レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
1位
1回
2017/07訪問 2017/07/16
土用丑の日も近い7月の某日、朝から暑い暑い。そろそろ夏バテも現実味を帯びてきて、モードは鰻気分。昼餉も取らず、東武伊勢崎線某所での仕事をさくっと切り上げて、当店へ向かう。15:55時点ですでに行列。先頭から頭の中で人数を数えながらしんがり方向へ。うむ、当方33人目。一巡目で入れそうなので、最後尾に付かせていただく。以前の異常な行列の長さと比較すると少々落ち着いてきたような印象。
店内改装後は初めての訪問だから、ずいぶんと久し振り。トイレの位置が変わっていたりするから、ちょっと恥ずかしい立居振舞になってしまった。
ビール大瓶(サッポロ黒)850円、焼鳥二本1200円、鰻重(大きい方)5300円、肝吸400円(いずれも税別)を所望。
尾花・石ばし・秋元といえば東京鰻御三家とも呼ばれていた名店。神田川と重箱をいれて5大鰻とも。すでに名うてのレビュアーさんが言及の通り、評価の定まったお店。久しく訪れていなかったのは、エリア的になかなか伺いにくいことと、基本予約のできない店なので、口開けを逃すとかなり待たされることと、完全畳の座敷という当店の意匠が、腰痛持ちの当方には少々苦痛だから。座椅子は佇まいが何となく野暮ったくなるので使いたくないのだよなぁ。
こちらのお給仕のおばさま方の所作やら差配やらは以前から好き。
焼鳥は鰻が出てくるまでのつなぎ。タレの旨さと焼き加減はさすがと思わせるけれど、もろ手を挙げてお勧めするほどでもない。
まずはお新香がお給仕されて「間もなく参りますので」と、注文から40分ほどで供された鰻重。ふわっとろ系の蒲焼としてはおそらく日本最高峰の旨さだろう。無駄な焦げの無い美しい焼目は手練の技。きちんと醤油の酸味が感じられ、それでいて深いコクと旨味のタレもよろしき風合い。そしてこの柔らかい鰻をしっかりと支え、タレが適量まぶされたほどよき硬さの熱々の白飯が白眉の旨さ。
以上1時間ほどの饗宴のお勘定、計税込8,370円。御多分に漏れずかなりの高騰。一介のサラリーマンとしての一回の食事代としては正直かなりの高額。しかし、こちらより質の落ちる鰻を同等価格で出している店も巷に跋扈している現実を鑑みると、当店のこの鰻ならば相応と感じさせられる凄みがある。
明るい時間から、仕事をさぼって、少々背徳感ありの贅沢。年に一回くらいは赦してしまおう。
【以下はサービス停止となった某サイトにアップしたレビュー 2003.10】
鰻。旬の定義についてはいろいろとあろうが、私はやはり夏場に頂きたい。夏ばてするタマじゃないが、滋養によさそうな気がするし、土用の時期に食することで、あぁ日本人…などという感慨に浸ることもできる。
こちらのお店、庭先にお社などを構え、和風佇まいがなんとも言えぬ風情。行列のできる店として有名であるが、平日夕刻であれば、意外とすんなり入店できることもある。
店内、畳敷きの大広間。整然と並ぶお膳の下に座布団が重ねて置かれ、席に案内されると、揃いのユニフォームのお給仕さんがすっとセッティング。呼吸の妙。手練の技。どこにでもいる(失礼)おばちゃんのほっとするような応対はこちらの魅力のひとつ。以前、「うざく」の「ざく」とは何ぞやと尋ねたら、わざわざ厨房まで訊きに行ってくれた。ちなみに答えは「野菜」。
鰻は当然関東風で、かなり蒸しの強い、柔かめの出来栄え。やや水分残留が多いかなとも思うが、皆さまお褒めの通り、十分に美味しい。注文から一時間ほど待つなどと表示されているが、実際は40分くらいで出て来る。蒲焼・白焼き以外のサイドメニュー、う巻き・焼鳥の類は、場つなぎにどうしても頼んでしまうが、あまり過度の期待はしないほうがよいかも。
ストイックにお味を追究したり、ハレの食事として意気込んで食べに行くような店ではないだろう。全体の醸すレトロな空気を楽しめばよい。ただ、トイレが無機的で情緒無しなのが残念。
