はらぺーにょ@大阪さんのマイ★ベストレストラン 2012

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僕の好きなお店達

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はらぺーにょ@大阪 (40代前半・男性・大阪府) 認証済

マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

コメント

【所感】
2012年を振り返ると結構全国各地の特色あるお店に挑戦した年だったように思う。

友人にはそれを指摘された事もあるが、どうしても☆3.5をつける事が多く、
意図的に☆3.0や☆4.0をつけるように心掛けたせいで
ランキングに入れる事の出来ない良店もたくさんあった。

又、ジャンル別にみると居酒屋のレビューが増えたのが特徴だろうか。
食べログでもマイレビュアー様のレビューを参考にさせて頂く回数が増えて
同じエリアならエリアで重点的にレビューする事を意識し始めたように思う。

【ランキングについて】
2011年は昔からよく通っていたお店がほとんどで
個人的にはさほど面白いランキングにはならなかったのが実は不満だった。

ただ今年に限っていえば総合点に準拠して上からチョイスしただけなのだが
よくもまあこんな変わったセレクトになったもんだと首をひねらざるを得ない。

改めて見てみるとランキングに入っているお店は
すべて運営している人が店名の向こうに透けて見える
居心地の良い名店が揃ったように思う。
皆さん毎日大変な工夫をされているのだろうと頭の下がるばかり。

まだまだご紹介出来ていないお店が山のようにあるが
2013年も引き続き勉強させて頂きつつご披露して
より面白いランキングをお目に入れたいと思う。

マイ★ベストレストラン

1位

料亭旅館 臨水 (高知城前、県庁前、大橋通 / 料理旅館、日本料理、海鮮)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.6
    • | CP 4.6
    • | 酒・ドリンク 4.6 ]
  • 使った金額(1人)
    - -

2012/08訪問 2012/09/05

【再訪】お座敷遊び入門も出来る美味しい楽しい料亭旅館: 料亭 臨水

2012年9月再訪。

遂に宿泊を果たしたので記念レビュー。
今回はこの宿の目玉の「思い出の間」に泊まった。
これが素晴らしいお部屋。
詳しくは避けるが豪華絢爛な天井画、欄間、柱に大感動。
これを見るだけで価値がある。

そしてやっぱり料理とおもてなしの良さが際立ちますね。
女将さんとお姉さんの気遣い、盛り上げ方がすごい。
サービス業の鑑。皆にお手本にして頂きたい。

お座敷遊びが楽しすぎてずっと笑っていた。

今回分かった事、厳選して二つ!

・元々ここは山内家の宝物館(下屋敷)。
・女将さん(みっちゃん)は地酒アドバイザー。
(10年物の地酒には本当に驚きました。有難う。)

また初めて朝のご飯も頂きましたがこれが良い。
朝から赤牛のすき焼きが食べられるとは。
至せり尽くせりとはこの事。

お風呂も面白い趣向ですよ。
高知に行ったら一度は泊まってみたいお宿。
満点!

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2011年12月訪問時レビュー。
さて今回の高知旅行で楽しみにしていたお座敷遊び入門。
土佐久礼の大正町市場から桂浜、酔鯨酒造を経てここ臨水へ。

帯屋町のあたりからぼちぼちと南に向かい、鏡川沿いを西に入る。
少々歩くと右手に何やら感じのよさそうな旅館が・・・。
最寄り駅は高知城駅前になるだろうか。

木造だが気品のある二階建ての佇まい。
少々気圧されつつも入り口をくぐるとお姉さんがお迎えにきてくれた。
ささっと二階の個室に通されてコートやらを個室の脇の方に預ける。

はー、何やら良い感じのお部屋である。
宴会だけの利用に使ってもいいのかしらと外を見ると鏡川が見え気分が良い。

今回はお座敷遊び入門(10,500円)を二人で予約しておいた。
(三人以上だと一人あたり7,000くらいで出来る様子。)
ホテルは別だったのでこんな素敵な部屋に泊まらないのは残念だなぁと反省。
とりあえずこの入門とやらには一人につきビール瓶1本とお銚子が2本ついているらしい。


着席すると既に宴席の用意はバッチリ。
それぞれの料理の説明を受け、ビールを頂く。

最初にあったお料理をぼちぼちやっつける。

・カツオ、サバ、ミョウガのお寿司

どれも質もよく美味しい。
つまみに良いですね。

・どろめ、酒盗、チャンバラ貝

どろめとは生シラスの事で鰯の稚魚である。
どろめ祭りが毎年開かれたりとここ高知では非常にポピュラー
かつ非常に新鮮などろめがいつでも手に入る。
これは綺麗に洗ってあり臭みなく美味い。

酒盗はもちろん美味いが日本酒用にとチビチビ。

チャンバラ貝。高知には面白い貝があるもので
長太郎貝というカラフルな貝の他、チャンバラ貝も有名らしい。
チャンバラ貝の由来は海底で触手の先についた殻(刀というか小判状)で
チャンバラするように戦うかららしい。
しかも見たことはないがカタツムリのように目が触角のように出ており、
しかも白目があるので砂出ししている際に目が合うと妙な気分になるらしい。

とまあ色んなエピソードがあるのだが味は良い。

・カツオ、ウツボのたたき

お昼に既にカツオの刺身を食べていたので期待はしていなかったが
どうしてどうして非常に美味い。
雑味が一切無く炙ってある事でむしろ美味くなっている。
今まで食べたといっても数える程だが、その中では一番美味い。

ウツボのたたきは意外と普通の白身魚といった感じ。悪くない。


そしてここらへんで小鍋に火が。

・クジラとニンニクの芽、うどんのすき焼き風

ニンニクの芽を使うのはオリジナルらしいが
これもなかなかうまい。
醤油で甘辛く味付けされたうどんが良い。


さあここらへんからいよいよお座敷遊びである。
お姉さんが教えてくれるのだが、そこに三味線を持った女将も登場。
女将のトークがまた面白いのである。

そしてよく飲む。
勝手に飲むし、注がせてくるのだからたまらない(いや、面白いのだが)。

教えてもらったのは定番所。

可く杯はもちろんトップバッター。
可く杯はそもそも「可く」というのが文法上、下に置けない為、下に置けない杯という意味だが、
その中でも有名な天狗とひょっとこ、おかめにコマがついているやつである。
これをべろべろの神様を歌いながら廻すのである。
なんでもべろべろの神様は天井に張り付いて宴席を見ておられるそうで、
その神様に色々伺って遊ぶのが本来の遊び方だとか。
例えば、「スケベな人」がこの中の誰かといるか伺うといったように歌におりまぜて聞き、
コマの柄が倒れた人(つまり飲む人)が「スケベな人」といった塩梅である。
まあ楽しいのである。

お次は花拳。俗称菊の花である。
お猪口を逆に伏せて一つだけ菊の花を忍ばせておき、
順番に開けて行って菊の花が出た人が飲むというルール。
これも楽しいのである。

そして箸拳。三本の箸をそれぞれに持ち、相対して相手と自分の手の中にある箸の合計を当てるゲーム。
中国から鹿児島、そして高知に伝わったのだが少々高知では変わったルールとなった。
攻撃側は3しか言えず、防御側は1,5しか言えないのである。
決まった数しか言えないのである程度戦略は決まってくるのが面白い。

最後はしばてん踊り。
しばてんとは皿のない河童の事であり、その河童を模した手ぬぐいで変装し皆で踊る。
酔っ払ってるので全然覚えられない。面白い。

とまあこういったのを逐一教えてもらい飲みまくった。
女将もお姉さんも我々もガンガン行く。
みるみる空くビール瓶とお銚子。


とまあこんな調子だったので少々後半の料理の記憶が定かでない。

・詰め物をしたタマネギの煮込み(?)

タマネギの中に何か入っていた気がするのだが思い出せない。
とりあえず美味かった。

・ポタージュスープ

いきなり洋風だが無難に美味い。

・揚げ物と甘鯛の焼き物

これも非常に美味い。
盛り上がりすぎて冷めてしまったが温かい内に食べたかった。。

・カツオの漬け茶漬け。

最後の〆はこれ。
これは大ヒット!!
ヅケが良い感じで大変美味い。
これだけ食べに来たいほどである。


そして最後に甘味。
しっかし大満足であった。
本来二時間の所をゆうに三時間強は居ただろうか。
ビールもいつのまにやら10本以上空いているし、
お銚子も20本くらい空いている様子・・・。

さて勘定はどうなったかと精算すると、

・・・あれ?一人10,500円であった。
何かの間違いではと聞き直すとやっぱり合ってる。
よく見ると好意でいつの間にか飲み放題となっていたらしい 笑

いやー、食事だけでもかなり満足したのに
これだけ遊んで飲んで一人一万円とは・・・恐れ入りました。

女将さんに聞いた所、朝夜の食事付きで13,000円から宿泊出来る上に
朝ごはんがえらい豪華らしいとの事で次は絶対にここに泊まりたいと思った次第。

大満足。大感激の一夜であった。
心地よく千鳥足で相方と2次会に繰り出したのは言うまでもない。

また必ず行きます。

  • 今回は思い出の間に宿泊です!!天井が!柱が!欄間がすごい!!
  • 皿鉢がどかーんと登場!う、うまい!
  • 田舎寿司。

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2位

寿し芳 (南森町、大阪天満宮、扇町 / 寿司)

1回

  • 夜の点数: 4.6

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 4.2
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 3.8
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2012/03訪問 2013/01/08

変幻自在のお任せ寿司と日本酒のマリアージュ:寿し芳

ミシュラン一つ星を獲得した大阪の有名店。
大阪ではかなり高級な部類になる寿司店であるが、
有難い事に飲み友達としてお付き合いさせて頂いている。

場所は大阪市営地下鉄谷町線東梅田駅から一駅の南森町駅。
天神橋筋沿いに北上しすぐ左に折れると慎ましやかな佇まいが姿を見せる。
梅田からタクシーを使っても15分ほどだ。

