日和山から下界へ下り、海側へと歩いた。
ここでその惨状を詳述するのはやめておく事にする。
その写真も添付するのは憚られた。
本来なら海産物の宝庫であろうはずが、巨大な瓦礫の山、廃棄処分の車、車、車。
「絶句」しかない光景。人にもあまり出会わない。
最上川沿いに上流へ、日和山から見えていた「石ノ森漫画館」を目指す。
途中には魚を喰わせてくれる料理屋さん、居酒屋さんがあったはずだったのだが、
残念ながら悉く閉店・休業、店によっては跡形もなかった。
最上川を遡上した津波は石巻市街にも甚大な被害をもたらしているのだが、
この「石ノ森漫画館」とそれに通ずる橋はなんとか持ちこたえてくれていた。
しかしその周りに建っていたであろう住居などは全くなくなっている。
やっぱりとは分かってはいたが閉館していた「石ノ森漫画館」。
入口付近にはベニヤ板何枚も張り巡らされ、それに「寄せ書き」がされていた。
有名人の寄せ書きも多く見られた。まさに魂のこもった「寄せ書き」である。
そこへ自転車に乗った3人の小学生がやって来た。
「こんにちわぁ~!」明るく元気で礼儀正しい。
「もうイッパイだわ!取りに行こう!」とか言っている。
「すみません、もうイッパイで書くとこありませんよね!今からベニヤ取って来ます!」
なんと!この少年たちは寄せ書きのスペースが残っているかどうかを確認に来たのだ!
「イヤ!おっちゃん達はダイジョウブやで!あわてんでもエエからな!!」
「ハーイッ!ありがどーございます!!」少年たち、大急ぎで走って行く。
「こっちこそ!ありがとーーっ!!あわてるなよーーつ!!」
2時間以上歩きまわって、肉体的にもそして精神的にも疲れ切っていた。
元気イッパイにベニヤ板を取りに走って行く少年たちを見送りながら、
本当に救われたような気持ちになった。本当に清々しかった。嬉しかった。
「社長!寄せ書きして、それでホテル入って休憩しましょか」
「おう!そうしょうか。もう限界やわ。」
発災直後から約4カ月半、避難所として戦われていた【石巻グランドホテル】を目指し、
病み上がりとギックリ腰の宇宙人2人がホテルまで無事辿り着けたのは、
間違いなく、さっきの3人の少年のお蔭である。「ホンマにありがとう!」