syu888goさんが投稿した焼肉 うしなり(静岡/静岡)の口コミ詳細

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焼肉 うしなり静岡、新静岡、日吉町/焼肉、居酒屋、韓国料理

1

  • 夜の点数:4.7

    • ¥10,000~¥14,999 / 1人
      • 料理・味 5.0
      • |サービス 4.5
      • |雰囲気 4.0
      • |CP 4.0
      • |酒・ドリンク 4.0
1回目

2025/06 訪問

  • 夜の点数:4.7

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス4.5
    • | 雰囲気4.0
    • | CP4.0
    • | 酒・ドリンク4.0
    ¥10,000~¥14,999
    / 1人

『血統』を辿って── 焼肉 うしなりで出会った、万葉牛という名のロマン


血統という言葉には、不思議な引力がある。

かつて私はサラブレッドの世界に魅せられ、競走馬の血統表を夜な夜な読み漁っていた。

父と母、そのまた祖父母まで遡ってゆく中に、ロマンがあった。
人の手と時間が積み重ねた、偶然ではない偶然の美。
そうした目線で「ブランド牛」を眺めてしまう癖は、いまも変わらない。

静岡市内、複合ビルの2階に構える焼肉店「うしなり」は、そんな“血統主義者”の心をそっとくすぐる場所だ。

この日の目当ては、鳥取・谷口畜産の谷口拓也氏が手がけた「万葉牛」。
牛一頭にかける愛情、育成環境、血統管理、そしてオレイン酸の含有量──
スペックだけでは語りきれない「育ての思想」を、皿の上にそのまま感じられる稀有な牛肉だ。

万葉牛が今日どの部位で入っているか、女性スタッフに尋ねたところ、オーナーの仲村一成氏がわざわざ席まで来て丁寧に教えてくださった。

その後もしばらくメニューに目を落とし迷っていると、再び仲村氏が現れ、「すごいのが入ってますよ」と、ひと声。
すすめてくれたのは、艶やかに霜が入ったリブロースだった。

その表情には、ただ“売る”ではない、“繋ぐ”という感覚があった。
育て手から焼き手へ、そして食べ手へ。
物語のバトンのような所作だった。

但馬系の系譜を受け継ぎ、鳥取の風土の中で丹念に育てられたその牛は、サシの入り方が実に細やかで美しい。

ただ「脂が甘い」では済まされない。

体温でさらりと溶ける低融点の脂は、旨味の通訳者のように赤身の持つポテンシャルを押し上げる。
しっとりとした舌ざわりとともに、香り立つのは“育ちの良さ”そのものだ。

──まず口にしたのは、『ランプ』

赤身の王道ともいえる部位だが、万葉牛のそれは、サシと筋繊維のバランスが見事に調律されていた。
噛むほどに上質な獣香とコクが広がり、どこまでも品がある。

── 『ウチモモ』は、さらに端正な印象。

脂の演出を控えめにした分、繊維のしなやかさと旨味の密度が際立ち、“知的な赤身”という表現がしっくりくる。

──そして極めつけは、仲村氏が直々にすすめてくださった『リブロース』

一瞬、目を奪われるようなビジュアルだった。
光を受けてきらめく細かな霜降り、その奥に透けて見えるサシの構造美。
焼き目を付けると同時に甘い香りが立ちのぼり、口に入れると儚く溶け、残るのは“香りの記憶”だけ。
これほど余韻の美しい脂を、私は他に知らない。

──さらに万葉牛の『トモ三角』もいただいた。

こちらは谷口氏の牛ではなかったが、甘味の質に少し異なるニュアンスがあり、比較することで育て手の思想が舌先で読み解けるような、そんな体験となった。

──サイドには、『特選レバー(ごま油塩)』

牛の健康状態がそのまま映ると言われる部位だが、ここまでクリアでミネラル感のあるレバーには滅多に出会えない。

── 『季節野菜のサラダ』は肉の濃厚さをほどよく中和してくれる。

──炊きたての『ご飯(中)』は、旨味を静かに受け止めてくれる余白のような存在だった。

料理としての完成度は言うまでもないが、真に特筆すべきは“人の手”が常に感じられること。

肉の説明、提供のタイミング、客との距離感、そのすべてに「肉を売るのではなく、物語を届ける」という意志があった。

万葉牛に込められた血統の物語。
そしてそれを届ける「うしなり」という舞台。

帰り際、仲村氏が再び出口で声をかけてくれ、僅か数分ではあったが一寸光陰では辿り着けない『質』の会話が展開される。

「ブランド牛、お好きなんですね」

嬉しくなって、つい自分の過去を語ってしまった。
「昔からサラブレッドの血統を見るのが好きで……だから牛の血統にもロマンを感じるんです」

その言葉に、仲村氏はわずかに口角を上げて、こう返した。

「沼っすね」

たった一言。
だが、その一言の重みに、深く分かり合えたような快感があった。

「うしなり」は、ただの“美味しい焼肉店”ではない。

ここには、命と育て手の物語があり、それを届ける“通訳者”のようなオーナーがいる。

肉が好きな人、ブランド牛を知りたい人、育てる人に敬意を持ちたい人──

そんな人には、ぜひ一度訪れてほしい。

この場所では、皿の上にただの「料理」ではなく、“血統というロマン”が供される。

だから、また来たくなる。

その奥行きにもう一度、心を預けたくなる。

  • 『リブロース』口に入れると儚く溶ける

  • 『トモ三角』

  • 『ウチモモ』繊維のしなやかさと旨味の密度が際立つ

  • 『ランプ』赤身の王道ともいえる部位

  • 『特選レバー(ごま油塩)』クリアでミネラル感がある

2025/06/16 更新

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