寧夏夜市の喧騒の中で、次々焼かれる蚵仔煎(オアジェン)のふわふわ玉子とプリプリ牡蠣。 : 圓環邊蚵仔煎

(2016/09 再稿)　2016/07訪問分

日暮れ前の通行止めとともにいっせいに路上テントが張り巡らされ、台北屈指の一大夜市ゾーンが誕生！
食べ物がとても充実している「寧夏夜市」(ニンシャーイエシー)は、台北都心からも至近な場所にありながら、手軽に台北小吃の醍醐味を満喫できるスポットです。
喧騒をかき分けながら、北西の一角にある蚵仔煎(牡蠣オムレツ/オアジェン)のお店が連なる場所へ。

圓環邊(ユェンハンビエン)蚵仔煎さんは、そんな一角の代表店。
今夜もひっきりなしに入る注文に、店頭の鉄板では次から次へと蚵仔煎が焼き上がります。

玉子、とろみが固まり切れない片栗粉主体の生地、そしてプルプル小粒の台湾産蚵仔がごろごろ！
甘いとろみソースをたっぷりかけて、大口開けてかじりつくと、焼き目の香ばしさを纏った新鮮な牡蠣が潰れ、エキスが溢れ、玉子や生地の旨さ、甘いソース、渾然一体となって・・・・

これを体験せずして、台湾小吃を語るなかれ。


(2014/11 初稿)　2014/08訪問分

道幅いっぱいに賑わう食の屋台に、毎晩大勢の人々が繰り出す、台北・寧夏夜市(ニンシャーイエシー)。
なかでも、台湾流の牡蠣お好み焼きである「蚵仔煎」(オアジェン)でひときわ人気を集めるのが「圓環邊(ユェンハンビエン)蚵仔煎」さん。
周囲でしのぎを削る屋台小吃とは一線を画し、路面店として立派な建物を構え、既に長年の歴史を重ねています。

店頭には大きな丸い鉄板があって、どんどん蚵仔煎を焼いていきます。
新鮮な牡蠣の山を鉄板いっぱいに幾つも作って、一通り火が通ったところで生地を流し、瑞々しい青菜と溶き卵を覆いかけ、固まったところで出来上がり。
箆を使ってどんどん皿に乗せ、注文した客のテープ目に運んでいく・・・
そしてまた、次の牡蠣をのせて・・・
往来の激しい夜市の一角で繰り広げられるこの調理風景、眺めているだけでも堪らない魅力があります。

店内の片隅に座って、この店の代表メニューを堪能しましょうか。
まずは「蚵仔煎」(オアジェン/NTD65)を。
この蚵仔煎、台湾小吃のド定番とでもいうべき存在ですが、やはり海辺の街で、旨いものに遭遇しますね。
店頭の鉄板でシズル感たっぷり焼き上げる風景は、新竹都城隍廟でお馴染みだし、台南安平區の陳家蚵捲さんでは、名物の蚵捲とともに、旨い蚵仔煎が出てきます。
ガイドブックによっては台湾風「オムレツ」と訳していますが、どちらかというと「玉子入りの牡蠣お好み焼き」と言った方が的を得ているかと。
片栗粉やサツマイモ粉などで作る生地は、微かに半透明でプルンとしたとろみを纏っています。
このプルプル感、台湾人の味覚中枢に実に響くようで、肉圓の皮などにも一脈通じる部分があるかもしれません。

ところどころ旨そうに顔を覘かせる牡蠣は、思ったよりもずっと大きい。
台湾の牡蠣というと、品種のせいか小粒なものが多いように思うのですが、日本の牡蠣の中粒程度の大きさはありますね。
牡蠣を口にするたび、新鮮そのもののエキスが溢れてきて、トマトやチリソースがベースになった甘酸っぱい煉瓦色のソースが、実に良く合います。
生地のプルプル感、卵のふわふわ感、そして牡蠣のプリプリ感・・・・
台湾小吃の看板役者としてこの旨さ、貫録十分です。

そして、もう一つの人気メニュー「米糕」(ミーガオ/NTD30)を。
端的に言えば長粒もち米で炊いた「おこわ」にトロリと煮た豚肉を乗せたものなのですが、これが実に旨い。
粒立ちが良くて、噛むたびモチモチ、そこに豚の甘い旨みがじんわりと効いてくる。
豚を煮たエキスなのか、濃厚なタレは飯の色を変えることなく上手にコクを与えていて、そこがまたお見事ですね。

そして、〆は蛤仔湯(ハーマータン/NTD65)を。
一口啜ると、体に良いことこの上ない、豊かな海のエキスが優しくじんわり染みてくる・・・・
針生姜が仄かに効いてくるのがご当地らしくていいですね。

こうしてみると、実に豊かな海の恵み、里の恵みがめぐり会って、台湾の食を形成しているわけです。
あらためて、台湾は海に囲まれた国なのであって、日本にも一脈通じる食文化が形成されてきたわけですね。
台北の街の喧騒と熱気の中で、この豊かな恵みを堪能する、堪らないダイナミズム。
台湾を旅したならば、ぜひ体験したいものです。