4回
2024/07 訪問
鮎と夏野菜を楽しむ 文月「花鳥懐石」庭の緑が美しい初夏がおススメ~燈々庵(あきる野)
久しぶりに季節感のあるお料理が楽しめる懐石料理店「燈々庵」へ出かけました。
あきる野の美しい自然に囲まれた「燈々庵」は、季節ごとの旬の素材を贅沢に使い、心を込めて作られる料理が楽しめるお店、我が家のお気に入りのお店のひとつ、これまで家族の集まりで何度か利用させてもらっています。
「燈々庵」の献立は月替わり、四季折々の素材を活かした品々で構成されています。春には桜の花が散りばめられた美しい前菜、夏には爽やかな味わいの冷製料理、秋には旬の茸や魚介をふんだんに使った逸品、冬には心温まるお鍋や煮物などがあり、毎回訪れるたびに、新しい発見があり、食材の変化を楽しむことができます。
旧家の邸宅敷地内の土蔵を改装したお店、木々に囲まれた中にあります。木々の中の小径を抜けてお店に入ります。この日は庭を見下ろせる2階のテーブル席に案内されました。窓からの景色は、額縁の中の絵画のようです。
懐石料理のコース料理のみ、お値段の違いにより3種類のコースがありますが、希望の予算に応じてお料理の組み立てもしてもらえます。一番お手頃な「花鳥」は7,700円、このコースはランチタイム限定です。
いただいたのは「花鳥懐石」7,700円、お品書きが用意されています。お料理が運ばれる都度スタッフさんから丁寧なお料理の説明がありますが、これが手元にあると、振り返りながらいただけるのでありがたいもの。
先付
氷入りのボールにお料理が飾られています。
枝豆冷製スープ
枝豆で作られた冷たいスープ、とてもなめらかな口当たり、ビシソワーズです。
前菜涼の彩り旬菜各種盛り込み
前菜は竹のお盆に2人分盛られて運ばれてきました。
つるむらさきと法蓮草のお浸し 勾玉豆腐 南京栂ノ尾煮 鰻小袖寿し 天子南蛮漬け 丸十レモン煮 夏茗荷甘酢漬け 万願寺煮浸し トマト蜜煮
この後、スタッフさんがそれぞれの盆に盛り付けてくださいました。お料理の種類が多いと楽しくなります。つるっとしたのど越しのつるむらさき、濃厚なカシューナッツ豆腐、さっぱりレモンのさつまいもなど、丁寧に味付けされたお料理はいずれも美味しいのですが、驚くのはほおずきの中に入っているトマトの蜜煮。ほおずきの実に見立てたトマトはほんのりとした甘みでトマトの旨みを味わえるものでした。スタッフさんから「ほおずきの中にもお料理がありますので」とご案内があるのですが、意外性のあるお料理で楽しませてもらいました。
碗盛り清汁仕立て
冬瓜 鯛焼き霜 蓴菜 人参 青柚子
魚の出汁がしっかり利いている美味しいお椀もの、鯛の旨みが冬瓜に染みています。
造り
旬魚三種盛り あしらい
あおりいか、たい、さくらますのお造り。新鮮さが伝わる身がしっかりしたものでした。
焼物
笹の葉の上に乗せられた焼き鮎が運ばれてきました。鮎をお客さんにお披露目した後、目の前に小さな七輪を用意し、仕上げの焼き上げをしてから供されました。
鮎塩焼き たで酢
きれいに串うちして焼き上げられた鮎は、躍動感あふれる姿、蓼酢が添えられています。山梨の笛吹川で収穫された鮎とのこと、少し苦みのあるワタと身をいただくと、夏が来たのを感じます。唐揚げではないので、頭や骨まではいただきませんでしたが、スタッフさん曰く「お好きな方は、頭からしっぽまで召し上がられます」とのこと。香ばしい香りを味わうと、本当は骨までいただきたかったと思いました。
焚合茄子旨煮
