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八寸
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ヤリイカ
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蟹刺し
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焼き蟹
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茹で蟹
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茹で蟹
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部屋
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部屋付風呂
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冬の日本海
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カウンター(掲載許可済み)
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抹茶・水羊羹
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蟹の坊
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米原駅・しらさぎ入線
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先付・八寸
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椀物
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向付
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焼き物
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焚合せ
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油物
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御飯
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デザート
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御献立
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朝御飯
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********:2011/1/17********
2011年明けて寒さ一入の1月冬の土用入り、再訪問。
この日、積雪のため新幹線がまさかの遅延、米原からの北陸本線も大幅に遅延し福井駅到着は予定から一時間半程度遅れる。 今回は福井駅からえちぜん鉄道に乗り込む。 終点の三国港駅までは約50分、一両編成の電車はバスのようなコンパクトな車両、ガタゴト田園風景を揺られていく。 (通称)えちてつは地元自治体が出資する第三セクター鉄道で、京福電鉄から引き継いだ2路線を運営する。 車内ではアテンダントのお姉さまがゆっくりと客席を巡回し、『ご乗車ありがとうございます』と柔らかな笑顔をふるまってくれ、すでに6時間近く鉄道を乗車して疲れた体がほころぶ。
終点の三国港駅は無人駅であるが、2010年に駅舎が改装されており、駅東側にある眼鏡橋は国の有形文化財に指定されている。駅前はというと、ターミナル駅のそれとは思えないほどひっそりしている。と、巨大な蟹のオブジェが目に飛び込む。望洋楼が運営する直営のお土産店、蟹の坊である。 店頭では蟹が美味しそうに蒸しあがり、入店を誘う芳しい香りが店頭に漂う。店内でお土産を見ながら、蟹の誘惑と寒さに耐えて時間を潰しているうちに送迎バスが到着、望洋楼までの道のりは10分。
