2回
2025/05 訪問
日本茶と食材と発酵で未知の景色に出会う行雲流水な食体験を。
『汲み出し』 菓:チョコレート大福 求肥は天神麦茶を加えて。 中には、 アマゾンカカオのガナッシュ(クリームと昆布水で乳化させたもの) バーベナペッパー 甘夏を発酵させ煮詰めたジャム
『汲み出し』 茶:大山製茶園様のさえみどりの新茶
『甘味①』 ・山科茶舗様の栗田早生のアイス ・下には、 春キャベツはトレハロースで発酵させたもの 発酵トマトのコンソメと少量の味醂を合わせたソース イタリアンパセリのオイル 柑橘?
『茶①』 ・お茶の富澤。様のおくみどり+アスパラガス+鰹+松新芽
『甘味②』 ・羊羹 ①淡雪(村田農園様) ②そら豆(オーブンで鞘ごとロースト、鞘と豆で出汁をとり塩を僅かに加えて) ③発酵とちおとめと白餡 ・別添えの、ワタとそら豆出汁のソース
『お茶②』 ・マルヒ製茶様の香駿和紅茶(二年熟成)+トンカ豆+桃の花(Herb Stand様)+茗荷
『甘味③』 ・十勝オーガニック牛乳のブラマンジェ(竜眼の種の香りをつけて) 上には ・龍眼 ・弥生姫とルージュロワイヤル(バラ)の発酵ソース ・オリーブオイル ・提供直前にバラのスプレー
『お茶③』 ・駄農園様のおくみどりの白茶(2年熟成)+中川誠盛堂様のジャスミン茶+生姜と清見オレンジの皮
『甘味④』 乾燥ホワイトマッシュルームと釜炒り焙じ茶と胡桃樹液をベースに。発酵ブラウンマッシュルームのエキスと茶の実油を加えて。 具は、マッシュルーム、牛蒡、胡桃キャラメリゼ、セミノールのコンサルトレ
『甘味⑤』 ・4Lサイズの枇杷のフリット。中に発酵枇杷のピューレを詰めて。 ・上には、花山椒ペーストを和えたアメリカンチェリー。 ・ソースは、種を煮出したもの。山椒オイルを垂らして。
『お茶⑤』 ・吉田茶園様のやぶきた和紅茶と+吉田茶園様のお母さまが育てたカモミール+枇杷葉っぱのコンブチャ
『甘味⑥』 ・赤肉メロンとブルーチーズのグラニテ ・ラベンダーヨーグルトのムースアイス ・青肉メロン ・サクラヒバのジュレ ・底に、こぶしの花のソース ・上から、こぶしの花のスプレー
『お茶⑥』 ・東坂茶園様の青心烏龍茶(二年熟成)
『甘味⑦』 ・土器で蒸したパインは、炙ったダンコウバイの枝に刺してから炙って提供 ・大葉ソルベ(下にトウヒとピスタチオのペースト) ・ソースは、ブルーアイスと文旦の皮を煮出したエキスを合わせたもの。
『お茶⑦』 ・高梨茶園様のほくめい+クレソン+黒文字のコンブチャ
『〆⑧』 ・木の芽味噌焼きおにぎりのお茶漬け ・鰺の南蛮漬け(ベルガモット新芽で香りづけ) 上には、シトラスフラッシュ(マイクロリーフの一種)
『お茶⑧』 奥富園様の手摘み浅蒸し煎茶(合組で、きらり31がメイン)
『茶室に移動して』 茶:Sense of Matcha(鹿児島メイン+宇治の抹茶の合組、オーガニック) 菓:赤松で燻製した柏餅 中に、赤味噌と梅とレモンの餡、金柑ライムと白樺樹液のゼリー
茶:Sense of Matcha(鹿児島メイン+宇治の抹茶の合組、オーガニック)
菓:赤松で燻製した柏餅 中に、赤味噌と梅とレモンの餡、金柑ライムと白樺樹液のゼリー
2025/05/18 更新
2025/02 訪問
日本茶と食材と発酵で未知の景色に出会う行雲流水な食体験を。
料理長は、田中俊大様。
「カルムエラン」「メゾン・ダーニ」「ジャニス・ウォン」を経て、24歳頃から独学でハーブやスパイスついて学び、
2018年、ニューヨークに本店を構えるミシュラン掲載店のモダンフレンチが東京・六本木ヒルズにオープンした「ジャン・ジョルジュ東京」のシェフパティシエに就任。
第1回「チョコレートイノベーションコンテスト2019」にルビーチョコレートと日本茶を使ったデセールを出品し、「ドリンク・デザート部門」第2位&「イノベーション フォトグラフィー部門」第1位をダブル受賞。
世田谷区「ラトリエ ア マ ファソン」でシェフパティシエを務め、
2022年3月、独立して「VERT」を開業。
2024年11月、神楽坂内で店舗移転。
日本各地の茶農家を頻繁に訪れて交流を重ねつつ、“日本茶を織り交ぜたデザートコース”という独自スタイルの業態で注目を集めている。
(https://eflab.jp/techniques/vert-rose/より引用させて頂きました)
ーーー
「日本茶×発酵×食材を通じて、頭の中に甘味を中心に描かれてる抽象的な色映像を視覚化・具現化して、美味しさや美しさだけではないより更に深いところ、誰しもが体験したことないような何かを伝える」
「そこには、アシェットデセールやデザートコース・ペアリングといった枠組みはなく、至極自由に」
「モチベーションではなく明確な目標をもって。日々の積み重ねはその逆算として。この世界で生きていく覚悟をもって命をかけて」
「日本茶をまずは日本からそして世界へ。最大の敬意を払いながら」
(以上はVERT様のInstagramより。あくまで自分なりの要約で全く伝わりきらない部分や曲解があるかと思いますので、2024/02/03・05/20の原文を必ずお読み下さい)
「毎月茶畑を訪れ、生産者と交流し、五感で感じた情景をコースに落とし込む。
フルーツは日本全国から旬のものを厳選。
発酵させることで、砂糖をできるだけ使わず、素材本来の繊細な味を最大限に引き出す。」
(食べログ様プロフィールより)
ーーー
完全予約制。
「茶湊流水」と銘打たれたコースは、
14:00 /19:00 スタート
通常営業以外にも、製茶園様をお招きして行う朝茶会や夜茶会、特別コラボ営業なども不定期にございます。
ドアオープンは10分前。
一斉スタートとなります。
ーーー
移転前を含めると10回目の訪問。
フルーツをメインに様々な日本の食材を自在に扱い・組み合わせ、
発酵を活かして甘み・酸味・うま味・香りの調整する。
日本茶(+α)によるドリンクの味わいが恐ろしいほど深く、デセールと合わせの妙に唸るばかり。
いつもお料理・お茶ごとに詳しく説明を頂けます。
新しい食材・仕立て・合わせとの出会いに驚き・楽しみが尽きません。
そんなご説明を聞いていても、いざ実食すると全てを感じきれない緻密な壮大さがございます。
大した味覚は持ち合わせておりませんので烏滸がましい限りではありますが精進せねばと思わされます。
コースはデセール・ペアリングティー込みのコースで23000円(税込)
デセールの集中できる雰囲気抜群カウンターで、丁寧な調理を拝見し、興味深いお話しを伺いながら、日本茶を合わせて頂くお食事ですので適正なお値段かと。
ーーー
お料理の構成は写真にも
感想や食材・お茶解説は本文で
(感想はものによって曖昧です)
(※印の内容は自分調べですので誤りを含む可能性がございます)
ーーー
『汲み出し』
菓:大福(果汁で炊いた求肥の中に、湘南ゴールドをまるごと使い切った餡)
茶:2024 全国茶品評会 一等四席茶 煎茶 栗崎克之
●(お茶の感想メモ曖昧、、、)
お茶は、玉露のように旨み・甘味が強いが、さっぱりとした爽やかな青み。
心地よい苦味が余韻に延びる。
さらさらと粉うたれた大福は、持ち上げると柔らかにたわみ、
一口齧ると、湘南ゴールドの香りが充満。
中には果皮・果肉すべてを使った餡、というかペースト的なもの(と白餡も?)。
噛むほどに柑橘の強烈な甘みと酸味が、決して均一ではなくまだらに押し寄せることでその印象が押し上げられていて。
細かく切られた果皮にコリッと当たると、苦味のニュアンスと青く凝縮した香りが鮮烈に上乗せされる。
柑橘の香りを含んだ求肥がその心地よい食感とともに、
落ちついた甘さで柑橘の余韻を伸ばしていく。
VERT様の大福はいつも先頭打者ホームランなのです。
ー
※湘南ゴールド:
神奈川県が開発した柑橘類の品種。
「今村温州」(温州みかん)と神奈川県西部で採れる「ゴールデンオレンジ(黄金柑)」の交配により作られた。
2006年から出荷を開始。
爽やかな独特の香りと、甘さと酸味のバランの良さが特徴。
※求肥:
もち米や白玉粉に砂糖や水あめを加えて練り上げた和菓子の材料。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味①』
・高梨茶園様の香駿烏龍茶のアイス
・サワーポメロ
・ジャスミン茶と金木犀を発酵させたソース
・サワーポメロの皮を煮出したソース
『茶①』
元VERTスタッフ大阪様の雲ノ南農園の釜炒り茶+春菊・菊
(手摘み)
●
まず感じるのは、香駿烏龍茶から感じる、まるでミルクチョコレートのような温かい甘み。
アイスがさらさらと細かすぎる砂のように溶けていき、
