3回
2020/01 訪問
楽しさと美味しさの共存するフレンチ
半年ぶりぐらいのASAHINA。この半年の間に、ASAHINAはミシュランの一つ星を獲得した。当たり前といえば当たり前だが、オープン1年での星獲得はやっぱりすごい。
前回はディナーだったが、今回はランチタイムに。12時15分の予約に5分ほどフライングで入ったが、快く迎えてもらえた。場所は東京証券取引所の隣。リバーサイドながら静かな界隈だ。店内に入る前に少しだけ休息の場所があるのが嬉しい。コートを預けて少しほっこりしてすぐに店内に。店内は非常に明るく、壁際に沿ってテーブル席がいくつか。真ん中にもテーブル席があって、その奥は個室になっている。今回の席も前回と同じ場所だった。このあたりの思いやりも嬉しい。
ということで最初はシャンパンで乾杯。グラスは2〜3種類あったけど選んだのはルイナールのブラン・ド・ブラン。力強い泡と繊細な口当たり、そしてスキッとした後味。美味しいよね。
アミューズはおしゃれな入れ物に乗って3種類が登場。「ベトラーヴとグリュイエールチーズのカナッペ」「ラングスティーヌのカネロニ」「ゴーフルで挟んだリエット」。どれも絶品だが一番気に入ったのは「ゴーフルで挟んだリエット」。コーヒー味のゴーフルと豚のリエットの相性が絶妙。これだけでももう1つ食べたい。
続いて前菜1皿目は「活帆立貝とトリュフのクルート そのタルタルをポム・ゴーフルで挟んで」。ホタテを三層にし、その間にトリュフを挟む。周りはパイ生地で仕上げるという繊細ながらしっかりと味わえる一品。実はタルタルをポムゴーフルで挟んだ方もシンプルで美味しい。
前菜2皿目はタルトフランベ。「デリケートなズッキーニのタルトフランベ」と名付けられた一品は薄い薄いタルトフランベを5層に仕上げた上に刻んだ具材を乗せ、2色のズッキーニで蓋をしてサーブされる。タルトフランベというとピッツァのようなイメージがあったが、これは薄い薄いパイ生地という表現が近いかもしれない。合わせるのはアルザスの白。
魚料理は甘鯛だ。「甘鯛の松笠焼き 蕪のロティとレザンシートのヴェール ソースベルジュ」。カリッカリに仕上がった甘鯛だが、白身側はフワッフワだ。このコントラストが美しい。付け合せの蕪、そしてラタトゥイユのようなソース。すべてが合わさると非常に良い奥行きと繊細な味になる。
最後のメインは肉料理。「ランド産ホロホロ鳥 詰め物にしてまるごとロティし、茸のピティビエを添えて」。メニュー名通りだが、ホロホロ鳥に様々な詰め物をしてロティ、それを切り分けて出してくれる。部位として出てくるのは手前が胸肉、左がもも肉。奥が茸のピティビエだ。驚くのは胸肉の圧倒的なジューシーさ。脂の少ない胸肉はパサパサしがちだが、この胸肉はとてもジューシーで食べやすい。もちろんもも肉も最高に美味しいし、茸のピティビエもキノコ多すぎでびっくりする。
ここからはフィナーレに向かってデセールたちを。ちょっとしたお祝い事があったことを見ていてくれた村林さんから「Felicitations」のメッセージ。アヴァンデセールはフランボワーズにシャンパンのソルベをかけて。きれいに二つの味が混じり合う。メインのデセールはオペラ。「オペラプラリネ そのグラスを添えて」と名付けられた一品はプラリネで仕上げた独特のオペラ。三層の中にナッツがたっぷり入っている。そこそこ大きいのだが、食べ終わってしまうと寂しい余韻が残る、そんなデセール。
最後にコーヒーとミニャルディーズを頂いてごちそうさま。このミニャルディーズのカヌレが絶品だった。カリッとしながらトロッとしてふわっとしている。食感のマジック。
今回も最高に楽しいコースでした。サーブの仕方、一皿一皿の盛り付けなどは可愛いけど、味は繊細でいてしっかりしている。驚きと楽しさが共存するフレンチでした。また次の機会まで。
2020/01/25 更新
2019/05 訪問
アートとキュート、完成度の高い美しい料理。ASAHINA
