2回
2025/04 訪問
混沌の愉しみ
大西シェフはリーガロイヤルホテル大阪出身。足繁くフランスには通っているが、フランスでの修行はない様子。そのせいか、紛うことなきビストロ料理でありながら、どこか料理の根底に「日本的な洋食」の顔が見え隠れするところもある。そこが良い意味で、ある種の古いフランス家庭料理の雰囲気を醸し出している気がする。そして、それ故にパリの老舗ビストロを思い起こさせる。
メニューは毎日少しずつ異なるが、長く通っていると、シェフの中での流行りによっての変化も感じる。今日は何が食べられるかな?最近は何に凝っているのかな?という楽しみがあるお店。
デジュネはアミューズ、前菜盛り合わせ、選べる主菜、最後にコーヒーかハーブティーかチーズが選べて2,300円。主菜は大体のメニューが+2,000円だが、せっかくなら+2,000円を選びたい。
どうも最近の流行りは徹底的に素材に拘る方向のようで、少々値は張るようになったが、とはいえ儲かるのか不思議に思う程に惜しげもなく高級食材を使ってくる。
前菜盛り合わせには+1,500円の「大」があり、盛られる種類も多くなるが、量も半端ないので、シェフも普通の人向けではないと断言していた。私は普通の人ではないので常に「大」に挑む。
今日の前菜盛り合わせ「大」は、チキンマカロニグラタン(これはプラス料金のない主菜…)、本鮪の血合と筋の煮込み、クスクス、温卵、レンズ豆のサラダ、オリーブ入りラタトゥイユ サフラン風味。どの料理もこれでもか!という量が盛り付けられていて、この一皿だけでも、そこらのランチを軽く凌駕する。
最高だったのは本鮪の煮込み。元々、内臓系の煮込みを得意とするシェフだけに、野菜やスパイスと渾然一体となった血合や筋が、クドさを除いた豚の様でもあり、美味すぎる。これだけで今日も来て良かったと思わせる。こういう混沌とした料理のセンスが真骨頂だと思う。食べ進める内に、ここにクスクスや温玉やレンズ豆のサラダやサフラン風味のラタトゥイユが少しずつ混じり合うことでさらに生まれる混沌も楽しい。
主菜は黒鶏のブリオッシュ包み焼き。パートブリックやブリオッシュを使い、生地の中で肉を蒸し焼きにするのもシェフの得意とするところ。丹波黒鶏と厚切りベーコンとデーツの混じり合った香りが立ち昇り、かなりお腹の膨れた状態でも食欲をそそる。デミグラスベースのソースには牛肉がたっぷりで、香り高くパラパラに炊かれた付け合わせの米と合わせてハヤシライス風。ここにも洋食的な顔が。滋味深いが量も多い。
コーヒー飲んで5,800円。十分にコスパが異常だが、満腹過ぎて夕食など食べられたものではないから、最早コスパという概念では測れないものがあると思う。
やや朦朧としつつ、美味しさの渦に混沌とした頭の中で幸せを嚙みしめながら、30分ほどかけて大阪駅くらいまで歩いて帰るのがおすすめだ。
アミューズ パン・オ・フリュイとフランス産のチーズ
前菜盛り合わせ大 チキンマカロニグラタン 本鮪の血合と筋の煮込み クスクス 温卵 レンズ豆のサラダ オリーブ入りラタトゥイユ サフラン風味
丹波黒鶏とイスラエル産デーツのブリオッシュ包み焼き
コーヒー
2025/05/22 更新
久し振りの大阪。胃袋の調子が良いのを確認して、いざ出陣。大西亭はお気に入りのビストロだが、行くのであればガッツリ食べたいので、コンディションが大事だ。
デジュネはアミューズ、前菜盛り合わせ、選べる主菜、コーヒーまたはハーブティーまたはチーズで2,300円。ただ主菜のほとんどはプラス金額となるものが用意されている。デザートは800円で追加できる。
まずアミューズにマッシュルームのポタージュ。冬の匂いのする一品で胃が暖まる。比較的あっさりとした仕上がりで、もう少しキノコが濃厚な方が大西亭らしいかも。
前菜は+1,500円で大盛りにするのが私の通例。今日は、いつもはアミューズとして供されるパン・オ・フリュイと熟成チーズ、大きなクロックムッシュ、その下にラタトゥイユ、牛フィレ肉のソテー、その下にシュークルート、チキンマカロニグラタン(これはプラス料金のかからない主菜メニュー)。これだけでも普通の店なら大盛りランチとしてやれるボリューム。クロックムッシュはクリーミーなフロマージュソースとハムだけのシンプルなものだが、そのソースが美味しい。しかしデカい。ラタトゥイユはトマトの鮮度ある酸味を感じるもので、シンプルなクロックムッシュに良く合う。牛フィレ肉は間違いなく高品質なものを惜しげもなく大量に乗せてある。気前が良過ぎる。とはいえ、今日の一番はシュークルート。煮込まれたザワークラウトとベーコンの旨味がどっしりと深く、美味しい。大西亭の前菜盛り合わせを大盛りにすると、とてつもない量とはなるが、これは!という料理との僥倖へと繋がるので求めずにはいられない。
パンは酸味のある田舎風。この時点で3種類のパンが並ぶ。井之頭五郎なら「パンがダブってしまった」と嘆くところだが、大西亭では偶にあることなので、細かいことを気にしてはいけない。
主菜はクエのロースト パートブリック包みを選択。+2000円。パートブリックなどで蒸し焼きにする手法は大西シェフの得意技。切り分けると湯気と共にぷりぷりのクエの大きな塊が現れる。クエ自体もとても美味しい。大西シェフは、美味しいという感想を伝えても素材を褒めることしかしない謙虚な人だが、これだけ素材に拘っているのであれば、プラス料金は当然だろう。それに加えてオマールブルーのソースがすごい。オマールの濃厚な香りにサフランやスパイスの香りも加わり、堪らない。パートブリックの香ばしさも加わって、見事な一皿。
コーヒーを飲んで終了。
相変わらず、胃袋がパンパンになるのだが、これだけの量が食べられてしまうのは豪快な料理でありながら、素材の味を活かした絶妙な塩梅だからだと改めて気付く。塩の強い仕上がりであれば、こんなには食べられない。何度でも、新たな料理との出会いを求めて訪れたい店だ。