は昔は好きじゃなかったと思うんですけど、こうして楽しめるようになったのは大人の証ですかね。大人になって随分経ちますけど…
そして白魚。沢山の白魚をババっと目の前に盛ってくれます。これ、大人のスナックって言うんですかね。小さいのに身がしっかりと詰まっていて旨みがあるのと、そこに塩をちょいっと付けて食べると、もう箸が止まりません。あまりにパクパク食べていたからか、ちょっとおまけに5尾ぐらい追加で載せてくれました(笑)
この日は穴子もぷりっぷりの身がいつも以上で素晴らしい感。目の前でカットしてくれて、サクッという音とふわっと上がる湯気。これは動画でしか楽しめないと思いますが、店中のお客さんの視線が集まる瞬間です。
野菜は春ということでアスパラガスを。なかなか見ない太いアスパラは甘みが際立っていて、塩を少し付けて、甘みと塩気の対比を楽しむことができますよ。毎度オーダーする椎茸はこの日も肉厚。ジューシー以外の言葉が浮かばない語彙力のなさを悔やんでしまう、それでいてその言葉を受け止めてくれる椎茸の包容力にも感じ入ってしまいます。
天茶と天丼から選べる〆は天茶に。程よくさっぱりと味わえ、出汁の旨みが体に染み渡るので、やっぱり天茶です。天丼だと〆にはちょっと重いんですよねぇ。
デザートはいきつも花豆でしたが、この日はゴールデンオレンジ。薄皮ごとそのまましゃぶりつきます。この酸味と甘みが〆には合いますね。お腹も心もいっぱいになりました。
ところで、コロナのご時世ということもあり、最近は海外からのお客さんのキャンセルが増えているそう。この日のカウンター席も日本人だけ。こんな光景見たことなかったなぁ。
2020/05/09 更新
2019/09 訪問
天ぷらの神様の秋コースは、もちろん松茸!
天ぷらの神様の味を季節ごとに食べたくて、レビューは止まっていましたが3ヶ月ごとぐらいのペースで通っている門前仲町の「みかわ是山居」。この日はまだ頂いていなかった秋の食材。もちろん秋といったら松茸です。9月になれば松茸がコースに出てくるということを確認して伺ってきました。
この日も19時過ぎにお店に到着。もちろん1Fのカウンター席を予約しておきました。嬉しいことに、今回はカウンターの一番奥の席。つまり、店主の早乙女さんが天ぷらを揚げる目の前の席です。ありがたや、ありがたや。
料理はもちろんおまかせ(¥19,440)のみ。初秋の流れは、先付3品・車海老・きす・煽りいか・海老新杖椀・うに大葉巻・新銀杏・松茸・めごち・穴子・野菜(しいたけ・茄子・アスパラ・獅子唐から2種)・天茶(or天丼)・香の物・デザートです。
瓶ビールを頂きつつ、厨房の奥に見える松茸の大きさに目を奪われますが、まずは定番の車海老から。何度頂いても驚く、表面だけカリッと揚がっていながらも中のほぼ生に近い状態、このコントラスト。
そして煽りいか。初めて食べた時にその柔らかさに感動して、思わず隠し包丁の成せる業、と思ったんですが、聞いてみるとそうではないらしく。烏賊の繊維の流れなどをみて計算し尽くすことで生まれる柔らかさなんだとか。見事としか言いようがないですねぇ。
秋の食材は新銀杏と松茸。まずは新銀杏から。噛むとグッと跳ね返ってくるかのような身の詰まった弾力。そして甘みすら感じさせてくれるような濃い味わい。銀杏で驚くことって多分これまでで初めてかも知れません。
そして待ってましたの松茸。最初から目を奪われていましたが、もうサイズが大きい!揚げているところから鼻に届いてくる香り。食べてみると、傘の部分のコリッとした食感、こちら側から食べてください、と言われるのが分かりますねぇ。柄の部分も噛めば噛むほど溢れ出てくる旨み。季節的にはちょっと早い気もしますが、収穫の秋の旨みを堪能できます。
穴子も相変わらずの美味しさ。何度伺っても、目の前でカットしてくれる時の音には周りのお客さんも含めて、思わずわっと声が上がります。薄くカットしているのに揚げるとふんわりとするのも不思議ですね。それでいて見事なまでの身の柔らかさ。何度でもリピートしたくなる味です。
最近の〆は天丼より天茶。優しい味わいの出汁とちょこんと載った山葵と共に食べるかき揚げは絶品で、〆にもピッタリ。次への期待感を醸成してくれます。天丼も美味しいんですけど、個人的には〆にはちょっと重い感もあるんですよね。
そんなこんなで初秋のコースも大満足でご馳走さま。次は白子(菊子)の旨い冬かなぁ、なんて話をしていたら、予約していきます?と聞いてくれたので、そのまま次の予約を(笑)またまた次の楽しみができました。
2019/09/22 更新
2018/08 訪問
天ぷらの神様に会いたくて...夏
天ぷらの神様とも称される早乙女哲哉さん。そんな孤高の天ぷらを一度食べてみたくて、「みかわ是山居」のカウンター席を予約して伺ってきました。予約は3ヶ月前で最短でした。
門前仲町からもまぁまぁの距離。まさに住宅街にポツンと現れる店といったところです。
夜の部は17時からと19時半から。19時半ちょうどに店に入ると、同じ時間のお客さん方は既に席に着いていらっしゃいました。料理はおまかせ(¥19,440)のみ。席に座ると、そこからもう料理がスタートです。
まずはビールを傾けながら、厨房に目を向けます。揚げ場のご主人と、衣をつけたり天ぷらをお客さんに出したりするお弟子さんの息の合った動きに思わず見入ってしまいます。
