2回
2024/06 訪問
選んだ孤独は良い孤独
乃木坂駅から徒歩数分の住宅街にある「Lacouleurd'ete(ラクルールデテ)」。ワンオペで客席数を極端に絞ったガチンコのフランス料理店です。なお、このあたり道路が狭く不慣れなタクシーだと厳しい世界なので、大通りで降りることをお勧めします。
店内はシェフズテーブルとテーブル席がひと塊。あのカウンター席はすごいなあ。本当に目の前で、料理の鉄人を目の前で観るような迫力がありそう。古の腐女子が喜びそうな誂えです。
藤井トモヒロシェフはフランスで経験を積んだのち、銀座「カーエム」で宮代潔シェフの薫陶を受けた後、代田橋のビストロ「ミルエテ」をオープン。数年前に病気で死にかけた時に、やっぱ人生、本当にやりたいことをやらなきゃダメだと決意し、当店を開業したそうです。
ワインペアリングは90ミリリットルが4杯で5,500円と良心的。内容についても、ご自身の料理に合う上質なワインを新旧世界問わず見つけ出しており好感が持てます。もちろんたっぷり飲みたい場合も相談可能です。
まずはグリーンピースのムース(?)にコンソメのジュレ、生ハム。カチっと冷たく心地よい舌ざわりの上、旨味はたっぷりで酒を誘います。甲殻類の香りもプンプンに感じられ、食欲をそそるひと品です。
ホタルイカは焼いたり揚げたり自由自在。芽キャベツや空豆、ウドなど旬の食材が百花繚乱。素材の良さが際立つひと皿です。野菜って美味しいなあ。
ホワイトアスパラガスもジューシーな仕上がりでバリ旨い。パイ生地をザックザックと掻き分けオレンジの風味が香るコッテリソースをたっぷりつけて至福のひと時。
パンも自家製で、この日はレーズンの酵母を用いたもの。ミチっとした密度があり、発酵バターと合わせて食べるだけでとっても万歳。もちろん料理のソースを1滴も逃すまいと、スパチュラ代わりにも活用できます。
キジハタは思い切り良く炙っており、そのザクザクとした歯触りにテンションは爆上がりです。春菊を練り込んだニョッキにオマールの風味が効いたソースと、魚料理として最上級の逸品です。
グラニテにはブラッドオレンジを用いており、ラベンダーの香りが漂うのも心地よい。こういった小さなひと品にまで注意が行き届いており、シェフは病膏肓にゾーン入ってます。
メインディッシュにはイノシシをお願いしましたが、おっふ、とんでもないボリュームでやって来ました。イノシシは丹波篠山のものであり厚ぼったい脂が内臓を直撃。肉に負けないパワフルなソースも堪らなく旨く、フランス料理における肉料理のひとつの最適解と言えます。
連れはオックステールを注文したのですが、おんみょ~ん、これまたとんでもないサイズ感です。成人男性のゲンコツを超えソフトボールに近い大きさで、この迫力は大学で言うとオックスフォード級でしょう。ワンオペなのに個々人でメインディッシュを選ぶことができるというのも嬉しい。
デザートはヴァシュランで、気絶しそうなほどに満腹だったのですが、カルダモンの香りに誘われ思いのほかスイスイと食べ進めることができました。
以上のコース料理が1.3万円で、追加料金でジャンジャン飲み食いしてお会計はひとりあたり2.5万円。これはもう、フランス料理として完璧ですね。素晴らしいの一言に尽きる。シェフの選んだ孤独は良い孤独であった。
■写真付きのブログはコチラ→ https://www.takemachelin.com/2024/04/dete.html
2024/06/10 更新
乃木坂の住宅街にある「Lacouleurd'ete(ラクルールデテ)」。私の東京フレンチとっておきの1軒であり、クラシックど真ん中のフランス料理を楽しむことができます。住宅街といっても乃木坂駅から歩いて数分の好立地。国立新美術館とセットで来るにピッタリです。
店内はシェフズテーブル2席とテーブルに6席。いわゆるワンオペでの運営で、シェフは料理人であり、ソムリエであり、サービスマンでもある。4人以上であれば貸切OKなので、ちょっとした会食にも大活躍です。
ワインのペアリングは5-6千円と、都心のこの手のレストランとしては驚くほど良心的な価格設定で提供されます。我々は1.5万円の「海の幸と野菜を楽しむコース」をオーダーしつつ、お酒はシェフにお任せでジャンジャン飲んだのですが、それでも最終支払金額は2.5万円程度に着地しました。
まずはトウモロコシのポタージュ。旬のトウモロコシの自然で優しい甘みが溶け込んでおり、パンプキンシードオイルのナッティーな風味が味覚に彩りを添えます。生ハムの塩気が甘さを引き締め、味に奥行きを加える。
最初の魚介はシロアマダイ。パリパリと香ばしく焼き上げられた鱗と、ふっくらと甘い白身の対比が心地よい。その下に添えられたナスは滋味深いブイヨンをたっぷりと吸い込み、口の中でとろけるように旨味を放出します。
パンは素朴ながら穀物の風味をたっぷりと感じることができる逸品。上質な発酵バターと合わせて食べればそれだけで立派なごちそうです。
神通川の天然鮎。シェフのズっ友が半分趣味で獲ってくれるそうで、その身に宿る上品な甘みと内臓のほろ苦さが特長的。米粉の生地でパリっとした食感を演出しており、また、トリュフ香るソースの濃厚で土っぽい芳香が鮎の清涼感と対比し、奥深い味わいを加えます。
鮑のパイ包み焼き。サクサクの香ばしいパイ生地の中から、肉厚で弾力に富んだ鮑が姿を現します。鮑そのものの凝縮された旨味と磯の香りに、濃厚でほろ苦い肝のソースが絡み、味わいに深いコクと奥行きを与えます。添えられたカリフラワーのペーストは滑らかで優しい甘さが口当たりを軽やかにし、ラタトゥイユの野菜の酸味と甘みが彩りを添える。これが、フランス料理だ。
お口直しにグレープフルーツのグラニテ。特有の爽やかな香りと、キリッとした酸味、そして心地よいほろ苦さが見事に凝縮されています。
メインは鰻とフォアグラ。鰻のふっくらとした食感とフォアグラのとろける口当たりが調和しており、双方の濃厚なコクが融合します。下に敷かれたリゾットはプチプチもちっとした食感で、穀物の素朴な甘みが主役の濃厚さをしっかりと受け止めます。中には玉子も組み込まれており、とろりとした黄身が全体をまろやかにまとめ上げ、どこか鰻玉丼を思わせる懐かしくも新しい味覚です。ボリュームもたっぷりだ。
食事の量がとんでもないのでデザートは控えめサイズ。日本酒の風味がきいたチーズケーキであり、滑らかな口当たりで、チーズのまろやかさと日本酒の軽やかな酸味が絶妙なバランスを生みだします。添えられた完熟マンゴーのトロピカルな甘さも魅力的。
以上を食べ、たっぷり飲んでお会計は2.5万円。前回お邪魔した際は気絶するほどの量の肉料理を楽しみましたが、なかなかどうして魚介類に絞ったコースも見事です。私は理屈抜きにここの料理が好きだ。次回は秋冬にお邪魔して、ジビエ主体に濃厚なソースをたっぷりと楽しみたいと思います。
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