お茶のフローラルさと仄かな渋み・苦味が、サワーポメロの風味に繋がる。
サワーポメロは文旦のような苦味と酸味と香りがリズミカルにほとばしり、
ソースがその風味を押し上げる。
粒粒とした食感がアクセントになりながらも砂じょうまでほぐされていることで、
アイスから浮きすぎることなく馴染む。
その後、アイスの穏やかなミルク感・乳感が余韻に残り、全体をまとめる。
とてもとても乱暴にいうとチョコと柑橘の合わせをより軽く瑞々しく、フローラルで、苦味酸味をフレッシュにきかせた一品のようなイメージ。
チョコはいないのに不思議です。
合わせてお茶を頂くと、
お茶単体では感じられた渋みが少なくなり、
温かい香ばしさと綺麗な甘味がデセールと継ぎ目なく繋がって
そして春菊がうま味を強調しつつ、青みのアクセントを生む。
温かい香ばしさとフローラルさがデセールとリンクする。
(扱いとしては緑茶とのことでしたので、水色がかなり茶色寄りなことから、釜炒りは殺青のみではなくでやや焙煎までしているものと思われます)
ー
※香駿:
「くらさわ」と「かなやみどり」を掛け合わせて誕生した品種。
蘭のような特徴的な香りを持つ品種。紅茶にも向いている品種。
※サワーポメロ:
文旦の仲間の柑橘。
グレープフルーツに似た形状を持ち、果実の大きさが20cm前後。
果皮は濃い黄色で平滑、果肉は淡い黄色。
プリプリとした食感が特徴で、あっさりとした上品な甘味と酸味のバランスが良く、香り良い。
1月下旬から2月上旬にかけて収穫され、4月から5月頃まで出荷できる。
熟れ具合によって甘みが強くなる。
※釜炒り茶:
生の茶葉をお茶へ作り変える”製茶”には、『殺青(さっせい)』と呼ばれる工程が含まれる。
茶葉を摘採して攤放・萎凋・做青などの工程を踏んだ/踏んでない茶葉を、釜炒り・蒸熱・高温風の乾燥などで、熱を加える。
そうすることで、茶葉に含まれる酵素の活性をとめて、発酵(=酸化)を止める。
日本茶では水蒸気を用いる蒸青が極めて主流。逆に中国茶では釜炒り殺青が主流である。
釜炒りでは釜香がつき香り高くなるが色が若干黄色くなりやすい。蒸しでは緑色を維持できる。
日本の産地としては佐賀県・長崎県(嬉野茶)・熊本県・宮崎県(青柳茶)などが九州が主に挙げられる。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味②』
羊羹
コンターレという金柑(フレッシュ)の層
阿波すず香とアニスヒソップの層
乳酸発酵させたコンターレの層
『お茶②』
阿波晩茶+黒文字・ローズマリー
●
まず、アニスヒソップ由来?なのかハーバルな香り。
そこからフレッシュの金柑を噛み締めることになって、
金柑特有の香りと強烈な甘み。
金柑らしさが強くありながらも酸味が穏やかで皮の渋さがほとんど感じられないコンターレ。
噛み進めると、すず香の今までと異なる柑橘の香りが奥行が生んで
強い甘味がゆっくり伸びる。
乳酸発酵感がどのような感じなのかまでは受けとりきれず。反省です。
お茶のベースは、阿波晩茶。
乳酸発酵の黒茶なので三層目と共通項をもたせていると思われます。
阿波番茶のすーっとする酸味感と香り、すっきりとした仄かな甘みに
黒文字のメンソール感のある森の香りをゆらゆら香らせて、よりすっきりと。
デセールの甘みを抑えつつ酸を立たせ、柑橘とハーブ香という黄金コンビで華やかな落ち着きを演出。
ー
※コンターレ:
一般的な金柑である「ニンポウキンカン」の枝変わりで静岡県清水区で近藤恭史氏が偶然発見・育成し、2002年に品種登録された新しい品種の金柑「こん太」。
通常の金柑とは異なり、苦みが無く、ダイレクトに感じられる甘みが特徴。
酸味もほとんど無く、つるりとした果皮は厚くて柔らかい。
「コンターレ」は「こん太」の最高ランク・赤秀品のなかでも3Lサイズ以上の大玉のみに与えられる最上級品の名称。
※阿波すず香:
「スダチ」×「ユズ」の掛け合わせ。
徳島県が開発し、2017年(平成29年)に品種登録された香酸柑橘。
大きさはスダチとユズの中間。
香りもスダチとユズの中間のような独特の香りを有す。
糖度と酸味はスダチより低くユズより高い。
※アニスヒソップ:
シソ科カワミドリ属、藤紫色のまっすぐな花穂が印象的。
葉や花にはアニスやミントに似た香りがあり、ハーブティーやエディブルフラワーとして利用される。
※阿波晩茶:
徳島県那賀郡那賀町と勝浦郡上勝町の特産品となっている乳酸菌発酵茶の総称。
作り方は、
7月頃に摘採→茶茹で→茶摺り(茹でて柔らかくなった葉に傷をつける)→漬け込み(茹で汁をいれた桶に茶葉をいれ空気を抜いて1 -3週間程度漬け込み、乳酸醗酵を促す)→乾燥→選別
※黒文字:
クスノキ科クロモジ属の落葉低木。
落ち着きのある甘い木の香り。
柑橘や花、ハーブと共通する香気成分を持つ。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味③』
・辛味のあるオリーブオイル
・はちみつで発酵させたシルバーベルの果肉
・松を発酵させ、キウイを加え発酵、さらにシルバーベルを加え発酵させた、その発酵エキスのソース
・鈴木牧場様の十勝オーガニック牛乳と発酵シルバーベルのブランマンジェ
『お茶③』
吉田茶園様の茎焙じ茶+発酵させたカリン果肉とラベンダーで水出し
ホーリーバジルの蒸留水をグラス内面に吹き付けてから提供
●
まず、発酵と洋梨由来からかまるで”洋梨のリキュール”のような香り。
そこから、オリーブオイルの辛味と洋梨の甘味が波のように広がって、
気づいた時には嫌味のない柔らかなミルク感が口全体に薄く漂って味わいをまとめている。
余韻に洋梨の甘みと香りが残り、
時々、ピリッとした辛味のニュアンスを感じる。
お茶は、
なんとも表現しがたいウッディで甘い薫香。
ざらっとした苦味感から、甘みがすーっと継ぎ目なく伸びて
ラベンダーのフローラルさが花開く。
毎度ではありますがデセール→お茶の衝撃の美味しさの流れに
合わせの意図を考えることを忘れてしまいます。
ー
※シルバーベル:
山形県で、ラフランスの自然交雑実生を育成して登録された洋梨の品種。
その名の通り、ベルのような美しい釣鐘型と、ラフランス譲りの甘い香り。
1個約400gと大玉だが、肉質は繊細で、甘味と酸味のバランスがよいすっきりとした美味しさが特徴
※鈴木牧場様の十勝オーガニック牛乳:
鈴木牧場様は、北海道十勝の南端である広尾町で、十勝の自然や生態系と調和し、土・草・塩・牛づくりの循環型酪農で持続可能な農業に取り組んでいる。
十勝オーガニック牛乳は、
●オーガニックグラスフェッド(有機牧草と放牧で牛を飼育)
●ホルモン剤、ワクチン、駆虫剤、遺伝子組換え飼料不使用
●搾りたて30分以内の生乳を、63℃30分間低温殺菌(ノンホモ)
●お腹がゴロゴロなりにくいやさしい牛乳「A2ミルク」(β-カゼインA2A2遺伝子を持つミルク)
※ホーリーバジル:
東南アジア原産のシソ科。
タイ語ではガパオとして知られタイ料理で一般的に用いられる。
スイートバジルの香りと比べ、よりクローブにも似たスパイシーで柔らかな甘みが強く感じられる。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味④』
・宮古島の無花果のシンプルなフリット
・ソースは凝ったものを
(小豆のような香りのハチミツに、ガマズミ・苺
・シャインマスカットをいれて発酵させ、浅めに止めて甘みを残したのものに、)
(駄農園様のかなやみどりと大分県のアールグレイ和紅茶を煮出して加え、)
(無花果の葉のオイルを垂らしたもの)
『お茶④』
マルヒ製茶様の香駿和紅茶
(2023/01仕入れなので二年熟成)
●
フリットにされた無花果は、ほどよく温まり
繊維感が残りつつも噛むとどろりと解けて、
その果汁が溺れるように溢れる。
加熱されたことで甘みが濃縮、エグミがなくなり香りが立ちやすくなっている。
ソースに垂らした葉のオイルが、無花果らしい青い香りをより押し上げてその印象を高める。
果物のフリットで気になりやすい、衣の主張や油や焦げの香りがほとんど気にならないのがとても驚きで心地よい。
ソースは、はちみつ由来の甘さがベースにあり、
苺?やガマズミ?由来のベリー感と少しの酸味、シャインマスカット由来のミネラル感が感じられて。
お茶の存在までは私の味覚・嗅覚ではハッキリと認識できず反省。
おそらくですが、甘みや酸味を抑えて五味を調整、タンニンで油をきりやすくする、お茶とのつながりを持たせる、などの狙いもあるのではないでしょうか。
無花果フリットと合わさることで、衣や油感をきれて、
フルーティな香りと少しの酸味・ミネラル感で風味が引き立てられて、