夏野菜、茄子の素揚げにべっ甲あんをかけたお料理、椎茸、おくらととにも生姜風味で味わいました。
止肴土佐酢和え
この時期の定番のお料理、糸瓜、トマト、茗荷、ラディッシュの甘酢和え。糸瓜のシャキシャキ感がここちよいもの。
止碗、飯、香の物
最後にご飯とお椀が供されました。
鮎ご飯 赤出汁みそ仕立て 糠漬け
鮎の柔らかい身と脂の風味がよい炊き込みご飯、赤出汁のみそ汁ともにいただきました。少々物足りないくらいが美味しく終えることにつながると分かっていてもお代わりしたくなるほどの美味しさ、自宅でも鮎の炊き込みご飯が美味しくできればよいのにといつも思います。
水物
最後のデザートも氷入りのボールに入って冷たいまま供されました。
玉蜀黍プリン ラズベリー 無花果ゼリー寄せ 胡麻クリームソース
最後の水物はいつも2品あり、ひとつはプリンが定番。献立には玉蜀黍とあるのですが、白いプリン。いただいてみるととうもろこしの香りと甘みがあるのですが、黄色くないのが不思議。もう一品はいちじく。胡麻クリームが濃厚でいちじくによく合います。2種類のデザートがあるとうれしいもの、最後まで美味しくいただきました。
最後に
食事を終えると抹茶を点ててくださいました。添えられているのは花豆の甘納豆。大粒の甘納豆は中がしっとり、皮がカリッとしたもの。抹茶と苦みと甘納豆の甘味で双方が引き立つ組み合わせでした。
「燈々庵」のスタッフは、どの方も丁寧で、心温まるおもてなしが感じられる接客、この日もゆったりとしたひとときを過ごせました。季節ごとに変わる料理とともに、四季折々の庭の景色を楽しみながら、心温まる時間を過ごせるお店、記念日などにまた利用したいと思っています。
2024/09/03 更新
2020/07 訪問
江戸から続く旧家の土蔵を改装した懐石料理店で初夏の季節を感じるお食事でお誕生日のお祝い~燈々庵(あきる野)
妻の誕生日のお祝い、食事は季節感のあるお料理が楽しめる「燈々庵」に出かけました。
燈々庵はあきる野にある旧家の土蔵を改装したお食事処、昼、夜ともに懐石料理をいただくことができます。これまで家族の集まりで何度か利用させてもらっていますが、旬の素材を使ったお料理を趣向を凝らした盛り付けで、目にも舌にも楽しいお食事が楽しめるお店、月ごとにメニューが変わるので毎月伺いたくなります。
お寺かと思う立派な門構え、このお店の一角だけ別世界の雰囲気、最初に伺った時は懐石料理店とは思えませんでした。予約していた休日はあいにくの雨模様。梅雨の季節は、雨のお陰でお庭の緑が映え見え、雰囲気がさらによくなります。ただ、駐車場はお店から30mほど離れたところにありますので、雨の日は傘が必須です。
懐石料理のコース料理のみ、お値段の違いにより5種類のコースがあります。一番お手頃な「椿」は4.800円、このコースのみランチタイム限定です。
雨はしっとりした雰囲気になります。門をくぐり、石畳を進んで、お店へ。お店までの小径もよい雰囲気です。時代劇に出てきそうな古い建物ですが、丁寧に手入れがされています。入口の前には小さな池が配され、細かなところまで雰囲気作りがされています。入口は重々しい扉、蔵だったことの名残があります。
中に入るとすぐスタッフから挨拶があり、予約の席に案内されました。
お店はテーブル席、カウンター席、個室とありますが、この日は2階のテーブル席に案内されました。2階のテーブル席は、4組分のテーブルがゆったりとしたスペースを空けて配置されています。もともとゆったりとした造りですので、ソーシャルディスタンスの観点で不安はありません。