ちょっとイイ事あったときに、ちょっと贅沢しよう…なんて家族や気の置けない仲間たちで訪れるような利用法が一番相応しいと思う。
2位
1回
2017/07訪問 2017/07/29
宮崎出張。出張先の昼餉、結構困ることが多いので、今回は事前に食べログチェック。和食のランチで最高レイティングだったこちらに、ネットから前日予約。予約の際に【昼の部】会席「寿」8,640円(前菜盛り合わせ・お造り・吸い物・焼魚・宮崎牛料理・鮨五貫・汁物・甘味)を前もって注文しておく。
午前中でさくっと業務終了。宮崎駅から方向だけ決めててくてく歩く。スマホを持ち合わせない当方、食べログさんの小さい地図を頼りに途中まで来て、少々不安になりお店に電話すると、妙齢の女性が迎えに出てくれた。
イイ感じの一軒家風店舗。店内は所謂高級鮨店の設え。一枚板のカウンターが美しく、漬場後ろには中庭風の手入れされた植栽がガラス越しに。クリンネスも完璧にハレの食事空間として非日常を感じることのできるレベルに昇華されている。
生ビールを所望して、コースの始まり。
玉蜀黍のすり流しの嫌味ない甘さ。クエのお造りのほどよき熟成具合。車海老使用のしんじょう椀の塩梅。鰆幽庵焼きの火入れの確かさ。宮崎牛フィレステーキの素材のよろしさ。どれもきちんとした仕入れと仕込みが伺われるもの。締めに出てきた鮨五貫と赤出汁、デザートまで隙の無い、高レベルにまとまったコース。追加注文で頂いた才巻海老、穴子、鯵。新子を頂けなかったのは残念だったが、どれも東京有名店のそれと遜色なくさりげない仕事が施されている。特に対馬の穴子は臭み無くふっくらと仕上がっていて出色の出来栄え。本寸法の江戸前仕事で真っ向勝負されているその意気やよし。
今回コース料理を事前に予約してしまっていたのでやむを得ないのだが、これだけ高レベルの握りをいただけるのであれば、鮨のお任せにすればよかったかなと少々反省。
応接は品の良い女性のお給仕と、ソムリエ風の男性を交え、漬場の職人さんまで、どなたも自然なホスピタリティで、慇懃無礼なところも無く気持ちの良い対応。
ビールのあと、石川の純米菊姫を2杯ほどいただいて、15,000円見当のお勘定はかなりのお値打ち感。
当店が同じ味・雰囲気・サービスで東京にあったら、予約が取れない人気店になるのは間違いのないところだろう。不遜な言い振りになってしまうが、この地の利の無さでこれほどの鮨店がきちんと味・雰囲気・サービス三位一体で経営されているのは奇跡のようだ。レビューの多さ、レイティングの高さ、むべなるかな。
以上、1時間半ほどの饗宴。店を出ると酷暑。ふっと現実に引き戻される。歩いて駅に向かうが、バス停を通り掛かったところに丁度バスが来たので乗り込むと、運転士さんと私だけというリムジン状態で宮崎駅まで。何かイイ日。
3位
1回
2017/12訪問 2017/12/09
数多のレビューによりほぼ評価の定まっているとんかつの老舗。過日業務途中にふらりと初訪問。
店内はざっかけない雰囲気と凛とした雰囲気が混在する、何とも言えない心地よい空間。ところどころ劣化しているのだけれど、それが枯れたいい味わいになっている。
カウンター内では4人の先輩方がきりりと仕事を進め、ホスピタリティ、目配り抜群のおば様二人がお給仕を担当。
運よく空いていたカウンター席に滑り込む。ロースとんかつ1200円+定食450円 計1650円を所望。
供された定食。とんかつは丁寧に二度揚げされた昔ながらの意匠と味わい。油切れが完璧で皿のどこにも揚げ油が付いていないところ、職人技。豚肉の油脂由来の旨味と赤身の旨味両方味わえるなかなかの一品。キャベツしゃきしゃきふんわりで美味しい。お代わり二杯まで無料の炊立て白飯とても美味しい。豚汁は煮込まれた玉ねぎの甘みが強く、好みが分れるところかと思うが、熱々で個人的には好み。漬物も隙無く美味しい。総じて、お値打ち感十分。
