3回
2022/08 訪問
稀有なる鮨「鮨なんば」 | じきの食歴
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2022/09/12 更新
2020/01 訪問
共に同じ時代を歩んでいける幸福を「日比谷 鮨なんば」 | じきの食歴
共に同じ時代を歩んでいける幸福を「日比谷鮨なんば」
朝からみぞれの降る中、昼に日比谷の「鮨なんば」を訪問してきた。
大将である難波さんの鮨を語るには、どれほど言葉を重ねても語り尽せないが、1言にまとめるとすると「綺麗な鮨」というのに集約される。
雑味や臭みを徹底的に排除する。それでいて旨みや良い香りを残すといった、ある意味正反対の仕事を素材に施すのが難波流。
これを実現させるには、ネタとシャリの温度コントロールが重要で、彼のにぎる鮨は、ネタとシャリの温度を1度単位でコントロールして組み合わせて出してくる。
彼の鮨に対する研究心はとどまるところを知らず、常に「まだまだ」と言いながら、様々な仕事の仕方を模索し続けている。
店は、カウンター8席に、特別な用途がある時のみ使用する4席の個室がある。
いつもは満席なのだが、今回はめずらしく店とお客双方の手違いがあり、カウンター6席のみでの営業となった。
あとで思いついたが、2席空きがあると聞いた時点で声かければ、参加したがる人が居たかもしれない。
少々、若し分けないような気もした。
まあ、そういうのは一瞬で忘れ(笑)、いつものように様々なおつまみが出てくる。
最初に出て来た佐島の煮蛸は、塩と水だけで煮たもの。
そうとは思えぬほど複雑な旨みがするのは、蛸の香りのせいであるのかもしれない。
ほろりと口の中でほどける蛸の筋肉の繊維から、ただただふくよかな香りが湧き立つ。
ボタン海老には、海老の卵が乗っている。卵を使うと、どうしても海老特有の臭みというのが残るのだが、海老の殻を焼いて砕いたもの等と和えたペーストにすることで、その臭みを打ち消している。
キンキの煮つけは、その煮汁が秀逸だ。透明に澄んだスープには、魚特有の臭みが一切無く、その甘味の中に馥郁たるキンキの旨みが宿っている。
そして鮟肝。実に綺麗な鮟肝だ。自分は、ここの鮟肝以上にクリアで美味なる鮟肝を知らない。
丁寧に下処理をしたものを上品な煮汁に漬け込み、客に出す直前にその表面を削り落とし、鮟肝の中心部分のみを出してくれる。
ああ、なんたる美味。
その後は、口をさっぱりさせるため、鰯と大葉の巻物。これまた定番料理だ。
そして再び鮟肝。さきほどの鮟肝から切り落とした端切れをセロリ等の野菜と一緒に炒ってペーストにしたものを焼いたトーストに乗せたもの。ほのかに山椒を効かせている。
パンは、同じ日比谷ミッドタウンに入っているジャン・フランソワ。
これ、瓶詰にして売って欲しい。パンだけでなく、色々な料理の調味料としても使えそうだ。
洋風のおつまみ続きで、次は白子のクリーム仕立てのスープが出て来た。だが、これには動物系のクリーム等は使っていないという。米をお粥状態にして、うまく再現しているそうだ。
穴子は、難波さんが一番好きだと言ってるもの。表面はカリカリで、中はふっくら。
噛む時にカリリという子気味良い音をたてる。
おつまみの最後は、本日出す魚のアラで取った出汁のお吸い物。
ほっと一息つける。
そして鮨へと。
今回は、鮨16貫。
白烏賊、平目、伊佐木、鰆、車海老、北寄貝、春子、鯖、
鰤、鰹、赤身、トロ、小鰭、鮑、虎河豚白子、穴子
印象に残ったものをいくつか書き留めておく。
白烏賊は、丁寧に極薄に切ったものを細切りにして、十数本ぐらい束ねたものを握ったもの。
口の中で烏賊がやわらかくほどけ、シャリと絡み合う。
そのやさしい甘味と口どけは、官能的だ。
鰆は、この少し皮を残してあるのがたまらない。身の油の少なさを補っている。
車海老は、山口県の宇部のもの。自分の出身地である。難波さんが、ここのはいいと言ってくれ、ここ最近使い続けてくれているのがなんとはなしに誇らしい。