中央には立派な盆栽が飾られていました。形がよく相当お高いものなのだろうと見入っていると、5万円の値札が・・・作者の書かれた工芸盆栽?工芸盆栽という手工芸があるのを今回初めて知りました。近寄って見ても本物の盆栽そのもの、工芸品であれば、太陽や風に当てたり、水やりをしたりする必要がなく、取り扱いが楽。室内に飾るにはお手入れがしやすく、思わず買って帰ろうかと思ってしまうほど精巧な出来上がりの作品でした。
柱の一輪差しのお花は本物です。
案内されたテーブル席は4人用、夫婦ふたりの利用で、お互い向き合っても正面にならないよう座席配置がされていました。もうひとつ配慮されていたのは、食事中のマスク入れが用意されていたこと。「新しい生活様式」になってから、マスク入れを用意するお店を見かけるようになりました。こちらのお店では、ジップロックのように口が閉められるビニールパックでした。これまで食事中のマスクの扱いに苦慮していたので、これをみて、「そうか、ジップロックを持ち歩けばよいのか」と思いました。
お願いしたのは「花8,000円」のコース、お品書きが用意されていますので、これを見ながらお料理をいただきます。普段であれば、お料理が運ばれる都度、スタッフから丁寧なお料理の説明がありますが、「新しい生活様式」ではお料理を前にした会話はできるだけ避けるとの配慮から、「お料理の説明ができないのでこちらをご覧ください」とお詫びがありました。
席からは敷地内にあるお庭の緑が見えます。ちょうど額縁に入った絵のようです。
■先付
涼しげな氷の山にお料理が飾られています。
無花果にこごり胡麻クリームソースくこの実
季節の無花果の寄せもの、胡麻の濃厚なお味が甘みにあって美味しいもの。
茆菜とろろふり柚子
竹の筒に入ったお料理、蓋を取ってかき混ぜながらいただくものとのこと。茆菜ととろろの冷たいスープ、のど越し爽やかでした。
■ 前菜 涼の彩り杉板青竹敷き旬菜各種盛り込み
前菜は竹籠に入って供されました。葉の蓋を開けると、小鉢などのお料理がたくさん、種類が多いと楽しくなります。
鰻小袖寿し 夏茗荷甘酢 天子南蛮漬け 丸十レモン煮 万願寺漬し
つるむらさきと法蓮草のお浸し
勾玉豆腐旨出汁ゼリー
南京
トマト蜜煮
一番美味しかったのは勾玉豆腐。カシューナッツの豆腐ですが、濃厚な木の実の味が特徴のお品、こちらでしかいただけないものなので、いつも楽しみにしています。
■ 碗 おくらしんじょ 鱧から揚げ つる菜 人参 青柚子
出汁が美味しいお椀、オクラしんじょも鱧も季節ならではのもの。
■ 造り
旬魚三種盛り あしらい
あおりいか、たい、さくらますのお造り。身がしっかりしたもの、新鮮さがよくわかりました。
■ 焼物
鮎塩焼き たで酢
文月に伺うと、メインのお料理は鮎。今にも泳ぎだしそうな鮎、笹の間からは煙が立ち上るという趣向も凝らされています。泳ぐ姿のままの焼き物、さっぱりとした実が美味しく、夏が来たと実感しました。緑色がきれいな蓼酢、蓼の香りと酢の酸味、さっぱりとしたお味が鮎を引き立てます。
焚合夏野菜べっ甲餡かけ南京小茄子無花果オクラ
夏野菜の素揚げにあんをかけたお料理、家ではここまで手をかけたお料理を作るのは難しく、お店でいただくのがうれしい一品。
止肴糸瓜そうめん みずトマト 茗荷 ラレシすだち酢
お料理を見ただけでは、何の素材か全くわからず、メニューを見て確認してしまいました。海苔の香りがこんなにも美味しいとはと思うお料理、糸瓜にすだちのさっぱりしたお味でこれも夏らしいお料理です。
