韓国の食文化をリスペクトしつつも独創的で美しい、しかも、ものすごくおいしかった＠ソウル : SOIGNE

江南のオフィスビルらしき洗練されたビルの一角に位置するミシュラン二つ星レストラン。
入り口では料理映像が流れ、かつ広々としたキッチンを望むことができる。そんな光景を楽しく眺めながらダイニングへ。
ダイニング、こじんまりした居心地のよいフレンチのような空間。

なんといっても素晴らしいのは、iPadでいただくメニューの詳細な説明を見れること！
個人的にはどこのレストランでも導入してほしい、けど実際にはごくまれにしか見かけない、非常にありがたいサービス。
おかげさまで、ふだんの口頭のみの説明だと、料理自体の説明一部しか受け取れないのに対し、今回は料理についての説明＋シェフの食材・料理のかける想いまでをもしっかり全部受け止めることができた。
韓国の食文化に関する説明もしっかり書いてあり、韓国の食文化を愛しリスペクトしつつ、ベースにしつつ、独創性豊かな名作を生み出していることもよく理解でき、感動が増した。

しかもその説明、日本語バージョンまで用意してくださっていた。
（韓国って世界中で最も日本語が通じる外国だと思った。いろんなところで日本語で会話でき、街ではむしろ英語より日本語が通じるのではってくらい。ありがたい。）

伝統的な韓国料理を昇華させたContemporary Koreanともオリジナリティあふれるフレンチとも言えるコース。プレゼンテーションも、韓国らしい滋味深さと華やかなContemporary Frenchの要素が融合している。

そんな発想の豊かさ、独自性を楽しませつつも、ひとつひとつの料理がものすごくおいしいのがすごい！
ババ、フロランタン、白ワインなどフレンチ、イタリアンからインスピレーション得たものは、本来の嫌な感じが消え、韓国テイストが加わっておいしく面白く昇華している。

いただいたのは210,000ウォンのおまかせランチコース。

★9イカ＆メロン、ホタテ＆サフラン、リンゴ＆鶏レバー
緑、黄色、赤と色鮮やかで美しいアミューズブッシュ。こげ茶を使用したシンプルな構成で韓国建築の美しさをも彷彿とされる。
☆9イカ＆メロン　メロン、いか、クリスピーなチュイルの見事なハーモニー。
☆7.5ホタテ＆サフラン　サフランの味が強いのが好みと違う
☆9リンゴ＆鶏レバー　りんご、繊細なごく薄切り。鶏レバームースとあいまって絶品


★9季節の魚ムル・ホエ
スープ状の発酵ナスのジュの酸味の効いた感じ絶品。ガスパチョのように元気になるビネガー系の酸味。
下に敷かれたババガヌーシユ（中東の茄子料理）風のペイストが濃厚でアクセントに。

別皿で添えられたこんにゃくをちぎったようなものはムク。どんぐりから作られた韓国の食材だそう。
食感はムチっと心地よいが、風味はほとんどわからない。むしろ、和えられているオリーブオイルのような味わいが強いが、これはオリーブオイルではなく、海苔のドレッシングというからまた面白い。
発酵ナスのジュとの相性も抜群☆


★9ドラジ・パイ
特に、トリュフの香りと、バターの旨みしっかり効いた濃厚な白ワインソース絶品。正統派フレンチのおいしさ。
ドラジパイは繊細に幾層にも重なったサクサクパイの中に、根菜や野菜のナムルが入っている。
なので、パイ自体は野菜ベースでさっぱり、ソースは濃厚でバランスが良い。
ドラジはあまり旨みは感じられないホクホクの根菜。韓国ではゴボウと並ぶ定番根菜だそう。


ソフトドリンクはスパークリングティー2種と白ワインジュース1種のみ。
↓の白ワインジュースをいただいた。

☆9 Leitz, Eins-Zwei-Zero Riesling
「ドイツ産。スイートアンドドライ」とのソムリエの説明。
白ワインジュースで絶品だったの初めてでびっくり！
甘さ控えめの柑橘系のスパークリングジュースのよう。
酸味がいい感じに効いてて、甘味はほんの少し。
白ワイン特有の嫌な苦味がない。