長い年月を重ねながら地元のお客さんと濃厚な関係を築きつつ、当方のようなフリの一見客にも不快な思いをさせないところ、とても人間的であたたかい。特別な事をしている訳ではないのだけれど、ひとつひとつの仕事を誠実に積み重ねてきた凄みがある。
当り前のことだけれど、お店というのは客も含めた人が創ってゆくのだなぁ…そんな感慨。うん、良い店だね。
4位
1回
2017/09訪問 2017/09/14
橋本駅北口に構える、少々古めかしい昭和の薫りただよう居酒屋さん。店内はやや薄暗く、壁に貼られた短冊状の品書きがざっかけない雰囲気を醸す。
過日の夕刻、男二人で訪問。
とりあえずの生ビール、刺盛、馬刺、豚の角煮なぞをさくっと注文。
いやぁ、相変わらず、酒肴が旨い。生魚の性質は居酒屋レヴェルを軽く陵駕。特に鮪が白眉。魚あら煮は、これはもうあら煮という代物ではなく、完全に一点物の煮魚の域。追加でいただいた、豚角煮、レンコン天ぷら、自家製味噌の鶏もも西京焼、どれもがちゃんとしている。それでいてサワーの類などは一杯450円だから、勘定は懐に優しい。
親父さん、時々客席に出て、酒肴の説明をしてくれるのがうれしい。根っからの料理好きがこちらに伝わってくる感じがイイね。奥方のつかず離れず控えめな応接も滋味深く。
橋本で気の置けない仲間との呑みとなれば、こちらが個人的にはベスト。まぁ、なかなか橋本で呑む機会なんて無いので、こちらに伺ったのは十年以上振りなのだけれど。
ここは間違いなく良きお店。基本ご夫妻二人で差配しているお店だから、多少料理を供するテンポがゆるりとしていたりする…それを差し引いても、巷の安酒居酒屋チェーンに行くならば、ご予算を多少プラスしてこちらに伺うことをお勧めする。
5位
1回
2017/12訪問 2017/12/28
札幌出張。2か月前に予約を入れていた当店への訪問が、個人的には仕事以上に今回のメイン。本格蝦夷前鮨を頂くこと、楽しみ。
すすきのはちらちらと雪。ホテルで傘を借りて出たのだが、街の殆どの人は傘をさしていないのに少々驚く。寒さはそう応えなかったけれど、一度車道ですべり転倒。クラクションも鳴らさず、こちらが立ち上がるのを待ってくれている車。その優しさに感動しつつ、訪店。
コンパクトに風除スペースが設けられているのに感心。店内は白木のカウンターが清々しい、高級鮨店としてのクラースを誇示するシンプルな設え。とりあえずの生ビールを頂き、TBS土井敏之アナウンサーにそっくりな大将お任せのスタート。
ビールを日本酒に変えた頃、隣に同伴系女性が…うわぁ香水が結構きつい。場所柄仕方ないこととはいえ、少々モチベーションが下がる。
昆布締め2種から酒肴を数種。山葵、がりがキチンとしているのは主の矜持。もう名残りの時期と思しき〆鯖の脂の乗り、北海道産鮟鱇の肝の比較的さっぱりとした旨味が印象に残る逸品。その他天然帆立の磯部巻、水蛸桜煮、蝦夷鮑の酒蒸、蝦夷馬糞雲丹飯等、ややダイナミズムには欠けるけれど、どれもが日本酒が進む品々。片口で供される日高見、田酒をくいくいと。
酒肴のあとは握り。十数貫程度一通りいただくが、少々呑みすぎたかもしれない、きちんと仕事のされた握りは勿論どれも旨かったのだけれど、酒肴ほど琴線に触れるものは無く。最後にかんぴょう巻きを追加。道内ではあまり出ない種とのことで、寿司文化の違いに思い入る。
印象的だったのは大将の応接の如才無さ。笑顔を絶やさず、客に対しての気配りが素晴らしい。修行先での話やら道産の種の話やら仕入れの話やら楽しく伺うことができた。お給仕を補助されていたのは、ご母堂だろうか。控えめな立居振舞もなぜかほっとする。
以上、26,000円強の饗宴。相応。東京の高級鮨店と比較して若干安いけれど、コストパフォーマンスを評価すべき店ではないだろう。
総じて間違いのない、清潔で、安定感のある、良い鮨店。バランス感覚に優れ、一見でも居心地の良い雰囲気を作っているところに好感。札幌に来た際にはまたお邪魔させて頂こうと思う。
6位
1回