日本橋は兜町、あまり馴染みはないかもしれないが東京証券取引所があることで有名だ。そんな証券会社が集まる場所にASAHINA Gastronome(アサヒナガストロノーム)がオープンしたのが去年(2018年)の10月。前から気になっていたが、なかなか機会がなく、ようやく5月に入って訪問。
最寄り駅は茅場町or日本橋。水天宮前からも徒歩圏内だ。また東京駅や銀座からも近いので、特別な日のデートに組み込んだりするのもおすすめな使い方。
入口で写真を撮っていると自動ドアのように中から扉が開いてちょっと恥ずかしい。名前を伝えて一瞬ソファーに座り、すぐに店内に案内。この小さいけれど、ちょっとした待合の場所が「これからディナーだ」という気持ちにさせてくれるので、意外と大事だと思う。
店内は天井が高く、白を貴重にした明るい作り。一つ一つの座席は余裕を持った配置になっており、全体的に洗練された雰囲気を感じることができる。奥にはガラス張りの厨房が見える。実はこのガラス、スイッチひとつで曇りガラスに変えることができるのだ(いつ使うのかわからないけど)。どうやら更に奥に個室もあるみたいだが今回は使っていないのでわからない。
まず最初はシャンパンで乾杯。ワインはペアリングも選べるが、グラスワインも豊富に用意されているので、好みで選んでいいと思う。この日のグラスシャンパンは2種類。ブラン・ド・ブラン(ルイナール)とロゼ(ポメリー)と。ノンアルコールでもスパークリングが用意されているので、記念日はぜひ。
ディナーコースは2種類。12,000円と18,000円(税サ別)。今回は18,000円のコースで。
まず最初にアミューズを。少し変わった入れ物に乗った3つのひとくちサイズのアミューズ。「ラングスティーヌのカネロニ」小さい小さいカネロニだが、旨味が詰まっている。「グルヌイユのクルスティアン」グルヌイユとはかえるのこと。周りのクルスティアンのサクサク感とあっさりとしたカエルがベストマッチ。「ゴーフルで挟んだリエット」濃厚なリエットをコーヒーのゴーフルで。バゲットの少し焦げた香りに似たスモーキーさが感じられる。アミューズからどれもレベルが高くて、上々のスタート。
続いて冷前菜が2皿。ここから出てくるお皿は基本的に全てガラスの蓋がついてきて、目の前で開けてくれる流れ。ガラスなので少し中が見えるけど、ちょっとしたワクワク感があるし、楽しい演出になっている。
最初の冷前菜は活帆立貝。ホタテをカラスミと合わせてタルタルに。一つはそのままで、それ以外はマリネした紅芯大根に包まれて。付け合せには青柳を細かくした一品の上にキャビアと金箔をのせて。丁寧に仕上げたホタテのタルタルはそのままでも美味しいが、酸味のきいた紅芯大根と一緒に食べると最高のバランスだ。
次の冷前菜はフォアグラということで、ワインをアルザスの白にスイッチ。ガラスの器に絶妙のバランスで乗っているのが鷲鳥(ガチョウ)のフォアグラと黒トリュフのテリーヌ。上にパラボナアンテナのように乗るのがドライキウイ。これをブリオッシュにつけていただくスタイル。これも十分美味いのだが、最高に美味しかったのは脇に添えられたポートワインで煮込んだソースをまとったテリーヌ。これは絶品だった。今日イチ。
温前菜はフランス産リ・ド・ヴォー(仔牛の胸腺部)のヴィエノワーズ。ほろほろに柔らかく仕上げられた仔牛の上にはパン粉やナッツなど。サクサクの食感と柔らかな肉の厚みを感じる。ここに合わせるのが添えられた卵黄。恐ろしいことに、この卵黄にはトリュフが仕込まれている。仔牛と一緒に食べると濃厚さがダブルになって、最高すぎる。コレも今日イチかな。
ここから魚料理が2皿続く。ちょっと悩んだけどワインはムルソー(白)に。最初の魚料理はオマール・ブルー、オマール海老の中でも最高峰ブランドだ。これをダリオル型に仕上げたものが3つ。2つはアマリケーヌソースで仕上げ、もう1つは野菜で丁寧にくるんで飾り包丁を入れたマッシュルームを乗せた可愛い一品。オマール海老自体の味が強い。ここに強い目のアメリケーヌソースを合わせるストロングな味だ。ちょっとマナー的にはあれだけど、このソースをこっそりパン付けてみたら、ヤバイぐらい美味かった。
