3回
2025/09 訪問
一等素材の味わいを語るアセットデセールと複雑妙味な台湾茶のマリアージュ
『ティーペアリング①』 ・ジャスミン杉林渓スパークリング 青心烏龍という品種を烏龍茶に製茶して、花王?という品種のジャスミンの生花(がく付き)で香りづけしたもの。
『デセール①』 上から、 ・オパリーヌ(=極薄の飴細工) ・トマトのコンポート ・トマトのクリアシート ・岐阜県産 おひさまコーン(とうもろこし)のムース
『ティーペアリング②』 ・八八金萱(ホット) 金萱という品種を、烏龍茶に製茶したもの。 95℃のやや低温で、”8時間焙煎→休ませる”工程を11回反復したもの。
『デセール②』 ・京都府 京鴨の卵のプリン ・京都上賀茂産 賀茂茄子の焼き茄子アイスクリーム
『ティーペアリング③』 ・微酸金萱(アイス) 金萱という品種を烏龍茶に製茶したもの。 湿度・温度・時間を管理して独特の発酵(=曝気)を行ったもの。
『デセール③』 ・大石早生(プラム)のソルベ(皮ごと) 福島県 古山果樹園様の川中島白桃の ・クリュ(=フレッシュ) ・コンポート(バニラと桃皮で香りつけて) ・コンポートシロップのジュレ
『ティーペアリング④』 ・ローズアッサム(アイス) 台湾アッサムという品種を紅茶に製茶して、生のマリアカラスという薔薇でゆっくり香りをつけたもの。
『デセール④』 岡山県 ミライノウエン様のシャインマスカット ・皮付きのクリュ ・皮剥いてソーテルヌシロップでマリネしたもの ・フロマージュブランのムース ・シャインマスカットのシロップ
『ティーペアリング⑤』 ・微酸イラム白(ホット) T78とGoomteeという品種を白茶に製茶したもの。 萎凋の時間を10時間半と短くすることで茶葉の葉酸を残す仕立て。
『デセール⑤』 ・沖縄県産 完熟ゴールドバレルの焼きたてミルフィーユ 中にクリームムースリーヌと、フレッシュのパッションフルーツ ・宮崎県産完熟マンゴーのソルベ(ライム果汁入り)
『お口直し』 ・雪室で三年間熟成させたキタアカリのコンソメ 白神山地の超軟水とフランスの塩だけで、ジャガイモ1kgから300ccのコンソメを抽出。
『ペアリング⑥』 ・日華玉露 輸出基準を満たした完全無農薬でつくられたやぶきたという品種を玉露に製茶。台湾に運び、優秀な焙煎師に青みだけを消すように45℃で4時間焙煎して頂いたもの。
『デセール⑥』 ・白神山地の超軟水とカカオハスクティーとカカオの”アイス” ・フレッシュの沖縄カカオの果肉ととカカオハスクティーのジュレ
『ペアリング⑦~お茶菓子まで』 ・大禹領(2025春ロット) 青心烏龍という品種を烏龍茶に製茶。 約2700mと世界一高地で生産。中国のお茶のコンクールで世界一に輝いたこともある生産者様。
『デセール⑦』 ・天使音マスクメロンのショートケーキ お持ち帰りは難しいほどの水分量で仕立て
『デセール⑦』 ・天使音マスクメロンのショートケーキ ジェノワーズ(スポンジ生地)には、種の周りの果肉からつくったアンビバージュをしっかりとアンビベ。
『お茶菓子』 ・焼きたてのフィナンシェ ・栗の水羊羹 ・佐賀嬉野の釜炒り抹茶のアイス (ベースの牛乳に同産地の玉露を甘みと旨みが出る温度でアンフュゼ)
『お茶菓子』 ・焼きたてのフィナンシェ ・栗の水羊羹 ・佐賀嬉野の釜炒り抹茶のアイス (ベースの牛乳に同産地の玉露を甘みと旨みが出る温度でアンフュゼ)
2025/09/10 更新
2025/04 訪問
一等素材の味わいを語るアセットデセール×複雑妙味な台湾茶のマリアージュ
料理長は、濱村浩様。
26歳までフランス料理人として活躍。
半年ほどパティシエの職に就いた時に自分には菓子作りが合っていると転職。
「オーボンヴュータン」に就職して、3年目からスーシェフパティシエを務め、
2011年、レストランデセールを学びたいと渡仏し「ステラマリス」で修業。
帰国後は「ロアラブッシュ」「インフィニートヒロ」「オマージュ」と錚々たる店で腕を振い、
2024年5月、東京都西麻布にて、「蒼」のオーナーシェフの峯村康資様、「Leafwine」の代表でティーペアリングアドバイザーの横田大助様と一緒に、
アシェットデセールとティーペアリングのスイーツコース専門店「蒼菓」をオープン。
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日本各地から届けられた濱村様・峯村様こだわりの食材を、
濱村様・峯村様の卓越したその技術で、一見シンプルに仕上げながら、
素材の味わいを引き出し尽くす。
調理は「蒼」同様に全てガラスや鋳物で行う。
ステンレスや金属を使わないことで、素材の味や香りを全て正直に引き出す。
だからこそ、良質な素材を用いざるを得ないそう。
また、上質な台湾茶はほとんど横田様がカスタムオーダーされた品々。
産地・品種・製法・淹れ方の異なるお茶は、一つ一つ個性があり、豊かで深みのある複雑な風味をもつ。
そんなお茶をペアリングすることで
デセールの鮮烈な余韻をさらに心地よく引き上げる。
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三度目の訪問。
少し早めに伺うと建物入口には濱村シェフ自らお出迎えを。
エレベーターをご一緒してお店に上がりカウンターへ。
食材やティーペアリングのレジュメを読みながらワクワクを高めていると、
本日使う食材たちの紹介が始まりコーススタート。
季節柄旬のフルーツが少ないそう。
そのため、ありきたりだからと今まで禁じていた濱村シェフお得意のミルフィーユも解禁。
もちろん味わいはありきたりな美味しさではなく高次元。
また、年明けからお口直しの一皿が加わっており、そちらも非凡な一皿。
日本一の包丁研ぎ師と名高い藤原将志様が研いだ包丁を用いて、
蒼の峰村シェフ自らがスタッフには任せずに、雪室三年熟成きたかありの皮を剥きスライスし、
ジャガイモ1kgから300ccのコンソメを抽出。
包丁と同じように研ぎ澄まされた味わいに同席の方々からも驚きの声が。
お口直しまで徹底して抜かりありません。
台湾茶の中で特筆するのであれば、やはり約2700mと世界一高地で生産された烏龍茶である”大禹領”。
こちらは中国でおこなわれたお茶のコンクールで世界一に輝いたこともある生産者様のお茶。
一般的に、高名なお茶は現地・世界の大富豪に流れてしまうため、通常のルートでは手に入りません。
ご実家が台湾で茶業をなされている横田様だからこそ手に入れられる逸品を惜しげなく提供。
そんなお茶は強烈な香りや何かに特化したような味わいではなく、
その馥郁とした温泉を思い出すような香りに、ゆっくりと膨らみのあるうま味と甘味。
そのバランスの良さ、雑味や青みのなさ、余韻の長さに酔いしれます。
今回も疾走感のあるスムーズなサービスで、一時間半で終了。
横並びのカウンターで、食べ終わった人からお皿が下げられていくため
食べる速度を上げなくては!と少しだけプレッシャーです笑
ペアリングを飲みながら食べ進めるので、
間延びすると満腹になりやすいことへの配慮もあるのかと思います。
台湾茶ティーペアリング付きデセールコースで、17600円。
中国茶・台湾茶好きとしては、本当にたまらないティーペアリング。
台湾茶それだけでコース代程の価値があるものと思われます。
そこに最高のアセットデセール達。
昨今のデセールコース高騰化の中で納得感があり良心的な価格です。
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お料理の構成は写真にも
補足事項や感想●、解説※は本文で
(※印の内容は自分調べですので誤りを含む可能性がございます)
(※お茶の解説は中国茶の知識がベースなので台湾茶とは異なる点もあると思われます)
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『ティーペアリング①』
・金萱爽香スパークリング(水出し)
金萱という品種の茶葉を烏龍茶に製茶したもの。
玉葱の甘い余韻に寄り添わせて。
シャンパンと野菜ムースの合わせるような意図で。
●
飲む前の香りは海苔のような青い香り青が少し。
口に含むと、花香と甘さが広がりつつ
炭酸がきてドライに締める。
余韻には、花のような軽い甘い香りに加えて、確かにクリーム感が感じられる。
(料理を頂く前に単体で味わった時はクリームを感じました。料理に合わせると余韻が被りはっきりとしないくらい繊細です。)
野菜の青み・ムースの僅かな乳感に寄り添いつつ、濃い甘味・うま味をさっぱりさせて。
お野菜の印象を残しつつも花香で華やかさを与える。
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※金萱:
台湾で品種改良によって生まれた品種。
12番目に生れたため「台茶十二号」とも言われる。
生産性が高く、奶香とよばれる淡いミルクのような香りが特徴とされる。
※「烏龍茶の定義・製法・特徴」については、手前味になりますが、私の『7T+』様のレビューを参照頂くとわかりやすいかと思います。
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『デセール①』
上から、
・オパリーヌ(=極薄の飴細工)
・トマトのコンポート
・トマトのクリアシート
・三浦農園様の泉州黄玉葱のムース
新玉葱のムースは、藤原将志様が研いだ包丁を用いて新玉葱の細胞を壊さずにカット。
一晩寝かせてから少量の油で1/10なるまで炒める。
塩のみ・砂糖なしでムース仕立てに。
●
つるっとしつつ口どけの良い玉葱ムースは、丁寧な下処理/調理によって、特有の匂いや雑味なし。
それでいて玉葱の味わいの綺麗さが凝縮。
玉葱の甘み>うま味が美しく際立っている。
トマトのクリアシートはその柔らかな食感がムースと齟齬なく馴染み、
青みと甘みとうま味を加えて明るいフレッシュ感を与える。
トマトのコンポートは、さらっと柔くジューシーで青みがキリリと立っておりお口がリセットされ、
オパリーヌはスプーンで軽く小突くと砕ける極薄さで、パリっと食感のアクセント。
食べずらい飾りになっていない点が◎
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※オパリーヌ:
フォンダン(砂糖と水を練り煮詰めて結晶化させたもの)と水飴を煮詰めてから冷ましたものを、砕いてパウダー状にして、それを好みの形に薄く散らして焼くことで極薄の飴細工を造形できる。
パウダーを作る段階でフレーバーを加えることも可能。
※泉州黄玉葱:
日本で最も古くから栽培されている玉ねぎの一つとも言われ、「なにわの伝統野菜」にも認証されている。
瑞々しい水分量と強い甘み、そしてUFOのような扁平な形が特長。
江戸時代から続く三浦農園様で栽培されているのは、泉州黄玉葱のうち今井早生という品種。
※藤原将志様:
三重県松阪市の老舗刃物店「月山義高刃物店」の三代目。
同じ包丁でも研ぎ方によって切れ味が変わることを実感して研ぎの重要性に目覚め、理論と実践を融合した講習を一般の主婦から三ツ星料理人まで幅広く行なっている。
2014年には店の一角に「切れ味研究所」を設立。包丁の切れ味が食材の酸化、加熱時の変化、味わいにどう影響するかを科学的に検証。現在は切れ味と熟成の関係も研究中。
また、包丁研ぎ師を料理人の“パーソナルトレーナー”と位置づけ、専門職としての地位確立も目指している。
2017年には「日本包丁研ぎ協会」設立し代表を務め、「研ぎサミット」開催。
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『ティーペアリング②』
・東方美人(ホット)
青心大冇という品種を、烏龍茶の一種である東方美人に製茶したもの。
アーモンドのフルーティな香りに合わせて。
ソルベで冷たくなる口内温度を戻す役割も。
●
香りは花蜜感のある甘い香りに、わずかに日干しした藁感がある。
味わいには、透明感があって少し距離を感じるような甘みと温かさ。
渋味・苦味はないが、飲んで戻ってくる香りには紅茶様の暖かい甘い香りが感じられる。
アーモンドの杏仁香に対して、甘い蜜香で合わせつつ、その温度感で香りの余韻を引き立てる。
ブランマンジェやソルベのまろやかなミルク感を、東方美人の深めの発酵がそっと抱きとめ、ミルクティーのようにお淑やかな調和をもたらす。
以前、自分で購入した飲んだ、台湾新竹県北・青心大冇(遊茶様)のものは、マスカット感強めの果香と蜜香の味わいが濃い目だったので、こちらはよりナチュラルで穏やかなタイプに感じました。
(経験上、淹れる時の茶葉の量やお湯の量/温度でも味わいはかなり変化がある気がします)
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※ 東方美人:
台湾の桃園・新竹・苗栗(桃竹苗エリア)と新北市という限られた地域で作られる烏龍茶の一種。
最大の特徴は「蜜香(みっこう)」と呼ばれる、マスカットや完熟フルーツを思わせる甘く華やかな香り。この香りは、夏に茶葉を噛むウンカという虫の働きによって生まれる。
茶葉は「1芯2葉」と呼ばれる非常に小さく繊細な若芽を使用。製茶では、通常の台湾烏龍茶よりも長時間の発酵に加え、「悶熱(もんねつ)」という独特の工程でさらに発酵を深める。これによって蜜香だけでなく、熟した果実のような「熟果香」、芽から生まれる「毫香」など複雑で奥行きのある香りと味になる。
ただし、栽培には手間がかかる。ウンカが必要なので農薬は使えず、草をある程度生やしておく必要もあるため、茶葉の収量も落ちやすい。加えて、小さな芽を手摘みで集める必要があるため、生産コストは高く、高級茶の位置づけになる。
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『デセール②』
・シチリア州アーヴォラ産アーモンドのブランマンジェ
・自家製練乳入りジャージー牛乳のソルベ
アーモンドは一つ一つ丁寧に皮剥いて砕いてから、
ベースの液体にしっかりとその香りを移して。
アマレット(アーモンドのリキュール)は不使用。
●
ブランマンジェは、少しざらりとした口触りともったりとした密度。
少し口に含んだだけで、気品溢れる杏仁香が口から鼻へ頭へと広がり吹き抜けていく。
リキュールなしだからこその、自然かつ芳醇なアーモンド本来の香りを思い知らされる。
そんなフルーティーな甘い香りに、トーンのあった甘みが重なり風味に厚みが生まれる。
ソルベは、自家製練乳で甘さを調整することで、
牛乳感を穏やかに整わせつつ、煮詰まったような甘みが上滑りせずに感じられる。
それでいて、さらさらとして素早い口どけ故にあっさりとしていて、
もちろん、杏仁香とも相性ばっちり。
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※シチリア州アーヴォラ:
イタリア・シチリア島南東部に位置する町で、特に高品質なアーモンドの産地。
アーヴォラ産アーモンドにはいくつかの品種があるが、「ピッツータ種」が最も有名かつ高級。
「ピッツータ(Pizzuta)」はイタリア語で「尖った」という意味で、その名の通り、細長く両端が尖り表面が滑らかで均一で見た目が美しい。
非常に芳醇で繊細な香りを持ち、噛んだ瞬間にナッツの甘みと香ばしさが広がる。 苦味が少なく後味がすっきりとしている。