■ 止碗、飯、香の物
ご飯とお椀が供され、これでお料理は最後です。
鮎ご飯
鮎の香りが効いた炊き込みご飯、意外にも脂がのっていたことが炊き込みご飯にしてよくわかりました。これはお代わりしたくなるほど、あと引くお味でした。
赤出汁みそ仕立て
炊き込みご飯には、強さのある赤出汁ですね。
■ 水物
最後のデザートは2品。
コーヒープリン ラズベリー ブルーベリー小豆ココナッツソース
お品書きにコーヒープリンにココナッツソースとあったので白い色はソースなのかとおもっていたのですが、中のプリンも真っ白。「コーヒーの香りがするのに、真っ白なのはなぜ?」と最後までわかりませんでしたが、風味良く、美味しいものでした。
桃甲州煮ゼリー寄せ
もう一つのデザートは、桃のコンポートをゼリーで固めたもの、冷たいデザートで最後はさっぱりと締めくくりました。
最後にお抹茶のサービスがありました。添えられているのは甘納豆。メニューに書かれていないもの、最後にお抹茶をいただけるのはうれしいサービスでした。
伝票立ては、竹筒。最後まで良い雰囲気作りをされていました。
いつもは1階のキャッシャーでお会計ですが、「新しい生活様式」で密を避けるためにテーブル会計になっていました。お会計を済ませた後、中庭をみせていただきました。
雨でしっとりした雰囲気で緑がとても映えています。こちらで最後のデザートなどをいただくのもよさそう。雨の午後、喫茶で利用できるとよいですよね。美味しいお食事をいただいた後、お庭の緑を楽しみながら、お店を後にしました。
ゆったりとした雰囲気とお料理のプレゼンテーションに癒されるお祝いになりました。このお値段でこの内容のお料理をいただけるのは、こちらのお店ならでは。予約してくれた夫に感謝です。
2020/08/12 更新
2013/06 訪問
旧家の土蔵を改装した懐石料理店で季節感あふれるお料理を楽しみました~燈々庵(あきる野市)
会食の席であきる野市にある「燈々庵」を利用しました。
旧家を改造したお店と伺っていたのですが、お寺さんではと思われる雰囲気。立派な門構えの奥には、うっそうと木々が茂るお庭が見えます。看板がなければ、お店であることがわかりません。
うっそうと茂る木々の中をくねくねと歩いて行くと、お店のある土蔵が見えてきました。お店の入り口まできましたが、どこから入るのだろうと、迷ってしまいました。(写真左側に入り口があります)
懐石料理のメニューは、季節感あふれる内容で、メニューは月替わりです。
伺った水無月(6月)のメニューは、
椿懐石 (4,725円)
旬肴・・・ずんだ汁 海老葛叩き じゅん菜 茗荷
前菜・・・風待月旬菜苗籠各種
盛り込み椀・・・・・おくらしんじょ 扇面冬瓜 つる菜 水玉人参 実柚子
造り・・・・旬魚二種盛り
焼物・・・若鮎塩焼き 蓼酢
強肴・・・夏野菜大葉蒸し 丸茄子 姫玉蜀黍 蚕豆 姫人参 山葵味噌だれ
止肴・・・水無月豆腐 新馬鈴薯 小豆 金針菜 とまと醤油
止椀・・・赤出汁味噌仕立て 新玉葱 焼き麩 粉山椒
飯・・・・・新生姜ご飯 朴葉包み 餅黍 人参 胡麻塩香の物・糠漬け
煮蕗水物・・・杏子ムース 新蓮根シャーベット チーズクリーム
予約していた席は、1階のカウンター席。横に長いテーブルに向かって会食が始まりました。
部屋の窓から庭を眺めると、緑が濃く気持ちがよい風景が広がっています。窓の形が、ちょうど絵画のよう、まるで東山魁夷の版画のような、緑の世界です。カウンター席で会食に少し違和感をもっていたのですが、カウンターの向かいに上座を設け2人座り、向かい合わせて横長に座る配置もありかなと思いました。
