3回
2022/06 訪問
デパート内の庭の見える落ち着いた空間でいただける日本料理の最高峰の一つ
横浜駅東口のそごうは、ブランドフロアの充実からもわかるように昨今では珍しいほど正統派の百貨店ですが、上階のレストラン街も名店揃いです。その中でも1・2を争うのがこの大和屋さんでしょう。店内に入ると、此処がデパートの一角であることを忘れてしまうほど瀟洒な佇まいです。店内には東大寺の高僧の手になる「洗心」の額がかけられています。
平日の昼ということで、お手軽に季節の食材を楽しめる会席料理である「あしべ」を注文しました。献立は月替りのようです。
先付は枝豆豆腐で、鮑・アスパラ・マイクロトマトのほかキャビアも上品に散りばめられていました。出汁の旨さに1品目から感動を味わいました。
吸物は茗荷真丈。湯葉・つる菜・白木耳に木の芽が添えられていましたが、茗荷が勝ち過ぎることのない実にバランスの良い味わいです。
お造りは胡麻たれの上に載った勘八。茗荷のほか赤いかいわれ「ベニーナスプラウト」が彩りを添えていました。スパークリングワインに合いました。
焚合せは米茄子。そこにオクラとなめこ霙餡掛け。これほど美味な茄子は頂いたことがありません。
焼物は福子雲丹焼。小振りの鱸がふっくらと焼き上げられ、実に味わい深い雲丹が添えられています。そこに唐墨香煎、そしてさつまいものレモン煮や酢蓮根・枝豆です。山椒の香りが微かに感じられるさつまいもの虜になりました。
竃(へっつい)で炊くふっくらとした艶のあるお米は、本当にご飯だけでも楽しめる一品でした。香の物がついています。味噌汁も最高のバランスです。
デザートはフルーツ白玉ぜんざい。桜桃・苺・メロンが甘さを引き立ててくれました。
昭和の時代、松下電器に勤めていた父が「松下幸之助しか行かれへんような店」と言っていたこの大和屋さんですが、デパートに出店してくれているからこそ体験することが出来たのです。私自身、人生最高の日本料理に出会えた今日のお昼でした。
2022/08/24 更新
7名だったので個室を予約しましたが、土日祭日の昼の予約に関しては予約時間を分けているとのことで、13:30からと遅い入店となりました。「季節の食材で上方文化と上方料理を堪能できる、大和屋ならではの会席フルコース」という『桐』をお願いしてありました。
ファーストドリンクはスパークリングワインを注文。正解でした! 酔っ払う前にスタッフが記念写真を撮ってくれました。
お料理は前菜が3品でしたが「しろ菜と椎茸のお浸し」は上品な味付け、「銀杏豆腐」には餅銀杏が載せられ生雲丹が添えられていましたが、少量でも妥協していない生雲丹に驚かされました。そして吹寄せ麩が添えられた「燻製盛り」も、前菜でありながら牡蠣・帆立・秋鯖それぞれに手をかけていることが感じられる1品でした。
吸物は「零余子(むかご)真丈」散らされた蔓菜・紅葉人参・木茸・柚子も秋を感じるもので、葛水仙が入っているのは初めていただきました。
お造りは「二種盛り」とはいえ素材の良さが眼でも舌でもすぐ分かるものでした。鮪とろが絶品でした。生ビールにも合いました。
焚合せは「百合根饅頭」が蕎麦の実餡に浮かび紅葉麩が添えられたもの。あのもっちりとした食感はどこから引き出されているのでしょう? ただ、餡の塩味がやや強めのようにも感じました。
焼物は「鰆 鴫焼き」菊花大根・紫花豆蜜煮・四角豆焼浸しのほかに栗も添えられていました。こちらもひとつ一つに手を抜いていないことが感じられるものでした。県内では2件でしか小売されておらず幻の酒と呼ばれる伊賀の「而今」があったのでそれも注文。華やかでフルーティーな味わいは、まさに新時代の日本酒を感じさせるものです。
止肴の「蒸し鮑と雲子」は梵酢ジュレがかけられ青葱を添えたものでしたが、鱈の白子の調理にうなりました。あれほどなめらかかつ味わい深い白子は食べたことがありません。
こちらのご飯は、竃(へっつい)で炊くふっくらとした艶のあるお米の虜となる旨さなのですが、今日の食事は、「ふぐ鮭いくら御飯」でした。いくらのプチっとした食感に驚く贅沢なものでしたが、赤出汁と香の物に合う白飯をいただきたいとも思ってしまいました。
デザートは「柿ムース」旬の果実であるシャインマスカットが添えられたものでしたが、ムースの滑らかさはもちろん微かながらしっかり感じる柿に驚く美味しさでした。ミントはともかくホイップクリームは要らなかったかも知れないとまで思いました。
昭和の時代、松下電器に勤めていた父が「松下幸之助はんしか行かれへんような店」と言っていたこの大和屋さんですが、そごう横浜店に出店してくれているからこそ体験することが出来るのです。久しぶりの入店でしたが、相変わらずの最高峰の味わいに加え、スタッフのさまざまな気配りに流石の銘店と感じた1日となりました。