種類の異なるはちみつの甘さが優しく余韻に残る。
お茶は、
まず、茶葉由来の乳香が強く香る。
そこに紅茶らしい温かい甘みがふくよかに重なる。
口当たりは丸くそれでいてボディがあり、嫌な苦味・渋みが全く感じられず、
すこし香ばしい温かさの中に花や果実のような甘い香りの余韻が長く長く続く。
牛乳感は一切ないのに、まるでミルクティーとしか思えない不思議な味わい。
甘味とフルーティな青み、揚げの温かみがあるデセールにピッタリとマッチ。
とても個人的な感想として、極上質な中国茶・台湾茶で感じるような味わいかと思いました。
ー
※ガマズミ:
ガマズミ科ガマズミ属に属する落葉低木で、秋に赤く熟した果実は食用になる。
果実は甘酸っぱく食用になる。
初秋には酸味が強くて生食できないが、秋が深まると透明感が出て甘くなる。
ダイコンやカブなどの浅漬けを漬ける時に一緒に用いられることもある。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味⑤』(椀物なのでペアリングはなし)
お椀仕立て
花紫蘇 干し柿 三宝柑?の砂じょう
炭火焼きにした三宝柑の葛餅
東坂茶園様の越冬焙じ茶を煮出して
●
葛餅は、もちもちとし過ぎない粘度で滑らかなでごく軽く、
味わいも決して主張しすぎず繊細で、
三宝柑の酸味と香りが漂いながら、すっきりとした甘みが葛でゆったりと伸びる
餡には炭と焙じ茶?の香ばしさと甘い香りが感じられて。
特に驚きなのが、干し柿が口に入りずっしりと甘くなると、一気に炭の香りが立ち込めてくること。
五味によって感じやすい香りが変わってくるそうで甘みの重心役として干し柿を配置されたとのこと。
立ち上がった炭の香りに三宝柑の苦いような風味が合わさって、大人な余韻に浸る。
(すっかりと焙じ茶の存在を認識しきらずに食べきってしまいました。反省です)
ー
※三宝柑(サンボウカン、サンポウカン):
ミカン科ミカン属の柑橘で、和歌山藩士野中為之助の邸内にあった木が原木とされる。
サイズは柑橘類の中では大きめで、デコポンに似た形。
果皮は柔らかいがかなり厚く果肉は少なく、種が非常に多い。
果肉の色は濃黄色で果汁が多い。
苦味がなく酸味が程よいさっぱりとした味わいに、上品な香りが特徴。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味⑥』
・最後に上から、酵素シロップ?をスプレー
・とちあいかで発酵させた薔薇のグラニテ
・発酵させたバラの花弁
・梅の発酵酵素シロップでコンポートしたとちあいか
(食した際にもう一つ構成パーツがあった気がします)
『お茶⑥』
勝間田開発農協様の花ここち(萎凋緑茶)+とちあいか+金柑ライムのコンブチャ
●
上からかけたスプレーによって、発酵の酸がぐわっと香って。
グラニテは口に含むと、シャリシャリふわっと溶けて薔薇の香りを広げつつ、
苺由来?の甘さがその冷たさと発酵の酸でシャープに伝わってくる。
コンポートしたとちあいかは、そう果(表面の粒)の粒感が楽しく、
噛むとフレッシュさのある果汁が甘みを滲ませる。
酵素シロップでマリネしたことで、ただフレッシュになり過ぎず他のパーツとも馴染みがよくなっているように感じました。
お茶は、コンブチャ仕立て。
まず発酵や金柑ライムの酸味に加えて、緑茶由来であろう抹茶アイス様の味わいをしっかりと感じて。
はちみつのような甘味と薄く苺感が伸びてくる。
デセールに合わせると、飲み始めがピリリとした感覚になり、
酸味と抹茶アイス様の味わいと甘みが一体となって押し寄せ、
苺の余韻が伸びたのちに、バラが残る。
甘みをさっぱりと伝えながらも、香り・酸味・ビビッドな温度感に艶やかさがあるデセールに、
負けじとリンクしつつ、苦味や青みのニュアンスで深みをもたせて、バラの余韻を引き立てるドリンク。
食べ終えてもしばらく顔中が薔薇に包まれているような幸福感です。
ー
※萎凋緑茶:(長くなります。。。)
萎凋緑茶の製茶工程ではおよそ以下である。
『摘採(=茶摘み)』→『”萎凋”』→『殺青(前述)』→『揉捻』→『乾燥』(→『焙煎』)
↓
つまり、茶摘みの後に、「萎凋」される。
”萎凋”とは、生葉を、一定の温度・湿度の条件の下で均一にならして置き、それを萎らせ、水分を飛ばす工程。屋外などで太陽光線にさらす「日光萎凋(日干萎凋)」、室内で行う「室内萎凋」、両方行う「複式萎凋」がある。萎れることで発酵を穏やかにすすめる。また、別の経路で、香気成分を高める効果があることも分かっている。また芽や茎などのを柔らかくして揉捻の際にちぎれないようにする意味もある。インドやスリランカなど大量生産の現場では場所の都合上、茶葉を重ねて下から送風して萎凋することもある。
しかし、
本来の緑茶の製茶工程はおよそ以下である
↓
『摘採(=茶摘み)』→『”攤放”』→『殺青(前述)』→『揉捻』→『乾燥』(→『焙煎』)
つまり、茶摘みの後に、「攤放」される。
”攤放”とは、生葉を直射日光の当たらない風通しの良い場所に薄く積み重ねるように置き、水分量を調整するとともに青みを抜く工程。あくまで水分を飛ばすことが目的であり、温度や光線に配慮して酸化酵素の作用が極力起きないように配慮されている。水分が減ることで殺青する際の嵩が減りつつ発生する蒸気を適度に減らすことが出来る。
↓
『萎凋』と『攤放』という工程は一見似ているが、発酵や香気成分の発生を促すかどうかという点で、全く異なるものである。
緑茶では萎凋という工程は踏まないどころか、踏んではいけないとされてきた。
↓
中国・台湾などでは、白茶・烏龍茶・紅茶といった花や果物のような華やかな香りをもつお茶をつくる際に、萎凋という工程がなされている。
そのことに注目して、この工程を組み込みことで香り豊かな緑茶を作ろうという動きが広がりをみせている。
※金柑ライム:
キーライムとキンカンの交配種。
皮が薄く、果汁が豊富。
ライムのような酸味はあるが尖った青みはなく、金柑より甘みは少ない。
※コンブチャ:
糖分を含む液体に、スコビーと呼ばれる酵母菌と酢酸菌の菌塊のようなものをいれると、その菌たちが糖分を使用して酢酸や香りの成分を生み出す=発酵が起きる。
発酵を進めすぎると、酸味と香りの成分は増えるが糖分が消費されすぎて甘みのない酸っぱいお酢になってしまう。
発酵具合を日々確かめて、意図した味わいになったら発酵を止める必要がある。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味⑦』
・白菜の糠漬け
・岡山県北東部にある西粟倉村の平飼い有精卵をつかったフラン
中には、熟成栗がごろごろと
出汁は、白菜と栗の皮(白菜は鶏のエサで使われていることから想起されて)
餡掛けは、6年熟成のデザートワインと蜜柑皮と生姜からつくって
『お茶⑦』
和田長治商店様の炭火茶+玄米・バニラ
(お茶の写真失念・・・)
●(この辺りから記憶・メモがさらに曖昧になるのでさらっと。味覚力・記憶力不足です)
フランから強い卵の風味。餡はフルーティな甘さとわずかなドライさ?。
どこをすくっても栗があたる嬉しい設計で、栗の方がフランよりテクスチャーは重いので、フランの味わいに重なりつつ、後から栗の素朴な甘みがくる。極端に甘くはない。
フランの出汁に使われた白菜ははっきりと単体を感じとれないように馴染んでいて、甘みとうまみを補っていたかと推察。
白菜の糠漬けはあくまで穏やかに塩味・酸味を補いつつ、たぶん柚子?が加えられていることでより違和感がなくフランにマッチ。
あくまで個人的な好みで卵の強い味があまり得意ではないため、楽しみきれませんでした。
お茶は、その香りが特徴的で、
炭・玄米の香ばしさとお茶のフルーティさから炭焼きコーヒーが想起され、バニラの甘い香りが混ざると焼きチョコのようにも感じる。
味わいはまず薄く甘みがきて、遅れて酸味感が感じられ
苦い甘みが残る。
デセールと合わせると、プリンにカラメルのようなマッチングなのかなと。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味⑧』
・アマゾンカカオをすってかけて
・ディル 国産のスミレ
・おがくずの香りを移しつつ土器で炊いた月光百合根
・月光のクリーム
・発酵させた林檎のエキスと3年熟成カカオパルプを軽いムースにしたてて
・下には、カカオハスクのジュレ
『お茶⑧』
山本甚太郎様の焙じ碾茶+トンカ豆・ブラジルナッツの水出し
●(記憶・メモが曖昧なためさらっと。全く味覚力・記憶力不足です)
アマゾンカカオは、ブルーベリーのような香り・酸味と軽い苦味。
月光はクセがなさすぎてマイルドな甘み?