※練乳:
牛乳に砂糖を加えて煮詰めて水分を飛ばしたもの。
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『ティーペアリング③』
・発酵百烏龍
青心烏龍という品種で、紅茶の製茶工程の中に、茶葉を丸く丸める”成形”や”焙煎”などの烏龍茶の製法を組み込んでつくった紅茶。
95℃で3時間焙煎されることで生まれたほのかな香ばしさが、ホワイトチョコとリンクする。
●
軽めの果香と紅茶らしい温かい蜜香・甘さに、少しの藁感。
遅れて、まさしくチョコレートのような暗く香ばしいニュアンスが伸びてくる。
余韻にはわずかにスパイス感が残る。
そんな一口の中で移り変わる複雑な風味が、
柑橘・ホワイトチョコ・山椒とリンクする。
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※烏龍茶と紅茶の製法の違い:
・烏龍茶
『摘採』→『萎凋』→『做青(揺青/浪青)』して発酵→『殺青』→『揉捻≒成形』→『乾燥』(→『焙煎』)
・紅茶
『摘採』→『萎凋』→『揉捻 or 揉切』して発酵→『乾燥』
つまり、以下の違いがある。
①発酵(=酸化反応)の起こし方
烏龍茶は、茶葉を揺することで茶葉の縁の一部を傷つける。紅茶は、 葉を揉み込んだり(揉捻)、切断する(揉切)ことで傷をつけ、酸化酵素の反応をスタートさせる。
②烏龍茶には、酸化酵素を壊して発酵を止める「殺青」という工程がある。
③烏龍茶には、乾燥させる前に「揉捻」する=葉を揉み込んで成分の抽出を促進するとともに形状を作る(中国紅茶ではそういうタイプの紅茶もある)
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『デセール③』
・八朔クリーム(八朔の皮で香りづけした生クリーム、八朔果汁、ホワイトチョコを合わせてつくったもの)
・和歌山県蔵光農園様のさつき八朔のコンポート(実は二種類。シンプルコンポートと仁淀川山椒コンポート)
・八朔果汁でつくったジュレ
見た目では分からないが、コンポートは二種類。シンプルなコンポートと仁淀川山椒を香らせたもの。
●
八朔コンポートは、砂じょう(細かい粒)が粒だっており力強い果肉感。
噛み締めるたびに、柑橘の甘みと酸味が弾け溢れだし、
じわじわと心地よい苦味が追いかけてくる。
時折、山椒コンポートの香りが柑橘感をぐっと引き立てて、
ジュレはチュルっと軽い食感と甘味でジューシー感をアップ。
ホワイトチョコをつかった八朔クリームは、
柑橘の果汁の甘酸っぱさに加え、チョコ由来の香ばしさが八朔の優しい苦味と相性良く、
重心のある甘味とクリーミーさが全体をまとめる。
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※藏光農園:
和歌山県中部の日高郡日高川町にて、可能な限り低農薬・低化学肥料で柑橘や梅などを栽培。
難しい品種や栽培方法にあえて取り組む。
一般的に流通している農産物とは明らかに違いを感じられる農産物を作り、「知ってることが自慢になる農園」を目指され、現在では多くの料理人が素材を求める柑橘農家となっている。
※さつき八朔:
4月までずっと樹上で熟させた八朔のこと。
八朔は通常12月から収穫が始まり、2月には獲り終え、収穫後は貯蔵して酸味をおさえてから出荷するのが一般的。
さつきハッサクは、通常より2か月以上長く木に成らせることで、樹上で完熟させる。
そのため、八朔とは思えない甘さがあり、収穫仕立てでも酸味がマイルド。
樹上で完熟を目指すと、風、鳥、天候などあらゆる危険にさらされ収穫量が少なくなるため希少。
※仁淀川山椒
四国の中央から流れる日本屈指の清流、仁淀川とその川沿いに位置する、高知県越知町で収穫される山椒。
収穫時の採れたてのままのグリーン色、香り、味が新鮮なうちに加工し、一年を通じて鮮やかなグリーン色のものを出荷する。
清々しく爽やかな香り、すっきりとした独特の辛みと味わいがあり、舌が痺れるような独特の感覚も味わえる。
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『ティーペアリング④』
・ローズアッサム
台湾アッサムという品種を紅茶に製茶して、生のマリアカラスという薔薇でゆっくり香りをつけたもの。
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香りはバラと蜜香。
味わいにはバラさはなく、紅茶の落ち着いた甘さの中にしっかりしつつ心地の良い軽い渋みでボディが感じられ、
そんな風味のトップの方に、バラが漂っている。
バラの華やかさとお茶の落ち着きが調和して、香りが上滑りしないバランスの良いお茶に。
やや青みを帯びたほおずきの香りとバラの香りがリンクしつつ華やかな広がりをもたせ、
シロップの濃縮された甘みを心地良い渋みが受け止める。
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『デセール④』
・フロマージュブランのムース
・愛媛県鬼北町産の鬼あかり(ほおずき)
・別添えの鬼あかりのシロップを上からたっぷりかけて
シロップは、ほおずきを半割にして20%の砂糖でマリネ。低温で1-2時間加熱、そこから浸透圧でエキスを抽出して軽く煮詰めたもの。
ほおずきは本来秋になるものだが、長野のものが残暑・暖冬の影響で全滅のため秋に使えず。
愛媛では冬にハウス栽培するので今回使うことが出来ているそう。
今回のほおづきの産地である愛媛県鬼北町は日本でも珍しく町名に鬼が入っているため、鬼に関連した町おこしの一環として、ほおずき=鬼灯の生産を始めたそう。
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鬼あかりは、薄皮の中に柔らかい果肉が詰まっている。
果汁が弾けるというよりじゅわじゅわと滲むような食感。
味わいは、穏やかな甘味と酸味がベースにあって、
苺・トマト・キュウリのような青みで野菜のニュアンスが強め。
皮目と果肉で味わいが異なるからなのか、食べ進めるなかで
甘味が強まったり酸味がたったり青みが際立ったりと、
様々な表情をみせるところが愛おしい。
シロップは、そんなほおずきの甘味と複雑な青み・甘い香りを濃縮。
刺さるような甘みとほのかなうま味と香りが、青みをいなしつつデザート感を高める。
フロマージュブランのムースは、
さっぱりとした甘味・フレッシュな酸味・あっさりとしたクリーム感が◎で、
フレッシュほおずきの野菜感と酸味、シロップの力強い甘味のバランスをとりつつ橋渡し。
あまりほおずきを食べた経験がないので思ったより野菜感が強いことに驚きました。
より熟してくるとフルーツ感が増す感じなのでしょうか。
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※フロマージュ・ブラン:
牛乳を乳酸発酵させただけで熟成させてないフレッシュチーズ。
風味のためにクリームを入れることもある。
※食用ほおずき:
ナス科ホオズキ属の植物で、観賞用のホオズキとは別種。
食用となるのは、直径1〜2cmの丸い果実で、薄いガク(袋状の部分)に包まれている。
完熟すると橙〜黄金色になる。
酸味と甘味がバランスよく、パイナップルやマンゴー・トマトを思わせる風味。
未熟なものは酸味が強く青っぽい風味で、完熟したものは甘みが強まり香り豊かになる。
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『ティーペアリング⑤』
・微酸イラム白
T78とGoomtee?という品種を白茶に製茶したもの。
ヒマラヤ山脈の麓 ネパールのイラム地方のマイポカリ村でつくられたもので、
通常の萎凋は甘味を引き出すため18時間ほど行うところを、10時間半と短くすることで茶葉の葉酸を残す仕立て。
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香りや、生薬や藁のような微かなひねた香りと花香。
味わいは、苦味・収斂味の奥にほのかな酸味感、そこに軽い甘み。
白茶に焙煎の工程はないが、少しスパイシーな香ばしさも感じられる。
嫌味なくどこかオリエンタルな複雑さをもったお茶。
その日向にいるような香りと温度が、
焼きたてのミルフィーユの香ばしさの余韻を深めつつも、
名の通りの”微酸”感が苺とリンクしつつ濃厚なうまさを軽やかにする。
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※白茶:
加工が非常にシンプルで、(特定の茶樹品種を)『摘採』→『萎凋』→『乾燥』するのみ。
・摘採(てきさい):お茶の芽や葉を摘む。摘む部位によって種類が分かれる。
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・萎凋(いちょう):生葉を、一定の温度・湿度の条件の下で均一にならして置き、それを萎らせ、水分を飛ばす工程。日光や風、室内環境を調整して、発酵や香気成分の生成を促す。
↓
・乾燥:温風や日光で高温にしすぎずに水分を飛ばし、茶葉を完成させる。
火を加える「炒り(殺青)」や「揉む(揉捻)」を行わず、萎凋によってゆっくり水分を減らし花のような甘い香りを生成する。
萎凋を行う環境の湿度と風量、温度を厳密に管理する必要があり、繊細な技術が求められる。
乾燥後も、残った酵素活性による穏やかな発酵(熟成)が起こるため、寝かせることで青みが抜け味がまろやかに磨かれて深みがでる。
「一年茶、三年薬、七年宝」とも言われ、寝かせるほど価値が上がりやすい。
※ネパール・マイポカリ:
ネパールのイラム地方、標高約2,400メートル程に位置。
イラム地方全体が紅茶で有名だが、マイポカリなど標高の高い地域では、白茶や緑茶のニーズも増えており、輸出向けの高級茶として注目されている。
※疑問??
レジュメにT78(30%) Goomtee(70%)と記載されております。
T78はダージリン地方などでつくられるクローナル種(=優れた茶樹を“挿し木”などで複製して増やした品種)として有名ですが、
Goomteeは品種名ではなく、インド・ダージリン地方にある有名な紅茶農園の名前と認識しておりました。
産地はネパール・イラム地方とのことなので、一部茶葉を持ち込んで白茶に製茶しているということなのでしょうか。
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『デセール⑤』
・静岡県金原農園様の完熟紅ほっぺの焼きたてミルフィーユ
・マダガスカル産バニラとジャージー牛乳のアイス
パイ生地の上はキャラメリゼして。
アセットデセールなので湿気ることは考えなくて良いが、
ミルフィーユの香りにはキャラメルの香りが必須なためこの仕立てにしているそう。
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まずは上のパイを外し手で持っていただく。
エアリーすぎるほどにハラハラと散りゆくパイ生地。
キャラメリゼはパリッと薄く。バター感はあくまで優しく。
軽やかな甘旨さとキャラメリゼの香ばしさが空気のようにふわりと広がる。
パイ生地の美味しさに浮かれ気分。
気を引き締めなおして、苺とカスタードとパイ生地を一体に頂く。
瑞々しさ溢れる苺は、その豊富な果汁に一切負けることなく甘みと香りが濃く濃く詰まっている。
エアリーなパイとバニラ香るカスタードは、苺の味わい・香り・水分量からはみ出ることなく一体となる。
あくまでメインは苺。美味しい苺を一番美味しく味わうためのミルフィーユ。
最高すぎます。
アイスクリームは、滑らかで口の中でソースのようにとろける。
バニラが高貴に香り、牛乳くささがないのに、そのコクのある風味が強く感じられる。
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※ジャージー牛乳:
北海道石狩郡にある「ジャージーの箱庭」様から。
ジャージー牛とは、イギリス王室ご用達のイギリス原産の牛。
ホルスタインに比べ小柄で品種改良を受けていない貴重な家畜。
そこから採れる牛乳はβカロテンが豊富で特有の黄色味を帯びてるため、”ゴールデンミルク”と呼ばれる。
「ジャージーの箱庭」様では、9頭のジャージー牛を昼夜を問わず野外で飼育する「完全放牧」で自然の草のみを与えて育てる。
とれた牛乳はホモジェナイズ処理を行わず、低温殺菌にて丁寧に仕上げる。
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『お口直し』
・雪室で三年間熟成させたキタアカリのコンソメ
日本一の包丁研ぎ師と名高い藤原将志様が研ぎ30000番手で仕上げをした包丁を用いて、
蒼の峰村シェフ自らがスタッフには任せずに、きたかありの皮を剥きスライスし、
白神山地の超軟水とお塩だけで、ジャガイモ1kgから300ccのコンソメを抽出。
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黄金色のじゃがいもコンソメは、シロップのような僅かなとろみがあって、
香りは、皮目についた畑の土のような香りに、発酵や熟成の時に感じる大地のような香りが重なる。
土感のある香りが繊細に絡み合い、穏やかな中にも凛とした品位が漂う。
その味わいは、フルーツのような甘さを秘めたとうもろこし「嶽きみ」を彷彿とさせるようで、
ぎゅっと詰まった密度のある甘みとうまみが、口いっぱいに広がる。
包丁と同じようにその研ぎ澄まされた香り・味わいに、切れ伏せられたかのような衝撃をうけて。
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※白神山地の超軟水:
白神山地は青森県と秋田県に広がり、1993年に世界自然遺産に登録。
その地域の水は、非常に清らかで硬度が0~5mg/L程度の「超軟水」。
超軟水は水のミネラル成分が少ないため、出汁をとる際に素材の味わいの成分をしっかりと抽出することが出来る。また、ミネラル由来の苦味が少ないためよりまろやかな味わいになる。
※ちなみにですが、お茶を淹れる際は超軟水であればあるほど良いのか:
ミネラル(特にカルシウムやマグネシウム)は、茶葉に含まれる香り成分や苦味・渋味成分と結びついて、水中に安定的に溶け出すのを助ける「媒介」のような働きをする。
超軟水ではミネラルがほとんどないため、
○ 苦味・渋味が抑えられて「まろやか」になる反面
△ 香りやコクのある成分が抽出されにくくなり味がぼやけることがある。
つまり、基本的には軟水が最適だが、超軟水(硬度0〜5)は玉露や高級煎茶で◎。
紅茶や烏龍茶など香気成分が豊富なお茶は、適度な軟水(20~50mg/L程度)が◎。
※砥石の番手:
砥石の表面にある研磨粒の粗さ(粒の大きさ)を表す数字のこと。
番手の数字が大きくなるほど、砥石の粒子は細かくなり、仕上がりも滑らかになる。
↓
①荒砥(あらと:#80〜#400程度):刃こぼれや大きな欠けの修正など
②中砥(なかと:#800〜#2000程度):切れ味の回復や普段のメンテナンスに。
③仕上げ砥(しあげと:#3000〜#10000以上):最終仕上げや切れ味の向上、美観の向上に。
↓
仕上げ砥は高番手であるほど良いのか?
