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夜の点数:5.0
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¥40,000~¥49,999 / 1人
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料理・味 5.0
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|サービス 5.0
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|雰囲気 5.0
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|CP 5.0
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|酒・ドリンク 4.3
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[ 料理・味5.0
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| サービス5.0
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| 雰囲気5.0
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| 酒・ドリンク4.3 ]
最後は塩むすび
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2021/09/30 更新
京都駅から徒歩30分強です。
京町屋が建ち並ぶ街並に目を奪われながら歩くとアッという間に到着してしまいます。
元々は茶道具屋さんだった建物を改装された此方のお店は、伝統のある建築を感じさせる素晴らしい設えが施されています。
カウンター5席。夕方の陽が坪庭の緑を受け、鶯色の柔らかい光となって室内に届き、凛とした雰囲気を作り上げています。
此方の大将はスッと背筋の伸びた格好の良い方です。料理の味から、真面目でシンプルかつ筋の通った方だと印象を受けました。
女将さんもお綺麗な方で、接客から木目の細かい方だと分かりますが、おおらかで懐が深そうな安らぎも感じます。
お二人とも話せば楽しく、聞けば素晴らしい知識を持たれている方です。しかし終始、お料理と同席の方との会話に集中させてもらえる環境を作り上げる事を心掛けてみえます。写真撮影不可もそういったところに理由があると思います。
また、切り付け・焼き以外の工程は奥の厨房で作業され、必要以上には前には出て来られない姿勢にも大変好感が持てました。
此方しかない特別な雰囲気を作り出されていることに、何とも奥深しいおもてなしを受けました。
この日の京都の日の入りは17:52。伺った時刻を境にして、昼から夜への暗転が始まります。
次第に部屋の隅の色は濃くなり、先程までは控えめに感じた灯りは目の慣れと共に温かみが出始めた頃に静かな宴は始まりました。
この日は菊月、重陽の節句に因み、菊の器が多く使われ、満月・秋を思わせる料理の数々に溜息と感動の連続でした。
先ずは菊酒から頂きます。花弁一枚、菊の香りがスッと立ちます。
【百合根の団子と雲丹】
蓮の葉の上にお月見団子に見立てた百合根を擦り丸めて拵えたものと、月に見立てた雲丹があります。百合根は上品な甘さと心地の良い舌触りがあります。雲丹は由良の赤雲丹で一欠片がとんでもない大きさで人生1番。ジュワッと口で溶かす悦びと、薄ら掛けられた大徳寺納豆との相性の良さに驚きます。
【松茸とくず豆腐の椀】
素晴らしい漆器の椀の蓋を取ると、月夜に浮かぶ尾花が風にそよいでいます。
極細かく割かれた松茸は尾花、くず豆腐は大きな満月。柚子の皮は若い尾花か山でしょうか。出汁はシンプルですが何とも言えない深みがあり、細くても歯応えがシャッコリとした松茸と青柚子の風味が幅と奥行きを演出します。
【虎魚のお造り】
菊魚とも呼ばれる縁起の良い魚。菊の節句に因んで出されました。切られた身の大きさから、かなり大きな魚体だと想定します。活かりが良く歯応えと身の旨みが凄いです。胃袋と肝が付き、お塩、チリ酢と頂きます。此方では魚は寝かせません。これだけの状態の素晴らしい魚が食べられるのは一流店の証だと思えます。
【赤むつと舎利】
赤むつは皮目だけ炭火で焼かれています。実山椒、そして舎利が乗ってる何ともフワモタな逸品。変な脂を感じないのは素材なのか、何かしごとがしてあるのか。
【無花果の胡麻和え】
焼いて出汁で炊かれた無花果は城陽のもの。その無花果の周りに掛けられた胡麻のお出汁。風味豊かで優しく、コク深い。素晴らしい美味。
【鱧焼き】
鱧の二度目の旬が始まりました。焼きにも十分耐えられる肉の厚みと上質な脂を感じます。
大将が目の前で焼かれます。返しは1度のみで焼かれます。音、匂い、見た目、温度。味覚の変わりに経験を入れた五感を駆使されて絶妙なタイミングで上げられます。見ていて引き込まれて息を飲みました。
ジュンワリとした食感と、骨抜いてるの?と思えるぐらいノンストレスな骨切り。
此方の梅肉ダレは梅の風味が爽やかで旨味の支えもあるのにスッとキレる感動の出来栄えです。
【渡蟹とこのこの合わせ】
渡蟹のウエットな旨味の下に仕込まれたこのこ。菊の風味が遇らわれ幸せな足し算。法蓮草の軸が何とも言えない侘び寂びを作り出しています。
【太刀魚と新銀杏】
揚げられた肉厚の太刀魚と新銀杏。上品な甘酢で頂きます。綺麗な白髪ネギはお弟子さん作。優しくて奥深しい、出汁と素材の旨味を感じる逸品。
【小芋と芋茎と万願寺の炊き合わせ】
舞鶴の小芋は風味も甘味も良く、芋茎の信太巻は溢れ出る出汁に感動し、小口の万願寺とうがらしはクセになります。しみじみ大好きトリオ。
【ご飯】
土鍋ご飯と新いくらが登場。程良い固さに炊き上げられた膨よかな香りのごはん。新いくらと合わせると何杯でもいけそうです。
4杯目に差し掛かるタイミングになり、ご飯とお塩を合わせるのが好みな私は、失礼と思いながらも、
「塩を別皿で頂けますか。。」
と、お願いしてみると
「はい。では、握った方が良いですね。」
とのまさかの神対応が。
私のHN知ってるのではないかという疑惑を超えた感動の対応をして頂けました。
塩むすびを握るのにも奥に入る大将。そして厨房から出て来られる際は、上品な小皿の上に京都ならではの俵型の塩むすびがひとつ。
その美味さは格別でした。
絶妙な塩加減と、米一粒ずつが己の粘度ギリギリで手を繋ぎ合わせているかのようなエアリーな塩むすび。
美味しすぎて秘訣をお聞きすると、如何に召し上がる方の事を想って握るかが大切で、技術よりも気持ちが一番との事でした。
これがもし、茶碗に盛られたご飯に塩なら私は間違いなく美味しいとしか思いませんでした。
しかし、同じ材料に気持ちを加え、拵えられた俵型の塩むすびに心が揺さぶられ、素晴らしい「料理」なんだと認識しました。
そして何よりも大将の気持ちに感動致しました。
有難う御座います。
他のお店とはっきり線引きをする料理の味は、素材もありますが、出汁と感性と気持ちの違いが出ていると感じました。
静謐とありますがまさにその通り。美味しさだけではなく、食べる環境全てがパーフェクト。生涯を掛けて通いたい素晴らしいお店です。
末筆ですが、食べ歩き、色々な料理人さんから尊敬され、リスペクトされている此方。もちろん伺うのは私の夢の一つでした。
この度は尊敬する超常連マイレビ様にお声掛け頂き、長年の夢を叶える事ができました。マイレビ様、心から感謝致します。本当に有難う御座います。