次の魚料理は、活ヒラメ。ボルディエバターで蒸し焼きにして、更にそれをソースにしたものでコーティング、パセリのソースを加えて飾り、鱗に見立てた一品。奥にはロメインレタスがあり、葉っぱに包まれているのは甘く仕上げた玉ねぎ。丁寧に仕上げたヒラメは白身魚の印象を変えるぐらい濃厚。パセリは飾りかなと思いきや、なかなかどうして、いいアクセントになっている。コレまた今日イチ。
基本はFixedのコースだが、肉料理だけ2種類から選べるようになっている。牛肉or鴨肉。どちらも食べたい。この日は2名だったので、1つずつ頼んで、ちょっとずつシェアする形に。ワインはシラー(赤)を。
牛肉は国産牛(この日は岩手産の短角牛)のフィレ肉のポワレと頬肉のブレゼ。これにカージュ(網網の傘のようなもの)が乗ってきて、チラ見せ感が期待を煽る。どちらも蒸し系の料理ということでめちゃくちゃ柔らかく仕上がっている。
鴨肉はシャラン産クロワゼ鴨。胸肉がメインだが、砂肝などを含め4種類に仕上げてある。オリジナルのソースも美味しいが、更に加えられたポムクルスティアン(サクサクのやつ)がめちゃくちゃ美味しい。トリュフの香りが鴨の味にピッタリ合う。この時期にこれだけトリュフって出てくるんだっけ。
メインにはコンソメスープが付く。底にタピオカが沈んでいる。
お口直しの前に「チーズはいかがですか」とチーズキャビンがやってきた。さすがにお腹はいっぱいだが、せっかくなのでブリーチーズとコンテチーズを少しずつ頂いて。なんとなく口をさっぱりさせたくて、ピノ・ノワールをお願いしたらヴォーヌ・ロマネが登場。
デザート1皿目はお口直しということで、ルバーブを使ったデザートでカクテルグラスに入って出てくる。甘みというよりも酸味を主体に仕上げていて、まさに口をリセットする一品。
最後のデザートは佐賀県産の柑橘類「ゲンコウ」を使ったタルトシトロン。ゲンコウは初めて聞いたが、柚子のようなものらしい。コレをレモン型に仕上げている。中にはムース状になっており、サクッとした食感とともにふんわりとした香りが口の中に広がる。
最後にエスプレッソを頂いてホッとしていると、ミニャルディースということでワゴンに乗った小菓子が登場。どれも一口サイズで選びたい放題。4つほど選んだら、「4は数字的に、、キャラメルをおつけしますね。お持ち借りできますので」と嬉しい一言。
最初から最後まで素晴らしい料理だった。あと写真を見てもらえればわかるが、どれ料理も見た目が可愛い。アートでいて、キュートさがある。女子ウケ良さそうだなぁ、と思ってしまう(個人的感想)。ワクワクする演出も素晴らしい。気持ちの良くレベルの高いサーブ。うーむ、すごいお店だった。また行かねば。
ルイナール(ブラン・ド・ブラン)
ルイナール(ブラン・ド・ブラン
グルヌイユのクルスティアン
ゴーフルで挟んだリエット
ラングスティーヌのカネロニ
ラングスティーヌのカネロニ
アミューズ3品
活帆立貝 カラスミと合わせ かえでの樹液でマリネした甘酸っぱい紅芯大根とともに
活帆立貝 カラスミと合わせ かえでの樹液でマリネした甘酸っぱい紅芯大根とともに
アルザスの白
鷲鳥のフォアグラと黒トリュフのテリーヌ、ゴールデンキウイのクーリ
鷲鳥のフォアグラと黒トリュフのテリーヌ、ゴールデンキウイのクーリ
鷲鳥のフォアグラと黒トリュフのテリーヌ、ゴールデンキウイのクーリ
ブリオッシュ
鷲鳥のフォアグラと黒トリュフのテリーヌ、ゴールデンキウイのクーリ
フランス産リ・ド・ヴォーのヴィエノワーズ、長なすのフォンダンと、トリュフの香る卵黄のアンフィぜ
フランス産リ・ド・ヴォーのヴィエノワーズ、長なすのフォンダンと、トリュフの香る卵黄のアンフィぜ
フランス産リ・ド・ヴォーのヴィエノワーズ、長なすのフォンダンと、トリュフの香る卵黄のアンフィぜ
はちみつ
活オマールブルー ロティとそのダリオル ソース・ア・ラメリケーヌを現代解釈で
活オマールブルー ロティとそのダリオル ソース・ア・ラメリケーヌを現代解釈で