さて表札を脇に暖簾をくぐると八名ほどの白木のカウンターが。
内装は簡素だが清潔感がある。

早速ハートランドを頂く。
瓶と共に小さなバカラグラスで。

食事はお任せが基本である。
つまみと握りが織り交ぜられて出てくるスタイル。

初っ端は何が出るのかなと板場を見ていると
いきなり煮アワビとアワビの肝を溶いたタレが。
ザクザクっと大ぶりに切り分けて
「手掴みでどうぞ」と。
タレは出汁でのばしているのかと思えば、
何やらピリ辛で深みある味わい。
滅法うまいのだが辛みの正体が分からず。
聞いてみると豆板醤のとこと。
びっくり。
でも柔らかく煮あげたアワビとよく合う。
残ったタレはパリパリの海苔で残らず拭き取る(笑)

次は北海道産の雲丹。
今日の築地でも一枚しかなかった良い雲丹が入ったんだよと嬉しそうに雲丹箱を見せてくれる。
それを大きなレンゲに酢飯を少し載せてたっぷりと山盛りに。
みょうばんを使ったものと使っていないものと半分ずつ。
みょうばんは雲丹を固める為に入れるものだが、
やっぱりその分入れてない方はトロトロで甘みも多い。美味美味。

ここらで日本酒に。
銘柄は忘れてしまったが、
ここではおすすめをネタに合わせて出してくれる。
やっぱりバカラグラスに少しずつ。

そうやってる間に蛍烏賊の炙りが。
これはそのままか好みで塩。
炙りだと皮の香りが香ばしい。

お次は烏賊とゲソの握り。
烏賊がしゃきっとした味わいなのに比べ、
それを受け止める寿司飯はほんのり赤くふくよかな味わい。
ゲソは手の平に載せてパクッと。
甘いツメが美味い。

そして鯛。
鯛は昆布締め、刺身、皮の炙り、笹の葉で巻いた握り。
醤油はないが、代わりに山葵菜の醤油漬けが。
どれも美味いが特に握りが良い。
しっとりとしており全体に酢が馴染んでいる。

お次はマグロ。
赤身は握り、トロは醤油を含ませた辛味大根にのっけて、
大トロは握った後手巻きのように海苔で巻いて手渡された。
どれも美味いが辛味大根のおろしで日本酒が進む進む。
鯛にあわせて濁り酒を出してもらった。
酸味と旨味がバランスよく大変良い酒。

酔いしれながらご主人との会話も進む。
非常にフランクな方なのでカチッとしたサービスが好きなら
好みが別れるかもしれない(笑)
だって金髪にお洒落メガネだし。
おでん屋で隣になっても絶対寿司屋とは思わないだろう。

閑話休題。
次はアジ昆布締めと、コハダの刺身、コハダの酢〆の握り。
昆布締めはしっかり目の味付け。
大阪らしくむしろ好み。
コハダも良い。
特に卯の花を散らした握りは
卯の花の甘みが合間見え大変美味。
これも醤油ではなくガリに醤油を含めたもので刷毛がわりに。

また酒をお代わりし、
つまみは鳥貝と黄身酢に、小柱の軍艦巻き。
鳥貝も小柱も鮮度よく味も良い。

〆前には穴子の炙りは温かい餡とからめて。
そして鯛の潮汁で〆た。

時間がなかったのでこれだけだったのが残念。

さてさすがの星付き寿司店の仕事だが、
毎回違った趣向を凝らして面白い。
お値段がはるので客層は同伴連れやお医者さんが中心だが、
美味いつまみと寿司、酒がしっかり楽しめる。
カチッとした寿司屋をお望みなら少し外すかもしれないが、
大阪でもこの価格帯でこういったお店がやれるのは実力がある証拠。
褒め過ぎたかな?でも大好きです。

また必ず行きます。

  • 煮アワビ 手でかぶりついて
  • アワビの肝と豆板醤のソース 残った分は海苔でつまみに
  • 北海道産雲丹 左側はみょうばんを使ったもの、右側は使っていないもの

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3位

安加 (東玉出、岸里玉出、天神ノ森 / ふぐ)

1回

  • 夜の点数: 4.6

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 4.6
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク 4.6 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2012/01訪問 2012/01/04

地元に愛されるてっちり屋さん:安加

好きなお店の初レビューは嬉しいものである。
それが小さい頃から通っている店なら、より嬉しいものである。

というわけで、
大阪は西成区玉出からほど近い当店をご紹介したい。
祖父の代からぼちぼちと通っているてっちり屋である。
(ご存知であろうが、河豚を鉄砲と呼んだ事から
「てっちり」(鉄砲ちり)や、「てっさ」(鉄砲刺し)と呼ぶ。)

東玉出駅から北へ路面電車の線路沿いに歩けば、
蔦に絡まりひっそりと佇んでいるのが安加である。

引き戸を開けると、
一階にはカウンターと厨房に小上がりのテーブルが何個か。
今回も宴会なので二階の座敷への階段をあがっていく。

座敷は二間。開け放すと大広間になり、
液晶テレビや暖房も完備され清潔感もある。

到着した頃には既に鍋の準備はすべて整っていた。

まずはビールを・・・という所だが、
ビールなんて飲んでる場合ではないのである。

早速ひれ酒からスタート。
ほどなく階下から運ばれてくるとぷーんと旨そうな香り。
マッチをもらって早速ひれを炙る。
バッと火に包まれたひれを酒の中に浸して上下に振る。
酒にも火が移り、ほどほどに酒が飛び、ひれの香りが香ばしくなる。

このひれ酒が絶品である。
よく炙ったひれはぬるつきもなく、香ばしい香りが立ち上り、
酒がひれの旨味に満ち溢れる。

料理はてっさから。
てっさは少々分厚めだが細い造り。
あさつきを巻いてパクパクと。
身がシコシコと楽しめて薄造りより好み。

そして唐揚げ!
この唐揚げはしっかりとした衣に味付けがされており、
上品というより齧り付きたいお味。旨い旨い。

ひれ酒もどんどんお代わりを頂く。
注ぎ酒ではなく、チロリにひれと酒両方を入れてもらってお代わりを。

そういっている間にてっちりもどんどん煮込む。
河豚は煮込んでも固くならないので身は骨のついたものから
ガンガン煮込んでいって煮えたらはふはふと。

皮はほとんどがゼラチンなのであまり煮込まずしゃぶしゃぶで十分。

そしてメインの白子・・・!
白子は一つはほどよく煮て頬張る。旨い。
臭味なくとろりととろけ、旨味がぐわっと口内に広がるのは至福。
食べたい気持ちを抑え、二つ目は雑炊の為にキープ。

最後の雑炊はご主人自ら作って下さる。
少し水を足してから米を入れ、かき混ぜ続け、白子も投入。
タマゴを入れたらすぐに火を止め、かき回せば出来上がり。

この白子雑炊も非常に旨い。
旨すぎて満腹なのにもう一杯、もう一杯と茶碗に5杯は食べてしまった。
たくさん河豚を煮込んだので良い出汁が出て何も味付けしなくても食べられる。

デザートはメロンとイチゴ。
両方ともものすごく甘い。
なんじゃこりゃというくらい甘い。
普段はあまり甘いものは食べないが3秒で食べてしまった。


さて当店は地元に愛される良いてっちり屋である。
口下手だがしっかりサービスして頂けるご主人が一人でやってらっしゃるが
ずっと変わらず大満足のてっちりを食べさせてくれる。

最高級の河豚をご存知の方には物足りないかもしれないが
食べログに書きたくない種類の大事にしたい地元密着型のお店。
遠方からはるばる訪れるよりも、
近くに訪れた際にふっと訪れて頂きたい。

また行きます。

  • 路面電車の線路沿いにひっそりと佇んでおります。
  • 絶品ひれ酒
  • ぬるっとせず、非常に香ばしい。旨味溢れる一品。

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4位

天寿し 京町店 (小倉、平和通、旦過 / 寿司)

1回

  • 昼の点数: 4.6

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.6
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥10,000~¥14,999

2012/12訪問 2012/12/27

豊前・玄海・瀬戸内をかぼすで繋ぐお任せ寿司:天寿し 京町店

福岡である友人の結婚式に出席する事になった。
折角だから観光がてら美味しいものが食べたいと
無い頭を捻って考えた所、九州で寿司を食べた事が無い事を思い出した。
早速検索して福岡県で一番評価の高い当店がヒットしたのですかさず電話をした。

事前情報として知ってはいたのだが、当店はアルコール禁止。
根っからの呑み助の私にとっては青天の霹靂だが
ランチとして割り切ってしまえばと、お昼にお伺いする事にした。

ただ福岡空港着が11時15分の予定だった為、
少し余裕を持って13時に予約しようとするも
他のお客様との兼ね合いがあって12時半にしてほしいと言う。
少々乗継に不安があったのだが
なんとかなるだろうと軽い気持ちでそれに合わせたのであった。

さて当日、朝から天候不順で嫌な予感でいっぱい。
蓋を開ければ予感は的中。25分の到着遅れである。

結局、11時40分に飛行機を降りて息つく暇もなく、猛ダッシュし、
45分の地下鉄に飛び乗って、博多駅12時発の新幹線になんとか身体をねじこんだ。
まったく高級寿司店でランチを頂くとは思えない慌ただしさである。

だが、新幹線に乗ってしまえばこっちのもの。
小倉までは博多からたったの16分。
駅からは小倉城口から出て東へ5分程なのでちょうど予約5分前に到着。
ほっと胸を撫で下ろして暖簾をくぐったのであった。