夏真っ只中のこの日のおまかせは次の通り。先付3品・車海老・きす・煽りいか・海老新杖椀・うに大葉巻・稚鮎・みょうが・めごち・穴子・野菜(しいたけ・茄子・アスパラ・獅子唐から2種)・天丼(or天茶)・蜆椀・香の物・デザート。
天ぷらはスタートから驚きの連続。まず車海老。話には聞いていましたが、揚げ時間はかなり短め。薄い衣はサクッと、そして中はほぼ生状態。ものすごい甘みが閉じ込められています。塩とつゆ(夏つゆ)どちらとも合いますが、やはり塩との相性が抜群です。
そして驚いたのは煽りいか。圧倒的な柔らかさ。烏賊と言われなければ、食感だけではそれと気づかないかも知れません。歯の悪い人でも食べられるように、何本も隠し包丁を入れてから揚げることで生まれるこの柔らかさ。こんな烏賊は食べたことがありません。もちろん味はあっさりとしながらも深い深いもの。
うに大葉巻もビックリ。外見は大葉のみ。しかしふっくらとしたフォルムから、中に雲丹が詰まっていることが分かります。パリッと大葉をかじってみると、中にはたっぷりの雲丹が。雲丹と大葉の相性の良さは言わずもがな。さらに塩がそのタッグをさらに引き立ててくれますよ。
稚鮎も素晴らしいですね。丁寧に鰭部分に小麦粉を付けることで、挙げた後に鮎が凛と立っているんです。息をのむような美しさ。その味はしっかりと苦味を残しています。素材そのものの味を決して損なわず、そのポテンシャルを最大限引き立てるような調理。この稚鮎で実感しました。
そして至高の天ぷらは穴子へ。目の前でご主人がシュっとカットしてくれると、あがる湯気と感嘆のため息。周りは外国のお客さんも多かったんですが、この感動は万国共通ですね。
薄く丁寧におろした穴子が揚げると驚きのふっくらさ。身の柔らかさとそれでいて身の凝縮さすらも感じさせる味わい。これはもう、あぁだこうだと言うのではなく、もう味わってこそ分かるもの。天ぷらって美味しいなぁと実感させられます。
天丼前の野菜もさりげなく素晴らしい。2種を選ぶところ、2人で4種を選んで半分づつにしますか、というご提案。遠慮なくそうさせてもらいました。一番感動したのはしいたけ。これでもかと言うほどの肉厚さ。ジューシーなんて言葉が陳腐なほどの旨み。しいたけに感動するなんて思ってもいなかったなぁ。
最後に天丼を頂いてごちそう様。貝柱のかき揚げのふっくらとした揚げ具合と芯を感じさせてくれるような米の炊き加減が絶妙な組合せ。最後まで驚きの旋律を奏で続けてくれるカウンター劇場でした。
全くお客さんの方を見ていないようでいて、食べるタイミングを計っての提供スピード。そしてそれをサポートするサービスレベル。どれを取っても申し分なし。それでいて、妙に緊張させることなくリラックスして食事を楽しめる、そんな店でした。
お会計をして外に出ると、ご主人が店頭の植物を眺めている姿が印象的でした。聞くと、夜にしか咲かない花なのだそうで、そんなことを楽しそうに教えてくれる親しみやすさも。はぁ、次は冬の食材を楽しみにいきたいな。
2018/09/22 更新
緊急事態宣言中は我慢していた外食も、ちょっとずつ再開。この日は3月にキープしていた予約の日。ということで、久しぶりに夜の天ぷらを楽しんできたレビューです。
門前仲町駅を使うのはほぼこの「みかわ是山居」の時ぐらい。駅からゆるりと歩いて5分ほど。ちょうどいい頃合いの場所にお店はあります。もちろんお願いしてあるカウンター席。この日はカウンターの一番奥から4人分をご用意いただきました。揚げ場が見える一番いい場所です。
まずは「瓶ビール」を傾けつつ、この日もおまかせがスタート。初夏のコースは、車海老、鱚、煽りいか、海老新杖椀、雲丹大葉巻、茗荷、鮎、めごち、穴子、選べる野菜は椎茸と茄子、天茶にデザートです。
年に3~4回ほど伺っているのに、それでも海老の甘みや煽りいかの柔らかさには毎回毎回驚かされるばかりです。この日は雲丹大葉巻がいつもより大きい気がしたんですが、雲丹が揚げる中で膨らんでいるからだとか。さらに弾けるような旨みに頬が落ちるというものです。
初夏にしか味わえないのは茗荷と鮎。茗荷は揚げているのにシャキっとした食感がまだ残っている感覚。苦味はほぼ消えていて、この食感だけを味わえるというのは不思議な感覚です。
鮎も絶品。まず見た目から。腹鰭や尻鰭がスッと伸び、まるで自立しているかのよう。いやいや自立していますよ。見事な揚げ具合。お味の方は苦味がしっかりと残りつつ、別添で出してくれる蓼酢おろしをたっぷり載せるとその酸味で見事な調和が生み出されています。
蓼酢なんてなかなか口にする機会がないですが、大将が蓼を見せてくれてそのまま食べてみたらと。噛んだ瞬間は味がないように感じますが、途中から痺れるようなビリビリとした刺激が舌に走ります。蓼食う虫も好き好きと言われる所以ですね。これを大根おろしに混ぜることで見事なバランスを生み出しているのだそう。
穴子のホクホクさ、椎茸のジューシーさも毎度感動を提供してくれますねぇ。そうそう、〆の天茶も出汁の旨みがこの日は絶頂。心も体もいっぱいになりました。やっぱり定期的に通わなきゃ、ということで今度は秋の松茸か冬の白子か、はたまたその両方か。楽しみ楽しみ。