活ヒラメ ボルディエバターで蒸し焼きにし、そのヴルーテでコーティング、パセリのクロロフィル、ロメインレタスのファルシ
活ヒラメ ボルディエバターで蒸し焼きにし、そのヴルーテでコーティング、パセリのクロロフィル、ロメインレタスのファルシ
活ヒラメ ボルディエバターで蒸し焼きにし、そのヴルーテでコーティング、パセリのクロロフィル、ロメインレタスのファルシ
シャラン産クロワゼ鴨胸肉、オリジナルスパイスでロティ、トリュフの香るポムクルスティアンを添えて
シャラン産クロワゼ鴨胸肉、オリジナルスパイスでロティ、トリュフの香るポムクルスティアンを添えて
国産牛フィレ肉
ブリーチーズとコンテチーズ
チーズキャビン
アヴァンデセール
アヴァンデセール
佐賀県産 柑橘ゲンコウのタルトシトロン バジリコの香りとともに
シャラン産クロワゼ鴨胸肉、オリジナルスパイスでロティ、トリュフの香るポムクルスティアンを添えて
エスプレッソダブル
ミニャルディーズ
2019/05/22 更新
先日、ミシュランガイド東京2022が発表され、ミシュランガイド2つ星になったアサヒナガストロノーム。気づいたら訪れるのは2年ぶりになってしまっていた。予約時間にお店に到着すると、村林さんが笑顔で出迎えてくれた。少し早い目の予約(18時〜)だったためか、まだお客様ほぼおらず、ちょっとの間だけだったが貸し切りのような雰囲気を味わうことができて嬉しい。
コースの構成はこんな感じ。前菜が3皿あるので、かなりボリューミーだが、演出も楽しく、時間を忘れさせてくれる。
・アミューズ・ブーシュ
・魚前菜
・肉前菜
・温かい前菜
・魚料理
・肉料理
・お口直し
・デザート
・カフェ
・ミニャルディーズ
・アミューズ・ブーシュはアサヒナの看板。3つのアミューズを順番にいただく。「ビーツのメレンゲ トリュフ」「黄人参、みかんのラメル」「アンチョビのタルトレット」。片手でさっとつまめるのが良い。
・魚前菜は「オマールブルー&クリスタルキャビア」やさしく火を入れ そのタルタルとともに、滑らかなクレーム ド オマールを絡めながら 2種のキャビアでエスコート。アスパラガスが木のように立っており、さながら森の中に秘密を探しに行くような。キャビアはプレスドされており、食感が面白い。
・肉前菜は鴨。「シャラン鴨 & 茄子 シャラン鴨胸肉の生ハム 軽い燻製にし、長茄子のフォンダン タマリンドのクーリ」。鴨を生ハムに仕上げ、その下には茄子。この相性がぴったりだ。脇に添えられた小茄子はマリネにして赤パプリカをまぶしている。
・温かい前菜はカスベ。「北海道 本カスベ & シトロンキャビア ムニエルにし、クリスピーキヌアのコンディモン 入荷させたブールノワゼット」。カスベは、ふわっとして食べやすい白身魚。下にはキヌアとペッパー。周りには焦がしバターのエスプーマを。泡状に仕上げたソースが良く絡む。
・魚料理は矢柄と鮑。「赤矢柄 & 鮑 しっとりポワレにし、海藻バターを纏った鮑のヴィエノワーズ 若摘みぶどうのソースヴェルジュテ」。矢柄というのは知らなかったが、これまたふんわりとした味わい。アワビは3時間蒸してヴィエノワーズに。もう一品のしいたけの間にはエシャロットが挟まるという贅沢しかない魚料理。
・肉料理は短角牛。「短角牛 & 黒トリュフ ロティし、滑らかなポレンタに黒トリュフ、ヨークシャー・プディング添え」。ポーションは決して大きくないが、満足感が高いヒトサラ。上に乗るのは赤ワインバター。このバター、持って帰りたいね!同時にキノコのスープも提供されるが、これがサイフォンで丁寧に抽出したもので、ほっこり味わい深い。
・お口直しは「水晶文旦 & フロマージュブラン」。
・最後のデザートは「フレーズ & ショコラ タルトに仕立て、板橋農園の苺と バニラの香るグラスフレーズ」
・コーヒーを飲みながら、ミニャルディーズがワゴンに乗って登場。毎回このためにお腹を開けておこうと思いつつ、気づいたらお腹いっぱい。ということで、カヌレを始め4〜5個ほど。このカヌレ、美味しいのでおすすめですよ!
また次の機会まで。