前書きが長くなった。

お店はマンションの一階で奥まった所にある。
目の前は駐車スペースとなっているようだが、壁には大きく天寿しと
金文字で描かれた看板がかかっているのが印象的。

ごめんくださいと入れば待つ為の椅子が並んでいて奥がカウンターになっている。
席数はたったの5席。
昭和10年創業と聞く割に大変綺麗にされているので最近改装されたのであろう。
板場の背中には大きく金文字で天寿しと書かれた立派な看板がかかり、
中では準備の為に女性の板前さんがもくもくと作業をされている。

カウンターに目を移すと手をすすぐ為の水が流れ、
やや高い位置に寿司を置く台が。

座ってお絞りを頂いて4人の予約客が揃った所でご主人が登場。
物腰の柔らかな方で安心。
若造の私にも優しく対応下さる。

ちなみに此の方では予約時に大体食べる量を申告しておく必要がある。
7貫か14貫で聞かれるのだが、勿論追加やストップが可能だ。


まずはこれをお上がり下さいと、面取りしてかぼすで香りづけした胡瓜をゴロゴロと。
塩で頂く。
こういう所にも丁寧な仕事がしてあるのが良い。

で、握りに入る前にこの日のお任せに雲丹か白子どちらを入れるか聞かれたのだが、
雲丹はこの日は利尻だったので、折角ならと白子を頂く事にした。

さてまずはお腹が減っていらっしゃると思ってと言いながら三貫が立て続けに登場。
江戸前というか寿司に仕事がしてあるのでムラサキは付けない。

・大間の鮪ヅケ

ヅケは我々が来てから浸けただけ。
かぼすが少し香る鮪は大間から。
良質のトロ。舌触りがよく美味。

シャリは西日本風というか、
やや硬めの白米でほんのり甘く酢で仕上げてあり
大きさはやや小さめだが俵型でネタとのバランスが良い。

・烏賊

お次は烏賊。細工がしてあり、烏賊が足を舞わせているかのよう。
上には雲丹ととびこが載せてあり錦胡麻で彩を添えている。
目にも楽しく味も良い。美味。

・海老

中は生で表面だけさっと湯がいた海老。
オドリに近い食感だがむき身の硬さは無く柔らかい。
大きさからいうとサイマキだろうか。
ぷりぷりとして味も甘く良い。

・〆鯖

〆鯖には茗荷・羅臼昆布が載せてある。
比較的あっさりと〆ていて生に近い食感。
茗荷と羅臼昆布だと風味が強すぎるかと思ったが
鯖の存在感は決して負けていない。良い。

・生ほたて

非常に柔らかい生のほたてに甘めのツメがとろりと掛けてある。
嗚呼、これは大変美味。
生のほたての鮮度が良いからだろう。
ツメとほたての甘みが混然一体である。

・平目

これもなかなか良い。
平目に肝を載せて一緒に頂く。
やや淡泊な味わいを肝が補う形だ。
それにしてもここらで酒の味が恋しくなるが我慢我慢。

・太刀魚炙り 梅肉

梅肉でさっぱりと頂けて良い。
淡泊な感じは平目とやや被ってしまっているが
炙りにしている分、気分が変わって楽しくいける。

・鮪 出汁ヅケ

かぼすで柑橘続きの合間に趣向を変えて
鮪の出汁を使ったヅケ。
これは新体験で大変美味。甘みと口いっぱいの旨味を感じる。
鮪にさらに鮪の旨味を足した足し算の美味さ。

・鱚炙り 柚子胡椒

白身三つ目、鱚も炙りである。
ただこちらは手作りの柚子胡椒で。
寿司で柚子胡椒を頂いたのは初めてだが合う。
炙りの香ばしさと良くマッチしている。

・玄ちゃん鯵

玄界灘で取れた玄ちゃん鯵。
香川の粉醤油を上に振り掛けて。
フレンチのシェフに教わったそうだが、
これを寿司に使う為なんとか使ってるんですとの事。
粉醤油に興味が行ってしまうがこの鯵が大変良い。
むしろ私はそのまま握ってもらっても良かったと思うくらい。

・赤出汁

お吸い物と赤出汁が選べたので赤出汁を頂いた。
濃い赤出汁が寿司の合間のリフレッシュ。

・栄螺炙り オクラ載せ

栄螺の炙りはコリコリとした歯触りが良い。
オクラを載せているのが面白く、これがなかなか合う。
ここまでで十一貫だが、どれも趣向を変えているので
不思議と食欲が湧いてまだまだ食べられそう。

・海老頭炙り

最初の海老を丁寧に殻を剥いで炙りに。
香ばしく良い。

・真鯛炙り

真鯛の炙りは火が通り過ぎないように
皮目だけガスで炙ってから炭火で香りづけ。
さらに錦胡麻も振り掛けてある。
これも中が半生となっていて美味。

・焼き白子

河豚の白子の軍艦巻き。
大変熱いので10秒程待ってから食べてくださいね、
シャリと白子がとろけあいますからと言う。
果たして白子がとろとろになっており美味至福。

・穴子炙り

豊前の穴子を炙ってツメで。
韓国産の穴子なんかは大きく美味で寿司屋でもよく食べるが
豊前のは初めてからもしれない。
大きさはそうでもないが優しく上品な甘み。
やはり地物は違うという事か。

・鮪ヅケ鉄火

これで一通り終了。
ここでご主人が追加されるかを優しく聞いてくれたので
調子に乗って巻物をやってもらう事にした。
手巻きでも何でもやりますよ、鉄火にしましょうかと言うので
ならば、と我儘を言ってヅケ鉄火にしてもらった。

ヅケにしても鮪出汁と普通の浅めのものがありましたが
どっちでしょうかと聞いてくれるも、鮪出汁はもう用意が無いらしく
普通のヅケで巻いてもらう事に。

海苔は有明のもの。半分はヅケをそのまま。
もう半分は海苔にヅケの汁をさっと塗ってメリハリをつけてくれた。
うん、最後に〆に相応しい。

・玉子

御口直しに玉子をアテで頂いて、すっきり。
優しい甘みで丁寧なつくりだ。
ここで一緒にレモンのスライスを手の匂い消しに頂いた。
細やかな気遣いがやはり嬉しい。

・メロン

最後のデザートはメロン。
なかなか熟していて甘い。
なんだか量は十分なはずなのに食べ終わってもまだ食べられる気分だ。


途中、アルコールが無い代わりに上がりを小まめに変えてくれたり
メロンの後には煎茶を出してくれたりと、本当に神経が細かい。

又、終始柔和な態度でお好きなように食べてくださいねと
こちらの緊張感をほぐすように何度も話しかけて下さったり、
常連でもないのに名前を呼んで下さったりと終始お心遣い頂いて大変居心地が良かった。
写真を撮るのにも美味しそうに撮って下さいねと言って下さるくらい。

他にも江戸前じゃないと怒られる事がまだよくあるんです、
東京の板前からは食材が良くていいねーと褒められるけど
腕はこちらの方が上だからねなんて言われてしまって・・などと
まったく偉ぶった所が無くて、むしろ優しい人柄が現れるのは人徳だろう。

東京から来たと言うと
小倉生まれのものはたくさんあるんです、
アーケードに屋根をつけたのも最初だし、
焼うどん、競輪、パンチパーマも発祥なんですよと教えてくれたり
周囲の観光名所を快く説明してくれたりとすっかり和んでしまった。


最後にご主人に名刺とお店のパンフレットを丁寧に頂いた上に
住所とお名前を頂けますかと名簿に記名をして、お会計。
〆て13千円ぐらいだったがあまり割高には思わず
むしろ清々しい気分になってお店を後にした。


さて昭和10年創業、二代目のご主人の人柄と腕で持つ名店であった。
たった5席のお店であるが、一人で行っても居心地が良く未だ興奮冷めやらない。
技術は確かに銀座の超一流店が一番かもしれないが
観光客の我々にとっては地の物を地の誂えで食べさせてくれる店の方が貴重で楽しいものである。
東京から少々時間が掛かる事だけが難点だが、福岡空港から新幹線を乗り継いででも訪れたい。

また行きます。

  • 大間の鮪ヅケ
  • 烏賊 雲丹・とびこ載せ 京都錦胡麻
  • さっと湯通しした海老

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5位

京 上賀茂 御料理秋山 (北山 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.4

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 4.6
    • | 雰囲気 4.6
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 -

2012/07訪問 2012/07/17

美味しい空気の流れる京料理:上賀茂秋山

偶然家族が普段お世話になっている方から予約を譲って頂いて京都の料理屋へ行く事になった。
不勉強ながら名前は知らなかったのだが、ミシュラン一つ星のお店で予約が取りにくい人気店らしい。
上賀茂秋山さんというお店。

予約は18時半から入れた。
どうやら一斉にお料理を出されるお店のようで京都から最終の新幹線で帰るから早目に料理を出して欲しいというと出来かねるとの答えが。
先に出る事は出来ると言うので少々不安だが行く事にした。

場所は名前の通り上賀茂にある。
最寄駅は京都市営地下鉄烏丸線の北山駅。
駅からは徒歩十分ほどだ。

周囲は住宅街なのだが、三叉路になった所に突然垣根付きの古民家を改装したお店が現れる。
秋山と彫られた看板がかかり良い雰囲気。
駐車場もすぐそばにある。

さて18時20分頃に着いて通されたのは玄関横の土間。
囲炉裏を囲む様に小さな椅子があるのでしばし待つと山うどの冷茶を振舞われた。
暑い中には有難い。

お茶を飲み干すとカウンターに通される。
待った順番にきちんと案内してくれるのが当たり前の事だが気持ちがいい。

中は10席ほどのカウンター。
目の前に厨房の様子がよく見える。
竈があったり大きな土鍋が飾ってあったり民家らしさとモダンさを融合させた楽しい雰囲気。

早速ビールから。
食事は7,000円からあるようだが15,000円のお任せにした。

皆順番に着席し、にこやかに迎えて頂いて軽く喉を潤すと最初の一品が。

京都の夏に相応しい鱧の登場である。
(結局鱧尽くしになるのだが。)