2017/08訪問 2017/08/11
過日の熊本日帰り出張。当初は天國さんに伺う予定にしていたのだけれど、エアコン工事中とのことで断念。熊本新市街を少々徘徊ののち、ふらりとこちらに伺う。
まずはグラス生ビールを頂いて、六白黒豚ロースかつ定食を。1,647円。
店内の雰囲気はとんかつのファミレスといった感じなのだけれど、清潔感もあり和モダンの落ち着く意匠。
供されたロースかつ。レヴェルがとても高くてうれしい誤算。比較的揚げ色の薄い衣。見た目よりも油切れよく、肉の出自のよろしさをきちんと感じられ、上出来。お代わり無料のキャベツ、白飯、赤出汁各々もきちんと旨い。2,000円以下でいただけるロースかつ定食としては出色の出来栄え。かつ吉さんのとんかつの一枚上を行く感じと言ったら分かる人には分ると思う。
接客はややマニュアル臭はあるものの、皆様矜持を持って当たられている。「お料理が出来上がりましたが、御飯もお持ちしてよろしいですか」とビールを飲んでいる当方に対する気遣い等、高いホスピタリティ。昼時に行列のできるような繁盛店でこの応接姿勢はなかなかお目にかかれずうれしい。
おそらく、こちらの料理の味わい、全体の雰囲気、応接のレヴェル等を鑑み、東京でこちら以上のコストパフォーマンスの高いとんかつ店を探すのは至難の業だろう。
個人的に2点ほど苦言。
①ランチで1円単位の勘定は何とかならないだろうか。会計に手間もかかるし、小銭が増えるのはあまりうれしくない。また、カード利用が5,000円以上からというのも、お給仕のホスピタリティの高さと照らし合わせてみるとと少々疑問の対応。
②カウンター席に案内されたのだが、椅子が固定式で当方のような肥満体躯だとかなり食べづらく。
とはいえ、サラリーマンのちょっとした贅沢昼餉として、この繁盛ぶり、レイティングの高さもむべなるかな。食後素直に「いいお店だなぁ…」と感じることのできる、稀有なとんかつ店。
7位
1回
2017/11訪問 2017/11/09
過日気の置けない仲間と二人で。
代々木駅至近の地下に構えるこちら、店内意匠は所謂和モダン系。普請は安そうだけれど、木調の内装が落ち着く色合い。
とりあえずのビールと刺盛、タン土手焼き、鱈白子、を注文。ビールを干した後は各々サワーを。
こちらの供される酒肴がかなり美味しい。誠意ある仕入れと仕込みが伺われるものばかり。刺身の性質も素晴らしく、居酒屋さんでは珍しい墨烏賊なぞを盛り合わせに組み込んでくるところなど、上級。白子も鮮度十分で独特の臭みもなく。久しぶりに伺ったのだが、凄みを増している印象。それでいて、ウーロンハイなんかは350円と安酒居酒屋チェーン店並みのお値打ち価格で提供してくれているから本当に良心的。
バラ肉の焼き物やら出汁巻き玉子やら牛すじカレーやらデザートのパンナコッタやら銘々に追加して、サワー3回転ほどでお勘定税込みで10,000円ちょぼちょぼはお値打ち感十分。
予備校生向けの低価格居酒屋が跋扈する代々木という土地で、こちらのような大人の居酒屋がこの価格できちんと営業されていることとてもありがたい。
個人的には、代々木では志のぶさんとこちらがお勧めの飲み処2大巨頭。
8位
1回
2017/05訪問 2017/06/09
過日の夕刻、仕事が早くはけたので幡ヶ谷駅界隈を徘徊。ふらりと一人で訪問。カウンター席に滑り込む。
駅からは数分。すでに住宅街に近い処。はす向かいにはゴルフ練習場などあって、周辺にお住いの方のクラースを鑑みるとやや場違いにも思える大衆的雰囲気。
とりあえずのビールを干して、お刺身の盛り合わせと名物という五色納豆を。
金1,000円也の盛り合わせ、飛び魚の姿造りを含め6種。質量ともお値打ち感満載。五色納豆は基本マグロ納豆なのだけれど、ちょっと変り種も入っていて、やや甘めではあるが酒肴としての出来栄えよろしく、確かにおいしい。