次のシグニチャーディッシュはオプションで25,000ウォン（2800円くらい）。
普段料理の追加はほぼ頼まないのだが、今回はどの料理もおいしすぎるので、アミューズをいただいた後に頼んだ。
この料理も絶品だったが、他と比べて突出しているわけではなく、絶品料理が一皿増えた感じ。
メニューの説明にあるとおり、シェフの食材へのオマージュと料理人としての哲学が込められた一品。それが強く感じ取れた料理なので、追加してよかった。

★9シグニチャーディッシュ　エスカルゴ
Egg Castardと称した茶碗蒸しのような生地の上に、エシャロットのグリーンオイルとトリュフオイル。この２種のオイルの味わいが素晴らしかった。
エシャロットのグリーンオイルはほうれん草か何か、緑の葉っぱの味わいがした。

ほうれん草と、透けるほど繊細に削られたパルメザンの組み合わせ、洗練されたイタリアンって感じ。
エスカルゴはオリーブオイルとバターで焼きあげられている？フレンチそのもの。


★8ズワイガニ＆大麦
カンジャンケジャン＋ご飯の再構築とのことだが、言われないとわからないくらい独創的な料理。むしろイタリアンの蟹リゾットにアジアンテイスト加えたかのような。


★9季節の魚＆ミナリ
スズキ。皮を炭火焼き、ゆっくり火入れしている。弾力ある食感。

和食のスープのような出汁の効いた滋味深いおいしさに、スモークした青唐辛子の辛味を加え、韓国テイストの絶品に仕上げている。
ナムルピクルスもさすが一流プロの手にかかると、甘さと酸味が程よくおいしい。


★9韓牛
韓牛サーロインのステーキ。炭火でゆっくり火入れ。
柔らかくジューシーなのは和牛と同じで、和牛に比べるとやはり、赤味肉本来の旨みが感じられる。

牛のジュ、骨とポルトワインのソース。絶品の一皿の中でも特にこれが絶品☆よくある定番のポルト酒のソースをカラメリゼしたかのように、苦味と旨みを加えて大人の味わいにした感じ。

つけあわせは3種。
☆8.5オックステールサムジャン
オックステール、唐辛子、ニンニクに甘い砂糖付のピーカンを加えることで、オリジナリティあるおいしさに仕上げている。流石のセンス。

☆8カタツムリのあえもの
枝豆クリームのような味わい。カタツムリは味というより食感のアクセント。
☆6.5発酵きゅうり＋赤パプリカ、チリオイルのソース　さっぱり


★7そば粉＆カカオ
ババ。そば粉をたっぷり入れることで黒く、ユニークなものとなっている。
漬けこむシロップはソバとコンブチャ。なのでババ本来の嫌な甘ったるさゼロなのがいい。
カカオクランブル
☆9特に燻製ココナッツホイップクリーム絶品☆ふわっと空気のように軽いテクスチャーながら、燻製の旨みしっかり。


食後の飲み物は、紅茶カカオテイスト、カモミールゆず風味、コーヒー、エスプレッソ。
お店のいちおしは紅茶カカオテイスト。
★8紅茶カカオテイスト　たしかにカカオの風味。バニラのような優しい甘さも

★プティフール
☆8韓国梨、フェンネルリーフ　日本のなしと同様のみずみずしい味

☆9イタリア・フィレンツェの「フロランタン」　
ナッツの代わりにひまわりとごまで作ることで韓国テイストに。本場のフロランタンよりバターなどの味控えめで旨みが強い。

☆8パッションフルーツクリームをホワイトチョコレート「オパリス」で包んだボンボン
ホワイトチョコのコーティングの上に、ミントの葉などが可憐に散らされている。
中はパッションフルーツのジュース。これがしっかり効いてて、心地よい酸味


最後にシェフからのお手紙を受け取った。
見たらなんと、iPadに書いてあった各料理の詳細な説明の手書きを、美しい和紙に印刷したもの！韓国語と英語バージョンがあり、私には英語バージョンが渡された。
この説明、シェフは受け手に本当に伝えたいのだなと、強い思いを感じ取った。
そんなシェフの熱い想いにも心打たれるレストランだった。


今回の韓国訪問、Minglesとこちら、2軒のミシュラン二つ星を訪れ、どちらも食べログ総合点4.6をつけるほどに感動した。（他国でミシュラン三つ星店2軒訪れたときより高い満足度）。
ちなみに韓国にはミシュラン三ツ星が1軒もない。ミシュランは韓国に厳しいと思った。
また韓国に行く機会があれば、他の二つ星レストランやContemporary Koreanにもぜひ行きたいと思った。
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