林檎とお酒の蒸発感が鼻を抜けて、
カカオハスクのジュレが水分と少し香ばしいようなニュアンスで落ち着きをもたせて。
ディルはあの特徴的な青さがアクセントになる。
なぜかスミレをスフレと一緒にぼーっと食してしまい、味わい尽くすのを忘れてしまいました。無念。
お茶は、
香りがナッティでありながらも、ナッツというより豆のような香りも合わさっており、
そこにトンカの甘い香りがわずかに遅れて重なり、
香りに負けない、香ばしさと自然な甘み・うま味が感じられる。
ー
※月光百合根:
日本では北海道幕別町忠類地区と帯広市川西地区で主に栽培されている百合根の希少品種。
病期に弱く栽培が難しいため栽培数が少ない。
一般的な百合根と比べ、一つ一つの鱗片が大きくて厚く、圧倒的な糖度の高さが特徴とされる。
※カカオパルプ・カカオハスク:
カカオ豆とは、カカオの木に生る「カカオポッド」と呼ばれるラグビーボール型の実のその中に含まれる種子である。
カカオポッドは厚さ1cmの硬い殻があり、その中には、30-40粒程のカカオ豆と、それを覆うようにパルプと呼ばれる白くヌルヌルとした甘酸っぱい果肉がある。
↓
収穫したカカオポッドを割って、パルプごとカカオ豆を取り出して、その後発酵をおこなう。
パルプには豊富な水分と糖類があるため発酵の促進に適しているため、発酵の過程で消費されて消失する。
発酵したカカオ豆は、色味がチョコレート色に変化し独特の香りを放つようになる。
↓
その後色々な過程を踏んで、加工工場に運ばれて、カカオ豆はローストされて様々な香気・香味成分が作り出される。
↓
その後、カカオ豆を粗く均等に砕いて、カカオ豆の外皮(=種皮=ハスク=シェルとも言う)が、胚乳である「カカオニブ」から分離される。
そのままではハスクとカカオニブが混在したままなので、ふるいによる選別と、ウィノワによるウィナーイング(風選)と呼ばれる方法で、カカオニブのみを取り出す。(細かいハスクの除去のために手作業も必要となる)
↓
その後、磨砕、混合、微細化、精錬(コンチング)、調温(テンパリング)を経てチョコレートとなる。
※トンカ豆:
中南米原産のマメ科植物「クマル」の種子。
芳香性の高い香り成分の「クマリン」を含み、上品な杏仁や桜の葉のような甘い香りを持つため香水にも使われる。また、クマリンはバニラの芳香成分『バニリン』とも構造が似ておりバニラの代用品としても使われる。
※ブラジルナッツ:
アマゾン川流域周辺の熱帯雨林原産の高木。
大きさはアーモンドの2倍程、1粒の7割近く脂質が含まれているためマカデミアナッツのような食感が特徴的。
独特なナッツの味わい。
健康に良い抗酸化作用をもつセレンという成分が1粒 (4g) で75µgほど含まれる。
セレンの推奨摂取量から考えると、多量の摂取には注意が必要とされる。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
『茶室に移動して』
・奥富園様の抹茶
・生チョコ
(アマゾンカカオ50%のタブレットと、生クリーム・サワークリーム、ヴィチペリフェリペッパー
など)
●
生チョコは、そのなめらかな口どけとともに、しっかりした甘みと程よい酸味が広がって
余韻は至極さわやかで温かい甘みのある香ばしさで、嫌なミルク感が残らない。
カカオ(+サワークリーム)由来のベリーヨーグルト感が感じられる。
そんなチョコのうま味と甘みとヨーグルト感(発酵感・酸味感)と苦味のような香ばしさが、抹茶の濃いうま味・厳かな甘みと苦味と青み・どこか爽やかに感じるヨーグルトのようなニュアンスとリンクしているように感じました。
抹茶とチョコという最強タッグを改めて思い知らされて、しばし放心。
田中シェフからのバレンタインはまだ続き、こだわりの詰まったお茶をつかったお土産もございました。
ー
※ヴィチペリフェリペッパー:
マダガスカルの森林で発見されたスパイス。
ウッディーでフローラル、そして新鮮な柑橘類のノートをもつ
『汲み出し』 菓:大福(果汁で炊いた求肥の中に、湘南ゴールドをまるごと使い切った餡) 茶:2024 全国茶品評会 一等四席茶 煎茶 栗崎克之
『汲み出し』 菓:大福(果汁で炊いた求肥の中に、湘南ゴールドをまるごと使い切った餡) 茶:2024 全国茶品評会 一等四席茶 煎茶 栗崎克之
『汲み出し』 菓:大福(果汁で炊いた求肥の中に、湘南ゴールドをまるごと使い切った餡) 茶:2024 全国茶品評会 一等四席茶 煎茶 栗崎克之
『甘味①』 ・高梨茶園様の香駿烏龍茶のアイス ・サワーポメロ ・ジャスミン茶と金木犀を発酵させたソース ・サワーポメロの皮を煮出したソース 『茶①』 雲ノ南農園様の釜炒り茶+春菊・菊 (手摘み)
『甘味①』 ・高梨茶園様の香駿烏龍茶のアイス ・サワーポメロ ・ジャスミン茶と金木犀を発酵させたソース ・サワーポメロの皮を煮出したソース 『茶①』 雲ノ南農園様の釜炒り茶+春菊・菊 (手摘み)
『甘味①』 ・高梨茶園様の香駿烏龍茶のアイス ・サワーポメロ ・ジャスミン茶と金木犀を発酵させたソース ・サワーポメロの皮を煮出したソース 『茶①』 雲ノ南農園様の釜炒り茶+春菊・菊 (手摘み)
『甘味②』 羊羹 コンターレという金柑(フレッシュ)の層 阿波すず香とアニスヒソップの層 乳酸発酵させたコンターレの層 『お茶②』 阿波晩茶+黒文字・ローズマリー
『甘味②』 羊羹 コンターレという金柑(フレッシュ)の層 阿波すず香とアニスヒソップの層 乳酸発酵させたコンターレの層 『お茶②』 阿波晩茶+黒文字・ローズマリー
『甘味②』 羊羹 コンターレという金柑(フレッシュ)の層 阿波すず香とアニスヒソップの層 乳酸発酵させたコンターレの層 『お茶②』 阿波晩茶+黒文字・ローズマリー
『甘味②』 羊羹 コンターレという金柑(フレッシュ)の層 阿波すず香とアニスヒソップの層 乳酸発酵させたコンターレの層 『お茶②』 阿波晩茶+黒文字・ローズマリー
『甘味③』 『お茶③』
『甘味③』 ・辛味のあるオリーブオイル ・はちみつで発酵させたシルバーベルの果肉 ・複雑な発酵エキスのソース(詳細本文) ・鈴木牧場様の十勝オーガニック牛乳と発酵シルバーベルのブランマンジェ
『お茶③』 吉田茶園様の茎焙じ茶+発酵させたカリン果肉とラベンダーで水出し ホーリーバジルの蒸留水をグラス内面に吹き付けてから提供
『甘味④』 ・宮古島の無花果のシンプルなフリット ・ソースは凝ったものを(詳細は本文) 『お茶④』 マルヒ製茶様の香駿和紅茶 (2023/01仕入れなので二年熟成)
『甘味④』 ・宮古島の無花果のシンプルなフリット ・ソースは凝ったものを(詳細は本文) 『お茶④』 マルヒ製茶様の香駿和紅茶 (2023/01仕入れなので二年熟成)
『甘味④』 ・宮古島の無花果のシンプルなフリット ・ソースは凝ったものを(詳細は本文) 『お茶④』 マルヒ製茶様の香駿和紅茶 (2023/01仕入れなので二年熟成)
『甘味⑤』(椀物なのでペアリングはなし) お椀仕立て 花紫蘇 干し柿 三宝柑?の砂じょう 炭火焼きにした三宝柑の葛餅 東坂茶園様の越冬焙じ茶を煮出して
『甘味⑤』(椀物なのでペアリングはなし) お椀仕立て 花紫蘇 干し柿 三宝柑?の砂じょう 炭火焼きにした三宝柑の葛餅 東坂茶園様の越冬焙じ茶を煮出して
『甘味⑥』 『お茶⑥』
『甘味⑥』 ・酵素シロップ?をスプレー ・とちあいかで発酵させた薔薇のグラニテ ・発酵させたバラの花弁 ・梅の発酵酵素シロップでコンポートしたとちあいか
