2回
2024/07 訪問
そば王国山形を代表する大正9年創業の板そばの名店(#あらきそば)
あらきそば
(山形県村山市)
●うす毛利にしん付き 1630円
JR奥羽本線・村山駅から車で15分、田園風景が広がる郊外にある大正9年(1920年)創業の老舗そば屋「あらきそば」。"そば王国"の山形を代表する有名店。
山形県内各地では、古来からそばが伝統食として根付いており、「板そば」や「肉そば」「げそ天そば」「かいもち(そばがき)」といったご当地そばも存在する。最上川の上流の地域では、昼夜の寒暖の差が大きく、霧が発生しやすい環境で、蕎麦栽培の好条件がそろっているそうだ。
こちらの「あらきそば」はそば好きの間では知らない人はいないと言われる有名店。フランス外務省が2015年に発表した世界各国の1000の美食店のランキング「ラ・リスト(LA LISTE)」の中で、日本国内の飲食店127店中、東北地方で唯一ランクインするという快挙を達成している。
周辺の大久保地区の各農家では、昔から蕎麦の栽培を行っており、各家庭でお手製の蕎麦を打って食べていたが、「あらきそば」の創業者である芦野勘三郎さんは、そんな地元で随一の蕎麦打ちの名人と謳われていた人物だった。
地元の農家や商家の人々に慰労の場や寄り合いの席を提供し、近隣の人々が交歓できるような場を設けようと「あらきそば」を創業。その腕の良さからすぐさま評判となり、昭和天皇の弟(高松宮様)も、何度かこちらを訪れて蕎麦を食されたそうだ。
ちなみに店主の名字は芦野(あしの)さんだが、店名が「あしのそば」ではなく「あらきそば」となったのは、初代の芦野勘三郎さんの父親が、江戸時代の剣豪・荒木又右衛門に心酔していたため、それにちなんで屋号を「あらきそば」としたそうだ。
メニューはもりそば(板そば)と鰊(にしん)の味噌煮のみ。蕎麦の量はうす毛利(もり)で400g、半毛利で200g。創業時はもっと量が多く、一人前で800g近くあったが、食べ切れない人が多かったので、蕎麦を減らして薄く盛りつけた「うすもり」が標準になったそうだ。
「うす毛利にしん付き」(1630円)をチョイス。秋田杉の柾目(まさめ)の板で作られた長さ50cm以上もある長方形の浅い木箱に盛られて提供される「板そば」。
山形県の内陸部では古くから蕎麦の栽培が盛んで、農作等の共同作業や集会後に蕎麦を振る舞う風習があり、長い板や木箱に蕎麦を盛りつけた「板そば」は、多人数で蕎麦をつつくのに一度に盛れて便利なことや、留守の家人への土産として蕎麦を箱に入れて持たせたのが発祥とされている。
東京の喉ごしで味わう細切り蕎麦の文化とは異なり、気候の厳しい山間部では非常時の蓄えである「備荒食」として、寒さに強い蕎麦を栽培しており、米に代わる主食としての役割なので、蕎麦単体でお腹いっぱいになるためボリュームが多く、良く噛んで食べるのが特徴。蕎麦が主食なのでおかずが付くことも多い。
もう一つの名物である「にしんのみそ煮」は北海道岩内産の厳選して仕入れた身欠鰊(みがきにしん)を、自家製の麹味噌で丸一日じっくりと煮込んだ逸品。煮汁は50年以上継ぎ足しているため真っ黒な見た目。にしんの旨みが長年凝縮された煮汁の味噌ダレは、箸でつついて舐めるだけで酒が飲めそうなほどの濃厚さ。
2025/07/16 更新
あらきそば
(山形県村山市)
JR奥羽本線・村山駅から車で15分、田園風景が広がる郊外にある大正9年(1920年)創業の老舗そば屋「あらきそば」。
そば好きの間では知らない人はいないと言われる有名店。フランス外務省が2015年に発表した世界各国の1000の美食店のランキング「ラ・リスト(LA LISTE)」の中で、日本国内の飲食店127店中、東北地方で唯一ランクインするという快挙を達成している。
建物は180年ほど前の江戸末期に近隣の村に建てられた田舎家で、現当主の祖父が明治初めに譲り受け、現在の場所に移築したものだそう。茅葺(かやぶき)屋根の古民家は、情緒たっぷりでゆったりした空気が流れている。
入り口を入るとすぐに古い囲炉裏があり、店内は30畳ほどの大広間ひとつだけで、特注の縁(へり)をつけない「野郎畳」が敷き詰められている。歳月の流れの中で磨き上げられた柱や板壁、天井の梁などは、黒光りして重厚な存在感があり、庶民的な雰囲気のなかにも洗練された風情が漂っている。
メニューはもりそば(板そば)と鰊(にしん)の味噌煮のみで、天ぷらはおろか「かけそば」すら置かない潔さ。
●うす毛利にしん付き 1800円
「うす毛利」は太い田舎蕎麦が秋田杉の柾目(まさめ)の板で作られた長さ50cm以上もある長方形の浅い木箱に盛られて提供される。
蕎麦の量はうす毛利(もり)で400g、半毛利で200g。創業時はもっと量が多く、一人前で800g近くあったが、食べ切れない人が多かったので、蕎麦を減らして薄く盛りつけた「うすもり」が標準になったそうだ。
東京の喉ごしで味わう細切り蕎麦の文化とは異なり、気候の厳しい山間部では非常時の蓄えである「備荒食」として、寒さに強い蕎麦を栽培しており、米に代わる主食としての役割なので、蕎麦単体でお腹いっぱいになるためボリュームが多く、良く噛んで食べるのが特徴。蕎麦が主食なのでおかずが付くことも多い。
こちらの蕎麦は地元村山産の「でわかおり」という品種で、殻のついたままの玄そばをお店で毎朝その日使う分だけ自家製粉している。とにかく麺が太くて、江戸前の細切りそばの3~4本分はありそうな極太蕎麦。
つなぎを使わない十割の太い田舎蕎麦で、強いコシがあり、すするというよりもぐもぐとしっかり噛み締めて味わうタイプ。噛めば噛むほど挽きたてならではの強い蕎麦の香りが口に広かる。
もう一つの名物である「にしんのみそ煮」は北海道岩内産の厳選して仕入れた身欠鰊(みがきにしん)を、自家製の麹味噌で丸一日じっくりと煮込んだ逸品。煮汁は50年以上継ぎ足しているため真っ黒な見た目。にしんの旨みが長年凝縮された煮汁の味噌ダレは、箸でつついて舐めるだけで酒が飲めそうなほどの濃厚さ。