店内は繁盛店独特のオーラを発露しつつ、ほぼ満員の活況。応接はややオーバーフロー気味だけれど、過不足なく。カウンターのお隣さんとの会話で、予約なしですっと入店できるのは結構運がイイのだそう。このお隣さん、一見客の当方が喫煙しないのを感じ取って、さっと灰皿を遠ざけてくれる…というモラールの高さ。こういう客と店との一体感がうれしく、再訪してしまう大きな理由となる。
生レモンサワーを二杯ほど追加してお勘定、2,480円は、はっきり安い。きちんと明細を出していただいたので、帰宅後拝見すると、生ビールが390円、生レモンサワーが290円となっていて、大手資本安酒居酒屋チェーン店並みのお値段。ありがたい。個人店でもやればできるのだなぁ。
地の利のない場所での大繁盛、むべなるかな。ファンの多いお店であること必然。きちんとしたものを、きちんとした応対で、お値打ち価格で提供すれば間違いなく繁盛店になるというお手本のような誠実なお店。
幡ヶ谷界隈には結構イイ魚系居酒屋さんがあるけれど、個人的には3本の指に入る、再訪必至の良店。
9位
1回
2017/06訪問 2018/11/17
過日二人でふらりと訪問。
中野駅南口から中野通を南下。大久保通を左折してしばらく歩いた右手に見えてくるこちら。渋い藍の暖簾がかかっている。からからからっと引戸を開けると、店内は昭和の薫りただよう、ほどよくうらぶれて、思いの外清潔な空間。短冊状の手書きの品書きが店内壁に整然と貼られている。
歩いて汗をかいたのでとりあえずの生ビール中を。
つまみにいただいたナムル。お母さんがさくっと出してくれたたっぷりのサービス韓国海苔にナムルを挟んで食べるととても美味しい。そそくさと生ビールを干してマッコリのボトルを注文。このマッコリがさっぱりしていてくいくいと。
しばらくしてお母さんが卓に置いてくれた、きちんと火の熾された炭火七輪。取り急ぎ上タン、上ロース、ミノを注文。いずれも少々ダイナミズムには欠けるけれど、お父さんの調理人としてのスキルをきちんと感じる盛り付けと味わい。胡椒を利かせているのがこちらの特徴。タンは熟成が適宜で河豚の薄造りのような美しい盛付。シンプルにレモン汁で。ロースは昔懐かしいタイプ。昨今の繁盛店のロースは結構なサシが入っていたりするけれど、こちらはきっちりとした昔ながらの赤身。昭和の時代はこれこそが焼肉店のロースだった。マッコリを空けて、箸休めの野菜サラダと上カルビ二人前を追加。一人前1550円はこの質量ならば満足度高し。最後に締めの冷麺を。
以上、お勘定12,000円見当はかなりのお値打ち感。
当店、お母さんの応接が素晴らしい。何となく飄々とした雰囲気なのだけれど、目配りの効いた付かず離れずの呼吸と、馴れ馴れしいと感じるぎりぎりのところで留まるフランクさが心地よい。気を使わせない世話の焼き方は手練の技。接待的応接を求める方には不向き。
お店を出ると真ん前の「中野保健所」バス停に丁度中野駅行のバス。まるで迎えに来てくれたようで、たったバス停二つだけれどお大尽気分で帰路に。
こちらより良い肉を供される焼肉店は数多あるだろうけれど、他店には無い稀有な癒しがある。個人的にはニッポンの焼肉屋さんとしてかなりの優良店。
今年から地方出張に出る職務に異動になったので、東京以外の良いお店に何店か伺う僥倖に恵まれました。都内の新規開拓は正直頭打ちになってしまって久しく、また以前と比較して意欲も薄れてきてしまっています。
鮨が好きなのですが、都内人気店は予約のハードルが高く、価格も30,000円超・・・。一介のサラリーマンが手銭を切って馴染みになるのはもうかなり難しいですね。地方ならば一見でも諦めがつきますが、通える場所にあるお気に入りのお店に、通えない状況というのは、もどかし過ぎます。
カウンター10席のお店が月20日実働で二回転とすると、400人の常連さんが、主の指定日指定時間に月1回来てくれれば、新規一見のお客さんはいなくても済む計算になります。自らがレビューを書き連ねていながら言うのもなんですが、食べログさんの功罪の罪のひとつかもしれません。