『お茶⑥』 勝間田開発農協様の花ここち(萎凋緑茶)+とちあいか+金柑ライムのコンブチャ
『甘味⑦』 ・白菜の糠漬け ・平飼い有精卵をつかったフラン 中には、熟成栗がごろごろ 出汁は、白菜と栗の皮 餡掛けは、6年熟成のデザートワインと蜜柑皮と生姜からつくって
『お茶⑦』写真失念。。。 和田長治商店様の炭火茶+玄米・バニラ
『甘味⑧』 ・アマゾンカカオをすりかけて ・ディル スミレ ・土器で炊いた月光百合根 ・月光のクリーム ・発酵させた林檎のエキスと3年熟成カカオパルプの軽いムース ・下には、カカオハスクのジュレ
『甘味⑧』 ・アマゾンカカオをすりかけて ・ディル スミレ ・土器で炊いた月光百合根 ・月光のクリーム ・発酵させた林檎のエキスと3年熟成カカオパルプの軽いムース ・下には、カカオハスクのジュレ
『お茶⑧』 山本甚太郎様の焙じ碾茶+トンカ豆・ブラジルナッツの水出し
『茶室に移動して』 ・奥富園様の抹茶 ・生チョコ (アマゾンカカオ50%のタブレットと、生クリーム・サワークリーム、ヴィチペリフェリペッパー など)
2025/02/20 更新
料理長は、田中俊大様。
「カルムエラン」「メゾン・ダーニ」「ジャニス・ウォン」を経て、24歳頃から独学でハーブやスパイスついて学び、
2018年、ニューヨークに本店を構えるミシュラン掲載店のモダンフレンチが東京・六本木ヒルズにオープンした「ジャン・ジョルジュ東京」のシェフパティシエに就任。
第1回「チョコレートイノベーションコンテスト2019」にルビーチョコレートと日本茶を使ったデセールを出品し、「ドリンク・デザート部門」第2位&「イノベーション フォトグラフィー部門」第1位をダブル受賞。
世田谷区「ラトリエ ア マ ファソン」でシェフパティシエを務め、
2022年3月、独立して「VERT」を開業。
2024年11月、神楽坂内で店舗移転。
日本各地の茶農家を頻繁に訪れて交流を重ねつつ、“日本茶を織り交ぜたデザートコース”という独自スタイルの業態で注目を集めている。
(https://eflab.jp/techniques/vert-rose/より引用させて頂きました)
ーーー
完全予約制。
「茶湊流水」と銘打たれたコースは、
14:00 /19:00 スタート
通常営業以外にも、製茶園様をお招きして行う朝茶会や夜茶会、特別コラボ営業なども不定期にございます。
ドアオープンは10分前。
一斉スタートとなります。
ーーー
移転前を含めると13回目の訪問。
フルーツをメインに様々な日本の食材を自在に扱い・組み合わせ、
発酵を活かして甘み・酸味・うま味・香りの調整する。
日本茶(+α)によるドリンクの味わいが恐ろしいほど深く、合わせの妙に唸るばかり。
いつもお料理・お茶ごとに詳しく説明を頂けます。
新しい食材・仕立て・合わせとの出会いに驚き・楽しみが尽きません。
そんなご説明を聞いていても、いざ実食すると全てを感じきれない緻密な壮大さがございます。
大した味覚は持ち合わせておりませんので、烏滸がましい限りではありますが精進せねばと思わされます。
今回のコースは、まさに新緑。
土や草や森、これから青々しさが増していく自然を体感させられる食体験に感動致しました(山椒的な味わいが三品あるのはご愛嬌)。
出たばかりの新茶が頂けるだけでなく、コース最初と最後で飲み比べ的な形になるのも嬉しい限り。
お料理は、これはデザートなのか?それともなんなのか?そんなことを考えるのも馬鹿らしくなるような、田中シェフのセンスが光る品々ばかり。眩しいです。最近はさらに自由で枠組みのないようなお品が増えてきていると感じます。ただ凝っているのではなく、食べると自然に伝わってくる美味しさがございます。
もちろん甘みのあるお品はありますが、甘いものが得意ではない方でもコースを楽しみ切れると思います。
コースはデセール・ペアリングティー込みのコースで23000円(税込)
食事に集中できる雰囲気抜群カウンターで、こだわり抜いた食材に丁寧な調理を拝見し、興味深いお話しを伺いながら、日本茶を合わせて頂くコースですので適正なお値段かと。
ーーー
お料理の構成は写真にも
感想や食材・お茶解説は本文で
(※印の内容は自分調べですので誤りを含む可能性がございます)
ーーー
『汲み出し』
茶:大山製茶園様のさえみどりの新茶
菓:チョコレート大福
求肥は天神麦茶を加えて。
中には、
・アマゾンカカオのガナッシュ(クリームと昆布水で乳化させたもの)
・バーベナペッパー
・紀州原農園様の甘夏を発酵させ煮詰めたジャム
●
お茶は、さえみどりらしい美しい新緑色の水色。
香りは、深蒸しながらもフレッシュ感がありフルーティーな青さ。
味わいは、メロンのような青み・甘さ、そして適度なうま味。そこに、抹茶アイスのような乳香感のあるクリーミーな苦味が重なる。
緑茶の芯がありながら、フルーティーでクリーミー。台湾の高山烏龍茶を想起させられる味わいに只々驚きました。大好きなタイプです。
定番の大福は、持ち上げると憎らしいほどに柔らかにたわむ。
チョコの香ばしさのある暖かい甘みは少しで、ベリー感のある酸味が伸びる。
発酵甘夏ジャムによって、柑橘の甘酸っぱさが加わり、酸味が加速されつつキレが良くなる。
バーベナペッパーはまるで木の芽・山椒のような香り。柑橘である甘夏との相性は言わずもがな、アマゾンカカオのフルーティーさともマッチ。
天神麦茶が使われている求肥は、ゆったり解けてたおやかな甘味で余韻を伸ばしていく。
麦茶単体の味わいは私の舌では感じ取り切れず。アマゾンカカオはナッティーさ<<フルーティさメインな気がするので、麦茶の要素がナッティーな香ばしさを後押ししているものと思われます。
いわゆるチョコ大福ではありません。滑らかなガナッシュですが、クリームの野暮ったさは皆無。
カカオのフルーティーな酸味を引き出し、山椒を思わせるバーベナペッパーで今月のテーマであろう新茶・新緑のテーマを初手で伝える。
昆布水でうまみを整えてお茶との親和性も高めています。
ー
※さえみどり:
「やぶきた」と「あさつゆ」を掛け合わせて誕生した品種。
葉の緑色が非常に鮮やかで、水色も同様に非常に映える。味も「あさつゆ」譲りの甘み・うま味が強く、渋味が少なく口当たりまろやか。早生品種であり、初摘み新茶としての付加価値が出しやすい。
※甘夏:
正式には、カワノナツダイダイ(川野夏橙)。
ミカン科ミカン属の柑橘類の一つ。1935年に大分県津久見市上青江の果樹園で川野豊によって選抜・育成された、ナツミカンの枝変わり種。
ほのかな苦味とスッキリした甘み、酸味のある昔ながらの味わい。
※天神麦茶:
愛媛県産「はだか麦」を昔ながらの手作業で焙煎し、粉末ではなく丸粒の形状のまま用いた麦茶。
まろやかでやさしい甘みと、ほんのりと上品な香ばしさが特徴。
※バーベナペッパー:
クスノキ科ハマビワ属の実で、レモンに似た香りで知られるクマツヅラ科のハーブ「レモンバーベナ」とそっくりの香りから名づけられたスパイス。ベトナムやインドネシア等の700メートル以上の高地で収穫され、台湾胡椒や馬告(マーガオ)とも呼ばれる。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味①』
・山科茶舗様の栗田早生のアイス
アイスの下には、
・春キャベツをトレハロースで発酵させたもの
・発酵トマトのコンソメと少量の味醂を合わせたソース
・イタリアンパセリのオイル
・柑橘の砂じょう?