鱧と胡瓜、茄子、ズッキーニ、蛸と、イタチが入ってます!とのお言葉に頭にはてなが浮かぶ。
どうやら柴漬け風にしてあるようだ。

続けて秋山さん自ら料理の説明を面白おかしくして下さる。
イタチは胡瓜の大きくなったものを言うようで。
らっきょうの漬け汁に漬け込んだ胡瓜とイタチを煮込んだものが入っていた。

「今日は京都でイタチ食べてきてん言うて自慢して下さいよ。」

なんて言う。面白い。

暑い最中だったので紫蘇で柴漬け風にしたのが滅法美味くビールもすぐ飲み干してしまった。

飲み物のメニューはないそうで日本酒をおすすめしてもらう事に。
結局、二時間程で奥播磨ブルーラベル、不老泉、近江藤兵衛、風の森を飲んでしまった。
他にも種類があるようで素晴らしい品揃え。

二品目はお椀。
玉蜀黍と枝豆を練り込んだ鱧しんじょが入っていた。
お出汁はやや鰹節強めで味も濃いめ。
暑いのとお酒に合わせてくれたのだろうか。
バランス抜群とまではいかないがかなり美味しい。
しんじょも玉蜀黍と枝豆が夏らしい。

三品目。
明石の鯛を軽く二時間昆布締めにしたもの、穴子の紐造り、北海道産北方領土付近で採れた雲丹を海苔の佃煮と。
おまけに淡路島の雲丹と鱧の焼霜造りが。
鯛は寝かせた味で旨み良し。
穴子の紐造りも良い。
そして北海道産の雲丹がバッチリ。
塩で醤油で頂き満足。
後の淡路島の雲丹、鱧も良いので酒が進む進む。

四品目は鰤に島らっきょうを刻んでまぶしたもの。
鰤は明石産。
夏だが身を肥らせて味が良い。
また島らっきょうの野味と酸味が脂を抑え、素晴らしい調和を醸していた。

五品目。
途中途中に秋山さんのトークが冴え渡り楽しい雰囲気。
団扇に盛られた八寸は、川津海老、紫いんげんの辛子和え、白菜菜、干し柿の白和え、韓国南瓜ととりがいを南瓜の種で和えたもの。
いずれも辛子を使ったり、上品に白和えを仕上げて夏に重苦しくない誂え。

八寸と酒で凌いでいると、次の仕込みの骨切りの途中に先が鉤針のようになった骨を抜き出して見せてくれた。
この鉤状の骨を断ち切らなければならないので難しいんですとの事。
へー、だから下手にやると骨が邪魔に感じるんやなあと感心しきり。

六品目。
2キロもある大物の鱧を炙り土ごぼうと山椒で頂く。
下には小さなご飯。
普通は500グラム程のようで飛び切り大きい。
身だけ食べると少々大味だがその分ごぼうの煮付けの味を吸い食べ応えあり美味い。

そして、七品目が愁眉の出来。
滋賀県は長浜の郷土料理鯖素麺のアレンジ。
へしこの出汁にとろみをつけ、 ゴマ鯖の炙り、獅子唐、トマト、茄子と供したもの。
後でへしこの炙りも出たがこりゃ美味い。
へしこの出汁が良い味だし、目新しい。

しかし食べた事がないのでどう作られたか聞いてみると、
前々から作りたいと思っていたそうでようやく出せるものが出来た、
新作を考える際には郷土料理を土台に割り算して組み合わせを変えていくんだという含蓄のある話まで飛び出した。

と、楽しい時間もあっという間。
新幹線の時間が近づいてきた。
予め間に合うようタクシーを呼んでもらってあるがご飯が食べられるのか不安。

少しそわそわしていると、玉ねぎ、トマトの田楽が。
肉味噌がたっぷりかかってあり、それを竈で炊いた土鍋ご飯と掻き込む。
お焦げも一人先によそってもらって塩ではふはふと飲み込む。
時間が無い中だが、鱧と穴子の煮凝りなんかも掻き込んで大満足した所で家族を残して一人先に出る事に。

お土産に時間のせいで食べられなかったデザートを持たせて頂き秋山さん自らにタクシーまでお見送り頂いた。

なんとか地下鉄に乗り京都駅で新幹線に乗り込んで一息。
お土産を開けてみると笹に包んだ水羊羹と粒餡、そして一つ丸ごとのパッションフルーツが出てきた。
これを下品に車内で頂いて食事は終了。

駆け足の二時間半だったが振り返ってみると大変良い時間だった。

さて予約が取れないのもよく分かる。
元は京都吉兆で修行されたと聞いたが研究熱心で気持ちが充分に行き届いた方と感じた。
また、他の厨房の若手の方々も生き生きとし気持ちが行き届いている。
それもあって店内が全体的に良い空気に包まれているように感じた。
良いお店でした。

また必ず行きます。

  • 鱧と胡瓜、茄子、ズッキーニ、蛸を柴漬け風に。
  • 玉蜀黍と枝豆を練り込んだ鱧しんじょのお椀。
  • 明石の鯛を軽く二時間昆布締めにしたもの、穴子の紐造り、北海道産北方領土付近で採れた雲丹は海苔の佃煮と。

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6位

炭火焼 七厘 (三ノ輪、三ノ輪橋、荒川一中前 / 焼肉、ホルモン)

1回

  • 夜の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 3.4
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP 3.8
    • | 酒・ドリンク 3.8 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥8,000~¥9,999 -

2012/02訪問 2012/02/24

恐れ入谷の鬼子母神 東京では今の所ベスト焼肉屋:炭火焼 七厘

私事ながら焼肉連荘フィーバー中である。
今日は前々から予約していた炭火焼 七厘である。

七厘は食べログでも評価が高く☆4つを超える人気店。
ところが場所は日比谷線三ノ輪駅あたりなのである。
南千住の一つ手前の駅だが都心からだと近いとは言いにくい。

さて三ノ輪駅から歩いて住宅地の方に入って徒歩2分程。
すぐにもんじゃ焼き屋と七厘が目に入った。
見た目はどこにでもありそうな普通の焼肉屋さん。

外にはテラス席(といってもあまり綺麗ではないが)があり、
中は入口すぐに大きなテーブル一つ、
小上がりに掘り炬燵のテーブルが3つある。
中二階のロフト席もあるようだ。

内装も至って普通の昔からある焼肉屋。
むしろ綺麗な場所よりは落ち着く。

早速生ビールを頂く。
お肉は予約時に注文した幻のタンから。

レビューでサイドメニューとドリンクがそれなりに高いと
予習していたのでひとまず様子見でお肉中心に必要最低限だけ注文する事に。

結果、おまかせコース(5,500円肉七種類)と
キムチ盛り合わせ、サンチュサラダに落ち着いた。

・幻のタン(タンモト)/タン先/ゲタ(タン下)

幻のタンはタンモトの事であった。
タンの中でも喉元に近い部位で最も美味いといわれる希少部位である。
これはタンモトとして最高とは言えなかったが
普通のタンと比べるとまったく他がお話にならない美味さ。
じっくり火の中心から外して弱火から中火で焼き上げた。
じっくり焼くと中までふんわり熱が通るので全体がジューシーに仕上がる。
肉汁がこぼれるタンモトはやっぱり最高である。

タン先は薄くスライスされてある。
これもなかなか良い。
タンらしいカットとはいえないがこういう薄切りもいいものだ。

ゲタはもうささっと焼いてモグモグと。
タンと赤身の合いの子っぽい肉質。
タン下はやっぱりタンとは言えないけど美味いなぁと再確認。

・おまかせコース サーロイン マキロース カメノコウ

サーロインは胸椎後方部分。
やや薄切りだが肉の旨味たっぷり。
サシもほどよく入りテンションあがる。

マキロースはリブロース真ん中のリブ芯の周りにある部位。
(リブロースとは肩からサーロインの間にある胸椎前方の部位。)
最も分厚くサシが入りやすいのだが、このマキロースのサシの入り方もえぐかった。
厚みのあるカットでギシギシッとサシが入っているので焼いた後でも
たっぷりとした脂分がジュワーッと流れ出てくる。
確かに美味いのだが、非常に背徳感を感じるのと歳を取った事を痛感させられる 笑

カメノコウは後肢内腿の下にあるシンタマと呼ばれる球状の部位の一部。
断面が亀の甲羅に似てるからそう呼ばれる。
マキロースと対照的に赤身らしい味わいで肉の美味さが感じられる。
赤肉を噛み締める幸せが感じられる。味も濃い目。


途中で生マッコリのボトルを。
日本で作っているマッコリのようで大変飲みやすく甘ったるくない。
酒飲みとしても満足感のある米の味が生きた酸味・甘みのバランス良いどぶろく。


・おまかせコース ザブトン シンシン

ザブトンは肩ロースのアバラに続く外側部分(らしい)。
最近はどこの焼肉屋でも持て囃されているが最も肩ロースの中で美しくサシの入る部位。
この写真を見て頂いても分かる通り、とんでもないサシの入り方である。
自分の限界を感じつつも溶け出した脂身は非常に美味。
赤身というか上質の脂を液体にして食べているよう。

シンシンはカメノコウと同じくシンタマの一部だが、ちょうどシンタマの中心にあたる。
ローストビーフなんかに使うくらい赤身の味が濃くきめ細かい最上な部位。
これはささっと軽く炙って肉汁が浮いてきたのをすくうようにして食べた。大変美味。

・おまかせコース ウチハラミと・・・たぶんカルビ

ここだけ少々部位の記憶があやふや。
確かウチハラミとカルビである。
(いやウチモモか・・。もう分からん。)

ウチハラミはハラミとあばらの間の肉でハラミという名だがどちらかといえばバラに近い。
(ウチモモも赤身だから間違っても恥ずかしくないですよね。いや、恥ずかしいな。)
同じくカルビはアバラ肉の事でバラと呼ばれる部位。
いずれもサシはほどほどに入ってバランスがよく食べやすい。
赤肉とサシの両方が楽しめる。大変良い。

・予約した人へのサービス品 切り落とし

部位は聞かず。赤肉中心で結構ここでお腹が膨れてきた。
タレの味が結構良い。これだけでも十分美味いのは素晴らしい。

・ランボソ(ランシン) 追加

ハラミもランプもイチボも売り切れており、
どうしようと途方にくれていた所、ランボソならあるとの事。
ちょうどイチボとランプの間にある肉で単品で食べるのは初めて。
ランプに近い肉なのでサシはあまり入っておらず美味い。
サシ地獄に疲れた口でもタレとよく合うのでするすると食べられた。

・冷麺

冷麺は一つでも結構大きい。
冷たく冷やされており、中細麺が美味しい。
スープは牛ではなく鶏がらベースのようだ。
あっさりとして美味いのでスープまで完飲。美味しかった!