鰤も良かったが、鰹がまたさらに素晴らしかった。
今回のマグロは、延縄で捕まえた青森県大畑のもの。今回は、香りより旨みの方が優っていた。
マグロの筋も感じさせないぐらいの見事なカットに、米2,3粒ぐらいでコントロールされるシャリの量。
まさに芸術品。
鮑は薄く6枚に切ったものを重ねる。鮑の香りを引き立たせるためだが、咀嚼した時の酢飯との一体感も素晴らしい。いつもは5枚だが、今回もののコンディションを見て6枚重ねに変更されていた。
そして、クリームブリュレのような玉子焼き。
あと、今回は追加で巻物もいただいた。
マグロの色々な部位を巻き込んだもの。
ちょっと大きめだけど、これを一口で頬張る。
これ1つで原価数千円するらしい。
マグロと海苔の良い香りが鼻腔から抜けていくたびに、その香りに酔いしれる。
そこを、マグロの旨みが荒波のように押し寄せ、意識を呼び覚ます。
太平洋と日本海の間を流れる潮のごとく、力強くも荘厳なる旨さだった。
今回は人数も少なく早めに終わったので、食べ終わり、他の客達が帰ったあとに難波さんとも色々お話をした。
あれ、こんな風に良かったよとか、どのように美味しかったとか。
自分は基本、良かった部分はどんどん口にして、その良い部分をさらに伸ばしてもらいたいというタイプ。
難波さんも、そのように褒めていただき、こうして話できて、同じ時代に居てくれて嬉しいですと、そういってくれた。いやいや、そう言いたいのは、こちらの方である。
彼とその鮨の進化を、共に同じ時間を共有していけるというのは、なんとエキサイティングであり、贅沢なことなのであろうか。
現時点でもかなり完成度が高いのに、これだけ研鑽していても、彼としてはまだ勉強することが多く、自分の理想にたどり着けていないのだと言う。
「まだまだ」
そういう難波さんの目指す鮨を、彼と同じ道のりで歩んでいきたいものである。
そう言えば、今回は最後にマグロとたっぷり使った巨大な太巻きを作ってくれたのだが、入れるマグロが多すぎて、巻ききれないというハプニングが発生した。
急遽海苔を継ぎ足して完成したのだが、もっともっとサービスしたいという気持ちが先走ってしまったのだろう。
こういうお茶目なところは、難波さんも「まだまだ」だなぁなどと、つい微笑んでしまった。
記事URL:https://ameblo.jp/ziki-fujimoto/entry-12569127407.html
2020/01/23 更新
2019/01/25 更新
稀有なる鮨「鮨なんば」
「はぁ~」と溜息をつく人、「うむむ…」と唸るもの、そういった周りの人の反応も毎度のこと。
ネタとシャリの温度を巧みに操り、確かな事前の仕事と相まって、魚の旨味や香り、食感を最高のポテンシャルに導いた、唯一無二の鮨。
「鮨なんば」
8月某日、今回も難波英史氏の握る鮨を堪能できた。
つまみでは、鮑の肝チョコレートが秀逸。
これは、日本酒だけでなく色々な酒に合いそうだ。
煮蛸に始まり、キンキの煮つけや、トリミングして全重量の1/5ぐらいしか使わないあん肝といった定番も鉄壁の旨さ。
そして、握りは言わずもがな。
これだけ完成度の高い鮨を出しながらも、難波さんは謙虚だ。
常に「まだまだ」と言いながら、様々な仕事の仕方を模索し続けている。
こちらのお店には、同じ人を連れて行っても、常に進化した鮨を味わえるので、毎回皆の溜息を聞くことができる。
実に稀有なるお店である。
●つまみ
煮蛸
北海道シャイニングコーンの冷製スープ
北海道網走のキンキ
貝とキュウリの酢の物
あん肝
あん肝トースト(個人的には、アンパンと呼んでいる)
帆立
いわし巻き
蒸し鮑
焼き穴子
鮑の肝チョコレート
●握り
白烏賊
真子鰈
鰹
石垣貝
小田原の鯵
春子
北寄貝
鯨
鯖
牡丹海老
金目鯛
赤身
小肌
トロ
雲丹
穴子
玉
<以前訪問した時のレビュー>
https://ameblo.jp/ziki-fujimoto/entry-12569127407.html