『茶①』
・お茶の富澤。様のおくみどり+アスパラガス+鰹+松新芽
●
栗田早生のアイスは、程よい甘味のなかに穀物感を感じる風味が面白いが特徴的。
その下に忍んだキャベツの香りと発酵の香りが、畑や土感を感じさせてアイスの穀物感とリンク。
キャベツは少し酸味があるが、トマトコンソメ・味醂でうまみと甘味が足されることで、アイスの甘味とバランスをとっている。
トマトとイタリアンパセリの青みが、アイスやドリンクとリンクする。
説明にはありませんでしたが柑橘の砂じょう?も入っていたと記憶。その食感と軽い酸味感が綺麗なフレッシュ感を持たせる。
デザートという枠組みはとっくに超えてますね。
ドリンクは、アスパラの青さと土の香りがかぐわしい。控えめに松新芽の清涼感のある森の香りも。
カツオ節はアスパラの風味と良くリンクするので出汁感出さずに旨味を補強。
後半にお茶の苦味がしっかり伸びてくるので、味の移り変わりがハッキリ感じられる一杯。
デザートの大地っぽさとうま味をきっちり引き継ぎつつ、お茶でしめる。そんなペアリングでしょうか。
ー
※栗田早生:
鹿児島県種子島で生産され、日本で最も早く収穫される新茶の一つとして知られる。
栗田茂三郎氏が静岡在来種を取り寄せ播種した実生茶園から、時代を経て選抜・育成された品種。
シェフ曰く鰹節的ニュアンスがあるそう。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味②』
・羊羹
1層:淡雪(村田農園様)
2層:そら豆(イチローファーム様。オーブンで鞘ごとロースト、鞘と豆で出汁をとり塩を僅かに加えて)
3層:発酵とちおとめと白餡
・別添えの、ワタとそら豆出汁のソース
『お茶②』
・マルヒ製茶様の香駿和紅茶(二年熟成)+トンカ豆+桃の花(Herb Stand様)+茗荷
●
羊羹は、食べる前から、淡雪の強烈な香り。
口含むと淡雪の果汁味あるフレッシュな明るい甘さと、白餡で伸ばされた発酵とちおとめの濃いめの甘味が一気に広がる。
噛み締めていくと苺の余韻の中に空豆の味が控えめかつ違和感なく混ざり合う。
ソース少し付けただけで、空豆感が一気にup。風味前半から混ざりあうように味わえる。
違和感がないのが不思議です。個人的には苺とピスタチオといったイメージ。苺にも野菜のような草っぽいグリーンさがあるのでマッチするのでしょうか。鞘ごと食べられるというクオリティの空豆と調理あってこそだと思います。
ドリンクは、紅茶の味わいが先行。いわゆるインド紅茶のような温かい渋甘い味や、和紅茶らしい蜜煮芋のような味ではなく、中国/台湾烏龍茶のようなフラワリーな香りと軽めの甘味が魅力的◎。
そこから、シームレスにクマリンの優雅な香りが伸びてくるが、茗荷の辛みがベースで鳴っているのでアロマ感押さえられて嫌味がない。
説明上は空豆フォーカスのペアリングとのことでしたが、個人的には苺の香りが華やかに伸びるような印象を受けました。もっと空豆ソース多めにした後に飲んで感じてみるべきだったと反省。
ー
※淡雪:
2013年に鹿児島県志布志市の山下徹氏が品種登録。
「さがほのか」の突然変異とされている。
ほのかな桜色で、酸味が少なく、やさしい香りと甘みが特徴。
※香駿:
「くらさわ」と「かなやみどり」を掛け合わせて誕生した品種。
蘭のような特徴的な香りを持ち紅茶にも向いている。
※トンカ豆:
マメ科の植物の種子で、主に南米の熱帯地域、特にベネズエラやブラジルに自生。
特徴的なのはその強い芳香で、甘くバニラに似た香りを持ちながらも、アーモンド、クローバー、シナモン、桜の葉、キャラメル、タバコなどを思わせる複雑な香気成分を含む。この香りの主成分はクマリンという芳香族化合物で、クマリン自体は天然にもさまざまな植物に含まれているが、トンカ豆には非常に高濃度に含まれており、乾燥したトンカ豆の表面には結晶化したクマリンが現れることもある。
フランス料理や製菓、また香水などでも使用されることがある。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味③』
・十勝オーガニック牛乳のブラマンジェ(竜眼の種の香りをつけて)
上には
・龍眼
・弥生姫とルージュロワイヤル(バラ)の発酵ソース
・オリーブオイル
・提供直前にバラのスプレーを上から吹きかけて。
(弥生姫は村田農園様、ルージュロワイヤルはE.F lab様、オリーブオイルはVERDE様のもの)
『お茶③』
・駄農園様のおくみどりの白茶(2年熟成)+中川誠盛堂様のジャスミン茶+生姜と清見オレンジの皮
●
薔薇の香りに誘われてまず一口。
ブランマンジェは口に含むとそこに存在するのに舌の上に迎えに行くと既にいない。そんな手が届きそうで届かない食感。トップノートに龍眼の香りが少し乗ることでピュアな牛乳感が強調されている。
ソースは苺とバラの黄金コンビが甘く華やかで、それでいてタンニンのような落ち着き。オリーブオイルが合わさると、少しの辛みがマッチしてキレが生まれ風味の幅が広がる。
龍眼はライチっぽい詰まった感触。甘味が非常に濃くそこに表現しがたいクセが香る。バラとの相性が◎。
ドリンクは、ジャスミンの強ーい香りがやや支配的。
ベースの白茶はクセがなく緩かな甘味。日干しの藁のようなひねた感じはなし(もしくはジャスミンでマスクされたのか)。清美オレンジの甘い柑橘の香りが複雑さを与える。
生姜と清美オレンジを感じ取り切れない味覚を悔やみます。もっと集中しなくては。
苺と薔薇とジャスミンはずるいですね。美味しい組み合わせすぎます。
ー
※龍眼:
ムクロジ科リュウガン属に属する熱帯果樹であり、ライチ(レイシ)と近縁の果物。
原産地は中国南部から東南アジアで、果実は直径2~3 cmの球形。
黄褐色の果皮に覆われ果肉は乳白色半透明でゼラチン質に富む。中心に黒く光沢のある種子を一つ含むその見た目から「龍眼(龍の眼)」の名がつけられたとされる。
フレッシュでは甘味が強く、酸味はほとんどなく、口当たりまろやか。ライチに似るが、独特のコクと深みがある。
乾燥させると甘味が凝縮され、黒糖や棗(ナツメ)に近い濃厚な風味となる。
※弥生姫:
とねほっぺ(群馬県育成品種)ととちおとめ(栃木県育成品種)を交配させた系統品種に、とねほっぺを交配させた品種で、2005年に品種登録。
いちごの品質が落ちやすくなると言われる3月(弥生)以降も色が黒ずむことなく、美味しさもそのままなことから、名付けられた。大粒で甘み・酸味のバランスが良いのに加え、果皮がしっかりしていて傷がつきにくいのも大きな特徴。
※ルージュロワイヤル:
クリムゾンレッドの花色、クォーターロゼットの大輪花を咲かせるバラ。
苦さやエグさが少なくフルーツのような仄かな甘みが感じられるのが特徴。
※白茶:
白茶は中国で最も古くから作られているお茶のひとつで、2000年以上の歴史を持つ。もともとは茶農家が自家用に作っていたもので、摘んだ茶葉を日陰で干しただけの、非常にシンプルな製法が原型。
「摘採 → 萎凋(茶葉をしおれさせる)→ 乾燥」という3工程だけで作られ、熱源を使って発酵を止める「殺青」や茶葉を揉む「揉捻」は行わない。
製造の要となるのが萎凋。茶葉を薄く広げて、日光や風、湿度、温度などを細かく調整しながら水分を抜いていく。これにより酵素が働き、香りや甘みが引き出される。茶葉に含まれる酵素は乾燥後も一部残るため、時間とともに熟成が進み、寝かせることで青さが抜けてまろやかさや甘みが増す。「一年茶、三年薬、七年宝」とも言われ、長期熟成された(というか耐えうる)白茶は高く評価される。
シンプルな工程であるがゆえに、茶葉の質と製茶師の技術がそのまま味に反映される。
※おくみどり:
静岡県の金谷で、やぶきたと在来種を掛け合わせて誕生した品種。
さわやかでクセのない風味を持つ。やぶきたよりも萌芽がやや遅め。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味④』(椀物なのでペアリングはなし)
スープは、
・乾燥ホワイトマッシュルームと釜炒り焙じ茶と胡桃樹液をベースに。
・塩で2週間発酵させたブラウンマッシュルームのエキスを煮詰めたもので味わいを整えて。
・アクセントに、茶の実油を加えて。
具は、
・牛蒡(当尾ごぼうと仰っていた気がしますが、時期的には過ぎてる?)