この日の望洋楼周辺は天候変化が激しい。到着直後は横なぐりに吹雪いており波高2~3mの大荒れ、天変地異の様な日本海だったのだが、荷を下ろして前回も頂いた抹茶と水羊羹を頂きながら、長旅の埃を落してほっこりしているうち、雲の間から晴れ間が差し込み、天地が幾分柔和な表情を見せる。しかし険しく荒くれた海でこそ、味わう海の恵みはまた格別なものであろう。
今回、同行者の希望により贅沢にも三国之主コース(1名食事のみ\48,000、一泊付\65,000)を予約。日頃、粗酒粗飯で外食することが多くない自分にとってはまさに贅沢の極みである。こちらで頂くのは懐石コース、侘び寂びのこころを五感で感じ取るべしなのであるが、越前蟹がメインのこのコース、果たして贅沢すぎないか、華美になりすぎて侘びの粋を壊してはしまわないか少々心配である。
荷解きをして、部屋付けの温泉風呂で温まる。部屋付けゆえに少々狭い。お風呂はのびのびと入りたいので、前回入った共同の岩風呂の方がいいな。 お風呂から上がると、既に卓上では料理の下準備が出来ていて、おかみさん直々に料理が運び込まれる。
まずは先付けに鱈白子のポン酢、幾万もの生命を凝縮を自らの活力に替えるかの如き罪深き一品、その重重しさをポン酢が中和している。氷上で制動力を失った車の如く、口先から喉奥へとネタが無抵抗に踊るのを押し留め、舌を絡めるような味わいに活力を感じとる。
続けて八寸、円形の金色の器が八寸四方の折敷にはめこまれ、七種の酒肴が美しく盛り付けされている。金柑いくら・鮭の酢大根巻き・ぶりの西京焼・車海老・子持ちこんぶなどのラインナップ。盛り付けを愛でるだけでも脳内麻薬が放出され、幾ばくかの充足感を感じる。金柑をくり貫いた果実の器にいくらが詰め込まれた一品を器ごと頂くと、口の中で出会う甘酸っぱさと潮の香りのコンビネーションが楽しい。
続いて刺身の活け造り、ヤリイカの登場。盛り付けられたイカの下足が微動、身頃も透き通り鮮度の高さが分かる。ヤリイカが水揚げされ始めたのは、一週間程前だそうである。 豪快に箸にからめて生姜醤油で頂くのが良し。
この時点で既に十分満足なのであるが、これから越前蟹が刺し・焼き・茹でで給される。 まずは蟹刺し、冷水に晒したものとそうでないものが立体的に盛られている。冷水に晒した蟹は花が咲く。 舌の上であたかも溶岩が溶けて流れ出すかのように蟹身が拡散し、口中の細胞に吸い込まれていくようである。
さらにせいこ蟹。 雌であるせいこは小ぶりである。下ごしらえされたものが給され、甲羅の内側に外子、内子・蟹味噌・蟹身の部分に分けて盛られる。 外子は見た目からは想像できないシャキシャキ感、内子と蟹味噌和えを食すとえもいわれぬ味わい、浦島太郎が鶴になったのが理解できる。
そして焼き蟹。長形の七輪が用意されると同時に、おかみさんにより岩塩が見たことも無いような巨大な摩り下ろし器で下ろされる。 焼き蟹は半生で給されるのであるが、蟹刺しの食感との余りの違いに愕然とする。 そっと加熱された蟹身はふっくらとしながら弾力を保ち、口の中で躍動する。 蟹味噌と蟹身を和えても、岩塩でも、蟹酢でもそれぞれの味わいを楽しめる。 蟹甲羅から味噌をこそげ取って、日本酒をぶちこみ七輪であつあつに熱したものを味わうと体中に蟹エキスが染み渡る。
蟹の連続攻撃、とどめはメインの茹で蟹。1.5KGと堂々たる体躯、これほどの大きさの越前蟹は見たこともない。 蟹の爪が異様に大きく見える。 そもそもこんなに見た目がグロテスクな生き物を人類で最初に口にした人は偉い。 おかみさんにばりばりと蟹を捌いて頂く。 蟹は大振りでも大味なことは無い。 脳内麻薬は十分過ぎるほど放出されているのであるが、手と口が勝手に動いて茹で蟹を攻めている。 ここまで到達すると味の表現に困るほどである。 この後、蟹釜飯なのであるが、割愛。
余談ではあるがこちらのご主人(社長)、蟹のシーズンでも余り蟹を召し上がらないらしい。 良い素材を仕入れる事に並々ならぬ執念を燃やしていて、いい蟹が市場に上がると金に糸目をつけずにごっそり仕入れしてしまう。 従業員によるとご主人は『素材のヘンタイ』だそうで、いいネタ、旬のネタにこだわって仕入れている。 ご主人と料理長のもてなしのこころが注入され、来客に給される品々に間違いがあるはずはなく、来客はさらに来シーズンもまた来たい、と一年先の予約をして帰る客も多いそうである。