↓
◯メリット
・刃先が非常に薄く仕上がり切れ味があがる。
・見た目が美しく、汚れや錆にも強くなる。
◯デメリット
・粒子が細かく削る力が弱いため研ぎに時間がかかり、繊細な技術を要する。
・硬いものに弱く、刃が繊細で欠けやすい。
・包丁自体にある程度の品質が求められる。
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『ペアリング⑥』
・日華玉露
やぶきたという品種を玉露に製茶して台湾に運び、優秀な焙煎師に青みだけを消すように45-50℃くらいで焙煎した頂いたもの
●
香りは抹茶アイスのような甘いクリーミーさがあって。前回はあまり感じなかった、海苔のような覆い香がわずかに存在。
飲むと、少しの海苔のようなニュアンスと強い旨みがググッと迫り来るが、
品のある苦味でキリっとした味わい。ほのかな甘みが余韻に残る。
お出汁のようにならずお茶のうま味とらしさを感じる玉露。
ー
※日華玉露についてはこちらの動画で詳しいお話を伺うことができますので是非。
https://www.youtube.com/watch?v=QZ-Z2s4Wkg4
(【お茶②】世界に輸出できない⁉︎ 玉露の端境期)
※「玉露」:
育てる過程の一部で、日光を遮る工程を踏んでいるもの。
日光が当たらないため、テアニン(グルタミン酸)がカテキンに変化しにくく、旨味成分が多く、まろやかで濃厚な味わいとなる。
また、光の量が少ない中で光合成するために、たくさんの葉緑素を必要として、葉がとても濃い緑色になる。
また「覆い香」とよばれる生海苔のような独特な香りがする。
碾茶と違う点は、揉捻(茶葉を丁寧に揉みながら乾燥させ揉む)工程があるため針のような細い形になり、旨味がより引き出される。
※緑茶:製法は以下。
摘採:中国ではやわらかい新芽を手で摘む。特に高級茶は芽が開く前の若い部分を使用。 日本では、比較的成長した芽や葉を用いる。
↓
攤放(たんほう): 風通しのよい場所で静かに置いて、余分な水分を飛ばす。萎凋と異なり、発酵が始まらないように調整する。
↓
殺青(さっせい) :釜炒り、蒸熱、高温風による乾燥などで熱を加えて、酵素を変性させることで発酵(=酸化反応)を止める工程。中国では主に「釜炒り」で行い、香ばしい香りが出る。 日本は蒸気を用いた「蒸青」が主流。
↓
揉捻(じゅうねん): 茶葉の形を整えながら、旨味成分を引き出す。中国緑茶では若芽が多いので比較的やさしく揉む。
↓
乾燥:葉をしっかり乾かすことで保存性を高め、香りや味の方向を決定づける。
つまり、緑茶は萎凋、做青などの発酵工程を含まない。
生葉そのままの成分を活かすため、フレッシュ感・爽やかさ・うま味を重視したものが多い。
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『デセール⑥』
・発酵・ローストしたカカオと白神山地の超軟水のガナッシュ
・フレッシュの沖縄カカオの果肉のジュレ(ハスクの香りもつけて)
カカオはOKINAWA CACAO Factory & Cafe様から。
(一部他のカカオも併用しつつ?)
●
ジュレは、ハスク由来の暗い香ばしい風味でチョコレートらしくありつつも、
ややライチのような甘酸っぱいフルーティーさ・瑞々しさがある。
ガナッシュはきめ細かく詰まっておりやや硬めながらもさらさらっととろけて、
ベリーの味わいを辛くしたワインのような、きゅっとなる酸味と渋みがくる。
渋さが続きながらもゆっくり甘みが伸びてきて、
ナッティな味わいが立ち込めてくる。
ガナッシュとジュレを一緒に頂くことで、水分と甘味のバランスをとりつつ、
カカオの甘酸っぱいフルーティさとナッティーな香ばしさの両面を同時に味わうことができる。
ー
※OKINAWA CACAO:
株式会社ローカルランドスケープ様のチョコレートブランド。
2016年から沖縄本島北部の大宜味村でカカオ栽培事業をスタート。
沖縄は、いわゆるカカオ栽培に適した緯度であるカカオベルトからは外れるが、基本無加温ハウスで場所によっては露地でもカカオ栽培が可能だそう。
※カカオの生態
カカオは、苗木から実がなるまでに最低でも3〜5年かかる植物で、成木になると高さは6〜7メートル、幹の太さは10〜20センチほどに成長する。強い日差しや風を好まないため、周囲にバナナの木などを植えて日陰をつくる「シェードツリー」と共に栽培されることが多い。
枝先だけでなく太い幹の部分からも花を咲かせ、これらの花が受粉すると、約6か月で「カカオポッド(カボス)」と呼ばれる実が成熟。幹の太い部分に直接ぶら下がるように実り、収穫の際はナタなどで切り落とされる。
1本の樹から年間に10〜40個ほどのカカオポッドが収穫できる。
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『ペアリング⑦』
・大禹領(2024春ロット)
青心烏龍という品種を烏龍茶に製茶したもの。
約2700mと世界一高地で生産された”大禹領”。
こちらは中国でおこなわれたお茶のコンクールで世界一に輝いたこともある生産者様のお茶。
一般的に、高名なお茶は現地・世界の大富豪に流れてしまうため、通常のルートでは手に入らない。
ご実家が台湾で茶業をなされている横田様だからこそ手に入れられる逸品。
●
乳香のような甘い香りと花香に加えて、馥郁とした温泉を思い出すような硫黄香がしっかりと香って。
味わいは、甘みと旨みが丸くバランス良く存在しゆっくりと膨らみのあるボディが感じられる。
それでいて青みや苦味や酸味や雑味は一切なし。
余韻しっかり長く続き、戻りの香りも柔らかく心地よい。
強烈な香りや何かに特化したような味わいではなく、
そのバランスの極致・余韻の長さに酔いしれるお茶でしょうか。
硫黄感のある香りが、ショートケーキやフィナンシェの生地と相性抜群◎です。
ー
※大禹領:
大禹領とは地区名のこと。
台湾の花蓮、台中、南投の3県が接する辺りに位置し、梨山高山茶区に属す。
高海抜な“大禹嶺茶区”としてブランド化されており、そこで作られた高山茶(烏龍茶)を「大禹領」と称することも多い。
年の平均気温が20℃を超さず、冬には茶園が雪にすっぽりと覆われることも珍しくないこの一帯では、茶葉の成長速度が遅く、香味成分たっぷりの厚い葉に育ち、品質に優れたお茶になる一方、極めて少ない生産量ゆえ、大変高価となる。
更に2014年から始まった政府による土地の返還政策により、往時の1/4にまで茶園が減ってしまったため、ますます稀少性の高いお茶になっている。
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『デセール⑦』
・天使音マスクメロンのショートケーキ
お持ち帰りは難しいほどの水分量で仕立てて。
ジェノワーズ(スポンジ生地)には、種の周りの果肉からつくったアンビバージュをしっかりとアンビベ。
作ってから2時間寝かせがベストなので、提供から時間を逆算して完成させているそう。
●
ジェノワーズはパツっと詰まっていながら、
しっかり打たれたアンビバージュが艶やかなメロンの味わいをじゅわりと滲ませる。
計算された状態での提供だからこそ、その水分を含んだ状態でも生地がだれることなく、
口入れるとわずかにその繊維を残しつつとろけ馴染んでいく。
マスクメロンは、濃密でアロマティクな香りで、ジューシーながら煮詰まったような甘みが。
ジューシーという共通項をもった生クリーム・ジェノワーズ・マスクメロンが一体となり、
まさに飲めるショートケーキ。
水分が多い生クリームやジェノワーズを相手に一切薄まるような印象を与えないマスクメロンの素材力に驚かされます。(これでもメロン的にはベストな時期ではないそう)
ー
※天使音マスクメロン:
静岡県浜松市の株式会社まさ屋様から。
開発のきっかけとなったのは、取締役社長・影山雅也氏が文献で目にした「クリームメロン」という幻の品種。香り高く味も優れていたにもかかわらず、栽培の難しさや見た目の問題から広まらなかったこのメロンの再現を決意。
クリームメロンの母品種は、英国女王エリザベス2世の戴冠式に際し、秩父宮妃殿下がイギリスから持ち帰った「ヒーロー・オブ・ロッキンジ」とされており、2011年に研究所に残っていたその種を発見。
様々な品種との交配を重ね、最終的に「ヒーロー・オブ・ロッキンジ」の香りと、栽培しやすい「アールスフェボリット」の特徴を併せ持つ「天使音マスクメロン」を誕生させた。
※アンビバージュ:
ジェノワーズやビスキュイ等の焼いた生地・菓子を湿らせて柔らかくし、風味をつける為に染み込ませる液体のこと。
染み込ませる事をアンビベ(imbiber)と言う。
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『お茶菓子』
・焼きたてのフィナンシェ
・静岡県三松園様のエイジアンレモンを使ったタルト・シトロン
・黒トリュフのアイス
タルト・シトロンは、レモン汁ベースのプリン生地の上に甘いイタリアンメレンゲ。
水分はレモン汁のみ。
黒トリュフのアイスは、蒼からルセットと材料を少し拝借したそう。
●
焼きたてのフィナンシェはしっかりとした焼き目でありながら、手に持つと弛みが生まれてその柔らかさが伝わる。
口に入れると、香ばしさ・卵感・バターがその焼きたての温度でくらくらと香る。
食感は、ごく薄く表面がカリっとしつつもすぐにジュワッと解けて消えるレアーな生感覚。
大禹領との相性も驚異的。。。
少し冷ますとさらにエッジがカリッとしつつも中はじゅわとろで対比が良く、
味わいは少し濃縮されてコクが出た印象に。
タルト・シトロンは、口に入れるとレモンの香りと酸味が広がり、
そこにまろやかな甘味が続く。タルト生地の味がレモン感から少し浮いてしまっているような印象。
黒トリュフアイスは、トリュフ本来のやや穀物感・根菜感のある香りが、ミルクに綺麗に溶け込んでいる。
トリュフオイル不使用なのでごく自然な香り。
後味に乳感が残らないのも◎
ー
※三松園:
静岡市葵区にある柑橘類の栽培を主とする農園。
樹上での完全自然着色や化学肥料を使用せず有機肥料を使用するなど、食の安全にも真摯に取り組む。
特に「ハールレモネ」という新しい品種の柑橘で知られている。
※イタリアン・メレンゲ:
卵白に煮詰めたシロップを注ぎながら泡立てたメレンゲ。
砂糖をとかしてシロップにすることで重量的に卵白に対して2倍の砂糖が入れることができる。
『ティーペアリング①』 ・金萱爽香スパークリング(水出し) 金萱という品種の茶葉を烏龍茶に製茶したもの。
『デセール①』 上から、 ・オパリーヌ(=極薄の飴細工) ・トマトのコンポート ・トマトのクリアシート ・三浦農園様の泉州黄玉葱のムー
『デセール①』 上から、 ・オパリーヌ(=極薄の飴細工) ・トマトのコンポート ・トマトのクリアシート ・三浦農園様の泉州黄玉葱のムー
『ティーペアリング②』 ・東方美人(ホット) 青心大冇という品種を、烏龍茶の一種である東方美人に製茶したもの。
『デセール②』 ・シチリア州アーヴォラ産アーモンドのブランマンジェ ・自家製練乳入りジャージー牛乳のソルベ
『デセール②』 ・シチリア州アーヴォラ産アーモンドのブランマンジェ ・自家製練乳入りジャージー牛乳のソルベ
『ティーペアリング③』 ・発酵百烏龍 青心烏龍という品種で、紅茶の製茶工程の中に、茶葉を丸く丸める”成形”や”焙煎”などの烏龍茶の製法を組み込んでつくった紅茶。
『デセール③』 ・八朔クリーム(八朔の皮の香りの生クリーム、果汁、ホワイトチョコを合わせて) ・和歌山県蔵光農園様のさつき八朔のコンポート(シンプルと仁淀川山椒の2種類) ・八朔果汁のジュレ
『デセール③』 ・八朔クリーム(八朔の皮の香りの生クリーム、果汁、ホワイトチョコを合わせて) ・和歌山県蔵光農園様のさつき八朔のコンポート(シンプルと仁淀川山椒の2種類) ・八朔果汁のジュレ
『ティーペアリング④』 ・ローズアッサム 台湾アッサムという品種を紅茶に製茶して、生のマリアカラスという薔薇でゆっくり香りをつけたもの。
『デセール④』 ・フロマージュブランのムース ・愛媛県鬼北町産の鬼あかり(ほおずき) ・別添えの鬼あかりのシロップを上からたっぷりかけて
『デセール④』 ・フロマージュブランのムース ・愛媛県鬼北町産の鬼あかり(ほおずき) ・別添えの鬼あかりのシロップを上からたっぷりかけて
『ティーペアリング⑤』 ・微酸イラム白 T78とGoomtee?という品種を白茶に製茶したもの。
『デセール⑤』 ・静岡県金原農園様の完熟紅ほっぺの焼きたてミルフィーユ ・マダガスカル産バニラとジャージー牛乳のアイス
『デセール⑤』 ・静岡県金原農園様の完熟紅ほっぺの焼きたてミルフィーユ ・マダガスカル産バニラとジャージー牛乳のアイス
『お口直し』 ・雪室で三年間熟成させたキタアカリのコンソメ 藤原将志様が研いだ包丁で峯村シェフが調理。 白神山地の超軟水とお塩だけで、ジャガイモ1kgから300ccのコンソメを抽出。
『お口直し』 ・雪室で三年間熟成させたキタアカリのコンソメ 藤原将志様が研いだ包丁で峯村シェフが調理。 白神山地の超軟水とお塩だけで、ジャガイモ1kgから300ccのコンソメを抽出。
『ペアリング⑥』 ・日華玉露 やぶきたという品種を玉露に製茶して台湾に運び、優秀な焙煎師に青みだけを消すように45-50℃くらいで焙煎した頂いたもの
『デセール⑥』 ・発酵・ローストしたカカオと白神山地の超軟水のガナッシュ ・フレッシュの沖縄カカオの果肉のジュレ(ハスクの香りもつけて)
『デセール⑥』 ・発酵・ローストしたカカオと白神山地の超軟水のガナッシュ ・フレッシュの沖縄カカオの果肉のジュレ(ハスクの香りもつけて)
『ペアリング⑦』 ・大禹領(2024春ロット) 大禹領で生産された青心烏龍という品種の茶葉を烏龍茶に製茶したもの。 中国でおこなわれたお茶のコンクールで世界一に輝いたこともある生産者様のお茶。
『デセール⑦』 ・天使音マスクメロンのショートケーキ
『デセール⑦』 ・天使音マスクメロンのショートケーキ
『お茶菓子』 ・静岡県三松園様のエイジアンレモンを使ったタルト・シトロン
『お茶菓子』 ・焼きたてのフィナンシェ ・静岡県三松園様のエイジアンレモンを使ったタルト・シトロン