・発酵させたブラウンマッシュルーム
・フレッシュのホワイトマッシュルーム
・胡桃キャラメリゼ
・底に、セミノールの果汁を煮詰めたコンサルトレ
●
絶妙に各パーツが良い仕事をしすぎです。
天才すぎて言語化不能ですが頑張っていきましょう。
吸い地はマッシュルームの発酵で加速された香ばしい土っぽい香りが、ほうじ茶や胡桃と上手くリンク。しっかりとしたうま味と香り・適度な塩味に対して、既に滲みだしたセミノールコンサントレの酸味が非常に良い働きぶり。疲れの来ない綺麗な食べ応えに仕立てている。吸い口のようなイメージでしょうか。
牛蒡は硬く詰まった線維から牛蒡エキスがジューシーに溢れて。その塩味が味の輪郭を引きたてて、吸い地に合わさり風味が爆発する。
胡桃のキャラメリゼも全体の味わいの中で不可欠な存在。
キャラメル感や甘みが強いわけではないのですが、これがあるだけで味が明確にまとまる感じがします。胡桃樹液との親和性なのか。天才すぎて理解が追いつきません。
椀種のマッシュルームも、フレッシュホワイトは密なスポンジ感のある食感で、発酵ブラウンはぬめりのある食感。味わいも軽めと重めで、それぞれ対比が面白い。
最後は底に忍んだコンサントレの、ぎゅっと濃縮された酸味な味わい。爽やかな大団円。
これぞVERT。これぞ田中シェフという逸品にオーバーヒートしてしまいました。
ー
※茶の実油:
チャノキの実の中にある、小さな種から搾ったティーシードオイル。
中国や台湾などでは、「茶油」と呼ばれ古くから親しまれている。
チャノキは白い花が咲き、実がなる。熟すと実が割れ、中から3つの種が現れる。その種子からとった油。
香りは静かなグリーンノートを帯びたニュアンス(お茶らしさはあまりない)。味は雑味がほとんどなく淡白。
※マッシュルーム:
マッシュルームの「ブラウン」と「ホワイト」は、どちらも同じ品種である Agaricus bisporus(ツクリタケ)。色素を制御する遺伝子の違いにより分かれ変種。
ブラウンのほうが抗酸化物質(特にポリフェノールなど)が多く含まれている。また、グアニル酸などのうま味成分が豊富で、ナッツのような香ばしさやコクがある。加熱によってより深い風味を引き出しやすい。対してホワイトは味があっさりしており、癖が少なく、やわらかく滑らかで、サラダなど生食にも向いている。
※セミノール:
ミカン科ミカン属タンゼロ類に分類される柑橘類。
アメリカの農務省試験場で、ダンカングレープフルーツとダンシータンゼリンの2種類の柑橘類を交配させ育成した品種。1955年に日本に導入され、主に和歌山県や大分県などで栽培。
果汁がとても豊富で内皮も薄く柔らかい。甘みと酸味のバランスがとれた濃厚な味わい。
3月下旬から4月上旬に収穫されるが、そのままだと酸味が強いので一旦蔵などで保存し、酸味が抜けてから出荷される。
※コンサントレ:
果汁やフルーツピューレを濃縮したもの。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味⑤』
・4Lサイズの枇杷のフリット。中に発酵枇杷のピューレを詰めて。
・上には、花山椒ペーストを和えたアメリカンチェリー。
(山梨の天然の花山椒を、枇杷の皮を煮出し水でペーストにしたもの)
・ソースは、種を煮出したもの。山椒オイルを垂らして。
(皇室献上品になる琵琶の初物。驚きの4Lサイズですがこれでも裏年。去年は5Lもあったそう。)
(発酵に使う枇杷は同じものだが傷がついてしまったB級品などを用いて)
『お茶⑤』
・吉田茶園様のやぶきた和紅茶と+吉田茶園様のお母さまが育てたカモミール+枇杷葉っぱのコンブチャ
●
どどんと鎮座する枇杷フリットをカットしつつ頂く。
まずは中に詰まった発酵ピュレがねっとりと甘く感じられて。そこから、フリットされた枇杷。滑らかで穏やかな繊維質。噛むたびにじゅんわりと豊潤な水分。それに負けない濃厚な味わいに圧倒される。
ソースは枇杷の上澄みを少し甘くしたような風味。
どうしても少しの油感が気になりますが、アメリカンチェリーのビビッドな酸味と、山椒オイル・花山椒ペーストの濃い香りでカバー。
アメチェと枇杷が異常に合いますね。味が似てるわけでないのに風味が広がりをみせるような感覚。
個人的には山椒無しバージョンを食べてみたい気がしました。どうしてもわずかな油感が気になるので、土器で炊いた枇杷とかも気になります。
ドリンクは、発酵浅めなのか甘味がしっかり残っているタイプ。
カモミール由来で林檎ジュースのよう。そこに、お茶由来の苦味・渋味のような芯がしっかり感じられる。
枇杷感までは感じ取りきれず。
ピュレの甘味を引き起こすような甘味で、枇杷の印象を引き延ばし、異なる果実感のある香りで変化と広がりを与える。
ー
※枇杷:
バラ科ビワ属の常緑高木。日本や中国をはじめとするアジアの温暖地域で古くから栽培されている果物。
果実は一般に初夏に出回り、楕円形または卵形で、直径3〜5cmほど。果皮は薄く、熟すと橙黄色から濃いオレンジ色になり、表面に細かな産毛がある。
果肉はやわらかくジューシーで、独特の芳香とともに、やさしい甘みとわずかな酸味をもつ。果実の中心には大きくてつやのある褐色の種子が2〜5個ほどある。果肉の厚さや糖度、酸度のバランスは品種によって異なり、代表的な品種には「田中」「長崎早生」「茂木」などがある。
※やぶきた:
茶葉生産量の75%をしめる。
芽の出が早く、生育が旺盛で、耐寒性も比較的高いため、多くの産地で安定した収量が得られる。
香気は清涼で爽やか、うま味と渋味のバランスが良い。
※カモミール:
キク科シカギク属。
名前は、「大地のリンゴ」を意味するギリシャ語の「カマイメロン」に由来する。
これは、カモミールの花が青りんごのような香りをもつからとされる。
※コンブチャ:
糖分を含む液体に、スコビーと呼ばれる酵母菌と酢酸菌の菌塊のようなものをいれると、その菌たちが糖分を使用して酢酸や香りの成分を生み出す=発酵が起きる。
発酵を進めすぎると、酸味と香りの成分は増えるが糖分が消費されすぎて甘みのない酸っぱいお酢になってしまう。
発酵具合を日々確かめて、意図した味わいになったら発酵を止める必要がある。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味⑥』
・宮古島の赤肉メロンとブルーチーズのグラニテ
・自家製ラベンダーヨーグルトのムースアイス
・熊本県の青肉メロン
・サクラヒバのジュレ(=ジュニパーベリーと説明されていました)
・ディルの花
・底に、こぶしの花の香りを煮出して作ったソース
・上から、こぶしの花の香りを煮出して作ったスプレー
『お茶⑥』
・東坂茶園様の青心烏龍茶(二年熟成)
●(しばらく時間が空いてから記憶をたどったのですが、色気のある美味しさだったなと曖昧になってしまいました。読み流してください。もっと真剣に食べて刻み込まないとだめですね。)
こぶしの花の香りはお茶と一致するような香り。
チーズの熟した香りとウォッシュのわずかにひねたクセが、赤肉メロンのムスキーな香りのトーンに一致する。
乱暴にいうと、熟成生ハムメロン的な感じでしょうか。
ヨーグルトがいることでチーズが浮くことなく全体が丸くまとめる。
青肉メロンのフレッシュな甘味と凛とした青さが全体の雰囲気を壊さずに、少し除湿して爽やかに仕立てる。
ジュニパーベリー?のジュレは口が冷えたのか、あまり風味感じ取り切れなかった気がします。
田中シェフが仰っていた雨の次の日の曇りのような空気感を感じるデザートでした。色気むんむんです。
ドリンクは、衝撃的なシングルオリジンティー。
恐ろしい程のジャスミンの香り。いわゆるジャスミンティーのように飲んですぐ風味全体を支配する感じではなく、口に含んで飲み込もうかなというくらいでむくむくっと香りが立ち上がる。そして、飲み進めるほどに香りが溜まっていく。茶水にしっかりと香りが閉じ込められているような芳香。
味わいは、日本緑茶らしい苦味の芯をのこして、甘味とうまみも適度に感じられる。
この味わいでありながら、鮮烈な香りが感じられてそれが上滑りしないというのは感動ものです。
こぶしの花の香り、メロンとチーズとも相性◎。
ー
※コブシ:
モクレン科モクレン属の落葉高木で、日本をはじめとした東アジアに自生する樹木。
早春、葉が展開する前に白く大きな花を咲かせるのが特徴で、その姿から「春を告げる花」として古くから親しまれている。
香りについては、甘さの中に軽やかな柑橘様のトーンがあり、ややスパイシーな清涼感が感じられる。
花蕾は、「辛夷(しんい)」として漢方に用いられる。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『甘味⑦』
