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うなぎと葱の鍋
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ジャンルを問わず、今のところ当店が千葉県で最もおいしい料理店だと思っている。
投稿時点で食べログ千葉1位の『プレゼンテ・スギ』(4.46)、2位の『ウシマル』(4.38)、3位の『寿司栄』(4.33)はいずれも行ったし、いずれもとても良い店だが、私の1位はこの『かねき』。
今回は、妻の誕生日祝いで行った。
これまで誕生日祝いは白金高輪の『クレリエール』と決めていたが、クレリエールは移転に加え店名も変えて再出発するそうで、閉店中。
目先を変えて和食の当店にお邪魔することになった次第である。
再出発といえば、当店も改装のため、2023年から2024年にかけて1年くらい閉店していた。
改装後の店舗は、歴史を感じさせる外観はそのままに、内装が一新された。今風のお洒落な、かつ高級感のある感じになった。
希望してカウンター席を予約。
ランチの訪問だが、お祝いなので、ディナーの一番上のコース(24200円)を注文した。
カウンターの内側と奥の厨房を隔てるのれんに、料理店の名が4つ。独立した弟子のお店の名前だろう。改装祝いに弟子たちが連名で寄贈してくれたものと想像されるが、こんな目立つところに他店の店名を掲示するというのは、むしろ当店店主の親心からの発案でないかと思った。
基本的に、懐石系のコースの値段の違いは、上に行けば行くほど高級食材が増える(だけといえばだけ)というもので、真ん中くらいのコースでも満足度はそんなに変わらない傾向があると思う。
しかし今回は誕生日祝いだから、豪華にすることに意味がある。迷わず昼だがランチコースではなく夜のコースを希望し、かつ一番上の24,200円のコースとした。
ワインを白赤1本ずつ持ち込ませていただいた。
過去にも持ち込んだことがあり、確認を省いたので正確にわからないが、持ち込み料は2000円か3000円程度だった記憶。
着席すると、扇形の和紙に「おたんじょうびおめでとうございます」と書かれたメッセージカードが飾られていた。心遣いに感謝。
以下、記憶している範囲で個々の料理について書く。漏れもあるかもしれない。
★湯葉とトマトの椀物★
湯葉は滑らかでむっちり感もあり、濃厚な味わい。トマトもとても良いトマトで、これらの食材が出汁の風味とよく合い、幸先の良いスタートとなった。
★鱒と真鯛のお造り★
天然の鱒(サクラマスと思われる)と真鯛。
鱒の産地は忘れた。真鯛は淡路島とのこと。
いずれも素晴らしい品質。
鱒は脂乗りが良いのにべったりした感じはなく、とろけるというよりほどけるような食感と抜群の旨みで、今まで食べたサクラマスの中で一番おいしかった。
鯛は一晩寝かせたものとのこと。大将は鯛については熟成させすぎず、歯ごたえのある状態を最良と考えているそうだ。たしかに、十分に旨みは乗っているが歯ごたえも残っており、これは一つの理想的なバランスかもしれない。ねっとりしてきたやつはしてきたやつでおいしいけどね。
★八寸★
八寸はひな祭りにちなんだもの。
白魚、鮑と山菜をあられの衣で揚げたもの、ナマコのコノワタ乗せ、赤貝のぬた。この3品が1つのお盆に乗って、蝋燭を紙で囲った簡易なぼんぼりと一緒に出てくる。
どれもおいしかったが、今年初の白魚を食べられたのが嬉しかった。大好物なので。
★茶碗蒸し(鯛の酒盗乗せ)★
茶碗蒸しそのものの塩味は最小限で、酒盗で塩味を加える感じになっている。出汁が良いので、茶碗蒸しは当然とてもおいしい。
酒盗もそれほど塩辛いわけではなく、優しいおいしさであった。
★越前蟹★
むちっとした身質で密度が高く味が濃く、良い蟹であることが明瞭にわかる。何も付けずに食べてもおいしいが、カニ酢もとてもおいしいので味変の楽しみもある。
蟹味噌も、余計な臭みの全然ないクリアな濃厚さで抜群に旨い。
ここで大将が、蟹味噌に合わせてと日本酒をサービスしてくれた。有難すぎる。
★うなぎと葱の鍋★
グツグツ煮え立った状態で提供された。食べログに動画を貼れないのが残念。
うなぎが開かれておらず、筒切りの状態で出てくる。にもかかわらず食べると骨がない。開かずに骨だけ抜くという大変手間のかかる技法があるのだそうだ。2時間くらいかかると大将は言っていた。マジかよ。現代ではできる人がほとんどいない、滅びゆく調理技法だそうである。そりゃ滅びるわと思った。
ちなみに昔は、うなぎの蒲焼きも開かずに骨が付いたまま串焼きにして、食べる人が骨を残して食べていたらしい。
うなぎを食べて、あまりのおいしさに絶句した。
「うなぎだ…」
うなぎなんだからうなぎなのは当たり前だが、そういうことではない。何というか、うなぎの代表的な調理法である蒲焼きに勝るとも劣らないほど、うなぎのうなぎらしさ、うなぎを食ってるぞという感があったのだ。
脂ノリノリで、ほろっと口の中でほどけて、脂の甘みと豊富な旨みが合わさって、たまらなく官能的な料理であった。
上品なお出汁の中で煮られているが、うなぎの脂と味も溶け出して、ちょっと暴力的な感じになる。
このうなぎが本日の白眉だったかもしれない。
★鰆の焼き物★
非常に立派な肉厚の鰆を炭火焼きにしたもの。上に乗っているソースは何だったか忘れてしまったが、ふき味噌だったっけ?