さて万難排して訪れた人気店。
結局飲んで食べて一人一万円弱かかってしまったが
サシの多いお肉が多いので量のわりに満腹である。

又、特に印象に残っているのは厨房の中から
こちらがモリモリ食べるのを嬉しそうに見ているお母さんであった。
ああいう方がいると本当に美味しい店なんだなと安心出来る。

雌牛一頭買いだからこそ出来る肉質とCP。
実のある大変良いお店にめぐり合えました。
初回なので星は4つに抑えますが、4.5もありうるかも。
コムタンスープも美味しそうだったし、絶対にこれから通います。

また行きます。

  • 幻のタン(タンモト)(左)/タン先(右)/ゲタ(タン下)(後ろ)
  • 幻のタン(タンモト)
  • おまかせコース サーロイン

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7位

御田町 桃の木 (田町、三田、白金高輪 / 中華料理)

1回

  • 夜の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 3.8
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP 3.8
    • | 酒・ドリンク 3.8 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2012/02訪問 2012/09/05

【再訪】アヒルの舌にやみつき香辛料の使い方の上手い優しい中華:御田町 桃の木

2012年9月再訪。

改装が終わって初めての訪問。
奥のテーブルが個室になっていた。
全体的に白基調になり少々落ち着かない。
トイレも二つになった。

今回は15,000円のコース。
どれもこれも美味かったのだが
特に美味かったのは最後のチャーハン。
貝柱を食べているのか米を食べているのか分からんくらい美味しい 笑
パパイヤを器にしたスープも美味しかったなー。

純粋に中華で味が一番好きなのはここだと思う。
6回来ているがまだまだ飽きそうにない。

また行きます。

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2012年2月訪問。
慶應三田キャンパスのすぐそばにあるミシュラン一つ星の中華である。

桜田通り慶應正門前を西に通過し、右手に二郎三田本店を見ながら左にクランク。
一つ目の信号を右(西側)に入った所にこじんまりとお店が佇む。
JR田町駅からは徒歩10分程だろうか。歩ける距離である。

店内はミシュランの星獲得店としては普通である。
小奇麗なビストロ風中華料理屋といった風情で
一流レストランというよりは知る人ぞ知る小さな良店といった印象。

L字型のカウンターとそれを囲むようにテーブル席が配置してあり
個室はなく仕切りを配置して半個室のようにしている席もある。
全部で30席弱であろうか。

ここはお任せコースが8,500円、10,500円、12,500円とあり、
どうしても食べたいもの、入れてほしいものがあればある程度希望を聞いてもらえるが
明確に食べたいものがあるのであればアラカルトをお勧めする。

魚も新鮮で蒸し魚も絶品であるが、
今回はアヒルの舌が食べたかったのでそれを中心にアラカルトで。

メニューの他にボタン海老の老酒漬けがありますと案内されたのでとりあえずそれを。

・ボタン海老 老酒漬け(酔っ払い海老)

一人一匹前菜のように出てきた。
ネットリまで行く手前で新鮮さが良い。
味付けも優しいので最初の一皿としては高得点。

お次からは適当に目に付いたものを。

・前菜お任せ三品

前菜のお任せは三品と四品があるが三品で。

最初は赤大根か、赤蕪(失念)の千切りと貝柱をあえてもの。
非常に爽やかかつ貝柱の旨味が出ており、ビールに合う合う。
家に作り置きしておきたいくらい。

お次は揚げた皮蛋。
生のネットリとした皮蛋が好きなのだが、これも良い。
外側はカリッとしてむしろ食べやすい味である。

三品目は大和かしわの上海よだれ鳥。
ここのよだれ鳥は非常にお上品。
しっとりとした蒸し鶏に醤油ベースのたれ。
ナッツと香草が香りを引き立てる。

・点心 小龍包み 6個

冷めないように二つずつ蒸篭に入れて持ってきてくれる。
針生姜と酢をお供にあっさりと。
残念ながら皮が破れてしまって悔しいかったがなかなか。

ここはワインも色々あるのだが、
あまり好みのものがないようなのでホットの紹興酒へシフト。
古越龍山8年ボトルを容器に移し替えて温めてくれる。

・アヒルの舌の山椒、唐辛子炒め

これがお目当て。
桃の木のスペシャリテである。
黒酢の酢豚は他でも食べられるがこれはあまり見かけない。
アヒルの舌は顎関節からとっているのでY字型になっている。
舌そのものは、如何にも舌だなーという柔らかい食感で美味い。
香辛料をたくさん使っているので臭味はないしスパイシーで良い。
個人的には骨の部分までボリボリと食べるのが大好きである。

・台湾A菜とホタテの塩炒め

台湾A菜の炒め物は塩か醤油か、
又そのだけか何か入れるか選べる。
今回はホタテを入れてもらった。なかなか。

・汁なし担々麺

とどめは汁なし担々麺。
麺は水で〆ていない為か、くっつきがち・・・。
でもかけるタレは香りも味わいも良い。
爽やかだがしっかりとした味わい。

・タピオカ入りココナッツミルク

まあ想像通りだがお上品でよい。


さてミシュラン星つき中華という先入観がある方が多いかもしれないが
しっかりとした実力で大変上品かつ丁寧な料理が頂ける良店である。
メニューを頼む際、色々要望を聞いていただけるので相談するとより楽しいものとなるだろう。

また行きます。

  • サンマの燻製に雲丹をごってり。
  • お通し。
  • 揚げ皮蛋

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8位

レストラン ラ フィネス (新橋、汐留、御成門 / フレンチ)

1回

  • 夜の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス 4.6
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 3.4
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    - -

2012/08訪問 2012/08/03

【再訪】考えさせられる調理法、フランス料理界への覗き窓:ラ・フィネス

2012年8月

再訪。この日は一番乗り。
またお任せコースを頂く事にした。

まずはグラスでシャンパーニュ。
アペリティフはいずれも美味。
ソムリエのお二人のサービスも気持ちが良い。

コースの随所に夏を感じられ組立ても良いと感じたが、
愁眉は前菜の雲丹とズワイ蟹のタルトレットとビスクスープ。
爽やかで滋味深く白のグラスともよく合った。

また今回は写真を撮り忘れてしまったのだが
黒鮑と黒トリュフの香りを閉じ込めたサプライズは
演出方法としてはあまり目新しくないが非常に素晴らしい芳香。

そしてメインに合わせておすすめ頂いた1998のGruaud Laroseのハーフボトルが素晴らしかった。
洗練された複雑未の中にテロワールを素直に活かしたかのような優しさ。やや内向的。
かなり熟成が進んでいた為飲み頃を少し過ぎてたかもしれないが、むしろ嫋やかに感じて好印象。
カベルネフラン由来かハーブっぽさ(たぶんミント?)もありフィレと合う。

ちなみにワインに合わせたメインのフィレはフォアグラを包み、
コンソメスープをかけて食べるという面白い趣向だった。
付け合せのグラッセなんかと相まってお上品な牛鍋のようだと思ったのは人には言えない・・・(失礼)。

デザートも薔薇やコンポートのソルベなんかを綺麗にあしらっていて目にも美しい。

やはりこういう店が新橋の飲み屋街にあるのが面白いですね。
まだ大のお気に入りというにはなんとなく嵌っていない気がするのだが前回より好印象。
シェフもマダムもソムリエも素敵な方だし
マッカーサー道路が完成する頃には名店になるだろうと感じられた。

また行きます。

☆3.5→☆4.0

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2012年5月

新橋にテレビにも出たフランス帰りのシェフが
店を出したとマイレビュアーさんのレビューで知り
自宅から徒歩圏内の私はずっと悶々していた。

ある日大阪の家族が東京に来る用事があり、
だめもとで当日予約をしてみたらなんとさくっと取れてしまった。

場所は新橋駅烏森口から西口通り商店街を抜けて徒歩3分。
鮎正があるあたり開発中のマッカーサー道路のそばに
最近出来た複合ビルの地下一階にある。

入口が少々分かりにくい。
建物の東端に地下へと続く階段があるので
そこを降りていくとひっそりと店の扉が現れるのだが、
あまりにもそっけなく扉があるだけなので
グランメゾンどころかレストランがある事すら気付かないかもしれない。