『お茶菓子』 ・黒トリュフのアイス
2025/04/15 更新
2025/01 訪問
一等の素材の味わいを正直に伝えるデセールコースに、複雑妙味な台湾茶を合わせて
(時差投稿です。2024/11訪問時)
料理長は、濱村浩様。
26歳までフランス料理人として活躍。
半年ほどパティシエの職に就いた時に自分には菓子作りが合っていると転職。
「オーボンヴュータン」に就職して、3年目からスーシェフパティシエを務め、
2011年、レストランデセールを学びたいと渡仏し「ステラマリス」で修業。
帰国後は「ロアラブッシュ」「インフィニートヒロ」「オマージュ」と錚々たる店で腕を振い、
2024年5月、東京都西麻布にて、「蒼」のオーナーシェフの峯村康資様、「Leafwine」の代表でティーペアリングアドバイザーの横田大助様と一緒に、
アシェットデセールとティーペアリングのスイーツコース専門店「蒼菓」をオープン。
ー
日本各地から届けられた峯村様のこだわりの食材を、
濱村様の卓越したその技術で、一見シンプルに仕上げながら、
素材の味わいを引き出し尽くす。
横田様のティーペアリングを合わせることで、デセールの鮮烈な余韻をさらに心地よく引き上げる。
調理は「蒼」同様に全てガラスや鋳物で行う。
ステンレスや金属を使わないことで、素材の味や香りを全て正直に引き出す。
だからこそ、良質な素材を用いざるを得ないそう。
ー
途中で明らかに塩気のあるものを挟まないところにデザートコースとしての矜持を感じて。
上質な台湾茶は、まず日本で手に入れること自体が難しく、しかもほとんど横田様がカスタムオーダーされた品々。
そんな希少なお茶を美味しく淹れて頂き何種類も飲むことが出来る、それだけコース代程の価値があるものと思われます。
デセールに対して絶対的な合わせかと言われると難しい部分もあるかとは思います。
一般的なノンアルコールペアリングのように、テクスチャー/ボディや五味や香りなどを、他の素材を用いることで調整する方が目的のニュアンスに近づけやすいでしょう。
しかし、茶葉と製法のみでこれほど複雑で多様な味わいが生み出されるのか!という驚きを感じられることは貴重で有難い経験だと思います。
ー
初訪問。
少し早めに伺うと建物入口には濱村シェフ自らお出迎えを。
エレベーターをご一緒してお店に上がると、「蒼菓」とかかれたガラス表札が。
カウンターに座るとその先には本日使う食材たち。
食材やティーペアリングのレジュメを読みながらワクワクを高めてコース開始です。
ーーー
台湾茶ティーペアリング付きデセールコースで、16000円強。
(現在は少し変化しているようです)
中国茶・台湾茶好きとしては、本当にたまらないティーペアリング。
昨今のデセールコース高騰化の中で納得感があり良心的な価格です。
ーーーーー
お料理の構成は写真にも
補足事項や感想●、解説※は本文で
(※印の内容は自分調べですので誤りを含む可能性がございます)
(※お茶の解説は中国茶の知識がベースなので台湾茶とは異なる点もあると思われます)
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・金萱爽香スパークリング
(パプリカとトマトのデセール合わせて)
(金萱という品種の茶葉を烏龍茶に製茶したもの)
シャンパンと野菜ムースの合わせるような意図で。
●
飲む前の香りは緑茶のような青みが少し。
味わいはまず炭酸とお茶の苦味がきてドライに。
そこから花香と甘さがきつつ、
余韻には、少しの青みでさっぱりと。
野菜の青みに寄り添いつつ、濃い甘味をさっぱりさせて。
お野菜の印象を残しつつも花香で華やかさを与える。
水出し・炭酸だからか、乳香はあまり感じない。
ー
※金萱:
台湾で品種改良によって生まれた品種。
12番目に生れたため「台茶十二号」とも言われる。
生産性が高く、奶香とよばれる淡いミルクのような香りが特徴とされる。
今回はその金萱という品種の茶葉を用いた烏龍茶。
発酵・焙煎が軽めな清香タイプを、炭酸でアップしてシャンパン風に。
※烏龍茶(台湾では青茶とも呼ばれる):(かなり手短に)
(特定の茶樹品種を)『摘採』→『萎凋』→『做青』して発酵→『殺青』→『揉捻』→『乾燥』→(『焙煎』)
・酵素の活性をコントロールしながら、適切な発酵程度を狙う
・焙煎などの仕上げ工程も香味に大きく影響する
『発酵』と『焙煎』、この二つのそれぞれの深さを調整することで、花やフルーツの香りを引き出し、うま味・甘みとバランスをとっているタイプのお茶。
同じ産地・同じ茶葉品種の烏龍茶でも、『発酵』と『焙煎』の程度によりタイプが異なる。
・清香(チンシャン)タイプ:焙煎なし、それに合わせ発酵も軽め→爽やか~華やかな花の香り(質や好みによっては青っぽく感じることもある)
・濃香(ノンシャン)タイプ:焙煎あり、それに合わせ発酵も強め→フルーツのような甘い香り(と火入れの香ばしさ)
台湾では、作られる烏龍茶は、
①台湾各地の高地(阿里山、杉林渓、梨山など)の「高山烏龍茶」
②台湾中央の南投県の「凍頂烏龍茶」(高山烏龍茶の一種ともいえる)
③台湾北部の新北市坪林(ピンリン)区や石碇(せきてい)区などの「文山包種茶」
④台湾北部の台北市内の木柵地区の「木柵鉄観音」
⑤台湾北部の桃園縣・新竹縣・苗栗縣に跨がるエリアや新北市の坪林区や石碇区などの「東方美人茶」
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・オパリーヌ(=極薄の飴細工)
・トマトのコンポート
・トマトのクリアシート
・パプリカのムース
パプリカは低温で焦がさず2時間ローストしてピュレにした後、
最低限の生クリームを加えてムースに。
●
パプリカのピュレは、ねっとり滑らか。
何より濃い甘みと旨みと青さが鮮烈ながらも、どこか暗めのニュアンスをおぼえて。
後味にややミルク感が残る。
トマトシートは、甘さと旨みと青みがパプリカとリンクしつつ、
より明るいトーンの味わいで、
味全体の明暗の深さをもたせる。
トマトのコンポートは、さらっと柔くジューシーで青みがキリリと立っておりお口がリセットされ、
オパリーヌはパリっと食感のアクセント。
ー
※オパリーヌ:
フォンダン(砂糖と水を練り煮詰めて結晶化させたもの)と水飴を煮詰めてから冷ましたものを、砕いてパウダー状にして、それを好みの形に薄く散らして焼くことで極薄の飴細工を造形できる。
パウダーを作る段階でフレーバーを加えることも可能。
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・紅玉(ホット)
(北あかりとトリュフのデセールに合わせて)
(紅玉という品種の茶葉を紅茶に製茶したもの)
85℃で
デザートの重みに合わせてホットで。
●
香りは、ミルク感のある甘い香りに軽いメンソール香が重なる。
味わいは、紅茶の温かいほっくりとした甘みに、ごくわずかな苦味が心地よい。
戻りは温かい甘い香り。
じゃがいもの穀物感と甘いミルク感の余韻を、
紅茶の温かい甘みで引き継ぎながらも渋み感で切っていく合わせ。
トリュフの香りとわずかなメンソール感も違和感なく繋がる。
ー
※紅玉紅茶:
台湾の南投県で主につくられる。
台湾のヤマチャとミャンマーのシャン種を掛け合わせた品種でアッサム種である「台湾18号(紅玉)」でつくられる紅茶。
紅玉紅茶では、スリランカのウバのクオリティシーズンにしか出ないメンソール香やシナモンのような香り感じることが出来る。
アッサム種のため、味わいはしっかりとしており、やや香りと味にギャップがあるお茶。
※紅茶:(かなり手短に)
『摘採』→『萎凋』→『揉捻 or 揉切』して『発酵』→『乾燥』→(『焙煎』)
・製茶中は酵素の活性を十分に活かす。
・乾燥時に発酵を停止させる。殺青工程を設けない。
萎凋を行って酸化酵素の活性を高めた上で、揉捻あるいは揉切を行う。これによって、細胞壁の中の液胞にあるポリフェノールを茶汁という形で多く染み出させる。その上で、温度や湿度をコントロールした発酵室に入れるなどして、酸化発酵を促す。そして、適切なタイミングで乾燥を行い発酵を止める。
発酵程度を問わず、上記の製法で生産されたものが紅茶となる。
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・北あかりのブランマンジェ
・トリュフのアイスクリーム
北あかりは低温で少し焼き目がつくようにじっくりローストしてから皮剥いてピュレにして、
牛乳や生クリーム・砂糖を少し加えて、ブランマンジェに。
じゃがいもの粉感が残るような仕立て。
トリュフはアッシェ(=細かいみじん切り)して、バターでソテーした後、クレーム・アングレーズとたいて(パコジェットで?)アイスクリームに。
●
じゃがいものブランマンジェは、ざらざらっとと粒を感じる粒子感を残して、かなりもったりと。
糖化したじゃがいもの強い甘みに、クリームの重みと余韻が残る。
じゃがいもの穀物感よりクリームを強く感じて。
トリュフのアイスクリームは、トリュフのわざとらしいえぐみのようなものがなく、
すっきり透明感のある味わいに。
もったりとしたブランマンジェをアイスクリームで少しのしながら頂く。
じゃがいもとトリュフは言わずと知れた相性の良さのはずだが少しクリーム感が強めか。
ー
※ブランマンジェ:
「白い」(blanc)「食べ物」(manger)という意味。
7世紀ごろは肉などを入れる高級料理のひとつだったが、19世紀ごろにはデザートとして食べられるようになった。
アーモンド、砂糖、牛乳、生クリームを使用してゼラチンで固めて作る。
アーモンドは使用せずにバニラやゴマ、ココナッツなどで風味付けをすることもある。
※クレーム・アングレーズ:
卵に砂糖を加え、牛乳を混ぜて加熱し、とろみをつけたクリーム。
クレーム・パティシエールとは異なり、小麦が入らないので、とろみやコクがありながらもサラリとしている。
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・発酵百烏龍
(和梨と酢橘のデセールに合わせて)
(青心烏龍という品種の茶葉を使い一部烏龍茶の製法を組み込んでつくった紅茶)
ホワイトチョコの焙煎とコンポートの発酵感に合わせて
●
香りは穏やかな蜜香。
ややあっさりとした飲み始めで、
軽めの果香と蜜香に、甘さと渋みまではいかない渋み感があって。
そこで終わりかと思った瞬間に、突如、まさしくチョコレートのような暗く香ばしいニュアンスが伸びてくる。
お茶の奥深さに思わず笑みが溢れて。
ー
※発酵百烏龍:
青心烏龍という品種の茶葉を使い一部烏龍茶の製法を組み込んでつくった紅茶。
阿里山の青心烏龍であれば通常烏龍茶として製茶され「高山茶」として売り出される。
クオリティシーズンは春と冬。
夏は日が強くなり、葉が大きく硬く苦味も出やすくなるため価格が落ちやすい。
そのため、夏茶の一部を紅茶として製茶することで付加価値をつけるケースも増えている。
夏茶の中には、発酵(曝気)によって香気成分に変化する成分が豊富なことも利点として働く
(今回が夏茶かは確認しておりません)
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・酢橘とホワイトチョコのクリーム
・にっこりのクリュ(=フレッシュ)
・にっこりの仁淀川山椒の瞬間コンポート
・酢橘のジュレ
●
クリームは、酢橘の香りにホワイトチョコの温かい甘みがどこかフレッシュチーズのよう。
フレッシュの梨はジャリシャリとそこまで締まりは強くなく、甘く水分が溢れる。
コンポートの梨はは食感フレッシュさながらのシャリシャリながら、
山椒の、青みをもった柑橘の香りが口の上の方で漂い、梨とも酢橘とも相性が良く。
ゼリーはぷるっとしっかりとした食感があり、
酢橘の果皮・果肉、全てを凝縮したような凄みのある味わいが鮮烈で。
香りや酸味の穏やか梨に、山椒の香りや酢橘の香りや酸味や苦味などを合わせて広がりを持たせて。
ー
※仁淀川山椒
四国の中央から流れる日本屈指の清流、仁淀川とその川沿いに位置する、高知県越知町で収穫される山椒。
収穫時の採れたてのままのグリーン色、香り、味が新鮮なうちに加工し、一年を通じて鮮やかなグリーン色のものを出荷する。
清々しく爽やかな香り、すっきりとした独特の辛みと味わいがあり、舌が痺れるような独特の感覚も味わえる。
※瞬間コンポート:
どのように瞬間コンポートされているかお伺いし忘れたので妄想で考えてみます。
①真空調理:
梨とマリネ液を入れたバッグを真空密閉して、95℃以下の温度で加熱する。
浸透圧により少ない量の調味液がより低温でも均等に浸透する。
②ガストロバック:
密閉した鍋の中の気圧を減圧して調理する料理器具である「ガストロバック」。
ガストロバックの中に梨とマリネ液を入れて、蓋を密閉し、減圧して加熱する。
気圧という外圧が少なくなることで、食材は食材中に含まれている空気が膨張して、スポンジ状になるため、調味液が染み込みやすくなる。
さらに、減圧状態によって水の沸点が下がる。
温度が低い状態での沸騰によって、「食材に高熱によるダメージを与えない」「調味液が沸騰することによって、食材に味が染み込みやすい」というメリットもある。
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・ローズアッサム
(マスカットとソーテルヌのデセールに合わせて)
(台湾アッサム?という品種を紅茶に製茶して生のマリアカラスでゆっくり香りをつけたもの)
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香りはバラと蜜香。
味わいにはバラさはなく、紅茶の落ち着いた甘さの中にしっかりしつつ心地の良い軽い渋みでボディが感じられ、
そんな風味の上の方に、バラが漂っている。
バラの華やかさとお茶の落ち着きが調和して、香りが上滑りしないバランスの良いお茶に。
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(※紅茶の説明用紙には、”台湾アッサム(台茶5号)”と記載があります。調べた限り、台茶5号は福州系在来から選抜された品種のようなのでが、在来のアッサム種なのでしょうか。)