・上下にもみをセットして土器で蒸したパインは、バーナーで炙ったダンコウバイの枝に刺して、またバーナーで炙ってから提供
・大葉のソルベ(下に、トウヒとピスタチオのペースト)
・ソースは、ブルーアイスと文旦の皮を煮出したエキスを合わせたもの。
『お茶⑦』
・高梨茶園様のほくめい+クレソン+黒文字のコンブチャ
ほくめいの茶畑に行ったときにパインのような香りを感じたことが、VERTのデセールの原点でもあるそう。
高梨茶園様のお茶にはクレソンが合うとのこと。裏山に黒文字が生えていることもあって、黒文字もブレンドしてコンブチャに。
●
土器で蒸されたパインはまずその食感が白眉。
フレッシュさながらの線維感・水分・硬さを残しながらも、するっと歯切れ良く、それでいて甘味と酸味両方の味わいが濃縮されている。
炙ることでキャラメリゼのような香りも重なっており、一口ごとに風味が押し寄せる。
大葉ソルベは、浮ついたハーバルさではなく、緑感強めで少しの苦エグミさを秘めていて、温かいパインとの対比で心地よく香りが引き立つ。
トウヒとピスタチオのペーストは佃煮みたいな塩味で大葉感を引き立てる。
ソースがこれまた絶妙。ブルーアイスの晴れていて涼やかな森林の清涼感に、文旦皮の僅かな柑橘感と苦味感が寸分違わずにマッチ。
田中シェフが仰っていたとおり、晴れた日の森のような味わい。
少し苔むした大地から木々が伸び空に太陽がある、恥ずかしながらそんな印象を受けた一皿でした。
以前の苺の時も感じましたが、田中シェフの土器調理は凄まじいですね。これからもどんな食材が調理されていくのか楽しみで仕方ありません。
コンブチャは、発酵浅めなのかやや甘みを残したもの。
個人的にはパインというより、甘味が濃くなった柑橘果汁のイメージが浮かびました。甘みや酸味が際立ちすぎずにうま味や苦味も少しあるのでバランスが良く、ありそうでない果汁感。
黒文字由来の、ラムネやソーダの後味を思い出すような清涼感が重なる。
こちらも、太陽と森のようなドリンクですね。パインの甘さとアイス・ソースの新緑感のどちらも受け取り引き延ばします。甘めですが、コンブチャの甘味だとキレが良い気がします。
クレソンは青み・辛み・苦味?なのでしょうか。どんな感じかハッキリ取り切れず。勉強して出直さないとです。
ー
※ダンコウバイ(檀香梅):
クスノキ科クロモジ属に分類される落葉低木から小高木。
"檀香"は香道に使われる「白檀」が由来。
※ブルーアイス:
ひとつの明確な植物や精油だけに限定された正式な分類名ではなく、いくつかの異なる植物や商品に使われている通称的な名前。
精油の分野で代表的なのはオーストラリア産の ブルーアイス・サイプレスを用いたものだそう。
国内であれば、ブルーアイス・アリゾナサイプレスが多いよう。
アメリカ南西部原産のアリゾナサイプレスの園芸品種で、銀青色の葉が美しく、樹形も整っているためガーデニングやクリスマスツリーにも使われる。
松や杉に近い爽快感がありながら、グリーンというよりはグレーやシルバーを思わせるような冷涼感が強く、ほのかにスモーキーさが静謐なお香を思わせるような香り。
※ほくめい:
埼玉県で、「さやまみどり」×「やぶきた自然実生 5507」を掛け合わせて誕生した品種。
特有の香りと爽快な口当たりが特徴。お茶の北限に近い埼玉で生まれた茗(めい:お茶の旧称)ということからこの名がついた。
※黒文字:(最近色々なところでお会いする食材ですので詳しめに)
クスノキ科クロモジ属の落葉低木。
トップノートは、リナロールと1,8-シネオールによる爽やかな芳香。リナロールはフローラルでやや甘い香りを持ち、ラベンダーにも多く含まれる成分。1,8-シネオールはユーカリのような清涼感をもたらし、鼻に抜けるようなすっきりとした感覚がある。これにより、黒文字の第一印象は「和製シトラス系」とも言えるような、明るくクリアな香りになる。
ミドルノートが、サビネン(sabinene)やα-ピネン(alpha-pinene)などによるウッディかつスパイシーな香調。サビネンはブラックペッパーにも含まれる成分で、やや乾いたスパイス感を演出する。α-ピネンは松葉や森林を思わせる香りを持ち、深い森の中にいるような感覚を呼び起こす。これらが合わさることで、黒文字は単なる爽やかさではなく、しっかりとした木質系の芯を感じさせる香りへと展開していく。
さらにベースノートには、微量ながらベンジルアルコール(benzyl alcohol)やフェニルエチルアルコール(phenylethyl alcohol)といった、甘くパウダリーで落ち着いた香りの成分が含まれることもある。これらが香り全体を丸く整え、時間の経過とともに柔らかく包み込むような残香を残す。
また、黒文字は季節や採取場所によっても香気成分のバランスが微妙に異なる。新芽の頃はリナロールが多く、より軽やかで明るい香りに傾き、晩秋には樹皮や枝の香りがより濃密になり、スパイス感と樹脂感が増す。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー
『〆⑧』
・木の芽味噌焼きおにぎりのお茶漬け
・鰺の南蛮漬け(ベルガモット新芽で香りづけ)
上には、シトラスフラッシュ(マイクロリーフの一種)
『お茶⑧』
奥富園様の手摘み浅蒸し煎茶(合組で、きらり31がメイン)
●
木の芽味噌と粒立ちのよいご飯がとにかく美味しい。
お茶漬けの出汁はさらっとした甘味メイン。鰹節も感じた気がします(お茶?+出汁?にしても少し甘味あるので、鮪節とか味醂とか足してるのでしょうか?よくわからず)。木の芽味噌の塩味とバランスをとるようなお出汁。
ほろジュワな鰺の南蛮漬けは香り爽やか、酸味穏やかで甘め。
シトラスフラッシュが柑橘の皮のような香りで爽やかさを加速。
お茶は、大福と一緒に頂いた一杯目の新茶とだいたい同じ淹れ方ながら、全く異なる印象。
こちらは緑茶らしい香りと苦味が強めでありながらも丸みがある。さらにうまみが感じられ、自然な甘味も追いついてくる。
バランスの良い味わいが密度高めに含まれたお茶といった印象。緑茶らしい味わいがお茶漬けによく合います。
同じ新茶という括り・同じ淹れ方でこの振れ幅。お茶の世界の深ーい沼にさらに引きずり込まれますね。
ー
※シトラスフラッシュ:
柑橘系の爽やかな香りに閃光のような形の葉が特徴的なマイクロリーフ。
マリーゴールドの近縁種。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
『茶室に移動して』
茶:Sense of Matcha(鹿児島メイン+宇治の抹茶の合組、オーガニック)
菓:赤松で燻製した柏餅
中に、赤味噌と梅とレモンの餡、金柑ライムと白樺樹液のゼリー
●
お抹茶は、昔の和室や蔵のようなやや懐かしい香り。
苦味しっかりと、うま味もしっかりと。
やや古びた印象の青みが伸びる。
不器用ながら真摯、そんな抹茶とお見受けしました。
柏餅は、口に近づけるだけで赤松の香りがとても◎。
餡は、赤味噌のうま味と塩味に、梅とレモンの酸味があわさることで、発酵塩レモンのような風味。うま味と酸味と香りが抜群。
金柑ライムと白樺樹液ゼリーはジューシーさと明るい酸味で、力強い餡とバランスをとる。
赤味噌効果で長く長く余韻が伸びるのも印象的でした。飛び道具的な赤味噌を野暮ったくなく活かしきるセンスに、脱ぐ帽子がとっくにありません。
ー
※赤味噌:
赤味噌と白味噌の違いは、主に熟成期間と味にある。赤味噌は長期熟成で色が濃く、味も塩気や旨味が強くてコクが深い。一方、白味噌は熟成が短く、色が淡くて甘みが強く、まろやか。
ちなみに麦味噌・米味噌・豆味噌の違いは、使う麹の種類。麦味噌は麦麹を使い香りが高く甘め、九州で多い。米味噌は米麹を使い全国で一般的、バランスのよい味。豆味噌は麹も大豆で作り、濃厚で渋みとコクが強く、主に中部地方で使われる。
麦味噌・米味噌には赤味噌と白味噌の両方があるが、豆味噌は基本的に赤味噌だけである。
※金柑ライム:
キーライムとキンカンの交配種。
皮が薄く、果汁が豊富。
ライムのような酸味はあるが尖った青みはなく、金柑より甘みは少ない。
※白樺樹液:
春先に白樺の幹から自然に流れ出る透明な液体。雪解け時期の2〜3週間だけ採取でき、1本の木から1日に数リットルしか取れない。味はごくわずかに甘く、樹木の清涼感がある。水のようにさらっとしているが、飲んだあとにほのかな甘みがじんわり広がる。
成分にはキシロースやグルコースなどの糖類、カリウムやマグネシウムといったミネラル、アミノ酸やポリフェノールなどが微量含まれる。加熱や発酵で加工されることもあり、ワインやシロップにも使われる。
ーーー
お土産もございますよ!