三国之主コースで頂く越前蟹、当初危惧した懐石との融合であるが、その土地の美味しいもの、その季節にあったものを懐石に取り入れること自体、まこと利休の精神に叶っている。 見た目は華美で贅沢な越前蟹であるが、『叶いたがってない』見事な懐石コースの品々に身も心も満たされました、ごちそうさま。
********:2010/9/25********
2010年の猛暑がひと段落した9月半ばに訪問。
福井駅から車で約40分、日の入りまで一時間半前の夕方に到着。 電車ならえちぜん鉄道三国港駅から約1km(送迎あり)、JR芦原温泉駅からタクシーで2,800円-提携料金。 駐車場に車を乗り入れると正面が吸い込まれるような望洋のロケーション。 まだ太陽が高いが、サンセットを楽しむにはこれくらいの時間に旅館入りするのが、ベストかもしれない。
こちら望洋楼は明治期の創業、旧越前藩主松平春嶽にも愛されたという歴史を辿れる暖簾である。 元々は廻船問屋であり、鉄道の発達とともに衰退し、料理屋そして宿に生まれ変わったという、時流に翻弄されながらも逞しく生き抜いてきた。 なお、当館は東尋坊から目と鼻の先である。
旅の荷物をおろしてロビーでほっとすると、旅の疲れを癒してくれる水羊羹と抹茶のサービスが嬉しい。 ロビー内のカウンターの背景は大きなガラス張り、その向こう側は大海を一望する景色である。 荷解きをした和室は二方が窓となっている角部屋、まずはゆっくりと過ごし、サンセットまでの時間を確認したのち、温泉で時間を過ごす。 旅の垢を落として涼んでいるうちに部屋出しの料理が準備される。 御献立は春夏秋の旬の懐石コース(一泊\24,000~)、冬の蟹シーズンがベストであるのは言うまでもないが、夏は鮑や栄螺も美味なのである。 懐石は会席と違って茶道のスタイルに則り、和の侘び寂びの真髄を感じることができる料理の流れがある。 当館にも茶室が用意されている。
まずは食前酒の梅清酒を三々九度で使うような盃で頂く。 一口で飲み干してビールに移行。
先付けは柿の胡麻和え、八寸は松茸のポン酢・絹かつぎ・巻き海老・サーモン寿司・蒸し栗など。 柿で涼やかな季節感、栄養豊富な胡麻で実りよい豊かな秋に想いを馳せる。 八寸には海川山野の酒肴が盛られ、素材の季節感や味を肴に、ひとしきり酒が進まなければいけないのだが、益荒男だけの席ではそんな風情を楽しむ間もなく、次々と卓上の山海のみのりが嚥下されていく。
続いて椀物、甘鯛と玉子豆腐で変化をつける。 五感のうち嗅覚器官が立上がり、嚥下の間の小休止に。
向付は魚介の新鮮な肴、 生成りと翡翠の二色の器に美しく盛られたのは甘海老・雲丹・烏賊・鮪など、年中味わえる魚介が夏の季節感あふれる茗荷を枕に美しく配置され、目を楽しませてくれる。 添えられた塩を少しだけつけて頂くと爽やかな味わいがうれしい。 大海で伸びやかに過ごしたのち、人手によって陸地に赴き生を終え、最期を美しく着飾ったあと葬られんとする、人はなんと罪深いのか。
続いて焼き物は大皿に盛り付けられている宝楽焼である。 宝楽焼は蓋のある焙烙で塩と酒だけで蒸し焼きにした料理、ダッジオープンやタジン鍋のイメージではあるが、水分は一切使わない。 魚介の旨みを堪能できる料理である。 塩が敷き詰められた焙烙には、鮑・車海老・栄螺が並ぶ。 いずれもそれぞれ美味であるが、車海老は驚くほどの太さを持つ。 大体、ダイバーウオッチ文字盤はゆうに超えるくらいの直径、食感も弾力の程度にして未経験の弾けぶり、食感表現としての【ぷりぷり】は余りに一般的過ぎて霞んでしまうほどである。
焚合せは鱧と松茸のしゃぶしゃぶ。 夏の食材である鱧、秋の食材である松茸をともに味わうことで季節の移ろいを感じられる。 松茸は小ぶりな大きさではあるが、豊かな秋の香りが鼻腔を爽やぐ。
油物の鰈の胡麻揚げをさくっと往なしたあとは、零余子(むかご)御飯と味噌汁を頂く。 むかご御飯とは初めて頂く食事である。 更に、全く知らなかったのであるが、"零余子飯"は仲秋の季語にもなっており、まだ暑さの残るこの時期にはまさしく合うメニューである。 ただ、お味は特にこれといった特徴が無い。
最後に葡萄シャーベットと芋ぷりんで口中を中和するとともにクールダウン、芋ぷりんはぷりんと言うより、芋を裏ごししただけのような素材感がするが、程よい甘さが体の疲れを癒してくれるようだ。
以上、豊かな季節感を感じる懐石コース、とても美味しく頂きました。
翌朝は、小鉢が敷き詰められた二段重に、鍋仕込みの豆腐が特徴的な朝御飯、朝食も部屋出しのため仲居さんに叩き起こされて眠い目をこすりながらではあるが、美味しく頂きました。 ごちそうさま。