※チャ(チャノキ)とは:
学名「カメリア・シネンシス」ツバキ科ツバキ属の常緑樹。
チャノキには、様々なバリエーション(変種)があり、大きくは2種。
「中国種(≒中小葉種)」
・茶樹の高さは低め(灌木~半喬木)
・葉が3-5cmと小さくものが多い
・寒さに強い
・アミノ酸含有量が相対的に多くポリフェノール含有量が少ない
「アッサム種(=大葉種)」
・茶樹の高さは高め(喬木)
・葉が10-18cmと大きいものが多い
・寒さに弱い
・アミノ酸含有量が相対的に少なくポリフェノール含有量が多い
がある。それぞれの中にまた多様な種類が存在する。
日本では主に「中国種」が栽培されている。近年では「べにふうき」といったアッサム種も人気がある。
※カメリア・シネンシスと似た性質をもつ”近縁種”として、「カメリア・タリエンシス」「カメリア・イラワジエンシス(ノンカフェイン)」「シャン種・ビルマ種」「カンボジア種(アッサム種の一種)」などがある
※また、中国の「千年古木樹」とされているものの多くは「Camellia taliensi カメリア・タリエンシス」である。
※中国種の中にも葉が大きいもの(大葉類)、アッサム種でも葉が小さいもの(小葉類)はある
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・フロマージュブランのムース
・シャインマスカット
(皮付きのクリュと、皮剥いたものをソーテルヌでマリネしたもの)
・シャインマスカットのソース
(一房分をじっくり煮立たせすぎずに煮詰めて、煮切ったソーテルヌを入れて凝縮したもの)
●
クリュは、喉に溜まるような甘みに加えて、
パリシャキッとした皮の酸味・苦味・塩味の濃ゆい味わいが奥深く、
コンポートは皮がないことでその身の柔らかさががクリュと対比的で、
蜜のような複雑な甘さがありながらも、
ソーテルヌのほのかなアルコール感で発酵のような酸のニュアンスが増幅されている。
ソースは、刺さるような甘みと酸味の中にどこか塩味のようなミネラル感が凝縮している。
フロマージュブランのフレッシュな酸味とあっさりとしたミルク感が全体の濃い味わいにまろやかを与えて。
甘みが非常に強めで、ドリンクと合わせてもかなり残ります。
”デザートコース”なので甘いのは当然ではあるのですが。
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※フロマージュ・ブラン:
牛乳を乳酸発酵させただけで熟成させてないフレッシュチーズ。
風味のためにクリームを入れることもある。
※ソーテルヌ:
ボルドー地方で造られる極甘口の貴腐ワイン。世界三大貴腐ワインのひとつ。
そもそも貴腐ワインとは、貴腐菌が付着したブドウから造られる極甘口のワインのこと。
貴腐菌はボトリティス・シネレア菌というブドウの果皮に付着するカビの一種。
この菌が果皮に付着すると果皮の組織が破壊され、そこからブドウの水分が蒸発し、エキスが凝縮された糖度の高いマスト(ブドウ果汁)が得られる。
貴腐ワインは通常のワインを造るマストよりはるかに高い糖度のマストから造られるため、アルコール発酵後もワインには糖分が残り甘口となる。
しかし、この貴腐菌は特別な環境下でなければブドウに付着しない。
具体的には、収穫の時期の明け方に霧が発生して菌の生育に都合の良い温度や湿度状態になり、さらに日中は晴天で乾燥してブドウの水分が蒸発するような奇跡的な環境でなければならない。
貴腐ワインは貴腐菌が生育する限られた場所でしか造ることができない上に、ブドウの貴腐化は粒によっても異なるため、収穫作業は手作業で一粒一粒、果実の状態を見極めながら数回に分けて行われる。
通常、ブドウ樹1本からボトル1本分のワインができると言われるが、貴腐ワインの場合はブドウ樹1本からグラス1杯分のワインしか造ることができないといわれる。
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・微酸イラム白
(タルトタタンと牛乳アイスのデセールに合わせて)
(T78とGoomteeという品種?を白茶に製茶したもの)
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香りはあまり白茶らしくなく花のよう。
苦味収斂味が酸のように感じられて、
その上に軽く甘みがのるイメージ。
花香のような華やかさの中に、生薬や藁のような微かなひねた香りが少し感じられるも、
嫌味なくどこかオリエンタルな複雑さをもつ。
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※白茶:
(特定の茶樹品種を)『摘採』→『萎凋』→『乾燥』
・萎凋は茶葉の状態、温度や湿度、風、日照の強さなどを考慮して場所、時間などを調整する必要がある。
・乾燥時には高温にしないため、酵素の一部が残存することで変化(熟成)が期待される。
殺青と揉捻を行わず、萎凋による発酵や香気成分の生成を、巧みに管理することで茶葉を仕上げていく。
乾燥後も、残った酵素活性による穏やかな発酵(熟成)が起こるため、寝かせることで青みが抜け紅茶のような風味・水色に近づくような変化を楽しめる。
チャノキの芽・葉のどこを用いるかで、「芽型」、「芽葉型」、「多葉型」に分けれらる。
例えば、よく見かける白毫銀針は、大白茶種の芽の部分のみでつくる「芽型」。
淡い水色と芽の甘みとうまみの繊細な味わいが特徴となる。
※萎凋:
生葉を、一定の温度・湿度の条件の下で均一にならして置き、それを萎らせ、水分を飛ばす工程。
屋外などで太陽光線にさらす「日光萎凋(日干萎凋)」、室内で行う「室内萎凋」、両方行う「複式萎凋」がある。萎れることで発酵(=酸化)を穏やかにすすめる。また、別の経路で、香気成分を高める効果があることも分かっている。
(また芽や茎などを柔らかくして揉捻の際にちぎれないようにする意味もある)
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・完熟紅玉の焼きたてタルトタタン
・マダガスカル産バニラとジャージー牛乳「ジャージー牛のおすそわけ」のアイスクリーム
・皮や種を抽出したシロップ
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タルトタタンは、りんごがごろっとしていながら、口に入れるとどろっとなめされていく驚きの食感。
煮詰まったような凝縮感があり、口中にまとわりつくような甘みと香りの中に、フレッシュな酸が響く。
パイの小麦とバターの味わいが余韻に膨らむ。
パイ生地のスパイスまでは私の味覚では判別できず、反省です。
ソースはどろりとして蜜のようでありながら、林檎本来の味を少しぎゅっとしたような、自然な甘みと酸味がある。
アイスクリームは、滑らかで口の中でソースのようにとろける。
バニラが高貴に香り、牛乳くささがないのに、そのコクのある風味が強く感じられる。
ー
※ジャージー牛のおすそわけ:
北海道石狩郡にある「ジャージーの箱庭」様から、ジャージー牛の牛乳。
ジャージー牛とは、イギリス王室ご用達のイギリス原産の牛。
ホルスタインに比べ小柄で品種改良を受けていない貴重な家畜。
そこから採れる牛乳はβカロテンが豊富で特有の黄色味を帯びてるため、”ゴールデンミルク”と呼ばれる。
「ジャージーの箱庭」様では、ジャージー牛を昼夜を問わず野外で飼育する「完全放牧」で自然の草のみを与えて育てる。
とれた牛乳はホモジェナイズ処理を行わず、低温殺菌にて丁寧に仕上げる。
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・日華玉露
(濃いめで入れてカカオのデセールの油脂分と合わせる)
(やぶきたという品種を玉露に製茶して、台湾で青みだけを消すように焙煎したもの)
●
香りは抹茶アイスのようで、玉露にありがちな磯のような香りが一切なし。
まさに中国緑茶のような釜炒り殺青緑茶の香り。
飲むと、わずかに海苔のようなニュアンスと強い旨みがググッと迫り来るが、
品があり甘みを残して引いていく。
お出汁のようにならずお茶らしさを感じる玉露に。
ー
※日華玉露についてはこちらの動画で詳しいお話を伺うことができますので是非。
https://www.youtube.com/watch?v=QZ-Z2s4Wkg4
(【お茶②】世界に輸出できない⁉︎ 玉露の端境期)
※「かぶせ茶」や「玉露」、「碾茶」:
育てる過程の一部で、日光を遮る工程を踏んでいるもの、
日光が当たらないため、テアニン(グルタミン酸)がカテキンに変化しにくいために旨味成分が多く、まろやかで濃厚な味わいとなる。
また、光の量が少ない中で光合成するために、たくさんの葉緑素を必要とするため、葉がとても濃い緑色をしている。
また「覆い香」とよばれる生海苔のような独特な香りがする。
「かぶせ茶」と「玉露・碾茶」の違いは、かぶせ茶は被覆期間が一週間程度で遮光率も50%程なのに対して、「玉露・碾茶」は被覆期間が20日前後と長く遮光率も高い。
「玉露・碾茶」は茶園全体を大きく覆うのに対してまた、かぶせ茶は茶園の畝ごとに直接覆いをする簡易的な方法をとることもある。
「玉露」と「碾茶」の違いは、「玉露」は殺青後の揉捻があるのに対し、「碾茶」は殺青後に揉捻することなく温風で数メートルの高さまで舞い上げながら乾燥させ、茎や葉脈を取り除いている。
(ちなみに、抹茶は碾茶を石臼でひいて粉末にしたもの)
ほとんどの玉露・かぶせ茶は寒冷紗と呼ばれるプラスチック製の黒い覆いを利用して作られる。それに対して、本玉露と呼ばれる玉露は、藁で茶園を被覆する。雨が降ると水が藁に染みこみ、藁のミネラルが地面に滴り落ちることで、お茶の木は藁由来のミネラルを吸い込む。そのため、本玉露の玉露は寒冷紗で被覆した茶園の玉露と比べると、後味に厚みがあり、余韻の長い玉露となる。
※緑茶:
『摘採』→『攤放』→『殺青』→『揉捻』→『乾燥』(→『焙煎』)
・萎凋、做青などの発酵工程を含まないこと
・殺青を行った後に揉捻を行っていること
※殺青:
釜炒り、蒸熱、高温風による乾燥などで、熱を加えて酵素を変性させ発酵(=酸化反応)を止める。
中国緑茶の場合、多くは釜炒りで殺青を行う。
一部に日本の煎茶と同じような蒸し製のお茶(蒸青)や、近年はマイクロ波殺青(微波殺青)を行うものもある。
釜炒りで殺青を行うことの効用として、香気成分の増加がある。
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・白神山地の軟水と果肉の出汁つくったカカオのガナッシュ
・沖縄カカオ果肉から抽出したジュレ(ハスクの香りもつけて)
カカオはOKINAWA CACAO Factory & Cafe様から。
一部他のカカオも併用しつつとのこと。
●
ジュレはハスク由来?の暗いカカオの風味と少しのライチのような果汁感で渋甘酸っぱい。
説明だけだともっとライチのような果実感強めかと思いきやカカオ感もしっかり感じられ嬉しい誤算。
ガナッシュはきめ細かく詰まっておりやや硬めながら、
さらっととろけて、きゅっとなる酸味と強い渋みがくる。
渋さが続きながら少し甘みが伸びてきて
ナッティな味わいが立ち込めてくる。
ジュレで水分のバランスをとりながら頂く。
個人的にガナッシュのカカオの味わいが渋みに寄り過ぎていると感じました。
OKINAWA CACAO様から仕入れるカカオはその実のままフレッシュで仕入れて使用されているそうなので、
そのカカオ個体の味わいなのかもしれません。
ー
※OKINAWA CACAO:
株式会社ローカルランドスケープ様のチョコレートブランド。
2016年から沖縄本島北部の大宜味村でカカオ栽培事業をスタート。
※カカオとは:
学名「テオブロマ カカオ リンネ」というアオイ科の植物。
(ギリシャ語でテオ=神々、ブロマ=食べ物を意味する。)
カカオの実を、英語ではカカオポッド、仏語ではカボスという。
※カカオの産地:
カカオの樹は、高温多湿の熱帯でしか育たない。
赤道を挟んで北緯20どうから南緯20度までが栽培適地であり、「カカオベルト」と呼ばれる。
カカオベルトの中でも、高度30-300m・年間平均気温27℃で気温差が小さい・年間降雨量が最低1000m以上と、生息域が限定される。
沖縄では無加温ハウスで、場所によっては露地でも少量であれば栽培が可能だそう。
※カカオの品種
古くは3種類といわれてきたが、近年の研究にて20種弱、それ以上の品種があると考えられている。
カカオは、交配が起こりやすく交雑種が生まれやすい。
そのため、一つの農園の中でも、様々な品種(交雑種)が混在しているケースも多い。
農家自体も自身のカカオの品種を把握していないことも多い。
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・大禹領
(青心烏龍という品種を烏龍茶に製茶したもの)
●
乳香のような甘い香りと花香がしっかりと香って。
味わいは、甘み強めながら、旨みも丸くバランス良く存在して芯のあるボディが感じられる。
それでいて苦味や酸味や雑味は一切なし。
余韻しっかり長く続き、戻りの香りも柔らかく甘い。
ー
※大禹領:
大禹領とは地区名のこと。
台湾の花蓮、台中、南投の3県が接する辺りに位置し、梨山高山茶区に属す。
その中でも、高海抜な“大禹嶺茶区”としてブランド化されており、そこで作られた高山茶(烏龍茶)を「大禹領」と称することも多い。
年の平均気温が20℃を超さず、冬には茶園が雪にすっぽりと覆われることも珍しくないこの一帯では、茶葉の成長速度が遅く、香味成分たっぷりの厚い葉に育ち、品質に優れたお茶になる一方、極めて少ない生産量ゆえ、大変高価となる。
更に2014年から始まった政府による土地の返還政策により、往時の1/4にまで茶園が減ってしまったため、ますます稀少性の高いお茶になっている。
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・天使音マスクメロンのショートケーキ
お持ち帰りは難しいほどの水分量で。
ジェノワーズ(スポンジ生地)には、種の周りの果肉からつくったアンビバージュをしっかりとアンビベして。