とにかく鰆の質が素晴らしかったのは覚えている。
鰆はたくさん焼かれていたのを目撃したから、この鰆はランチコースでも入って来るのであろう。
当店の食材は、とにかく厳選されていると思った。
★鯖寿司★
鯖の棒寿司。大好物である。
肉厚で脂の乗った堂々たる鯖。締まり具合も完璧で、素晴らしくおいしかった。
大将は、今年は良い鯖があまり入らなくて…とぼやいていた。
★さざえのつぼ焼き★
ただ貝殻ごと焼いたというものではなく、一口大に切って、きのこ等の他の食材と出汁と一緒に貝殻の中に戻して提供されるので、つぼ焼きと呼ぶのは誤りかもしれない。
苦みや磯臭さも楽しむ磯料理としてのつぼ焼きとは当然趣が異なり、クリアで上品な味わい。
★何かの真丈と新じゃがの炊き合わせ★
真丈が何だったか失念(おいしかったことは覚えている)。新じゃががかなり印象に残った。箸で切れる程度に固さを残してあるが、中心部に行くほど固く、食感がグラデーションになっている。出汁の味がほどよく染みて美味。
★ご飯、牛カツ、香の物、赤だし★
実は事前の予習で、最後のご飯セットに付く出汁巻き玉子を密かに楽しみにしていた(数年ぶりの訪問なので、前回出汁巻きが出てきたかは覚えていない)。
しかし、張り込んで一番高いコースにしたために、出汁巻きの代わりに牛カツが出てきた。
2015年頃に東京に牛カツブームが到来し、衣だけ揚がった生肉を出すしょうもない牛カツ専門店がたくさんできていたが、本来牛カツは関西の料理であるということは当時から聞き知っていた。
当店の牛カツは、薄い衣が少し焦げるくらいに揚がりつつ、中の肉はステーキのようなミディアムレアにしっかり火入れされている。牛カツは衣を少し焦がして香ばしくするのが肝心であり、豚カツの衣を焦がしてはいけないのとは逆であるとの大将談。
私はサシのたくさん入った牛肉を好まないのだが、この牛カツの肉は適度に脂のある良質の赤身。それにジャストの火入れがされているのだからおいしいに決まっている。
でも出汁巻きも食べたかったな。次回の楽しみに取っておくこととしよう。
ご飯は当然めちゃくちゃおいしい。香の物も赤だしも言うこと無しで、幸せな締めとなった。
★玉子かけご飯★
ご飯おかわりされますか?→もちろん!→玉子かけご飯はいかがですか?→最高!是非!
というやり取りを経て提供された締めの締め。
厳選された卵にかつお節。おいしくないわけがない。
ずいぶん食べた後だったが、ぺろりと平らげてしまった。
★いちごパフェ★
デザートは、アイスクリームにいちご、求肥などを重ねた小さなパフェ的な一品。
とてもおいしいいちごの種類は、40代の私が子どもの頃によく食べていた「女峰」だというから少し驚いた。私より11歳下の妻は聞いたことがない品種だとのこと。
女峰はおいしいんだけど、身が柔らかくて扱いにくいから近頃はあまり栽培されなくなっちゃったんですよと大将。なるほど、柔らかいと輸送の過程で傷んだりしやすいもんね。
会計は2人で58,000円台。コースの料金だけで48,400円だから、ワインの持ち込み料、FUJIのミネラルウォーター2本、席料5%でちょうど1万円くらいになったらしい。
今回は贅沢をしたが、おそらく7,700円のランチコースや13,200円のディナーコースでも十分に満足できるのだろうと思う。
次は何年もご無沙汰せずに、普段の日に気軽に来たい。