「あいつは高いモノしか食べない」と揶揄されることが多い私ですが、そんなことは全くなく、B級グルメにも幅広く取り組んでおり、ヒールからスニーカーまでイケるタイプです。何が言いたいのかというと、私は鳥貴族のことがかなり好きです。愛していると言ってもいい。近所の麻布十番店には平均すると週に1度は訪れているかもしれません。
というのも、十番の飲み屋は意外に夜が早く、また、営業していたとしてもシャレオッティなバーやハイカラな飲み屋が殆どであり、そのいずれもが例外なく割高なんですよね。てっぺんを回ってからは、私は友人とお喋りをしたいのであって、本気で飲み食いしたいわけじゃない(本気の飲み食いは健全な時間帯に完了している)。したがって、深夜においてはドリンク数杯と簡単なツマミ数品で充分。それなのに、十番の気のきいた飲み屋だと、ひとり5,000円近くも要してしまうんです。
気分的にはちょっとお茶したいだけなので、毎回5,000円を支払うのは私の価値観とは異なる(5,000円あればかなり上等なワインを酒屋で買うことができる)。したがって、その時間帯にお誘いを受けた場合には、意識的に「鳥貴族にしよう」と提案するようにしています。
と、一見消極的な理由で鳥貴族に訪れているようですが、実際にはお邪魔する度に大満足で帰宅しています。あの価格でこれだけ整合的な料理を提供できるのは奇跡に近い。家賃との兼ね合いもあるはずなのに、周辺の飲食店の3~4分の1の価格でどうやっていけるのか、いつも不思議に思います。
二毛作のランチ営業は行わず、昼から夜の営業前まで何時間もかけ、店舗で1本1本丁寧に串打ちを行う姿勢に敬服。食材(生鮮食品・加工食品)全てが国産という哲学にも拍手喝采。これはもう、日本という神経病的に調律されたエコシステムを食すレストランと言っても良いかもしれません。
めくるめく費用対効果の世界へようこそ。
【オススメ1】もも貴族焼いわゆるネギマです。特筆すべきはそのボリューム、一般的な焼鳥の2~3倍はあります。肉はしっとりと柔らかくジューシィで普通に美味しい。
味付けは塩・スパイス・タレの3種から選ぶことができるのですが、オススメはタレ。街の焼鳥屋と同等の味わいです。塩は素材の質がダイレクトに出てしまうので、2本280円の焼鳥にそれを求めるのは厳しい。スパイスはスナック菓子の味付けパウダーのようであり、化学調味料っぽい点が気になります。
【オススメ2】むね貴族焼むね肉のネギマです。前述のもも貴族焼はジューシィさが記憶に残りますが、こちらはふっくらという印象。それにしてもこの費用対効果の高さは異常です。コンビニの焼鳥ですら1本百数十円するというのに、当店は焼きたてをこのボリュームで2本280円!
【オススメ3】とり釜飯テーブルの上で30分かけ、鶏ガラスープでじっくり炊き上げる逸品。
量はお茶碗2杯分とたっぷり。280円でこれだけやられてしまうと、自宅で炊き込みご飯を作るのがバカらしくなってきます。コンビニおにぎりで換算すると、その費用対効果の高さがわかり易いでしょう。
【オススメ4】トリキの唐揚いわゆる普通の唐揚です。が、味は街の専門店と同等かそれ以上です。それでいて280円なのだから堪らない。淡路島産の玉ネギを使用したオニオンスパイスがクセになる味わい。
【オススメ5】鶏しそ巻き天ぷら評価が分かれるかもしれませんが、私は好き。とにかく柔らかいムネ肉を包む紫蘇の爽やかさ。厚ぼったい衣はイマイチです。面白いのは付随する紀州梅肉ソース。確かに梅の味はするのですが、なぜかマックナゲットのバーベキューソースの風味に似ており、ノスタルジアを感じずにはいられません。
【オススメ6】ホルモンねぎ盛ポン酢数量限定。遅い時間にお邪魔するとかなりの確率で売り切れています。もつ鍋屋の高尚な酢もつなどに比べるともちろん質は落ちますが、その量と価格を考えると納得感は大いにあります。たっぷりのネギとポン酢と一緒に食べれば臭みなどはそう気にならないでしょう。
【オススメ7】キャベツ盛キャベツです。もちろん普通のキャベツなのですが、280円でおかわり自由。個人的にはこれさえあればサラダは不要。口元が寂しくなればひたすらパリパリポリポリ食べています。
以上、オススメメニュー7選でした。
【イマイチなメニュー】ところで、1品280円という限界を感じざるを得ないメニューも散見されます。
例えば串焼き全般。前述の「貴族焼」には圧倒的な迫力を感じるのですが、その他の焼鳥メニューは至って普通です。色々なメニューを試してみたくなるのが人情ですが、「貴族焼」と比べると相対的に魅力を感じるメニューは見当たりませんでした。その他、「よだれ鶏」「もちもちチーズ焼」「カマンベールコロッケ」のような企画モノも今ひとつ切れ味が悪いです。
また、飲み物も全体的にイマイチです。プレミアムモルツが280円なのは嬉しいですが、きちんとしたビアバーで飲むそれに比べると味気なく感じます。また、焼酎は驚くほど量が少なく、ハイボールについても氷ばかりで飲むべきところは殆ど無い。日本酒やワインに至っては全くもって美味しくない。そのため私は味気ないといいつつも、結局ひたすらプレミアムモルツばかり注文してしまう。
もちろん、これらイマイチなメニューについては、オススメメニューと比べてイマイチというだけであり、単価を考えれば物凄い企業努力です。したがって、当店を気持ちよく楽しむためには、良いメニューに出遭えればラッキー、イマイチだったらまあ280円なんだし、と、大らかな気持ちで臨むことが肝要でしょう。
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