●
ジェノワーズはパツっと詰まっていながら、
しっかり打たれたアンビバージュが艶やかなメロンの味わいをじゅわりと滲ませる。
出来立てだからこそ、その水分を含んだ状態でも生地がだれることなく、
口入れるとわずかにその繊維を残しつつとろけ馴染んでいく。
マスクメロンは、濃密でアロマティクな香りで、ジューシーながら煮詰まったような甘みが。
ジューシーという共通項をもった生クリーム・ジェノワーズ・マスクメロンが一体となり、
まさに飲めるショートケーキ。
水分が多い生クリームやジェノワーズを相手に一切薄まるような印象を与えないマスクメロンの素材力に驚かされます。
ー
※天使音マスクメロン:
静岡県浜松市の株式会社まさ屋様から。
元々メロン栽培をされていた取締役社長である影山雅也様が、文献でみつけた「クリームメロン」という、味と香りが際立っていながらも栽培の難しさや見た目の問題から定着しなかったマスクメロンを再現しようと発起。
クリームメロンの母品種は、英国女王エリザベス2世の戴冠式に際し、秩父宮妃殿下がイギリスから持ち帰った「ヒーロー・オブ・ロッキンジ」とされており、2011年に研究所に残っていたヒーロー・オブ・ロッキンジの種を発見。
様々な品種との交配を重ね、最終的に「ヒーロー・オブ・ロッキンジ」の香りと、栽培しやすい「アールスフェボリット」の特徴を併せ持つ「天使音マスクメロン」を誕生させた。
※アンビバージュ:
ジェノワーズやビスキュイ等の焼いた生地・菓子を湿らせて柔らかくし、風味をつける為に染み込ませる液体のこと。
染み込ませる事をアンビベ(imbiber)と言う。
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・焼きたてのフィナンシェ
・レモンバタークリームサンド
●
焼きたてのフィナンシェはしっかりとした焼き目でありながら、手に持つと弛みが生まれてその柔らかさが伝わる。
口に入れると、焼きの香ばしさや卵感、バターが香るも全体的に偏りがなく穏やかな丸みがあり、
ジュワッと解けて消えるレアーな生感覚。
少し冷ますとエッジが少しカリッとしつつも中はじゅわとろで対比が良く、
味わいは少し濃縮されてコクが出た印象に。
レモンバタークリームサンドは、クッキー生地は小麦感や塩味は軽め。
クリームはガッチリ硬めながらキリっとした酸であっさり感を。
中には皮のコンフィチュール?が詰まっており、凄みのある苦味とえぐみでまたお口がリセットされて。
・金萱爽香スパークリング (パプリカとトマトのデセール合わせて) (金萱という品種の茶葉を烏龍茶に製茶したもの)
・金萱爽香スパークリング (パプリカとトマトのデセール合わせて) (金萱という品種の茶葉を烏龍茶に製茶したもの)
・オパリーヌ(=極薄の飴細工) ・トマトのコンポート ・トマトのクリアシート ・パプリカのムース パプリカは低温で焦がさず2時間ローストしてピュレにした後、 最低限の生クリームを加えてムースに。
・オパリーヌ(=極薄の飴細工) ・トマトのコンポート ・トマトのクリアシート ・パプリカのムース パプリカは低温で焦がさず2時間ローストしてピュレにした後、 最低限の生クリームを加えてムースに。
・紅玉(ホット) (北あかりとトリュフのデセールに合わせて) (紅玉という品種の茶葉を紅茶に製茶したもの) 85℃で デザートの重みに合わせてホットで。
・紅玉(ホット) (北あかりとトリュフのデセールに合わせて) (紅玉という品種の茶葉を紅茶に製茶したもの) 85℃で デザートの重みに合わせてホットで。
・北あかりのブランマンジェ ・トリュフのアイスクリーム
・北あかりのブランマンジェ ・トリュフのアイスクリーム
・発酵百烏龍 (和梨と酢橘のデセールに合わせて) (青心烏龍という品種の茶葉を使い一部烏龍茶の製法を組み込んでつくった紅茶)
・発酵百烏龍 (和梨と酢橘のデセールに合わせて) (青心烏龍という品種の茶葉を使い一部烏龍茶の製法を組み込んでつくった紅茶)
・酢橘とホワイトチョコのクリーム ・にっこりのクリュ(=フレッシュ) ・にっこりの仁淀川山椒の瞬間コンポート ・酢橘のジュレ
・酢橘とホワイトチョコのクリーム ・にっこりのクリュ(=フレッシュ) ・にっこりの仁淀川山椒の瞬間コンポート ・酢橘のジュレ
・ローズアッサム (マスカットとソーテルヌのデセールに合わせて) (台湾アッサム?という品種を紅茶に製茶して生のマリアカラスでゆっくり香りをつけたもの)
・ローズアッサム (マスカットとソーテルヌのデセールに合わせて) (台湾アッサム?という品種を紅茶に製茶して生のマリアカラスでゆっくり香りをつけたもの)
・フロマージュブランのムース ・シャインマスカット (皮付きはクリュ、皮剥いたものはソーテルヌでマリネ) ・シャインマスカットのソース (一房分を煮詰めて、煮切ったソーテルヌを入れて凝縮したもの)
・フロマージュブランのムース ・シャインマスカット (皮付きはクリュ、皮剥いたものはソーテルヌでマリネ) ・シャインマスカットのソース (一房分を煮詰めて、煮切ったソーテルヌを入れて凝縮したもの)
・微酸イラム白 (タルトタタンと牛乳アイスのデセールに合わせて) (T78とGoomteeという品種?を白茶に製茶したもの)
・微酸イラム白 (タルトタタンと牛乳アイスのデセールに合わせて) (T78とGoomteeという品種?を白茶に製茶したもの)
・微酸イラム白 (タルトタタンと牛乳アイスのデセールに合わせて) (T78とGoomteeという品種?を白茶に製茶したもの)
・完熟紅玉の焼きたてタルトタタン ・マダガスカル産バニラとジャージー牛乳「ジャージー牛のおすそわけ」のアイスクリーム ・皮や種を抽出したシロップ
・完熟紅玉の焼きたてタルトタタン ・マダガスカル産バニラとジャージー牛乳「ジャージー牛のおすそわけ」のアイスクリーム ・皮や種を抽出したシロップ
・完熟紅玉の焼きたてタルトタタン ・マダガスカル産バニラとジャージー牛乳「ジャージー牛のおすそわけ」のアイスクリーム ・皮や種を抽出したシロップ
・完熟紅玉の焼きたてタルトタタン ・マダガスカル産バニラとジャージー牛乳「ジャージー牛のおすそわけ」のアイスクリーム ・皮や種を抽出したシロップ
・日華玉露 (濃いめで入れてカカオのデセールの油脂分と合わせる) (やぶきたという品種を玉露に製茶して、台湾で青みだけを消すように焙煎したもの)
・日華玉露 (濃いめで入れてカカオのデセールの油脂分と合わせる) (やぶきたという品種を玉露に製茶して、台湾で青みだけを消すように焙煎したもの)
・白神山地の軟水と果肉の出汁つくったカカオのガナッシュ ・沖縄カカオ果肉とハスクのジュレ カカオはOKINAWA CACAO Factory & Cafe様から。 一部他のカカオも併用?。
・白神山地の軟水と果肉の出汁つくったカカオのガナッシュ ・沖縄カカオ果肉とハスクのジュレ カカオはOKINAWA CACAO Factory & Cafe様から。 一部他のカカオも併用?。
・大禹領 (青心烏龍という品種を烏龍茶に製茶したもの)
・大禹領 (青心烏龍という品種を烏龍茶に製茶したもの)
・天使音マスクメロンのショートケーキ お持ち帰りは難しいほどの水分量で。 ジェノワーズ(スポンジ生地)には、種の周りの果肉からつくったアンビバージュをしっかりとアンビベして。
・天使音マスクメロンのショートケーキ お持ち帰りは難しいほどの水分量で。 ジェノワーズ(スポンジ生地)には、種の周りの果肉からつくったアンビバージュをしっかりとアンビベして。
・焼きたてのフィナンシェ ・レモンバタークリームサンド
・焼きたてのフィナンシェ ・レモンバタークリームサンド
・焼きたてのフィナンシェ ・レモンバタークリームサンド
2025/01/17 更新
料理長は、濱村浩様。
26歳までフランス料理人として活躍。
半年ほどパティシエの職に就いた時に自分には菓子作りが合っていると転職。
「オーボンヴュータン」に就職して、3年目からスーシェフパティシエを務め、
2011年、レストランデセールを学びたいと渡仏し「ステラマリス」で修業。
帰国後は「ロアラブッシュ」「インフィニートヒロ」「オマージュ」と錚々たる店で腕を振い、
2024年5月、東京都西麻布にて、「蒼」のオーナーシェフの峯村康資様、「Leafwine」の代表でティーペアリングアドバイザーの横田大助様と一緒に、
アシェットデセールとティーペアリングのスイーツコース専門店「蒼菓」をオープン。
ー
日本各地から届けられた濱村様・峯村様こだわりの食材を、
濱村様・峯村様の卓越したその技術で、一見シンプルに仕上げながら、
素材の味わいを引き出し尽くす。
調理は「蒼」同様に全てガラスや鋳物で行う。
ステンレスや金属を使わないことで、素材の味や香りを全て正直に引き出す。
だからこそ、良質な素材を用いざるを得ないそう。
また、上質な台湾茶はほとんど横田様がカスタムオーダーされた品々。
産地・品種・製法・淹れ方の異なるお茶は、一つ一つ個性があり、豊かで深みのある複雑な風味をもつ。
そんなお茶をペアリングすることで
デセールの鮮烈な余韻をさらに心地よく引き上げる。
ー
8度目の訪問。
建物入口には濱村シェフ自らお出迎えを。
エレベーターをご一緒してお店に上がりカウンターへ。
食材やティーペアリングのレジュメを読みながらワクワクを高めていると、
本日使う食材たちの紹介が始まりコーススタート。
良かったポイントはたくさんありますが、あえて挙げるなら
・ジャスミン杉林渓スパークリングの、一般的なジャスミン茶と一線を画す、清らかな花の香り。
・焼き茄子アイスと京鴨卵プリンの美味しさ。合わせる八八金萱の焙煎の究極性。
・桃コンポートと微酸金萱のペアリング。
・お口直しの一皿として定番となった、ジャガイモのコンソメ。
・お茶菓子に新登場した、”飲めるモンブラン”。
などなど。
ペアリングティーの中で今回特筆するのであれば、日華玉露。
八女にて輸出基準を満たした完全無農薬でつくられたやぶきたという品種を玉露に製茶。
台湾に運び、優秀な焙煎師に青みだけを消すように45℃で4時間焙煎して頂いたもの。
今回のロットは、香りを嗅いだ瞬間から違いました。
海苔のような香りを一切感じさせず、抹茶アイスのような甘くクリーミーな香り。
飲むと、品のある苦味に支えられて、旨みと甘みがゆったり壮大に押し寄せる。
今まで理解しきれてなかったカカオのデセールとのペアリングが、すっと腑に落ちる感覚がありました。
スムーズなサービスで、1時間40分で終了。
以前よりゆったりとした皿だしだったので、一皿一皿味わい尽くすことができて嬉しい限り。
またクリーム感や重さも以前と比べ明らかに減らすよう工夫されていると感じます。
台湾茶ティーペアリング付きデセールコースで、17600円。
中国茶・台湾茶好きとしては、本当にたまらないティーペアリング。
台湾茶それだけでコース代程の価値があるものと思われます。
そこに最高のアセットデセール達。
昨今のデセールコース高騰化の中で納得感があり良心的な価格です。
ーーーーー
お料理の構成は写真にも
補足事項や感想●、解説※は本文で
(※印の内容は自分調べですので誤りを含む可能性がございます)
(※お茶の解説は中国茶の知識がベースなので台湾茶とは異なる点もあると思われます)
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『ティーペアリング①』
・ジャスミン杉林渓スパークリング(水出し)
台湾龍王峡の標高1800m。
青心烏龍という品種を烏龍茶に製茶して、花王?という品種のジャスミンの生花(がく付き)で香りづけしたもの。
茶葉1kgに対して生花1.8kgを贅沢に用いて。
●
口に含むとまず広がるのは、ジャスミンの華やかで清らかな香気。
一般的なジャスミン茶にありがちなえぐみや青臭さは一切なく、花そのものの清らかな甘香が心地よい。
ベースとなる烏龍茶のクリアな甘み・旨味・わずかな苦味が、華やぐ香りと切れ目なく連続する。
烏龍茶の僅かな茶葉の青みやタンニン感が花の香りと合わさると、本当に花のお茶を飲んでいるかのよう。
スパークリングの泡が香りを持ち上げ余韻を軽やかに演出。
一皿目にふさわしい華やかさと透明感を備えた一杯。
ー
※杉林渓(さんりんけい・シャンリンシー):
南投縣鹿谷郷から山の方へ入った、嘉義縣・雲林縣との県境付近に位置する。
高山烏龍茶の有名産地の1つ。
※高山烏龍茶:
・台湾各地の高地(標高1000m以上)で作られる烏龍茶のこと。
・「高山茶」と呼ばれることもあり、名前に「烏龍」がつかない場合でも、ほとんどが烏龍茶。
・特に標高2000m以上の超高地で作られるものは、「高冷茶」とも呼ばれる。
・知名度が高いのは阿里山、杉林渓、梨山などでしょうか。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『デセール①』
上から、
・オパリーヌ(=極薄の飴細工)
・トマトのコンポート
・トマトのクリアシート
・岐阜県産 おひさまコーン(とうもろこし)のムース
朝どれのとうもろこしを80℃低温で蒸して、実と芯にわける。
芯はスライスして白神山地の軟水で出汁をとる。身と出汁を合わせピューレにして塩のみで味を調整、最小限の生クリームを加えてムースに。
●
ムースはなめらかで、とうもろこしのはつらつとした甘みがぐっと凝縮。
クリーム感がかなり控えめだからこそ、香りがすっと立ち上がり、余韻が軽やか。
塩だけで、極限まで風味を引き出す仕立てに毎度のことながら驚きです。
トマトのクリアシートはその柔らかな食感がムースと齟齬なく馴染む。
明るい甘みと旨み、ほんのりした酸味と青みが重なって、全体にフレッシュ感を足す。
コンポートはさらりと柔らかくジューシー。青みのニュアンスがお口をリセット。
オパリーヌはスプーンで軽く小突くと砕ける極薄さで、パリっと食感のアクセント。
食べずらい飾りになっていない点が◎
ジャスミン杉林渓スパークリングは、野菜の青みに寄り添いつつ、濃い甘味・うま味をさっぱりさせる。
お野菜の印象を残しつつも花香で華やかさを、炭酸で軽やかさを与える。
ー
※オパリーヌ:
フォンダン(砂糖と水を練り煮詰めて結晶化させたもの)と水飴を煮詰めてから冷ましたものを、砕いてパウダー状にして、それを好みの形に薄く散らして焼くことで極薄の飴細工を造形できる。
パウダーを作る段階でフレーバーを加えることも可能。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『ティーペアリング②』
・八八金萱(ホット)
金萱という品種を、烏龍茶に製茶したもの。
95℃のやや低温で、”8時間焙煎→休ませる”工程を11回反復したもの。
●
香りは火香の中に、蜜のような甘い香りとごくわずかな茶葉の青さ。
岩茶の焙煎を思わせる香りがあるのに、口に含むと焦げ感も苦味も出てこないというギャップ。
衝撃的。。。
味わいはすっきりと雑味がなく、温かな甘みが程よく伸びる。
焙煎の理想形のひとつを目の当たりにした一杯。
最高すぎます。
ー
※金萱:
台湾で品種改良によって生まれた品種。
12番目に生れたため「台茶十二号」とも言われる。
生産性が高く、奶香とよばれる淡いミルクのような香りが特徴とされる。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『デセール②』
・京都府 京鴨の卵のプリン
・京都上賀茂産 賀茂茄子の焼き茄子アイスクリーム
鴨卵はタンパクが強く水分が少ないため、凝固がしっかり。密度のある口当たりに。
茄子は皮を炭化させるように強火で焼き、中は蒸し焼き。皮を外し、最小限の乳製品と合わせる。
(配合はソルベ寄りだが、茄子自体のクリーミーさでアイスクリームの質感に)
●
焼き茄子アイスは、立ち上がりに炭の香り。続いて茄子そのものの青さと甘香がふわりと顔を出し、滑らかなテクスチャーと共に滋味が長く伸びていく。
プリンは密度の詰まった硬さがあるオールドタイプ。
されど、角が立つような張りがあるわけではなく、しっとり滑らかなのが白眉。
バニラの甘い香り、カラメルのほろ苦と甘い香ばしさ、そして澄んだ卵の風味。
正統派を突き詰めた味わい。卵の癖は皆無。
個人的嗜好でプリンを食べることがあまりないのですが、これは人生No. 1プリンでした。
八八金萱は、その火香が焼きナスの炭香・カラメルのメイラード香を相性よくつなぎつつ、温かな甘さでほっこりかつあっさりとした余韻に。
ー
※鴨の卵:
鶏卵より大きめで、水分が少なく固形分(脂質・蛋白質)と黄身比率が高い。
乳化力とコクに優れ、プリンやクレームは密に凝固しやすい一方、卵白は過加熱で硬化しやすいので低温管理が重要。
殻はやや厚く、産卵ピークは春〜初夏。飼料と鮮度で香りの出方が変わる。
※賀茂茄子:
京都・上賀茂発祥の在来丸なす系で、「京の伝統野菜」に指定。
大型の扁円果、緻密な果肉・種子少・含水率やや低めで、加熱しても型崩れしにくい。
旬は6〜9月。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『ティーペアリング③』
・微酸金萱(水出し)
金萱という品種を烏龍茶に製茶したもの。
湿度・温度・時間を管理して独特の発酵(=曝気)を行ったもの。
●
香りは、バラのような花香、そこへ蜜っぽい甘いニュアンスが重なる。
フルーティーで蜜感のある甘味と、それを支える極わずかな渋み。
香り・味わいが重なると、酔いしれるかのような独特の発酵感。
桃のコンポートと合わさると、これまた別次元に昇華。
新たな花が開花したかのよう。思わず震えます。
こんな風味を引き出す異次元すぎる製茶技術に理解が追いつきません。
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※お茶の「発酵」:
お茶の説明で使われる「発酵」は、微生物が関与して有用物質を生む本来の“発酵”とは意味が異なる。
厳密な定義では発酵は「有機物に微生物が作用し、人に有用な変化をもたらす過程」。
しかし、お茶の場合は主に茶葉中のポリフェノール酸化酵素が、カテキンなどのポリフェノールを酸化させる“酸化反応”を指す。
酵素とポリフェノールは通常は分かれて存在するが、萎凋や揉捻などで細胞が傷つくと両者が混ざり酸化が進む。
例外として、黒茶などの後発酵茶ではカビ等による好気発酵や乳酸菌の嫌気発酵といった微生物発酵が関与する。
カテキンは酸化前は無色の水溶性で渋味をもち、香りはほとんどない。
これが酸化・重合すると、テアフラビン(橙色)やテアルビジン(紅色)、テアシネンシン、ウーロンテアニンなどのポリフェノール重合体が生成し、渋味が和らぎ、特有の色調と香りが生まれる。
同時に香りの前駆体が加水分解されて各種の芳香成分が生成される。
無秩序に酸化が進むと酸化劣化を招き、望ましい風味や水色にならないため、製茶では「酸化の度合いを設計し、狙った段階で加熱して酵素活性を停止させる」ことで、花や果実を思わせる香り、求める水色・味わいを実現する。
なお「発酵」という語が使われ続けるのは歴史的経緯による。
かつて茶葉の変化に微生物が関わると考えられていたが、1940年代に否定された。それでも長年の慣用で用語が残り、近年はより正確に oxidation(酸化)/aeration(曝気) と表現されることも増えている。
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『デセール③』
・大石早生(プラム)のソルベ(皮ごと)
福島県 古山果樹園様の川中島白桃の
・クリュ(=フレッシュ)
・コンポート(バニラと桃皮で香りつけて)
・コンポートシロップのジュレ
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クリュは皮を剥いてくし形と、極めてシンプル。
みずみずしい丸い甘みがほんのりとした酸を包んでいる。
コンポートはまずバニラの甘香が立ち、桃のニュアンスへとバトンが渡る。
より解れて柔くなった線維感。甘みがひきたっている。
クリュとコンポート。同じ素材をテクスチャと香りで分け合うのが楽しい。
ソルベは皮ごと仕立てで、果肉の甘酸と果皮の酸味・渋みが一口に頂ける。
桃クリュと合わせると不思議と甘さの知覚が増し、桃の香りがぐっと立ち上がるのも印象的。
ジュレは滑らかに全体をつなぎ、香りの余韻をのばす。
総じシンプルながら、素材の仕立てで振れ幅を丁寧に見せてくれる一皿。
前述したように、微酸金萱と桃のコンポートの合わさに震えます。
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※大石早生:
日本スモモの早生品種。
福島で「フォーモサ」の自然交雑実生から育成。
果肉は淡黄色で多汁・甘酸調和。
ハウスで5月下旬〜、露地は6月下旬〜7月が主季。
産地では早採り後に追熟して供される。
※川中島白桃:
長野市・川中島町で池田正元氏が偶発実生から得て、1961年「池田1号」→1977年命名の白桃系。
大玉・白肉で硬め、酸味は少なく甘味が強い。
晩生(8月中旬〜9月初旬)、日持ち良好。
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『ティーペアリング④』
・ローズアッサム(水出し)
台湾アッサムという品種を紅茶に製茶して、生のマリアカラスという薔薇でゆっくり香りをつけたもの。
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香りはバラと蜜香。
味わいにはバラさはなく、紅茶の重心と厚みのある落ち着いた甘さの中に心地の良いわずかな渋みでボディが感じられ、
そんな風味のトップの方に、バラが漂っている。
バラの華やかさとお茶の落ち着きが調和して、香りが上滑りしないバランスの良いお茶に。
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『デセール④』
岡山県 ミライノウエン様のシャインマスカット
・半分は、皮付きのクリュ
・半分は、皮剥いてソーテルヌシロップでマリネしたもの
・フロマージュブランのムース
・シャインマスカットのシロップ
(ソーテルヌベースのシロップとシャインマスカットスライスを80℃で2時間真空加熱、ざるに開けてさらに上から重しをして全て抽出し切ったシャインマスカットのエキスを煮詰めたもの)
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クリュは素朴な甘みに、パリッとした皮が生む酸・ほのかな苦味・ミネラルのニュアンス。
どこか“野菜感”があります。
マリネは皮を外したぶん身のやわらかさが前面に。
蜜のように重層的な甘さの奥から、ソーテルヌの揮発感がふわりと立ち、微かな酸が甘みを引き締める。
ソースは“刺さるような”直線的な甘さに、酸と塩味めいたミネラルが凝縮。
フロマージュブランのムースはフレッシュな酸と軽いミルク感で、濃い甘味に丸みを付与。
クリュ→マリネ→シロップと、食材の凝縮感を楽しむフレンチ仕様の一皿。
強めの甘味はフロマージュブランと、ペアリングのローズアッサムが受け止める設計。
ローズアッサムの香りがソーテルヌのフルーティーな蜜香と重なり、余韻が華やぐ。
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※ソーテルヌ:
フランスはボルドー南部ガロンヌ左岸で生産。
貴腐菌によって生まれる世界最高峰の甘口白ワイン。
※フロマージュ・ブラン:
牛乳を乳酸発酵で凝固させ、短時間の水切りで仕上げる非熟成フレッシュチーズ。
水分多めで爽やかな酸味とミルキーな風味。
脱脂〜全脂、クリーム添加まで脂肪レンジが広いのも特徴。
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『ティーペアリング⑤』
・微酸イラム白(ホット)
T78とGoomteeという品種の芯芽のみを白茶に製茶したもの。
ヒマラヤ山脈の麓 ネパールのイラム地方のマイポカリ村でつくられたもので、
通常の萎凋は甘味を引き出すため18時間ほど行うところを、10時間半と短くすることで茶葉の葉酸を残す仕立て。
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まず香りが強烈。
日干しした藁のような暖かさに少しだけ出汁のような香ばしさがのる。
白茶に焙煎の工程はないのに不思議です。
味わいは、出汁に似た旨みを帯びた酸と、塩味のニュアンス、そこへやわらかな甘みが寄り添う。
苦味・収斂味はごく控えめ。
焼きたてミルフィーユの後に飲むと、酸のニュアンスがよりくっきりと。
その日向にいるような香りと温度が、ミルフィーユの香ばしさの余韻を深めつつも、名の通りの”微酸”感が濃厚なうまさを軽やかにする。
まったくの私感ですが、お椀の吸い地とかに組みこんでみても美味しそうかもと愚考。
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※白茶:
加工が非常にシンプルで、(特定の茶樹品種を)『摘採』→『萎凋』→『乾燥』するのみ。
・摘採(てきさい):お茶の芽や葉を摘む。摘む部位によって種類が分かれる。
↓
・萎凋(いちょう):生葉を、一定の温度・湿度の条件の下で均一にならして置き、それを萎らせ、水分を飛ばす工程。日光や風、室内環境を調整して、発酵や香気成分の生成を促す。
↓
・乾燥:温風や日光で高温にしすぎずに水分を飛ばし、茶葉を完成させる。
火を加える「炒り(殺青)」や「揉む(揉捻)」を行わず、萎凋によってゆっくり水分を減らし花のような甘い香りを生成する。
萎凋を行う環境の湿度と風量、温度を厳密に管理する必要があり、繊細な技術が求められる。
乾燥後も、残った酵素活性による穏やかな発酵(熟成)が起こるため、寝かせることで青みが抜け味がまろやかに磨かれて深みがでる。
「一年茶、三年薬、七年宝」とも言われ、寝かせるほど価値が上がりやすい。
※ネパール・マイポカリ:
ネパールのイラム地方、標高約2,400メートル程に位置。
イラム地方全体が紅茶で有名だが、マイポカリなど標高の高い地域では、白茶や緑茶のニーズも増えており、輸出向けの高級茶として注目されている。
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『デセール⑤』
・沖縄県産 完熟ゴールドバレルの焼きたてミルフィーユ
中にクレーム・ムースリーヌと、フレッシュのパッションフルーツ
・宮崎県産完熟マンゴーのソルベ(ライム果汁入り)
ミルフィーユにはイズニー社様の発酵バターを仕様。
ソルベは贅沢に宮崎県産完熟マンゴー100%使用。
以前頂いた「マンゴーのミルフィーユ」でマンゴーの中で一番美味しい、種の横部分のみを使っていたそう。その時に残った部分を適切に保存しておいて今回使用。
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まずは上のパイを外し手で持っていただく。
エアリーすぎるほどにハラハラと散りゆくパイ生地。
キャラメリゼはパリッと薄く。バター感はあくまで優しく。
軽やかな甘旨さとキャラメリゼの香ばしさが空気のようにふわりと広がる。
パイ生地の美味しさに浮かれ気分。
気を引き締めなおして、パイナップルとクレーム・ムースリーヌとパイ生地を一体に頂く。
ゴールドバレルはザクッと歯が入り、やや硬めの噛み心地。
切り口からは水分が勢いよく溢れて、果汁感は満点。
パッションフルーツが重なると、酸味が足されつつ、どこかココナッツめいた南国の香りが立ち上がるのが面白い。
エアリーなパイとバニラ香るムースリーヌももちろん美味だが、果汁の量と食感の強さゆえ、時にパイとムースが“溺れがち”に映る瞬間も。難しいですね。
マンゴーのソルベは、熟果そのもののように滑らかで、舌上でソースのようにとろける。
ライムの香りと酸がマンゴーの青みを伴う甘香と濃密な甘味をきれいに押し上げる。
強いて言えば、もう少しココナッツニュアンスのあるマンゴーだと、パイナップル×パッションの香りと繋がりが強まる印象。
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※ゴールドバレル:
沖縄県農業研究センターで育成されたパイン品種。
交配親は「クリームパイン」×「McGregor ST-1」で、2009年に品種登録。
