『佐村河内事件の映画「FAKE」渋谷』ヒーリングタイムさんの日記

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ヒーリングタイムの外食日記

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ヒーリングタイム (70代以上・男性・東京都) 認証済

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ネタばれ有り。

昨日、渋谷の「ユーロスペース2」という映画館で森達也監督の新作「FEKE」を見た。2年前に騒動になった佐村河内守氏を追った映画。面白かった。

当初、この映画のことをネットで見た時にフッと頭に「プロレス」という言葉が浮かんだ。森監督も以前、岩波新書から「悪役レスラーは笑う」という日系悪役レスラー、グレート東郷を追った作品も書いている。

フェイクをひっくり返した「ケーフェイ」というプロレス界の隠語を題名にした本を初代タイガーマスクの佐山聡氏が出した時にも物議を読んだ。

後に総合格闘技「修斗」を創設した佐山氏は、これは自分が書いたのではなくゴーストライターが書いた物と言っている。「ケーフェイ」とはいわばプロレスの筋書の事で当然、これはタブーとされていること。

この映画のキャッチコピーに最後の12分の事は話さないで下さいとあるが確かに、この部分はこの映画の核心部分。しかし、私は、その部分を知ったうえで、この映画を見ても十分楽しめるし、却ってこの映画を考えるうえで、その方が良い気がするので書く。

この部分は森監督に佐村河内氏が実際に作曲をすることを薦められ自身でシンセサイザーを購入して作曲演奏をする。非常に感動的でありカタルシス満載のシーン。

ここで終われば、目出度し目出度しになるのだが最後に森監督が佐村河内氏に「貴方は私に嘘や隠し事は、していませんよね」と問う。それに対して佐村河内氏が長い沈黙を保ち映画が終わる。この長い沈黙は何を意味するのか。ある意味非常に神経を逆なでされカタルシスが吹き飛んでしまうシーンだ。

昔、アントニオ猪木が仕掛けたと言われる橋本真也対小川直也戦の結末後の感覚を思い出した。

橋本が負けたら引退の試合、本来ならば橋本が勝ち小川が新日本プロレスに入りプロレス修業をして目出度し目出度しとなるのだが、猪木は小川を圧勝させ橋本を引退に追い込んでしまう。その時の複雑な心境と同じ感覚だ。

結局、真実っぽいことはマスコミなどが意図的に作ることが出来る。何が真実かは人任せにせず、自分で考えなさいよという問いかけをしている映画だと思う。佐村河内氏の難聴がどうの、作曲能力がどうのという映画ではないと思った。


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