入るとすぐに壁で左手にレジカウンター。
非常にお若くて可愛らしいマダム(まだ20代だとか)がお迎えしてくれた。
早速荷物を預けて中へ。

ダイニングルームの手前にはウェイティングバーがあり、洋酒がずらり。
食事前にシャンパーニュでもひっかけたい所だがそのままテーブルに通された。
テーブルは少々手狭に並べられ間隔が近いように感じる。
耳をすませば隣の会話もよく聞こえるくらいだ。


早速非常に感じのよいソムリエさんにご挨拶され、
シャンパーニュをグラスで頂く事に。
グラスもシャンパーニュ、白、赤と数種類ずつ選べるのが嬉しい。

コースは15,000円のプリフィクスと22,000円のお任せから。
頭の中はアルザスで一つ星のシェフをしていたーとか
色々とお花畑だったので迷わず22,000円で。

シャンパーニュを飲みつつ待っているとアペリティフが登場。
串にささって出てくるのは昔フランスの星付きレストランを訪れた時を思い出させた。


・アペリティフ

串に刺さっているのはマッシュルームにトマトを纏わせたもの(だったはず)と、
自家製のドライトマト。

ドライトマトは少しコンポートしているのかやや甘酸っぱく
非常にしっとりとしていて官能的。
食欲が増してくるようだ。

串の横にはスプーンが三つ並んでいる。
左から白身魚の煮込みにケイパーで味付けしたもの、
比内地鶏とフォアグラのテリーヌにクルトンをのせたもの、
ビシソワーズに生ハムをのせたものであった。

いずれも味わいにメリハリがつき大変美味しい。
否が応にもテンションが高まりシャンパーニュが減っていく。

特に記憶に残ったのはビシソワーズ。
これはビシソワーズを一旦凍らせて
周りにベジタブルゼラチンを纏わせてから解凍したもので
お菓子でよく使うやり方のようだ。

プチッと口の中でゼラチンが割れて
ビシソワーズが中から溢れ出してくる。
食感も楽しめて大変愉快。


シャンパーニュが綺麗に無くなってしまったので
お次はゲブルツトラミネールあたりでおすすめしてもらった。
アルザスのものでやや酸味も出て香りはライチ、グレープフルーツの香水を嗅いでいるよう。
バランスも良い。

又、新しい店で最近流行っているようだが、
ここではiPadでフランス各地のワインが選べる。
シェフのコメント付きで産地やヴィンテージ等色んな検索が可能。

有名所が多いが、手ごろな価格かつ若いヴィンテージが揃っている様子。
後で聞く所によるとシェフはブルゴーニュやアルザスの生産者とも親交があるようで
リスト以外のワインも併せて千本ほどストックしているのだとか。
それではと予めDomaine DujacのMorey Saint-Denis 2007を抜栓してもらう事に。


・アミューズブーシュ

可愛らしい小さな三つの小鉢が登場。
左からラタトゥイユに茄子、アワビ、雲丹をのせたもの、
ブランマンジェにグリーンピースとヒラメのカルパッチョをのせたもの、
アワビの肝のクリームブリュレ。

スプーンで頂いていく。
まずはブランマンジェから。
グリーンピースの緑がブランマンジェの白に映えて色合いも綺麗。
ヒラメのカルパッチョがヅケのようになっていて美味。

ラタトュイユもアワビ、雲丹が乗って豪勢だが
意外と相乗効果があり一緒に頂いても美味しい。
最後のクリームブリュレはまあまあ。

写真は取り忘れたが自家製のパンも美味。
生地にしっかりと塩味がついていて
同じく自家製のレモンのバターと、モリーユ茸のバターも
いずれも有塩だが香り味わいが良い。
バターをお代わりしてしまったほど。

・ドンブ産カエルもも肉のフリット
パセリのクーリと軽く仕立てたガーリックのソース
イタリア産グリーンアスパラガスのグリエ(オレンジヴィネグレット)を添えて

これが供された時、ものすごいフラッシュバックが起こった。
もう9年も前になるがブルゴーニュのコートドールを訪れた時の事、
かの有名なベルナール・ロワゾーが猟銃自殺を遂げる一週間前に
彼の手によるこのカエル料理を食べたのを思い出したのである。

当時は彼のスペシャリテだと聞き、
鮮やかなパセリの緑とガーリックとカエルのマリアージュに感動した覚えがある。
そこにはフランスの美食家達と思しき方々が綺麗なスーツやドレスで
着飾ってめいめいに食事を楽しんでいた。

さて横道に反れたがそのスペシャリテが2012年の当店で現れた。
パセリの葉緑素を取り出して色づけした鮮やかな緑はあの時そのまま。
一口味わうとカエルのもも肉はまだまだ熱いくらいで
綺麗に揚がっているが少々温度が高すぎるように感じる。
味わいは上品な鶏肉のフリット。

ただパクッと一口で食べてしまった為、ソースが絡まなかった。
ソース単独で食べるとパセリの風味とガーリックの味わいが素晴らしいのだが
食べる前に一言ナイフとフォークで切り分けて食べるよう
おすすめしてくれたらもっと楽しめたと思う。

後程シェフとお話させて頂いた際にも同じコメントをしたが
あまり料理の説明をぐだぐだと説明すると
料理のベストなタイミングを逃すという事で控えめにしているらしい。
つまりゲストの知識と経験が求められるという事だろうか。

・フランス ランド産鴨のフォアグラの冷製
オックステールのトリプルコンソメ風味
根セロリのピューレとパン・デビスの香りを添えて

お次は鴨のフォアグラである。
これも食事後にシェフからお伺いした話だと
フォアグラのクラシックな調理法には二種類あるそうで
一つはコンフィ、もう一つはスープで煮る方法だそうである。
いずれも保存性を高める為らしいのだが
今回はこの後者の方法で供したとの事。

その際に使ったコンソメはオックステール、
つまり牛の尾で三回も出汁を取ったもの。
そのコンソメでフォアグラを煮たのだから、
非常に塩味が強く、コンソメの風味がフォアグラを圧倒している。
そのまま食べると飲み物無しでは食べられないほど。

これとパン・デビスというミックススパイスを合わせる。
パン・デビスに入っているのはシナモン、アニス、ジンジャー等で
これもデザートによく使われるような調味料である。
これと一緒に味わうと塩味が幾分か和らぎ、
スパイスの香りで比較的美味しく食べられるようになった。

しかしながら手はかからずともテリーヌやコンフィで味わう方が
日本人には合うように感じ、調理法に驚きはしたものの感動はなかった。

・大分県臼杵産天然黒鮑のローストとトルコ産フレッシュモリーユ
京都府福知山産タケノコのフリカッセ

最近良い黒鮑を食べる機会が多いので辛口になってしまうがご容赦。
黒鮑のローストはうまく焼いておりバターのソース、モリーユ茸と良く合うが
質、大きさは悪くないが中の上といった所。

そして問題はタケノコ。
タケノコはシェフご出身の福知山産のものだそうで
上半分はヴィネガーで煮てあり、下半分はフォアグラの脂でコンフィしてあった。
一つのタケノコを二つの調理法で味わう事は非常に興味深いが
下半分はコンフィにしてあるので旨味が入り美味しいのだが
上半分の煮た方は酸味がきついし、味わいも薄い。
どうせなら丸々コンフィした方が良いし
これに関しても順番としては上半分から食べた方が
違いが楽しめるように思うのだが特段説明はなかった。

・ブレス産小鳩とブルターニュ産オマール海老のシヴェ 赤ワインソース

メインは小鳩とブルターニュ産オマール海老が一皿に。
小鳩は鳩特有の臭味がなく、美味しい鴨か鶏肉を食べているような感覚。
赤ワインソースもオーソドックスだが風味が濃く良い味わい。

抜栓しておいた赤はまだまだ若いが非常に豊かなアロマと果実味が
感じられる他、樽がよく利いておりアタックからフィニッシュまで楽しめるし
ずっと余韻が残っていて非常に良い。
これは小鳩によく合って良いマリアージュ。

そしてオマール海老は赤ワインソースでなく
アメリケーヌのようなソースが沿えられていてこれが非常に美味。
調理前のオマール海老も見せてもらったが新鮮で元気よく動いていた。
鮮度がいいし味わいも悪くないが少々小ぶりでダイナミックさはない。
バランスの取れたよい皿だが驚きはなかった。

・アヴァン・デセール
・グランクリュ・カライブのビターチョコレートガナッシュを使ったミルフィーユ
あまおうイチゴとタヒチ種のヴァニラアイスクリーム添え
・食後のお楽しみ

厨房はシェフとパティシエの二人で料理を作っているようだが
アヴァン・デセールから菓子までしっかりと出てきた。

アヴァン・デセールからして良いチョコレートの香りだが
メインのデザートでもヴァローナ社のグランクリュ カライブと呼ばれる
ブラックチョコレート(カリブ海産のトリタニオ種のカカオが使われているそう)を
使ったミルフィーユは香りと歯ざわりが良いしイチゴもそれに合っている。
レベルの高さは伺えたがこれにもあまり驚きはなかった。


その他、また多種類を揃えたチーズと食後酒を頂いて終宴。
長いフルコースは終わった。

途中にマダムがご挨拶に来てくださった他、
一番最後にシェフがテーブルを廻りお話をしてくださった。
シェフは非常に若く才気溢れる印象。
京都ご出身だがずっとフランスのレストランで働いてらしたそうだ。

今日印象に残ったお皿は何ですかと聞かれたので
正直にアミューズ・ブーシュのビシソワーズだと答えると
ああ・・、といったような妙な感触が返ってきた。
シェフ自身、ご本人の好きな味にしているので好き嫌いが
出るのは当然だとはっきり仰っていたので、
口に合わなかったとそう捉えられたのだろうか。