以下、いただいたお料理を紹介します。
■前菜・・・風待月旬菜苗籠各種
葉でふたをされた籠が出てきました。ふたを開けると、前菜が現れました。これだけの種類があるとうれしいですね。ひとつひとつ丁寧に作られていて、見た目も味も美味しいものでした。
■盛り込み椀・・・・・おくらしんじょ 扇面冬瓜 つる菜 水玉人参 実柚子
出汁が美味しいです。
■造り・・・・旬魚二種盛り
お刺身は新鮮そのもの。トロサーモンは、本当にとろけそうでした。
■焼物・・・若鮎塩焼き 蓼酢
籠の中には、鮎の塩焼き。笹の下には、炭が置かれていて、鮎が冷めないよう心遣いされています。鮎が川の流れを泳ぐように立っています。有名てんぷら店のお料理で、立っている鮎を(テレビの画像を通して)見たことがありますが、塩焼きで立っているのを見たのは初めて。香ばしく焼かれていて、頭からしっぽまで、すべて食べられるものでした。
■旬肴・・・ずんだ汁 海老葛叩き じゅん菜 茗荷
また葉のふたがされています。みずみずしい葉はお料理を引き立ててくれるものですね。なめらかなずんだ汁でした。
■強肴・・・夏野菜大葉蒸し 丸茄子姫 玉蜀黍 蚕豆 姫人参 山葵味噌だれ
単なる野菜の蒸し物と思っていただくと驚きます。特に丸茄子が甘くて美味しい。
■飯・・・・・新生姜ご飯 朴葉包み 餅黍 人参 胡麻塩香の物・糠漬け
籠に盛られて供されました。雰囲気で食事の味が変わると思いました。生姜が効いたご飯、さっぱりしていて美味しくいただきました。
■止椀・・・赤出汁味噌仕立て 新玉葱 焼き麩 粉山椒
赤味噌は、飲みなれないので、非常に味が強く感じました。生姜のごはんとは相性がいいですね。
■煮蕗水物・・・杏子ムース 新蓮根シャーベット チーズクリーム
2種類のデザートがあると、うれしい。蓮根のシャーベット、意外な美味しさでした。
お店に入るまでの庭やお店の内装、そして、お庭と、雰囲気がよく、ゆったりと落ち着いていること、そして、サービスする方の手際のよさと丁寧さ、お料理を供する際のプレゼンテーションのこだわりがあること、最後に、なにもよりも、よい素材を使って丁寧に作られたお料理をいただけること、こちらで食事することができたこと、会食の席でお店選びをしてくださった方に感謝です。
最寄駅が五日市線の東秋留、そこからも歩いて10分と、車でないと来にくい立地ですが、大切な方を囲んでのお祝いの席などでまた利用したいと思います。
燈々庵(とうとうあん)
042-559-8080
東京都あきる野市小川633
2014/09/23 更新
家族で集まる機会があり、少しきちんとした雰囲気のお店がよいと、あきる野にある「燈々庵」を利用しました。都心から少し距離はありますが、その分だけ静けさに包まれた特別な時間を過ごせる場所、伺ったのは12月初旬は、紅葉がきれいな赤色に色づく時期、庭園の木々が色づき、とてもきれいでした。
燈々庵の象徴ともいえるのが、けやきなどの木々に囲まれたこの大門、落ち着いた雰囲気は、歴史を感じさせてくれます。庭を抜けて進むと米蔵が見えてきました。燈々庵の建物は、江戸期に建てられた二百余年の米蔵を改装したもの。重厚な梁や土壁、趣ある柱がそのまま生かされ、歴史の深みを感じる空気が漂います。