果肉は黄金色、糖度16.5%・酸度0.53%と、既存品種に比べ低酸・高糖の良食味が特性。
自然夏実の収穫適期は沖縄本島北部で7月中旬〜下旬が目安で、地域・作型により前後する。
収穫まで3年の時間がかかり、国産パイナップルのわずか1%しかない貴重な品種。
※クレーム・ムースリーヌ:
クレーム・パティシエールと、バターまたはクレーム・オ・ブールを混ぜたもの。
クレーム・パティシエールはとろっとしているが、バターの冷えて固まる性質が加わり、少し形も保てるようになる。
バターの滑らかな口当たりと深いコク+クレーム・パティシエールの甘くて優しい風味。
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『お口直し』
・雪室で三年間熟成させたキタアカリのコンソメ
日本一の包丁研ぎ師と名高い藤原将志様が研ぎ30000番手で仕上げをした包丁を用いて調理。
蒼の峰村シェフ自らがスタッフには任せずに、きたかありの皮を剥きスライスし、
白神山地の超軟水とフランスの塩だけで、ジャガイモ1kgから300ccのコンソメを抽出。
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黄金色のじゃがいもコンソメは、シロップのような僅かなとろみがあって、
香りは、土感のある香りとわずかに醤油のような香ばしさ。
とうもろこしの甘味を澄ませたような、密度のある甘みとうまみが、口いっぱいに広がる。
余韻には塩味とうま味と香ばしさが残る。
包丁と同じようにその研ぎ澄まされた香り・味わいに、切れ伏せられたかのような衝撃をうけて。
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※藤原将志様:
三重県松阪市の老舗刃物店「月山義高刃物店」の三代目。
同じ包丁でも研ぎ方によって切れ味が変わることを実感して研ぎの重要性に目覚め、理論と実践を融合した講習を一般の主婦から三ツ星料理人まで幅広く行なっている。
2014年には店の一角に「切れ味研究所」を設立。包丁の切れ味が食材の酸化、加熱時の変化、味わいにどう影響するかを科学的に検証。現在は切れ味と熟成の関係も研究中。
また、包丁研ぎ師を料理人の“パーソナルトレーナー”と位置づけ、専門職としての地位確立も目指している。
2017年には「日本包丁研ぎ協会」設立し代表を務め、「研ぎサミット」開催。
※白神山地の超軟水:
白神山地は青森県と秋田県に広がり、1993年に世界自然遺産に登録。
その地域の水は、非常に清らかで硬度が0~5mg/L程度の「超軟水」。
超軟水は水のミネラル成分が少ないため、出汁をとる際に素材の味わいの成分をしっかりと抽出することが出来る。また、ミネラル由来の苦味が少ないためよりまろやかな味わいになる。
※ちなみにですが、お茶を淹れる際は超軟水であればあるほど良いのか:
ミネラル(特にカルシウムやマグネシウム)は、茶葉に含まれる香り成分や苦味・渋味成分と結びついて、水中に安定的に溶け出すのを助ける「媒介」のような働きをする。
超軟水ではミネラルがほとんどないため、
○ 苦味・渋味が抑えられて「まろやか」になる反面
△ 香りやコクのある成分が抽出されにくくなり味がぼやけることがある。
つまり、基本的には軟水が最適だが、超軟水(硬度0〜5)は玉露や高級煎茶で◎。
紅茶や烏龍茶など香気成分が豊富なお茶は、適度な軟水(20~50mg/L程度)が◎。
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『ペアリング⑥』
・日華玉露(水出し)
輸出基準を満たした完全無農薬でつくられたやぶきたという品種を玉露に製茶。台湾に運び、優秀な焙煎師に青みだけを消すように45℃で4時間焙煎して頂いたもの。
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今年ロットの日華玉露は、香りを嗅いだ瞬間から違いが歴然。明らかに上質。
海苔のような香りを一切感じさせず、抹茶アイスのような甘くクリーミーな香り。
飲むと、品のある苦味に支えられて、旨みと甘みがゆったり壮大に押し寄せる。
ほのかな甘みが余韻に残る。
ペアリングについて詳しく後述。
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『デセール⑥』
・白神山地の超軟水とカカオハスクティーとカカオの”アイス”
・フレッシュの沖縄カカオの果肉ととカカオハスクティーのジュレ
ジュレのカカオはOKINAWA CACAO Factory & Cafe様から。
アイスのカカオはヴァローナ社様のグアナラを。
今まではガナッシュでしたが夏仕様にアイスに変更。乳製品なしで仕立てるのは相当の苦労があったそう。定義的にはソルベになりますが、カカオに含まれる油脂分がうまく働いてアイスのような食感になるのですが、作って少し置いておくだけでボソボソとした食感になってしまうと。アセットデセールならではの一品。
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ジュレは、ハスク由来の暗い香ばしい風味をトップに香らせながら、ややライチのような甘酸っぱいフルーティーさ・瑞々しさが伸びてくる。
余韻には蜜っぽい香ばしさ。カカオを“果実”として感じさせる導入。
アイスはガナッシュよりも粒感がなく滑らかで、よりまったりとマイルドな味わい。
ワインを思わせるベリー系の酸と渋み、ナッティな甘み・香ばしさがバランスよく同居する。
乳製品不使用なので、カカオの香りを堪能できて後味のキレがよいのが好印象。
※ペアリング考察(あくまで私感):
今回のハイクオリティすぎる日華玉露でのペアリングを頂いて、すっと腑に落ちる感覚がありましたので、少ない知恵を振り絞ってみました。
「焙煎で香りを整えた玉露を、水出ししてから常温に近づけて提供する」
という点が重要でしょうか。
玉露側は
・45℃×4時間の低温焙煎で海苔っぽさが抑えられ、甘く・クリーミーで・かすかにフラワリーな香りを前面化。
・低温抽出することで、甘味と旨味が前に出て、苦味は繊細に輪郭だけを作るようになる。
・提供温度が常温寄りのため、香りも開きお茶の味も伝わりやすくなる。アイスの冷たさ・油脂と違和感なく同居させつつ口内温度を引き上げることができる。
デセール側は、
・超軟水ベースの乳不使用カカオアイスが、「ベリー様の酸と軽い渋み→ナッティな甘さ」
・沖縄カカオ果肉のジュレが、「ライチ様のフルーティーさ→ハスク由来のロースト香」
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つまり、
香りは、フラワリーとフルーティーとでベクトルを揃えて、クリーミーさが遅れてくるロースト感をまろやかに。
味わいは、玉露の“甘旨”がデセール側の酸味・渋味の鋭さを丸め、甘味の知覚を底上げ。
さらに、玉露のわずかな苦味加わって渋みの輪郭を整えることで、無理なく一体化して軽やかな余韻を演出。
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※OKINAWA CACAO:
株式会社ローカルランドスケープ様のチョコレートブランド。
2016年から沖縄本島北部の大宜味村でカカオ栽培事業をスタート。
沖縄は、いわゆるカカオ栽培に適した緯度であるカカオベルトからは外れるが、基本無加温ハウスで場所によっては露地でもカカオ栽培が可能だそう。
※カカオ豆がチョコレートになるまで:
カカオの果実「カカオポッド」は厚い殻に包まれ、その中には甘酸っぱい果肉(パルプ)と共に30〜40粒ほどのカカオ豆が入っている。収穫した豆はパルプごと発酵させることで、酵母や乳酸菌、酢酸菌が働き、独特の香味が芽生えチョコレート色に変化する。その後、天日や機械で乾燥させ、水分を落としてカビの発生を防ぐ。こうして仕上がった豆が品質検査を経て、世界のチョコレート工房へと運ばれる。
加工の段階では、豆を焙煎して香りを引き出し、外皮(カカオハスク)を除いた「カカオニブ」をすりつぶして「カカオマス」に。砂糖やミルク、カカオバターを加え、微細化や精錬(コンチング)を重ねることで、なめらかで艶やかな生地に仕上がる。最後にテンパリングで結晶を整えてから冷やし固めることで、口どけが良くパキッと割れる理想のチョコレートとなる。
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『ペアリング⑦~お茶菓子まで』
・大禹領(2025春ロット、ホット)
青心烏龍という品種を烏龍茶に製茶したもの。
約2700mと世界一高地で生産された”大禹領”。
こちらは中国でおこなわれたお茶のコンクールで世界一に輝いたこともある生産者様のお茶。
一般的に、高名なお茶は現地・世界の大富豪に流れてしまうため、通常のルートでは手に入らない。
ご実家が台湾で茶業をなされている横田様だからこそ手に入れられる逸品。
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甘い花香に加えて、馥郁とした温泉を思い出すような硫黄香が香って。
(言われてみると、去年のロットより乳香感が薄れたような気もします)
味わいは、甘みと旨みが丸くバランス良く存在しゆっくりと膨らみのあるボディが感じられる。
それでいて青みや苦味や酸味や雑味は一切なし。
余韻しっかり長く続き、戻りの香りも柔らかく心地よい。
強烈な香りや何かに特化したような味わいではなく、
そのバランスの極致・余韻の長さに酔いしれるお茶でしょうか。
硫黄感のある香りが、ショートケーキやフィナンシェの生地と相性抜群◎です。
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※大禹領:
大禹領とは地区名のこと。
台湾の花蓮、台中、南投の3県が接する辺りに位置し、梨山高山茶区に属す。
高海抜な“大禹嶺茶区”としてブランド化されており、そこで作られた高山茶(烏龍茶)を「大禹領」と称することも多い。
年の平均気温が20℃を超さず、冬には茶園が雪にすっぽりと覆われることも珍しくないこの一帯では、茶葉の成長速度が遅く、香味成分たっぷりの厚い葉に育ち、品質に優れたお茶になる一方、極めて少ない生産量ゆえ、大変高価となる。
更に2014年から始まった政府による土地の返還政策により、往時の1/4にまで茶園が減ってしまったため、ますます稀少性の高いお茶になっている。
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『デセール⑦』
・天使音マスクメロンのショートケーキ
お持ち帰りは難しいほどの水分量で仕立てて。ジェノワーズ(スポンジ生地)には、種の周りの果肉からつくったアンビバージュをしっかりとアンビベ。作ってから2時間寝かせがベストなので、提供から時間を逆算して完成させているそう。
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ジェノワーズはパツっと詰まっていながら、
しっかり打たれたアンビバージュが艶やかなメロンの味わいをじゅわりと滲ませる。
計算された状態での提供だからこそ、その水分を含んだ状態でも生地がだれることなく、
口入れるとわずかにその繊維を残しつつとろけ馴染んでいく。
マスクメロンは、濃密でアロマティクな香りで、ジューシーながら煮詰まったような甘みが。
ジューシーという共通項をもった生クリーム・ジェノワーズ・マスクメロンが一体となり、
まさに飲めるショートケーキ。
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※天使音マスクメロン:
静岡県浜松市の株式会社まさ屋様から。
開発のきっかけとなったのは、取締役社長・影山雅也氏が文献で目にした「クリームメロン」という幻の品種。香り高く味も優れていたにもかかわらず、栽培の難しさや見た目の問題から広まらなかったこのメロンの再現を決意。
クリームメロンの母品種は、英国女王エリザベス2世の戴冠式に際し、秩父宮妃殿下がイギリスから持ち帰った「ヒーロー・オブ・ロッキンジ」とされており、2011年に研究所に残っていたその種を発見。
様々な品種との交配を重ね、最終的に「ヒーロー・オブ・ロッキンジ」の香りと、栽培しやすい「アールスフェボリット」の特徴を併せ持つ「天使音マスクメロン」を誕生させた。
※アンビバージュ:
ジェノワーズやビスキュイ等の焼いた生地・菓子を湿らせて柔らかくし、風味をつける為に染み込ませる液体のこと。
染み込ませる事をアンビベ(imbiber)と言う。
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『お茶菓子』
・焼きたてのフィナンシェ
・栗の水羊羹
・佐賀嬉野の釜炒り抹茶のアイス
新作である栗の水羊羹は、“飲めるモンブラン”のイメージで。和栗をメインに少し洋栗を用いて。固めた時の食感を調節するため、0.1g単位で分量を変えて試作を繰り返したそう。
アイスは、ベースの牛乳に、同産地の玉露を甘みと旨みが出る温度でアンフュゼして。
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焼きたてのフィナンシェはしっかりとした焼き目でありながら、手に持つと弛みが生まれてその柔らかさが伝わる。
口に入れると、香ばしさ・卵感・バターがその焼きたての温度でくらくらと香る。
食感は、ごく薄く表面がカリっとしつつもすぐにジュワッと解けて消えるレアーな生感覚。
大禹領との相性も驚異的。。。
少し冷ますとさらにエッジがカリッとしつつも中はじゅわとろで対比が良く、
味わいは少し濃縮されてコクが出た印象に。
羊羹は、まさしくホロッと崩れてジュワッととろけて飲める食感が白眉。
自らを天邪鬼と仰るシェフは栗にカシスではなくハスカップを合わせて。
まず栗の香りと甘みが先行し、続いてハスカップの酸がすっと伸び、生クリームと合わさると確かにモンブランの味わいに。
釜炒り抹茶のアイスは、苦味や青みではなく甘みとうま味を引き出した味わい。