その他、不躾にも料理に対する質問や素直な感想を
言わせて頂いたのだがすべてに快く答えてくださった。

その中で分かった事はラ・フィネスは余韻という意味である事、
ワインと合わせる為に余韻の残る料理を心がけている事、
低温調理等時間のかかる調理は行わない事、
前に居たレストランの名前で力量を測られたくないので
どこに居たという情報は極力出さない事、
メニューを組立てる際は食材から自分の中の
フレンチに落としこむように考えて作っている事であった。
沢山話して頂いてそこまで考えて作ってらしたのかと
関心すると共にそれが皿の中や料理の説明で
伝わってこなかったなーという素朴な感想を持った。

私は随分昔にパリのピエルガニエールやルドワイヤン、
ベルナール・ロワゾーが猟銃自殺をする直前のコート・ドールを訪れた事があるが
フレンチのクラシックが何たるかモダンが何たるかを語る知識はない。

普通の一つ星ではフォンも自分で取っていない店がざらで
それを一から自分の手で作っていたいと仰っていたお気持ちは
非常に高尚高邁であるが憚りながらも食べる側に
同じ知見が無いとそれも伝わらないのではと思った。

他にも沢山の感想を持ったのだが自分でも整理が出来ていない。
CPが悪いのでおいそれと行けそうにもないが
また訪れてシェフの話を聞いてみたいと思った。

また行きます。

  • 左から白身魚にケイパーで香り付けしたもの、比内地鶏とフォアグラにクルトンをのせたもの、ビシソワーズに生ハムをのせたもの
  • マッシュルームにトマトをまとわせたもの(?)と自家製ドライトマト
  • アペリティフ

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9位

産直屋 たか (神泉、渋谷、駒場東大前 / 居酒屋、海鮮)

1回

  • 夜の点数: 4.4

    • [ 料理・味 4.6
    • | サービス 4.2
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥8,000~¥9,999 -

2012/12訪問 2012/12/27

漁師の楽しみそのままに産直海鮮居酒屋:産直屋たか

忘年会シーズンまっただ中。
猫も杓子も忘年会でチェーン系の居酒屋にも飽きてくる。
自然、美味いものが食べたくなるのが人情。

そんな気持ちと偶然友人のお祝い事が重なって、
では気心の置けない人達で美味い海鮮をつまみに
飲みましょうとそういう段取りになった。

幹事が選んだのは予約が取りにくいと噂の当店。
何度か時間が合わず断られたようだが私が電話した時には
偶然席が空いていたのでお一人8,000円のコースを5名ですかさず予約した。


さて、こちらはご自身のブログにも書かれているが
ご主人が基本お一人で(混雑時は奥様も一緒に)運営されているので
皆気持ちよく食べて飲む為に決まり事を守らないといけないお店。

他のレビューでも取り上げられているので簡単に。

①おまかせ5,000円からの一本。大体5,000~8,000円というのが相場。

②〆のご飯を入れるか、ツマミだけで行くかを予め予算と共に伝える。

③基本飲み物はビール(プレモルグラス)、日本酒、仕込み水のみ。
これらは予算に入っているので常識の範囲内でいくら飲んでも心配ないが
拘りの日本酒がメインなので乾杯用のビールは3杯を超えると1杯200円になる。

④完全予約制、キャンセルは2日前まで、前日当日は人数変更であっても全額負担。
電話は16時半以降に掛ける事。

⑤持ち込み可。ワインオープナー等も持ち込まないといけない。
グラスの交換も無し。

⑥最低2時間半は掛かるのでゆっくり魚を楽しむ。

といった感じ。まめぞうさんのレビューが詳しいのでそちらを参考にされたい。


場所としては最寄駅が井の頭線神泉駅となるが、渋谷駅から十分に歩ける。
道玄坂を登って東急百貨店前を左折、松濤郵便局前を通過し、
2ブロック程歩いてまた左折。
ラブホテルがあるような路地に入るが少し歩いたライオンズマンション地下一階である。

予約時間ぴったりに無事到着。
明るくて素敵な奥様が出迎えてくれた。
ご主人はもくもくとカウンター内で準備をされている。

店内はカウンター席が12席に、奥の4人掛けくらいの小上がりテーブル席が1つ。
既に2組くらいのお客さんが居たのだが、
我々5名は奥のテーブル席に通された。

最初に奥様が料理の提供に時間が掛かる事や飲み物等の説明を丁寧にして下さり、
乾杯用の飲み物はどうするか聞いてくださった。
メインは日本酒なので最初くらいはと思って全員ビールを。

乾杯を済ませていよいよご予算8,000円コーススタート。
連日の暴飲暴食を考えて〆なし、つまみ中心でやって頂いた。
(所々うろ覚えです。ご容赦。)

一品目は蝦夷馬ふん雲丹塩煮。
新鮮で濁りの無い上品な甘み。
塩雲丹のようなねっとり感は無く、さらっとした食感。
一人一つ小皿で提供され、最初見た時は少ないかなぁと思ったのだが
一口食べて美味かったのでゆっくりと味わった。不思議と量にも満足する。

早速ビールを飲み終えたので日本酒を頂く。
この日はおすすめの順番で色々頂いたのだがどれも大変美味かった。
写真はすべては撮らなかったが、
最初にこちらのお店の名前を冠した宇部で作られている「貴」を。
西都の滴という酒米を使っているようで初めて頂いたが美味い。

結局、6種類くらい頂いたのだがそれぞれ以下の通り。
・萩の長陽福娘。甘くて飲みやすいのだが生なので最後にピリッと。
・佐賀の東鶴。美味。この日のラインナップで一番好き。
・岩国の獺祭。純米大吟50。やはり王道。
・佐賀の鍋島。レアなお品らしく、これまたレアな愛山を使ったもの。
んー、美酒ですね。最後余った分を全部頂いてしまいました。多謝。
・福島の飛露喜。これも有名所ですね。獺祭もいいけどこれも美味。

どれもこれも美味い酒でこれが予算に入ってていいのか!と括目するラインナップで感激。
ご主人がお酒が好きらしく色々酒蔵さんを廻ってらっしゃるようだ。

さて肝心の食べ物の話。
二品目は大きな貝殻に載せた生のホタテのヒモと肝の浜焼き。
確か北海道は厚岸産だったように思うが
卓上で火を入れて、軽く沸騰したら混ぜ返して火が通りすぎる前に消火。

そーっとヒモから食べると、こんな美味いヒモは初めて。
コリコリシャクシャクと小気味の良い食感に旨味が溢れる。
まるでものすごく美味しい塩ホルモンを噛んでいるかのような旨味だが
それに海の滋味が溢れていて絶妙。
これを熱々の燗酒でやったら死んでしまうかもしれなかったが
お燗は時間と追加料金がかかるので冷酒で。美味い。

肝もよく傷みやすいといって食べない事が多いがどうして美味。
新鮮だからこそだろうが、プリッとして鮑の肝には叶わないながらも良い。
食べ終わったら汁を小皿に取ってくれてこれをツマミにまた飲む。
嗚呼、ホタテの旨味で良い出汁になって至福。

そして勿論ホタテの貝柱も刺身で頂いた。
甘くて新鮮、柔らかくて美味美味。
生山葵も擂りたてで使う分だけ、醤油も匙で作って軽くかけるだけ。
確かにベチャベチャと醤油を付けると味が分からなくなるし勿体ないからこれでいい。

三品目は広島清浄区域で取れた生牡蠣。
これまた立派な大きさである。
きちんと貝柱に包丁が入っていて箸でするっと持ち上げられる。
これを一口でパクッといくと塩水で洗っただけなのに
臭みが一切なく甘みと牡蠣の優しい旨味が口中に広がる。
この時期の牡蠣は美味いが最近食べた中で一番美味いかもしれない。

そうこうして目出度いねーなどと会話に興じていて
時間の経過を忘れている内に四品目が。
この合間合間には奥様の丁寧かつきめ細かなフォローが入っている。

四品目は愛知三河湾の蝦蛄、北海道松前のマグロの脳天。
これも醤油をすくって少しずつ廻し掛ける。
蝦蛄は寿司屋以外で食べると臭かったり煮過ぎて
しゃばしゃばになったりしているものだが、さすがお見事。
大きさも小ぶりでちょうどいい大きさ。歯触りも良く美味い。

そして脳天。鮪一匹の額のあたりから1.5kgくらいしか取れない希少部位。
多分初めて頂いたのだが、これがなんと形容していいか・・・美味である。
少し筋の多い箇所になるが、トロに近い味わいでなんとも軽妙洒脱な味。
中落ちに近い味なのだが、もっと上品でかつ甘みも良い。
まさしく脳天直撃の逸品。

五品目。豊後水道かます塩煮。
土佐の塩煮というそうだが、魚のアラと塩と大根で煮てある漁師料理の事らしい。
煮込まれた大根には自家製の柚子故障が載せられており、
すっきりと塩で煮出された魚の出汁が仕込みんでこれは良い。

かますも綺麗に骨を外してあり、塩だけで煮出しているとは思えない。
煮具合もちょうど良いのだが、ここで気付いたのはご主人の塩加減の良さだ。
割烹等の日本料理でもそうだが、意外と塩自体は強くても良い。
ただ出汁との兼ね合いや味わいのギリギリのラインがあって
そこが見えている人と見えていない人ではまったく完成度が違うものだ。
その点、一見手を掛けない漁師料理を作ってらっしゃっても
良い塩梅が分かっていらっしゃるのは大変良い事だと思う。
塩煮というシンプルな料理なら尚更分かる事だ。

閑話休題。
六品目はくえの刺身。産地は聞いてない気がするが土佐だろうか。
くえはスズキ目ハタ科の魚で九州ではアラとも言う(美味しんぼでも出てましたね)。
成魚で60cmから1.4mくらいになる大魚だが、天然ものが手に入るのは稀。
こちらでは確認はしてないが天然物だろうか、最近食べたくえとは段違いの美味さ。
何の変哲もない白身魚に見えるが臭みはなく、旨味に少し甘みもあり良い。

※追記:ご主人にコメント頂きましてくえは豊後水道産の天然物だった事が判明しました。
通りでめちゃくちゃ美味いわけです。コメント有難う御座います!