室内はやわらかい灯りが中心で、ほっとする落ち着いた雰囲気。料理や室内に生けられた花を柔らかく照らし、静かで上品な時間を演出してくれます。座席からは、竹林と小川が流れる庭園を望むことができ、四季折々の風景を楽しみながら、穏やかに食事をいただけます。改まった席にもふさわしいこの落ち着きが、魅力のひとつです。
懐石料理のコースは3種類、お料理の素材や品数でお値段が変わります。この日は、肉料理も楽しめる「風月」(11,000円)を予約しておきました。どのコースも旬の食材を中心に組み立てられるため、内容は毎月変わります。月ごとに出合いが変わるのも楽しみのひとつです。個々人の座席にはこの日の献立の説明が用意されていますので、これを読みながらお料理をひとつひとつ楽しみました。
前菜 限りの月大台旬菜各種盛り込み
法蓮草浸しや勾玉豆腐、蕪の甘酢漬けなど、小さな器に季節が美しく並びます。それぞれの味わいが繊細で、口の中でやさしく広がる旨みが印象的なお料理ばかり。中でもお気に入りなのは「勾玉豆腐」、名前の通り、カシューナッツで作られた豆腐、コクがある味わいが特徴です。
お椀 清汁仕立て
天蕪と鯛の焼き霜を合わせた清汁仕立てのはずだったのですが、鯛が入っていないお椀、食べ終えてから献立を見て鯛が入っていないことに気がつきました。鯛が楽しめなかったのは残念でしたが、出汁の香りが心地よく、体にすっと沁み渡る一品でした。
造り 旬魚三種盛り
鯛と鮪のお造りです。鮮度の良さはもちろん、あしらいの美しさまで含めて目にも楽しいお料理。特に口の中でとろける鮪が美味しいもの。
焼物
焼物は、岩魚の唐揚げに白髪葱と甘酢餡がかかったもの。岩魚は2度揚げされているので、頭から尾まで丸ごといただけるもの。とても香ばしく、甘酢餡の穏やかな酸味がほどよく調和します。カルシウム不足解消のためにも、頭から丸ごといただきました。
進肴
和牛石焼きは、熱々に熱せられた石に和牛が載せられて供されました。和牛は塩と山葵で上質な旨みを引き出すシンプル、王道のスタイルでいただくもの。口に入れると肉汁が口の中に広がります。脂のさしがよいのかとても柔らかくてジューシー。もう少し食べたいと思ったものの、コース全体のボリュームを考えるとこのくらいがよいのかもしれません。熱を帯びた石の上で焼き上げられる香りが食欲をそそります。
止肴
温州和えには歯ごたえがある野菜がさっぱりした味付けでまとまっています。蟹の身にとんぶりと豪華な内容。
飯・止椀
山芋ご飯のせいろ蒸しは、ふんわりとした食感に滋味深さが重なり、心がほっと和むような優し佃煮が美味しく、田舎味噌仕立ての椀とともに、食事の流れに静かな余韻を添えてくれます。
水物
オレンジヨーグルトプリンとサツマイモの冷たいお汁粉、お汁粉はとろとろで甘いもの。わずかですが甘いものがあると食事を楽しく終えられます。
どのお皿も丁寧な盛り付け、プレゼンテーションを意識したお料理ばかりのコースを楽しませてもらいました。
燈々庵は、
・静かで品のある空間
・ほどよく距離を保つ接客・席間が広く、落ち着いて話せる環境
これらの要素が揃っているため、家族の節目や少し改まった会食にとても使いやすいお店です。都心から距離があるにもかかわらず、「ここまで足を運んでよかった」と素直に感じられる特別感があるのは、景観・建物・料理・空気のすべてが調和しているからこそだと思います。
あきる野「燈々庵」は、単に懐石をいただく場所ではなく、“時間そのものの豊かさ”を体験できる特別な空間だと思います。美しい庭園に囲まれながら、丁寧に設えられた室内で味わう四季の懐石、家族との会食や改まった席を安心して任せられるお薦めの懐石料理店です。