そして今日の〆。
七品目は鳴門生わかめ、余市あん肝、釧路真鱈の白子を使った漁師鍋。
これを醤油とポン酢で頂くのだが、ややや、この醤油の薬味。只物ではない。
大蒜に生姜、マヨネーズ、鰹等10種類くらいから作っているらしい。
確かに漁師さんはマヨネーズや醤油で魚を食べたりするようだがこれは新感覚。

この薬味を溶いた醤油にあん肝をぶち込むとこいつは極楽。
特製薬味の出すものすごくエッジの効いた旨味があん肝の旨味とがっぷり四つ。
こいつは日本酒で口を洗うしかない。あん肝自体も十分美味い。

そして真鱈の白子もまーったく臭みが無い。
ポン酢につけて絶妙。口福。美味い。久しぶりに良い白子を頂いた。

最後に生わかめ。こいつが侮れない。
シャキシャキとした食感が出汁と醤油とでこれも大変美味。
ダダダーッと、息つく暇もなく完食してしまった。

最後に美味しそうな出汁が鍋に残っていて
雑炊にしたいなーと後ろ髪引かれる思いだったが今日はこの辺でお開き。

最近食べ過ぎの私にはちょうど腹八分目で良かったが、
お腹の減っている人には少し少ないかもしれないのでご留意あれ。


気が付けば時間はもう22時半。あっという間の3時間だった。
帰り際に一番印象に残った日本酒を教えて下さい、
ブログに写真を載せて蔵元の方にメッセージを送りたいんですと言われ
皆でお気に入りの酒瓶を持って写真をパチリ。
翌日朝にはもうお店のブログにアップロードされていた。
ここらへんのお気遣いも相当なものである。

さて少しずつ美味しい地酒をゆっくり頂きながら
美味美食を満喫したいという方にぴったりなお店であった。
ビールに日本酒6種類ほど頂いて8,000円というのは決して高くない。

最後店を出た所でご挨拶して下さったご主人の顔はキラキラと輝いていた。
思いの詰まった酒と料理、これを弛まず出せるのは素晴らしい事だ。
大変ご馳走様でした。

また行きます。

  • 北海道ばふん雲丹
  • 北海道(だったかな・・)生のホタテのヒモと肝の浜焼き
  • かき混ぜて軽く火を通して。

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10位

蕎麦切り 酒 大愚 (虎ノ門、内幸町、虎ノ門ヒルズ / そば、日本酒バー)

1回

  • 夜の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス 4.2
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥4,000~¥4,999 -

2012/11訪問 2012/11/28

随所に行き届いた気持ちを感じる蕎麦居酒屋:蕎麦切り 酒 大愚(たいぐ)

2012年11月
二度目の訪問。評価見直しの為投稿。

この日はLOギリギリの21時20分にピットイン。
先客はおらずご迷惑じゃないかと思うが一人飛び込んだ。
最初から竹鶴のお燗で食べ物はアラカルト。
鶏の昆布締め炙りと蓮根焼き、田舎蕎麦にした。
いずれも前回記憶に残ったものばかり。

お通しは前回と同じ白和えと鶏牛蒡のきんぴら。
変わらずお通しから美味しい。素敵です。

前回は同僚と話しながらだったが今回は一人の為集中して食事が出来た。
鶏の昆布締め炙りは前回は締めが浅いように感じたが
しっかり昆布が感じられて旨味たっぷり。いや、実に美味い。

そして蓮根焼きが愁眉。
モチモチとした食感とシャクシャクとした食感が両方楽しめる。
作り方を聞くと荒く叩いた蓮根とすり潰した蓮根を
筒状にして蒸してから焼いたものだそう。
フライパンで焼いてから七輪で。
醤油タレを何度か塗っていた。
お皿も蒸し器で温めて頂いて鰹節をたっぷり。絶妙。

宗幻のお燗を頂きつつ田舎蕎麦を。
田舎蕎麦は香りは控えめだが硬めで水切りにていてワシワシシコシコ。
しっかりとした食感で美味い。
つゆは鰹節の香りがプーンと香る甘過ぎず辛過ぎない仕上り。
実に美味い。

蕎麦湯もとろっとしているが手を居れ過ぎないちょうど良さ。

まったく前回は集中して食事が出来てなかったとしか思えなかった。
やはり仕事が行き届いていて実直な所は素晴らしい。
一人酒だが非常にウキウキとした気分で店を後にした。
なぜ人で溢れないのか不思議である。

=============================
2012年10月
蕎麦酒の出来る店はたくさんあれど
未だに銀座・新橋周辺で湯津上屋を超える
居心地の良いお店が見つからないのが最近の悩みだ。

そこでマイレビュアーの蓼喰人様のレビューを参考に
居心地の良い蕎麦屋に挑戦してみる事にした。
(いつも大変参考にさせて頂いております。有難う御座います。)

ときそばは今のご主人になる前に一度行ったきりだが
なんとなくつまみが少ない気がしていたので
つまみの多そうな店というので当たりをつけたのは蕎麦切り 酒 大愚。
店名に酒と書いてあるし蕎麦前が充実しているに違いないとの浅はかな判断。

さて場所は新橋は新橋でも西新橋。
烏森口から真っ直ぐ西へ。
日比谷通りを越えて一つ目の信号を右に折れると
ひっそりとビルの一階に店が佇んでいる。

表に表札と中を伺える小窓があり、メニューも用意されている。
小窓は中を見せる事で入りやすいよう配慮されているのだろう。

入口は左脇。
中に入るとこじんまりとはしているが
清潔感のあるL字カウンターにご主人が一人。
先客は奥に男女のお二人さん。
つまみを余所に酒と話で盛り上がっている様子。

まずはビールを頂き、
綺麗に和紙等で手作りされたメニューを見る。
酒と食べ物で二冊あり、自らの蕎麦の説明なんかもあって細やかな気遣いを感じる。
失礼ながら男性がここまでと少し驚く。

厨房も綺麗に片付いており、脇には炭の焜炉も。
色々食べたかったのでレビューで予習していた通り「お任せ3,500円」でやってもらう事に。

お酒は日本酒7種類ほど厳選・納得のラインナップ。
しかもお燗を薦めているではないか。
分かっているなぁと頬を緩ませつつ冷やとお燗の両方を。
二人なので風の森、悦凱陣、秋鹿、鶴齢なんかを頂いた。

・柿の白和え、鳥と牛蒡のきんぴら

お通しは白和えときんぴら。
白和えは柿が入っているのだろうか
上品な甘みが味を引き立てていて箸が進む。
きんぴらもアテに非常にいい。
初っ端からかなり嬉しい驚き。
この店はイケル。そう確信。

・鳥タタキ昆布締め

タタキは昆布でかるーく締めてある。
しっかりとした味わいを期待していたので
少し拍子抜けしたが優しい味わいでそれも思い直した。
盛り付けも美しく少量ずつお上品で酒も進む。

・こめたまの出汁巻き卵

こめたまは米で育てた地鶏の卵だそう。
出汁巻の色合いが白みを帯びて焦げ一つない綺麗な仕上がり。
これも非常に優しく上品な味わい。
酒のつまみだと塩辛くもしくは甘く味をつけがちだが
いずれも優しい味わいなのは呑兵衛の身体に気を使っての事かしら・・などと勘繰り。

・手羽元のトマト煮

ジップロックで予め手羽元をトマトに付け込んだものを煮込んだもの。
ここでいきなりの洋風で意表を突かれたが
またこの手羽元が肉離れ良く優しい味わいで良い。
料理のタイミングもいいので話込むのが分かる。

・炒り銀杏、蓮根焼き

銀杏を丁寧に炒って。またこの蓮根が食べ応えがあって美味い。
ますます酒が進む勢い。

・媛っこ地鶏と千住ネギの塩焼き

そうこうしている内に焜炉に地鶏を載せてじっくりと焼き始るご主人。
丁寧に遠火で焼いて見事な仕上がり。
シンプルに塩焼きで頂く。
初めて媛っこ地鶏を頂いたがメニューの振れこみの通り
旨味と歯ごたえがなかなか良い塩梅。
ネギが添えてあるのが泣かせる。

・せいろ(細打ち)

ここまで黙々と料理を作りお燗をつけて下さっていたご主人に
そろそろお蕎麦をと聞いてみると、細打ちと太打ちがあると言う。
本当は両方頂きたかったのだが我慢して細打ちを。

冷蔵庫から一人前ずつアルミホイルに包んで用意された
お蕎麦を取り出し茹で上げて綺麗な笊に盛る。

極細とまではいかないが私好みの細さ。
コシはあるが嫋やかで結構食べた後だがすすすっと啜れる良い食感。
つゆは辛すぎず甘すぎずそこまで特徴は無いように感じたが
全体的に十分にレベルの高い良い蕎麦だった。


さて店名からは窺いしれない細やかな配慮に満ちた大変良いお店だった。
蕎麦前として鶏をメインにしているがそれぞれに趣向を凝らしており
それも色気を出す事なく実直に工夫を重ねられている事が感じられた。

話込む先客に決して小言も言わず、気持ちよく客に合わせた接客をされていたのも好印象。
ご主人から積極的に話をされる事は無いが程よい緊張感があるこの距離感も嬉しい。
一人か二人でしっとりと飲む時に使いたいお店だ。落ち着いた大人のデートにも使えそう。

また行きます。

  • 【2012年10月】柿の白和え、鳥と牛蒡のきんぴら
  • 【2012年10月】鳥タタキ昆布締め
  • 【2012年10月】こめたまの出汁巻き卵

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